「兄弟に連絡しても返事がない」「使っていない実家なのに、固定資産税や管理の連絡だけが自分に来る」。共有不動産の問題は、お金だけでなく、家族とのやり取りそのものが重荷になりがちです。
登記上、自分が所有する共有持分だけなら、原則としてほかの共有者の同意がなくても売却できます。話し合いが進まないときは、共有持分を扱う買取業者へ売り、共有関係から離れる方法もあります。
ただし、その場で契約を決めるのは避けてください。専門業者の買取価格は、不動産全体の市場価格に持分割合を掛けた「持分相当額」より大きく下がることがあります。売却後には、買主と家族・親族との間で新たな交渉が始まる可能性もあります。
判断の順番は、自分だけで売れるのか、最終的にいくら残るのか、売った後に何が起こり得るのかの3つが先です。ほかの解決方法、買取業者の選び方、手続き、税金は、そのあとで比べれば間に合います。
- 自分の持分だけを同意なしで売れるかどうかを、登記を見て判断できる
- 持分相当額から、買取価格の目安(民間資料では30〜60%程度)を自分で計算できる
- 査定額から税金と費用を引いた実質手取りを、決済前に見積もれる
- 売却後に家族へ何が起きるかを想定し、買主へ確認する質問を用意できる
- 全体売却・共有者への売却・業者買取・共有物分割から、自分に合う方法を選べる
最初にすることは、登記事項証明書を確認することです。
所有者名、持分割合、抵当権、差押えなどが分かれば、「そのまま査定へ進めるのか」「先に登記や専門家への相談が必要なのか」を切り分けられます。
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※2025年9月19日-23日 「サイト評価に関する調査」より
共有持分は、自分の持分だけなら同意なしで売却できる
共有持分とは、1つの土地や建物を複数人で所有しているときに、それぞれが持つ割合的な権利です。兄と弟が実家を2分の1ずつ所有しているなら、兄の持分も弟の持分も2分の1です。
この2分の1は、「建物の右半分」「土地の北側半分」といった場所を示すものではありません。原則として、不動産全体に対して2分の1の権利を持つという意味です。
自分の持分を売る場合と、不動産全体を売る場合は別
| 売るもの | 必要な同意 |
|---|---|
| 自分の共有持分だけ | 原則として、ほかの共有者の同意は不要 |
| 共有不動産の全体 | 原則として、共有者全員の合意が必要 |
自分の持分は、自分の財産として処分できます。一方、不動産全体を売ると、ほかの共有者の権利まで買主へ移るため、自分だけでは決められません。
単独で売れる場合でも、先に手続きが必要なことがある
- 相続登記が済んでいない
亡くなった人の名義のままでは、通常、そのまま買主へ持分を移転できない - 抵当権や差押えがある
借入先や債権者との調整、抹消手続きなどが必要になることがある - 登記上の住所・氏名が現在と違う
持分移転登記の前提として変更登記が必要になることがある - 遺産分割が終わっていない
法定相続分と、特定の不動産について売れる持分を混同しないよう確認が必要 - 農地など許可が必要な不動産である
持分の譲渡にも許可・届出が必要になる場合がある
「ほかの共有者の同意がいらない」ことと、「何の確認もなく売れる」ことは同じではありません。査定前に登記を確認しておけば、契約直前で手続きが止まる事態を防げます。
同意が不要でも、売却後まで秘密にできるとは限らない
持分を売る前に、ほかの共有者へ通知しなければならない一般的な制度はありません。とはいえ、売買後は買主への持分移転登記が行われ、買主が新しい共有者になります。
新しい共有者は、不動産の使い方や費用負担、残りの持分の買取、不動産全体の売却について、家族や親族へ連絡することがあります。
内緒で契約できたとしても、売却後まで知られないことを前提にはできません。
登記事項証明書の「権利部」を見て、所有者名・持分割合・抵当権・差押えを確認しましょう。内容が読み取れない場合は、司法書士や不動産会社に見せて整理してもらえます。
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共有持分の買取相場と、最終的な手取り額の考え方
共有持分だけの買取価格について、公的な平均統計や全国共通の相場はありません。査定の出発点になるのは、不動産全体の市場価格と自分の持分割合です。
