「固定資産の評価替えって何?」
「2021年は固定資産の評価替えって聞いたんだけど…」
固定資産とは、土地・家屋(建物)・償却資産を指します。
これらの所有者に対して、課せられる税金が「固定資産税」です。
本記事では固定資産税の評価替えについて、以下を解説していきます。
- 固定資産税の評価替えの基礎知識
- 土地の評価替えについて
- 家屋の評価替えについて
- 実際に支払う固定資産税について
令和3年度(2021年度)は、固定資産税の評価替えの基準年度となります。
固定資産を持っている方、評価替えについて知りたい方は参考にしてみてください。
土地については、住宅用地(宅地)をメインに解説していきます。
なお償却資産は毎年度の申告義務があるため、評価替えの制度はありません。
固定資産税の評価替えとは
固定資産税の評価替えとは3年に1度、変化に応じて固定資産税評価額を見直すこと。
3年ごとの見直しで固定資産税評価額が変われば、固定資産税の金額も変わります。
評価替えの頻度が3年に1度になっている理由は、毎年の実施はコストが高くつくからです。
固定資産税は、毎年1月1日の時点の固定資産税評価額をもとに計算されます。
原則として、固定資産税の計算式は「固定資産税評価額(課税標準額)×1.4%」です。
課税標準額は特例の適用などで、固定資産税評価額よりも低くなることがあります。
冒頭で触れた通り、令和3年度(2021年度)は評価替えの基準年度。
そのため以下のように、2022年度と2023年度の固定資産税評価額は据え置かれます。
- 令和3年度(2021年度):評価替え
- 令和4年度(2022年度):据え置き
- 令和5年度(2023年度):据え置き
- 令和6年度(2024年度):評価替え
令和3年度(2021年度)は、平成30年度(2018年度)からの変化が影響を与えます。
ただし据え置きが妥当でないほどに、地価が下落することもあるでしょう。
当てはまる場合は、基準年度でなくても評価額が修正されることがあります。
なお固定資産税の評価替えの根拠は、地方税法の第341条と第349条です。
固定資産税の評価替え【土地について】
1.土 地
宅地・農地等地目別に売買実例価額等を基礎として、評価額を算定
・宅地については、地価公示価格等の7割を目途に評価(平成6年度評価替から導入)
令和3年度(2021年度)の土地の評価は、令和2年1月1日時点の公示地価の7割が目安です。
複雑に感じると思いますが、土地の具体的な評価の流れは以下のようになります。
土地評価の流れ | 内容 |
①用途地区の区分 | 土地(宅地)の利用状況が 共通している地域に分ける |
②状況類似地区の区分 | 用途地区を細分化する |
③主要な街路の選定 | 状況類似地区ごとに価格事情や 街路の状況などが標準的な街路を選ぶ |
④標準宅地の選定 | 間口・奥行き・形状などから 標準的な宅地(標準宅地)を選ぶ |
⑤標準宅地の適正な時価の評定 | 地価公示価格や鑑定価格の7割を 目安に土地の適正な時価を決める |
⑥主要な街路への路線価の付設 | 主要な街路(交差点から交差点まで)に 適性な時価から1m²あたりの 固定資産税路線価を出す |
⑦その他の街路への路線価の付設 | 主要な街路の固定資産税路線価をベースにして その他の街路の固定資産税路線価を出す |
⑧画地計算法 | 固定資産税路線価をベースに土地ごとの 画地補正率を乗じて1m²あたりの 固定資産税評価額を出す |
⑨各土地の評価額の算出 | 1m²あたりの評価額に地積を乗じて 土地の固定資産税評価額を出す |
固定資産税路線価は相続税路線価のように国税庁ではなく、市町村が評価主体となります。
(ただし東京23区の固定資産税路線価の評価主体は東京都です)
固定資産税路線価と相続税路線価の価格は異なるため、注意してください。
固定資産税路線価は、資産評価システム研究センターの公式サイトなどで確認できます。
なお固定資産税路線価の公表時期は、評価替えの基準年度の4月頃です。
固定資産税の評価替え【家屋について】
2.家 屋
再建築価格及び経年減点補正率等に応じて、評価額を算定
・再建築価格 = 評価対象家屋と同一の家屋を、評価時点においてその場所に新築する場合
に必要とされる建築費
・経年減点補正率 = 家屋の建築後の年数の経過に応じて生じる減価を基礎として定めた率
令和3年度(2021年度)の家屋の評価は「再建築価格×経年減点補正率」で決まります。
再建築価格とは、同じ建物を同じ場所に新築した場合にかかる建築費のこと。
経年減点補正率とは、建物の経年劣化を考慮した減価率(評価額下落の要素)のことです。
すでにある家屋の評価では、物価の変動なども考慮されます(再建築費評点補正率)。
物価水準の上昇は再建築価格を上昇、物価水準の下落は再建築価格を下落させます。
ただし結果として評価額が上昇していた場合は、評価額は昨年度から据え置きになります。
過去(平成21年度~平成30年度)と、今回の再建築費評点補正率は以下の通りです。
基準年度 | 木造 | 非木造 |
平成21年度 | 1.03 | 1.04 |
平成24年度 | 0.99 | 0.96 |
平成27年度 | 1.06 | 1.05 |
平成30年度 | 1.05 | 1.06 |
令和3年度 | 1.04 | 1.07 |
家屋の評価額は以下のように、据え置きか減少のどちらかしかありません。
再建築価格 | 経年減点補正率 | 前年度評価額との比較 | 評価額 |
上昇 | 減少 | 上昇・変動なし | 据え置き |
上昇 | 減少 | 減少 | 減少 |
上昇 | 変動なし | 上昇 | 据え置き |
