築50年を超えている。雨漏りがある。家財が残ったまま。こうした家でも、売れることはあります。
買主が見ているのは、建物の新しさだけではないからです。手入れすれば住めるなら中古住宅として、建物は使いにくくても土地に需要があれば古家付き土地として、傷みや片付けまで引き受けられる不動産会社なら買取として、それぞれ検討されます。
逆に、見た目はさほど傷んでいないのに売りにくい家もあります。名義が整理されていない、建て替えができない、かかる費用やリスクが需要に見合わない、といった場合です。
つまり、最初に確かめるのは「この家を直すべきか」ではありません。建物・土地・不動産会社の買取のうち、どこに価値が残っているかです。ここがはっきりすれば、誰に向けて売り出すか、買取も候補に入れるか、解体を考えるかの順序も決まります。
この記事でいう「ボロ家」は、古さや傷みが目立つ一戸建てのことです。法律で決まった呼び方ではありません。
倒壊や落下の危険がなければ、解体・大規模リフォーム・家財(残置物)の一括処分に手をつける前に、今の状態が分かる写真と、分かる範囲の不具合をまとめます。その同じ情報を各社へ渡し、「建物を生かす仲介」「土地としての仲介」「今のままの買取」の3つが成り立つかを聞いてみてください。
ボロ家の売却は「価値が残る場所」を探すところから始まる
築年数が古いほど、建物が傷んでいる可能性は高くなります。ただし、築年数だけを見て、不動産全体の価値までゼロと決めるのは早すぎます。
国土交通省も、中古戸建てには「建物の状態を問わず、築20〜25年ほどで価値をゼロとみなす」という評価の慣行があったと指摘し、手入れやリフォームの状態を評価へ反映すべきだという考え方を示しています。税金の計算に使う耐用年数も、その家の市場価値や、実際にあと何年使えるかとは別のものです。
ボロ家の価値は、次の3つに分けて考えると見落としにくくなります。
| 価値が残る場所 | 買主が確かめること | 合いやすい売り方 |
|---|---|---|
| 建物を使う価値 | 構造、傾き、雨漏り、耐震性、設備、修繕履歴、間取り、立地 | 中古住宅として仲介 |
| 土地を使う価値 | 道路への接し方、建て替えの可否、面積、形、境界、建築ルール、周辺の土地需要 | 古家付き土地として仲介。条件が整えば更地売却も検討 |
| 不動産会社が買って生かす価値 | 買った後の修繕・解体・名義や境界を整理する費用、売り先、売れるまでの期間、事業上のリスク | 不動産会社による直接買取 |
建物をそのまま使う価値が小さくても、土地に需要があれば売却の可能性は残ります。一般の買主には扱いにくい家でも、その地域や物件に合う修繕・再販売の手立てを持つ買取会社なら、買い取れることがあります。
ただし、どこかに価値が残っていれば必ず売れる、というわけではありません。修繕、解体、測量、家財の処分、名義や境界の整理、そして売れるまで持ち続ける費用。これらが残った価値を上回れば、買主は手を出せません。買主がどんな使い道を描けて、それをいくらで実現できるのか。ここまで見えて、はじめて売り方を選べます。
ボロ家売却の進路が分かる「4段階診断」
いきなり「仲介か買取か」の二択で考えると、かえって迷います。安全に入れるか、名義や相続の手続きが済んでいるか、建物と土地のどちらに価値が残るか、自分は何を優先したいか。この順に確かめると、相談先が絞れます。
危険があれば、査定も片付けも後回しにします。
名義を買主へ移せる状態かどうかが、ここで決まります。
建物として売るのか、土地として売るのかが分かれます。
同じ家でも、ここが違えば選ぶ相手が変わります。
第1段階:安全に建物へ入れるか
最優先は価格ではなく安全です。次のような状態なら、内覧の準備や片付けを自分で進めず、建物に入らない判断も必要になります。
- 柱や床が大きく傾き、歩くと沈む
- 屋根、外壁、軒、ブロック塀が落ちそう
- 火災や浸水のあとで、電気・ガス・衛生状態を確認できていない