不動産全体の市場価格 × 持分割合 = 持分相当額
実際の買取価格 = 持分相当額 − 取得後の調整費用・保有リスク・買主の利益など
たとえば、不動産全体の市場価格が3,000万円で、自分の持分が2分の1なら、持分相当額は1,500万円です。ただし、専門業者がそのまま1,500万円で買い取るとは限りません。
民間資料では、持分相当額の30〜60%程度とする例がある
公開されている複数の民間資料では、専門業者による買取価格の目安を、持分相当額の30〜60%程度とする例があります。持分相当額が1,500万円なら、単純計算では450万〜900万円です。
30〜60%は、公的な平均値でも最低保証額でもありません。空き家で共有者が少ないなど条件がよければ上回ることがあり、居住者がいる、共有者と連絡が取れない、権利関係に問題があるといった事情があれば下回ることもあります。
ほかの共有者が買う場合は事情が違います。持分が増えれば不動産を使いやすくなるため、持分相当額に近い価格で合意できる可能性があります。
共有持分だけを売ると安くなりやすい理由
- 不動産全体を自由に売れない
- 買主が取得するのは持分だけで、全体の処分にはほかの共有者との調整が必要
- 取得後すぐに自由に使えない
- ほかの共有者が住んでいる場合、取得後も買主だけで明渡しや利用方法を決められない
- 交渉や法的手続きに費用がかかる
- 残りの持分の取得、全体売却、共有物分割に時間と専門家費用がかかることがある
- 保有期間が読みにくい
- 固定資産税や管理費を負担しながら、資金を回収できない期間が続く可能性がある
- 想定どおりに再販売できない
- 共有者との協議が進まず、買主が長期間保有するリスクがある
査定額を左右する主な条件
- ほかの共有者が持分を買い取る意思と資金を持っている
- 持分割合が大きく、取得後の管理判断をしやすい
- 空き家・更地などで、特定の共有者が住んだり使ったりしていない
- 共有者が少なく、連絡や協議がしやすい
- 立地がよく、不動産全体として売却しやすい
- 相続登記、境界、担保権などの権利関係が整理されている
- ほかの共有者が居住・使用しており、取得後すぐに利用できない
- 共有者が多い、連絡が取れない、対立している
- 賃料、固定資産税、修繕費の負担関係が分からない
- 抵当権や差押えがある、相続登記が済んでいない
- 境界未確定、越境、再建築の制限、老朽化などの問題がある
- 需要が限られる地域や用途で、不動産全体の売却にも時間がかかる
モデルケース|500万円で買い取られた場合、実質手取りはいくら?
以下は、手取りの考え方をつかむための仮定例です。実際の査定額、登記費用、税額を示すものではありません。
- 不動産全体の市場価格
2,000万円 - 自分の持分
2分の1 - 持分相当額
1,000万円 - 専門業者の買取価格
500万円(持分相当額の50%と仮定)
ここでは、売却した年の1月1日時点で所有期間は5年超、取得費は不明で売却代金の5%を使う、特別控除は使わない、と仮定します。専門業者による直接買取のため仲介手数料はかからず、紙の契約書を作り、売主側の登記・書類取得などに合計10万円かかる想定です。
| 項目 | 計算 |
|---|---|
| 概算取得費 | 500万円 × 5% = 25万円 |
| 印紙税 | 1,000円(500万円の紙の不動産売買契約書に、2027年3月31日までの軽減税率を適用する前提) |
| 課税譲渡所得 | 500万円 −(25万円+1,000円)= 474万9,000円 |
| 税額の目安 | 474万9,000円 × 20.315% = 約96万5,000円 |
| 売主側の登記・書類取得など | 10万円と仮定 |
500万円 − 印紙税1,000円 − 手続費用10万円 − 税額約96万5,000円 = 約393万円
税金は通常、決済日に差し引かれるのではなく、翌年の確定申告後に納めます。決済日に入ったお金をすべて使わず、納税分を残しておく必要があります。
同じ不動産を共有者全員で2,000万円で売り、代金を持分どおり分けられれば、自分の取り分は費用・税引前で1,000万円です。この例では、持分だけを500万円で売ると、売却代金の段階で500万円の差が出ます。