変動なし | 減少 | 減少 | 減少 |
変動なし | 変動なし | 変動なし | 据え置き |
減少 | 減少 | 減少 | 減少 |
減少 | 変動なし | 減少 | 減少 |
経年減点補正率には下限があり、下限に達した場合はもう下がることはありません。
(つまり下限に達した後の評価の計算における経年減点補正率は「変動なし」となります)
なお実務における計算では、評点数などを用いてさらに複雑になります。
評価替えによって支払う固定資産税について
固定資産税の評価替えによって、実際に支払う固定資産税はいくらになるのでしょうか。
先述した通り、固定資産税は原則として「課税標準額×1.4%」で決まります。
そこで以下2点を解説していくので、確認していきましょう。
- 負担調整措置について
- 課税標準額の決まり方
負担調整措置とは、税負担の急増を緩和するための措置のことです。
税負担の地域格差を解消する目的として、仕組みが導入されました。
負担水準が高ければ税負担を下げ、負担水準が低ければ段階的に税負担を上げます。
負担水準(%)を求める式は「前年度課税標準額÷本年度の評価額×100」です。
また令和3年度(2021年度)の負担調整措置は、新型コロナ禍などの影響が及んでいます。
負担調整措置について
(参考)土地に係る固定資産税等の負担調整措置
○宅地等及び農地の負担調整措置について、令和3年度から令和5年度までの間、改正前の負担
調整措置の仕組みを継続することとします。
○その上で、令和3年度に限り、負担調整措置等により税額が増加する土地について、前年度の税額に据え置く特別な措置を講ずることとします。
令和3年度(2021年度)の税制改正では、これまでの負担調整措置の継続が決まりました。
つまり平成30年度(2018年度)から令和2年度(2020年度)の仕組みが継続します。
土地 | 負担水準が100%以上 | 負担水準が100%未満 |
住宅用地 | 課税標準額(価格×1/6など) | 前年度課税標準額に据え置き |
商業地等 | 課税標準額の70%まで引き下げ | 前年度課税標準額に据え置き |
また令和3年度限定の措置として、課税標準額が上昇した土地は税額が据え置きになります。
- 令和2年度よりも地価が上昇して税額増加
→令和3年度に限り令和2年度と同額になる - 令和2年度よりも地価が下落して税額減少
→減少した税額が固定資産税となる
負担調整措置は、商業地・住宅用地・農地などすべての土地について適用されます。
課税標準額の決まり方
令和3年度(2021年度)~令和5年度(2023年)は、以下のように課税標準額が決まります。
土地 | 課税標準額 |
小規模住宅用地 (200㎡以下の部分) |
【いずれか低いほう】 ・前年度課税標準額+固定資産税評価額×1/6×5%(A) ・固定資産税評価額×住宅用地特例率 |
一般住宅用地 (家屋の床面積の10倍までの 200㎡を超える部分) |
【いずれか低いほう】 ・前年度課税標準額+固定資産税評価額×1/3×5%(A) ・固定資産税評価額×住宅用地特例率 |
商業地用の宅地 (住宅用地以外の宅地) |
【いずれか低いほう※】 ・前年度課税標準額+固定資産税評価額×5%(A) ・評価額×70% |
雑種地 一般山林 |
【いずれか低いほう】 ・前年度課税標準額+固定資産税評価額×5%(A) ・固定資産税評価額×住宅用地特例率 |
※前年度課税標準額が評価額の60%未満で(A)が評価額×60%超の場合は評価額×60%になります。
※前年度課税標準額が評価額の60%~70%の場合は前年度課税標準額に据え置きになります。
以下いずれかに当てはまる場合は、課税標準額は評価額の20%に引き上げられます。
- (A)が固定資産税評価額×20%を下回る
- (A)が固定資産税評価額×住宅用地特例率×20%を下回る
固定資産税の税額は、計算で出した低いほうの課税標準額に税率を乗じます。
固定資産税の評価替えは据え置きか減少となる
固定資産税の評価替えについて、解説してきたことをおさらいしてみましょう。
記事のまとめ
- 固定資産税は毎年1月1日の時点の固定資産の評価額をもとに計算される
- 固定資産税の評価替えは3年に1度の頻度で実施される
- 令和3年度(2021年度)は基準年度(評価替えが実施される年度)となる
- 次回の評価替えの基準年度は令和3年度(2024年度)となる
- 令和3年度(2021年度)の翌年度・翌々年度は固定資産税評価額は据え置きとなる
- 地価が著しく下落した場合は基準年度でなくても評価額が修正される
- 土地は時価公示価格の7割を目安に評価される
- 家屋は基本的に「再建築価格×経年減点補正率」で評価される
- 令和3年度(2021年度)はこれまでの負担調整措置が継続する
- 税額が上がった場合は負担調整措置によって前年度の税額が適用される
- 令和3年度(2021年度)~令和5年度(2023年)は課税標準額の決まり方がある
令和3年度(2021年度)は、固定資産税の評価替えの基準年度です。
評価替えで固定資産税評価額が変われば、税額も変わることになります。
中には固定資産税が増えてしまうのではないかと、不安な方もいるでしょう。
ただし負担調整措置によって、固定資産税評価額は据え置きか減少になります。
また令和3年度(2021年度)に限り、課税標準額が上昇した場合は前年度と同額です。
もちろん地価の下落によって税額が減少した場合は、その税額を支払うことになります。
次回の固定資産税の評価替えは、令和6年度(2024年度)です。
さらに詳しく知りたい方は、自治体や総務省のホームページを確認してみてください。