- 害虫、害獣、腐敗物、注射針などの危険物がある
- 倒木や部材が道路・隣地へ落ちるおそれがある
この場合は立ち入りを制限し、自治体の空き家担当窓口や建築士、必要に応じて消防・警察や専門業者へ相談してください。危険を取り除く応急措置は、売却の準備より先です。
第2段階:名義と登記を確かめる
古い家ほど、相続や増築を重ねるうちに、実際の建物と登記の内容がずれていることがあります。査定そのものは受けられても、名義や権利を整理できなければ、家を買主の名義へ移せません。
土地と建物の登記事項証明書を取り、少なくとも次を確認します。
- 土地と建物の名義人、共有持分
- 登記に載っている住所・氏名が、今のものと一致しているか
- 住宅ローンなどの担保として付く抵当権や、差押えの記載
- 登記に書かれた建物の種類・構造・床面積が、実際の建物と合っているか
- 未登記の建物や増築部分がないか
- 相続人は誰か、遺産分割は済んでいるか
相続登記は2024年4月1日から義務になりました。原則として、不動産を相続したと知った日から3年以内に申請します。施行前にすでに相続で取得したと知っていた場合は、原則2027年3月31日が期限です。相続人申告登記という簡単な手続きもありますが、これは義務をいったん果たすための制度で、売却時の名義変更まではできません。
2026年4月1日からは、所有者の住所・氏名が変わったときの登記も義務になりました。変更の日から2年以内、施行前の変更は原則2028年3月31日までに申請します。登記上の住所や氏名が今と違うなら、司法書士などに必要な手順を確認してください。
未登記、共有、相続の未了が見つかったら、不動産会社に加えて、登記を扱う司法書士や、土地・建物の測量と表示登記を扱う土地家屋調査士へ相談します。分からないまま工事や売買契約へ進まないでください。
第3段階:建物と土地のどちらに価値が残るか
建物として売るか、土地として売るか。同じ家でも、ここが変われば買主も価格の考え方も変わります。だから、両方を分けて見ます。
建物では、傾き、雨漏り、腐食、シロアリ、基礎、給排水、耐震性、増改築の履歴を見ます。売主に判断できない部分まで「問題なし」と書く必要はありません。分かっていることと、分からないことを分けて記録すれば十分です。
土地でとくに重要なのは、道路への接し方(接道)と、建て替えができるかどうかです。都市計画区域などでは、土地が原則として建築基準法上の道路に2m以上接している必要があります。
今そこに家が建っているのだから大丈夫、とは限りません。同じ家を建て直せない土地もあります。反対に、道幅が4m未満でも法律上の道路として扱われる場合や、個別に認定・許可を受けられる場合もあります。
どちらも現地の見た目では分かりません。自治体の建築指導窓口で、道路の種類、道路に接している長さ、道路境界を後退させる必要があるか、例外が認められるかを確認してください。
第4段階:価格・期限・負担の何を優先するか
同じ家でも、売主の事情によって選ぶ道は変わります。
- 高く売れる可能性を試す時間があるか
- 毎月の管理、保険、税金、交通費をいつまで負担できるか
- 解体や修繕の費用を先に出せるか
- 家財の片付けや、境界の確認に対応できるか
- 相続、転居、施設費用などで入金の期限が決まっているか
- 引渡し後の責任をどこまで契約で調整したいか
期限が短いから買取、時間があるから仲介、と機械的に決まるものではありません。それでも優先順位を先に言葉にしておけば、金額だけが高く、期限や自分の負担が合わない提案を選びにくくなります。
診断結果から最初の相談先を選ぶ
| 確認できた状態 | 最初に検討しやすい進路 |
|---|---|
| 安全で、建物をまだ使えそう | 中古戸建ての販売経験がある仲介会社へ。必要なら建物状況調査の効果と費用も確認 |
| 建物は使いにくいが、土地の需要があり、建て替えもできそう | 古家付き土地を扱う仲介会社へ。古家を残す案と解体後の案を分けて査定 |