ただし、取得費が分かれば税額は大きく下がり、マイホームの3,000万円特別控除を使えることもあります。反対に、相続登記や抵当権抹消、測量が必要なら手続費用は増えます。比べるべきなのは査定額ではなく、税金まで含めた最終手取りです。
まず通常の不動産会社に「不動産全体の査定」を依頼し、基準額をつかみます。そのうえで、持分買取は2〜3社から、査定額・売主負担費用・最終手取り額を分けた書面を取れば、同じ条件で比べられます。
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専門業者へ売った後に起こり得ることと、親族トラブルを抑える対策
専門業者への売却は、話し合いが進まない共有関係から離れる手段になります。一方で、自分の売買が終わった後、残された共有者と買主との間で新しい話し合いが始まります。
買主から家族・親族へ連絡が入ることがある
業者は持分を取得すると、新しい共有者になります。その後、残りの持分の買取、不動産全体の売却、使用料や費用負担の整理などを、ほかの共有者へ提案することがあります。
売主は持分を手放せますが、過去の未払い費用、売却した年の税務、親族との関係まで自動的に消えるわけではありません。また、残された共有者にとっては、見知らぬ第三者との共有が始まります。
協議がまとまらなければ、共有物分割訴訟や競売に進む可能性がある
買主とほかの共有者の協議がまとまらない場合、買主が裁判所へ共有物分割を請求することがあります。裁判所へ請求されたからといって、必ず競売になるわけではありません。
裁判所は、不動産を物理的に分ける方法、1人が取得してほかの共有者へ金銭を支払う方法なども検討します。それらが難しい場合や、分けることで価値が大きく下がる場合には、競売が命じられる可能性があります。
競売で第三者が不動産全体を取得すれば、そこに住む共有者が同じ条件のまま住み続けられず、最終的に退去が必要になることもあります。
ただし、持分を売っただけで、家族が直ちに退去させられるわけではありません。
親族とのトラブルを最小限に抑える4つの対策
買主の「取得後の進め方」を具体的に聞く
- ほかの共有者への最初の連絡は、書面・電話・訪問のどれか
- 最初に提案するのは、残りの持分買取・全体売却・利用条件の整理のどれか
- どのような状況になったら共有物分割を検討するのか
- 居住者や共有者から苦情が出た場合の窓口はどこか
「話し合いで解決します」という抽象的な説明だけでなく、初回連絡から合意できない場合までの流れを聞きます。
説明された方針をメールや確認書に残す
口頭説明だけでは、担当者が変わったときや、後から認識が食い違ったときに確認できません。連絡方法、売主への事前連絡の有無、担当窓口など、合意できた内容を書面に残してもらいましょう。
買主の将来の法的権利をすべて制限できるとは限りません。契約条項として拘束したい内容がある場合は、独立した弁護士に確認してもらうと安心です。
安全に連絡できるなら、共有者へ最後の選択肢を示す
連絡が取れる関係なら、「この金額で第三者への売却を検討している。自分で買いたいなら期限までに回答してほしい」と書面で伝える方法があります。
売却の許可を求めるのではなく、第三者が共有者になる前に、身内で解決する機会を設けるイメージです。価格と期限を明確にすれば、同じ話を何度も繰り返さずに済みます。
直接連絡が危険・苦痛なら、無理をせず専門家を窓口にする
暴言、威圧、DV、長年の深刻な対立がある場合は、「一度は自分で連絡すべき」と無理をする必要はありません。弁護士を窓口にし、共有者への打診や売却条件の整理を任せる方法があります。
査定時に必ず聞くのは、「買った後、家族へ最初にどう連絡しますか」「合意できない場合、どの段階で訴訟を検討しますか」の2つです。回答はメールで残してもらいます。
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あなたに合う方法はどれ?共有者との関係から選ぶ4つの解決策
全員で売るほうが高くなりやすいのは事実です。ただ、「それができないから困っている」という人も多いでしょう。共有者との関係がどこまで保たれているかを基準に、現実的な方法を選びます。
| 共有者との関係 | 選びやすい方法 |
|---|---|
| 普通に話ができる | 共有者全員で不動産全体を売る |
| 資金があり、買い取ってくれそう | ほかの共有者へ自分の持分を売る |