| 傷みが強い、家財が多く残っている、期限が短い | 今のままの買取を扱う会社も含め、売主と買主の負担を書面で比較 |
| 建て替えや権利に分からない点がある | 先に自治体、司法書士、土地家屋調査士などで論点を確認し、その条件を扱える会社へ |
| 地域の売買市場では反応が薄そうだが、移住・改修の需要はありそう | 仲介や買取と並行し、自治体の空き家バンクの対象条件を確認 |
これは成約を約束する表ではありません。同じ地域でも、会社によって得意な買主層や再生の手立ては違います。一社に断られても、物件そのものが売れないとは限りません。
築50年の家でも買取は可能|年数より「買った後」が見られる
築50年の家でも、買取の対象になることはあります。ただし、築年数だけでは決まりません。
買取会社は、買った家を直して売る、貸す、建物を壊して土地を売る、といった出口を考えます。そのため、主に見られるのは次の点です。
- 土地・中古住宅としての地域の需要
- 道路への接し方、建て替えの可否、建築ルール
- 雨漏り、傾き、腐食、シロアリ、設備の状態
- 修繕、耐震、解体、家財の処分にかかる見込み費用
- 境界、塀や屋根が隣地にはみ出す越境、未登記、相続など未確認の事項
- 売れるまでにかかる税金、金利、管理費、販売費
- その会社が持つ買主とのつながりや、修繕・再販売の経験
条件が厳しいほど価格は下がりやすく、買取できないと判断されることもあります。一方で、建物の傷みが強くても、土地の需要が高い、建て替えしやすい、その会社が得意な再生方法に合う、といった理由で買取候補になることもあります。
なお、「買取価格は仲介の何割」という全国共通の目安はありません。仲介の査定は一般の買主に売れると見込む価格、買取の提示額は不動産会社が自ら買う条件です。そもそも性質の違う数字なので、割合で比べても意味がありません。
比べるときは、仲介の売出価格ではなく、根拠のある成約予想価格(実際に売れると見込む価格)を使います。買取では、引渡しまでに売主が負担する費用と、あとから減額される条件まで確認します。
ボロ家の売り方は3つ|「誰に」「どの状態で」見せるか
解体やリフォームは、売り方そのものではありません。売り方は大きく2つで、仲介で一般の買主を探すか、不動産会社に直接買ってもらうかです。そして仲介のなかで、建物を中古住宅として見せるか、土地の使いみちを中心に見せるかが分かれます。
| 比べる軸 | 中古住宅として仲介 | 古家付き土地として仲介 | 不動産会社による直接買取 |
|---|---|---|---|
| 想定する買主 | 直しながら建物を使う個人など | 土地利用や建て替えを考える個人・法人など | 再販売、賃貸、解体後の土地売却などを行う不動産会社 |
| 価格の見方 | 建物の状態と土地の両方を踏まえた成約予想 | 土地の需要から、解体費や未確認の条件を差し引いた成約予想 | 再生・再販売の費用と事業リスクを織り込んだ買取提示 |
| 売主が先に負担するもの | 調査や部分修繕を求められる場合がある | 測量、家財の片付け、解体条件などを求められる場合がある | 今のままで調整できる場合があるが、会社・契約による |
| いつ売れるかの読みやすさ | 買主が見つかるまで確定しない | 土地の需要と条件整理の進み方に左右される | 買取の可否と条件が決まれば日程を組みやすい |
| 合いにくいケース | 安全に内覧できない、使いみちを説明できない | 土地の需要が弱い、建て替えや名義・境界に未確認の点が多い | 買った後の使いみちを描けず、費用とリスクが価値を上回る |
どれが高く早く売れるか、決まっているわけではありません。査定を受けたら、担当者がこの表のどの買主を想定したのかを聞いてみてください。
建物を使う買主へ仲介で売る