| 音信不通・強い対立があり、直接のやり取りを続けにくい | 専門業者へ自分の持分だけを売る |
| 時間がかかっても、法的に整理したい | 共有物分割を検討する |
話し合えるなら、共有者全員で不動産全体を売る
価格を優先するなら、これが最も高く売れる方法です。買主は土地や建物の所有権をすべて取得できるため、共有持分だけを売る場合より買い手を見つけやすくなります。
ただし、売り出し価格から値下げ、引渡し時期、残置物の処分、費用負担まで、すべて共有者全員で決める必要があります。1人でも反対すると、任意の全体売却は進められません。
共有者に資金があるなら、自分の持分を買ってもらう
ほかの共有者に購入意思と資金があるなら、第三者へ売る前に打診する価値があります。買う側は持分を増やせ、単独所有になれば共有による制約もなくなるため、専門業者より高い価格でまとまる可能性があります。
身内同士でも口約束は避けてください。不動産全体の市場価格、持分割合、利用状況をもとに価格を決め、支払日、登記費用、未払いの税金や修繕費の清算方法を契約書へ残します。
話し合いが難しいなら、専門業者へ持分だけを売る
共有者と連絡が取れない、全体売却に反対されている、関係が悪化して直接交渉を続けられない。こうした場合は、共有持分を扱う買取業者へ売る方法があります。
業者自身が買主になる直接買取なら、一般の買主を探す工程を省けます。一方で、価格は低くなりやすく、売却後には業者とほかの共有者との交渉が始まります。速さだけでなく、手取りと取得後の対応方針を比べてください。
協議で解決できないなら、共有物分割を検討する
共有者同士で合意できないときは、共有物分割を求める方法があります。まずは話し合いで、土地を分ける、1人が不動産を取得してほかの共有者へ金銭を払う、不動産全体を売って代金を分ける、といった解決を目指します。
協議がまとまらない、または協議そのものができない場合は、裁判所へ共有物分割を請求できます。時間と費用がかかり、希望どおりの方法になるとは限らないため、弁護士に見通しを確認してから進めましょう。
「価格」「早さ」「親族との関係」「自分がこれ以上対応できる範囲」のうち、最優先するものを1つ決めましょう。優先順位が決まれば、選ぶ方法も決まります。
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損とトラブルを防ぐ共有持分買取業者の選び方
共有持分は、会社によって査定額と契約条件の差が出やすい取引です。「今日中なら増額する」「今決めないと買えない」と急かされても、その場で署名する必要はありません。
特に見るべきなのは、誰が買うのか、最終的にいくら残るのか、売却後にどう動くのかの3点です。
相談先と実際の買主を確認する
相談した会社自身が買主になる「直接買取」なのか、別会社や投資家を探す「仲介」なのかを最初に確認します。直接買取なら通常は仲介手数料がかかりませんが、仲介なら成約時に手数料が発生することがあります。
契約する会社の正式名称、所在地、代表者、宅地建物取引業の免許番号を確認してください。免許の内容は国土交通省の「宅地建物取引業者検索」で、過去の行政処分は同省の「ネガティブ情報等検索サイト」で調べられます。相談窓口の会社と、契約書に記載された買主が同じかも見ます。
査定額ではなく、最終手取り額と減額条件を見る
査定書には、不動産全体の評価額、持分割合、価格を下げた理由、売主が負担する費用、最終手取り額を分けて書いてもらいます。
「現地調査後に変更する」「社内承認で減額する」といった条件があるなら、いつ価格が確定するのかを確認してください。契約直前や契約後の大幅な減額を避けるため、減額できる条件を限定し、書面に残してもらいましょう。
契約条件と取得後の方針を説明できる会社を選ぶ
共有持分の取引に慣れた会社なら、相続登記、居住・使用状況、費用負担、抵当権などを具体的に確認します。売った後の共有者への連絡や、話し合いがまとまらない場合の方針についても、曖昧にせず説明できるかを見てください。
相続・紛争・税金が絡む場合は、司法書士、弁護士、税理士と連携できるかも重要です。ただし、業者が紹介した専門家だけで判断する必要はありません。対立が強い案件や契約内容に不安がある場合は、利害関係のない専門家にも確認してもらいましょう。
- 契約書のひな形や査定の根拠を事前に見せない
- 契約当日まで買主の会社名や手取り額が確定しない
- 空欄のある書類、内容が分からない委任状への署名を求める
- 決済手順や預り証の説明もなく、登記識別情報や権利証の原本を先に預けるよう求める
- 質問に答えず、「今すぐ」と決断を迫る
- 売却後の共有者への対応を聞いても、説明を避ける
これらに当てはまるからといって、直ちに不正な業者と決まるわけではありません。ただ、理解できないまま進める理由もありません。契約書を持ち帰り、条件が固まってから署名してください。
1社で決める必要はありません。2〜3社へ同じ資料を渡し、「最終手取り額」「減額条件」「決済日」「取得後の対応方針」を同じ項目で書面にしてもらい、並べて比べます。
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相談から現金化までの流れ・必要書類・税金
共有持分の売却で、売主がすべての実務を自分で行うわけではありません。売主が担うのは、資料を集めること、条件を比べること、契約内容を理解して決めることです。物件調査や登記の準備は、業者や司法書士と進めます。
登記事項証明書で、所有者、持分割合、抵当権、差押えを確認します。相続した不動産なら、亡くなった人の名義のままか、遺産分割が済んでいるかも整理します。
立地、建物の状態、利用者、賃貸状況、共有者の人数、費用負担などを伝えます。資料が不足していても相談できますが、情報が多いほど査定の前提が明確になります。
価格が確定する時期、必要な登記、売主の責任、決済日、取得後の共有者への対応を比べます。通常の不動産会社による全体査定も、判断の基準になります。
売買対象、代金、減額条件、費用負担、契約不適合責任、解除条件、違約金を確認します。口頭で説明された条件も、契約書や確認書へ反映してもらいます。
決済日には、一般に売買代金の受領と持分移転登記の申請を同時に進めます。住所変更、相続登記、抵当権抹消などが必要なら、事前または同日に手続きを行います。
売却益が出た場合は、原則として売却した翌年に確定申告をします。特別控除を使う場合も申告が必要です。購入時や相続時の資料は、売却後も保管してください。
査定・契約前に用意したい書類
最初からすべてそろっていなくても相談できます。まずは手元にあるものをまとめてください。
- 登記事項証明書、登記識別情報通知または権利証
- 固定資産税・都市計画税の納税通知書、固定資産評価証明書
- 購入時の売買契約書、領収書、仲介手数料や登記費用の資料
- 戸籍、遺産分割協議書、遺言書などの相続関係書類
- 公図、地積測量図、境界確認書、建物図面
- 賃貸借契約書、賃料の入金記録、管理費・修繕積立金の明細
- 住宅ローンや借入金の残高が分かる資料
- 本人確認書類、印鑑証明書、住民票など
特に、購入時の契約書や領収書は税金の計算に使います。見当たらない場合は、通帳、借入記録、当時の仲介会社、登記関係書類から取得費を確認できないか探します。
主な費用と、契約書で確認すること
- 仲介手数料
- 業者自身が直接買い取る場合は通常かからない。別の買主を紹介する仲介なら発生することがある
- 印紙税
- 紙の不動産売買契約書を作成するときに、契約金額に応じてかかる
- 登記関連費用
- 相続登記、住所・氏名変更、抵当権抹消などに登録免許税や司法書士報酬がかかる。持分移転登記の費用負担は契約で確認する
- 測量・残置物・書類取得費
- 必要な場合に、誰が負担するかを契約で決める
- 専門家報酬
- 弁護士、司法書士、税理士、不動産鑑定士へ依頼した場合にかかる
- 譲渡所得税・住民税
- 売却によって利益が出た場合にかかる
売却した年の固定資産税・都市計画税については、契約上、引渡日を基準に買主と日割り精算することがあります。精算金を受け取った場合は、税務上、譲渡価額に含めて扱う点にも注意が必要です。
税金は売却代金ではなく、売却益をもとに計算する
課税譲渡所得 = 売却代金 −(取得費+譲渡費用)− 適用できる特別控除
取得費に含まれるのは、購入代金や購入時の手数料などです。建物については、所有期間中の減価償却費相当額を差し引いて計算します。取得費が分からない場合は、売却代金の5%を概算取得費として使えることがあります。
譲渡費用は、売るために直接かかった仲介手数料、測量費、売買契約書の印紙代などです。相続登記や住所変更登記の費用がすべて譲渡費用になるわけではないため、税理士へ確認してください。