建物をまだ使えて、どこまで直すかを買主が判断できるなら、中古住宅として売り出す方法があります。売主が全面改修して仕様を決めてしまうより、今の状態と修繕の履歴を開示し、買主に予算を組んでもらうほうが合う物件もあります。
建物状況調査(インスペクション)は、講習を修了した建築士が、柱や基礎など構造上重要な部分と、雨水の浸入を防ぐ部分の状態を調べるものです。必ず行わなければならないものではなく、法律に適合していることや欠陥がないことを保証する検査でもありません。費用をかける前に、その結果が売り出し方や買主の判断に役立つのかを仲介会社へ確認しましょう。
古家付き土地として、土地を使う買主へ仲介で売る
建物の使いみちを前面に出しにくくても、古家を残したまま、土地の利用を中心に売ることはできます。このとき、買主が建物を使うのか壊すのかを、広告と契約であいまいにしてはいけません。
先に古家を壊すと、建て替えに制約がある土地では、今の建物を使うという選択肢まで失いかねません。解体費を回収できるとも限りません。古家付きの場合と更地の場合それぞれの成約予想、工事費、工事後の税負担を確かめてから判断します。
古家付きで買主を募り、契約が決まってから売主が解体して引き渡す「更地渡し」もあります。この場合は、解体の範囲、地中に埋まった物や井戸の扱い、追加費用、工事が遅れたときの対応を契約に書き込みます。
不動産会社へ今のまま直接売る
直接買取では、不動産会社が買主になります。一般の買主を募る販売活動を省けるため、家財や修繕もまとめて条件を決められる場合は、管理の負担を早く終えたい売主と相性があります。
ただし、「今のまま買取」と書かれているだけでは、条件は分かりません。測量、家財、登記、解体、そして契約と違う状態で引き渡したときの売主の責任(契約不適合責任)を、どこまで買主が引き受けるのか。これは契約ごとに違います。買取会社が買主だからといって、自動的に売主の責任がなくなるわけでもありません。
また、直接取引なら通常は仲介手数料がかかりませんが、別の会社が仲介に入る取引では手数料が発生します。「直接の買取か」「仲介する会社はいるか」を確認しましょう。
空き家バンクは地域との接点を増やす補助ルート
自治体の空き家バンクは、その地域で空き家を使いたい人へ情報を届ける選択肢です。通常の売買市場では出会いにくい移住希望者や、改修して住みたい人へ届くことがあります。
一方で、登録できる物件、使える人、手続き、交渉や契約に自治体がどこまで関わるかは地域によって違います。登録すれば売れる制度でも、全国どこでも無料の制度でもありません。所在地の自治体で対象条件を確認し、必要なら宅建業者による契約のサポートも検討します。
ボロ家の傷み方別|査定で伝えること
「ボロボロです」の一言でまとめると、会社ごとに見立てがばらつきます。状態を項目に分けて伝えると、建物利用・土地利用・買取のどれを想定した査定なのかも見えてきます。
| 状態 | 先に記録・確認すること | 査定で尋ねること |
|---|---|---|
| 雨漏り・染み | 場所、いつからか、修繕の履歴、今も続いているか | 原因調査や応急修繕を先にすると販売条件が変わるか |
| 傾き・床の沈み | 気づいた時期、範囲、建具の開け閉め、調査歴 | 建物を使う前提か、土地・買取として見るか |
| シロアリ・腐食 | 被害箇所、処理の履歴、保証書 | 追加調査が必要か、費用は誰が負担するか |
| 残った家財・遺品 | 持ち主、残す物、危険物、処分してよいか | 引渡しまでに何を撤去するか、家財を残したままの価格か |
| 増築・車庫・物置 | 登記、確認済証、図面、建てた時期 | 実際の建物と登記の食い違いを誰がどう整理するか |
| 境界不明・越境 | 測量図、境界標、覚書、隣地とのやり取り | 確定測量や越境の解消を売主の条件とするか |
| 建て替えに不安 | 道路の種別、接している長さ、セットバック、役所への相談記録 | どの使いみちと買主層を想定しているか |
写真は外観だけでなく、各部屋、天井や床の傷み、設備、庭、前面道路まで撮ります。ただし、危険な建物へ撮影のために入る必要はありません。
ボロ家の査定前に始めないほうがよいこと
きれいにしてから売り出す。一見、正しい順序に思えます。ところがボロ家では、先にお金をかけるほど選択肢が増えるとは限りません。
自己判断で解体する
解体して土地の価格が上がっても、その上がった分が、解体費、測量費、追加工事費、売れるまで持ち続ける費用を上回るとは限りません。接道や建て替えの可否を確認せずに壊せば、今の建物を使うという選択肢まで消えてしまいます。
固定資産税などは、原則として毎年1月1日時点の状態で計算されます。住宅を解体して翌年1月1日に更地であれば、原則として土地の住宅用地特例は使えません。一方で、翌年度からは解体した家屋分の税金がなくなるため、税額全体が一律に何倍になるとは言えません。所在地の市区町村で、解体後の見込み額を確認してください。
建物の解体・改修工事では、原則として規模にかかわらず石綿(アスベスト)の事前調査が必要です。このうち建物の調査は、2023年10月から原則として必要な知識を持つ有資格者が行うこととされています。行政への調査結果の報告は、一定規模以上の工事が対象です。見積もりでは、調査、報告・届出、除去、地中に埋まった物などの追加条件も確認してください。
全面リフォームや耐震工事を先に決める
工事費をそのまま売却価格へ上乗せできる保証はありません。買主が解体するつもりなら、売主の工事は価格にほとんど反映されません。建物利用の需要、必要な工事の範囲、工事後の成約予想を確かめてから決めます。
家財をすべて処分する
仲介では引渡しまでの撤去を求められることが多い一方、買取では家財を残したまま条件を組める場合があります。先に一括処分すると、手元に残すべき物や、自分に処分する権限がない物まで捨てるおそれもあります。貴重品、権利証、通帳、写真、遺言書などを確保し、処分してよいかを確かめてから範囲を決めます。
不具合を隠す、見た目だけを直す
染みを塗装で隠しても、雨漏りの事実は消えません。把握している不具合や修繕の履歴をまとめ、原因が分からなければ「不明」と伝えます。そして、開示した内容を物件状況報告書や売買契約書の条件へつなげることが重要です。
一社の高い数字だけで工事や契約を決める
高い査定額は、その価格で売れる約束ではありません。その数字が仲介の売出提案なのか、成約予想なのか、買取の確定額なのかを区別します。工事を前提とする提案なら、その費用を誰が出し、価格にどれくらい反映すると見込んでいるのかも確かめます。
同じ条件で査定を取るための「1枚メモ」
会社ごとに伝える情報が違えば、査定額を並べても比較になりません。完璧な資料でなくてかまわないので、分かる範囲を一枚にまとめ、各社へ同じ内容を渡します。
コピーして使える査定条件メモ
【物件】 所在地: 土地面積/建物面積: 築年・構造: 今の使い方(居住中/空き家/賃貸中): 【安全・建物の状態】 立ち入りできる状態か: 雨漏り・傾き・腐食・シロアリ: 火災・浸水などの履歴: 修繕・増改築の履歴: 分からないこと: 【土地・権利】 土地と建物の名義: 相続・共有・抵当権: 登記と実際の建物の食い違い: 境界・越境: 前面道路・建て替え可否の確認状況: 【残す物】 家財・庭木・物置・井戸・浄化槽など: 引渡しまでに売主ができること: 【希望】 売却したい時期: 先に出せる費用: 価格・期限・片付け・引渡し後の責任の優先順位: 【提案してほしい内容】 1. 建物を使う前提の仲介での成約予想と、その根拠 2. 古家付き土地としての仲介での成約予想と、その根拠 3. 今のままの買取の可否、最終価格、売主の負担 4. 解体・修繕・測量が必要なら、着手前と着手後で何が変わるか
「前面道路は問題なし」「雨漏りなし」のように推測で埋めず、確認していない項目はそのまま空欄か「未確認」と書きます。そのうえで査定の担当者に、どこまでを確認済みの事実として扱い、まだ確かめていない点をどう価格へ反映したのかを説明してもらいましょう。