土地・建物の税率は、売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えるかどうかで変わります。復興特別所得税を含む基本的な合計税率は、長期譲渡所得が20.315%、短期譲渡所得が39.63%です。
相続した持分は、亡くなった人の取得費と取得時期を引き継ぐ
相続した不動産を売る場合は、原則として、亡くなった人が取得したときの購入代金や取得日を引き継ぎます。自分が相続した日から所有期間を数えるわけではありません。
相続税を納めた人が一定期間内に相続財産を売ると、相続税の一部を取得費へ加算できる場合があります。適用期限は、相続開始日の翌日から、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までです。
マイホームの3,000万円特別控除は、相手と条件に注意する
自分が住んでいる家の共有持分を売る場合も、要件を満たせば最高3,000万円の特別控除を使える可能性があります。ただし、親子や夫婦など特別の関係がある人への売却では使えません。居住状況や売却期限などの条件もあり、特例を使うには確定申告が必要です。
親族へ著しく低い価格で売ると、買主が時価との差額を贈与で受けたとみなされる可能性もあります。「時価の何%なら安全」と一律には決められません。客観的な査定と価格を決めた記録を残し、必要に応じて税理士へ確認します。
査定を受けたら、「決済日に受け取る額」と「翌年の税金まで見込んだ実質手取り」を分けて計算しましょう。取得費が不明なら、購入時の契約書を探すだけで税額が大きく変わることがあります。
\ 手取りの計算は、査定額を知ることから /
相続登記・住所変更登記など、売却前に整理したい権利関係
相続した不動産では、「自分に権利があること」と「そのまま売買の登記ができること」は別です。名義や遺産分割が整理されていないと、査定後に契約が止まることがあります。
- 相続登記
2024年4月1日から義務化され、申請は原則3年以内。正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になる可能性がある - 住所・氏名の変更登記
2026年4月1日から義務化され、申請は変更から原則2年以内。正当な理由なく怠ると5万円以下の過料の対象になる可能性がある - 売却準備と合わせて相談できる
登記が済んでいなくても、まず司法書士へ相談し、持分移転までの順番を組めばよい。過度に恐れて放置しないことが大切
亡くなった人の名義のままなら、先に相続登記が必要
亡くなった人の名義のままでは、通常、そのまま買主へ持分移転登記はできません。戸籍や遺産分割協議書などをそろえ、相続登記で現在の所有者を登記へ反映させます。
相続登記は、相続によって不動産を取得したことを知った日から原則3年以内の申請が必要です。2024年4月1日より前に始まった相続も対象で、期限が最も早いケースは2027年3月31日です。
遺産分割前は、「相続分」と「特定の不動産持分」を混同しない
遺産分割が終わる前でも権利の移転が一切できないわけではありません。ただし、相続分そのものを譲る場合、遺産に含まれる特定不動産の持分を譲る場合、遺産分割後に取得した持分を売る場合では、法的な効果と必要な手続きが違います。
「法定相続分が2分の1だから、この実家の2分の1をそのまま売れる」と自己判断すると、遺産分割や登記で問題が生じるおそれがあります。遺産分割前に契約を求められた場合は、署名前に弁護士または司法書士へ確認してください。
2026年4月から、住所・氏名の変更登記も義務化されている
不動産の登記名義人は、住所や氏名が変わった日から2年以内に変更登記を申請する必要があります。2026年4月1日より前の変更も対象で、未登記なら原則として2028年3月31日までに変更登記が必要です。
売却時に登記上の住所・氏名と現在の情報が違う場合は、持分移転登記の前提として変更手続きを求められることがあります。売却準備と合わせて司法書士へ相談すれば、必要な順番を整理できます。
相続人の所在や判断能力によっては、追加手続きが必要
相続人の一部と連絡が取れない場合、認知症などで意思確認が難しい場合、未成年者や海外に住む相続人がいる場合は、不動産全体の売却や遺産分割に追加の手続きが必要です。
自分の持分だけを売る方法が使える場合でも、先に権利関係を整理したほうが手取りや契約条件がよくなることがあります。相続関係が複雑なほど、契約前の確認が重要です。
| 相談先 | 任せられる内容 |
|---|---|
| 弁護士 | 共有者との対立、交渉代理、共有物分割、契約トラブル |
| 司法書士 | 相続登記、住所・氏名変更、抵当権抹消、持分移転登記 |
| 税理士 | 譲渡所得、取得費、相続税の取得費加算、親族間の低額売買 |
| 不動産鑑定士 | 持分価格について争いがあり、客観的な評価が必要な場合 |
登記名義、現在の住所・氏名、遺産分割の有無を確認し、1つでも不明点があれば契約前に司法書士へ相談しましょう。登記を後回しにしたまま、高額な違約金のある契約を結ばないことが大切です。
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共有持分の買取に関するよくある質問
相談前に多く寄せられる質問をまとめました。
共有持分の買取は、「いくら残るか」と「売った後」を並べて決める
自分が持つ共有持分だけなら、原則としてほかの共有者の同意なしで売却できます。全体売却の合意が取れず、共有関係から離れたい人にとって、専門業者への買取は実際に使える方法です。
一方で、持分だけの買取価格は持分相当額より低くなりやすく、売却後は買主と家族・親族との交渉が始まる可能性があります。高い査定額だけで決めず、最終手取り額、減額条件、契約内容、取得後の対応方針を並べて比べることが大切です。
- 登記事項証明書で、所有者・持分割合・抵当権などを確認する
- 通常の不動産会社から、不動産全体の査定を取る
- 安全に連絡できるなら、ほかの共有者に購入意思を一度だけ確認する
- 専門業者を使うなら2〜3社から書面査定を取り、手取り額と取得後の方針を比べる
- 相続・紛争・税金に不明点があれば、契約前に該当する専門家へ確認する
親族との関係やお金の事情は、同じ共有不動産でも人によって違います。「最も高く売れる方法」だけでなく、これ以上抱えられる手間や精神的な負担も含めて、自分が納得できる出口を選んでください。
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出典・参考資料
法令・制度・税務に関する記載は、2026年8月6日時点で、次の公的資料などを確認しています。共有持分の価格目安には公的な平均統計がないため、複数の民間資料も参照し、目安であることを本文に明記しています。
- e-Gov法令検索「民法」(共有物の使用・変更・管理、共有物分割など)
- e-Gov法令検索「農地法」(農地の権利移転に関する許可など)
- 裁判所「形式的競売」
- 法務省「相続登記の申請義務化について」
- 法務省「住所等変更登記の義務化特設ページ」
- 国土交通省「宅地建物取引業者検索」
- 国土交通省「ネガティブ情報等検索サイト/宅地建物取引業者」
- 国税庁 タックスアンサー No.3202「譲渡所得の計算のしかた(分離課税)」
- 国税庁 タックスアンサー No.3208「長期譲渡所得の税額の計算」
- 国税庁 タックスアンサー No.3211「短期譲渡所得の税額の計算」
- 国税庁 タックスアンサー No.3258「取得費が分からないとき」
- 国税庁 タックスアンサー No.3255「譲渡費用となるもの」
- 国税庁 タックスアンサー No.3270「相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期」
- 国税庁 タックスアンサー No.3267「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」
- 国税庁 タックスアンサー No.3302「マイホームを売ったときの特例」
- 国税庁 タックスアンサー No.3308「共有のマイホームを売ったとき」
- 国税庁 タックスアンサー No.4423「個人から著しく低い価額で財産を譲り受けたとき」
- 国税庁 タックスアンサー No.7108「不動産の譲渡に関する契約書の印紙税軽減措置」
- 国税庁「未経過固定資産税等に相当する額の支払を受けた場合」
- 辻・本郷 税理士法人「共有名義不動産や持分のみの売却相場はいくら?」(民間資料による価格目安)
- 一般社団法人共有持分支援協会「共有持分の売却相場」(民間資料による価格目安)
- 丸の内AMS「共有持分の売却相場は?」(民間資料による価格目安)