記入すると判断がどう変わるか|仮想例
以下はメモの使い方を示す架空の例です。金額や期間は相場を示すものではありません。
【物件】 郊外の住宅地/土地145㎡/木造85㎡/1974年築/空き家4年 【安全・建物の状態】 玄関から1階までは立ち入り可。2階天井に雨染みあり。 大きな傾きは未確認。給湯器は故障。修繕記録なし。 【土地・権利】 相続登記済みの単独名義。抵当権なし。 古い測量図はあるが、境界標を一部確認できない。 前面道路は、幅4m未満でも法律上の道路として扱う「2項道路」だと役所で確認。 道路境界を後退させた後の建築計画は未確認。 【残す物】 家具が2部屋分、庭に物置1棟。売主による全撤去は難しい。 【希望】 6カ月以内の売却を希望。先に出せる費用は50万円まで。 優先したいのは「追加負担が読めること→期限→価格」の順。 【受け取った提案】 A社・中古住宅仲介: 成約予想680万円。売り出す前に建物状況調査を提案。 家財は売主が撤去。売出価格780万円、想定期間6~9カ月。 B社・古家付き土地仲介: 成約予想620万円。建物は今のまま募集。 境界確認の費用は売主負担。想定期間4~8カ月。 C社・直接買取: 現地確認後の提示470万円。家財と境界は今のまま引き受け。 あとから金額を下げる追加調査はないとの説明。 契約と違う状態で引き渡したときの売主の責任(契約不適合責任)の 対象と期間は、契約書で別途確認。 1カ月後に決済可能。
ここでA社の780万円とC社の470万円を並べても、比較になりません。A社の780万円は売出価格で、成約予想は680万円です。しかも建物状況調査、家財の撤去、売れるまでの管理は売主側に残ります。C社は金額こそ低いものの、家財と境界を引き受ける条件が明記されています。
この売主の希望は「先に出せるのは50万円まで、6カ月以内に売りたい」でした。であれば、まずB社に境界確認の費用と売れるまでの負担を金額で出してもらい、希望に収まらなければC社と比べる。そんな順序が見えてきます。A社案も、建物状況調査の結果と費用が分かるまでは外しません。メモは最高額を選ぶためではなく、あとから費用や遅れを生みそうな「まだ確かめていないこと」を見つけるために使うものです。
回答を受け取ったら、金額より先に見る欄
| 確認欄 | 質問の例 |
|---|---|
| 金額の種類 | 「売出価格、成約予想価格、買取価格のどれですか」 |
| 買主の想定 | 「建物を使う人、土地を使う人、買い取って再販売する不動産会社の誰を想定していますか」 |
| 売主が先に負担するもの | 「契約前に解体、片付け、測量、登記の整理が必要ですか」 |
| 提示価格が変わる条件 | 「調査後や契約の前後で、減額や解除になる条件は何ですか」 |
| 引渡し条件 | 「家財、境界、越境、設備、地中の埋設物は誰が対応しますか」 |
| 契約後の責任 | 「契約不適合責任を、どの項目について、いつまで負いますか」 |
| 入金時期 | 「契約、手付金、残代金、引渡しの予定日はいつですか」 |
| 費用 | 「仲介手数料、登記、測量、処分、解体などの売主負担はいくらですか」 |
ボロ家は査定額より「最終条件」で比べる
ボロ家では、提示価格だけでなく、修繕、解体、測量、登記、片付け、売れるまでの管理にいくらかかるかで結果が変わります。比べるときは、少なくとも次の形までそろえます。
成約予想価格または買取価格
- 売主が負担する仲介・登記・測量・工事・処分などの費用
- 売れるまで家を持ち続ける費用
- ローン返済額
住宅ローンの残りは手元に残る金額を減らしますが、売却益(譲渡所得)を計算するときに差し引ける費用ではありません。売却益にかかる所得税・住民税も、購入代金などの取得費、所有期間、使える特例によって変わります。そのため、税金は売り方の費用比較とは分けて試算します。
不動産会社には、土地と建物を含む近隣の取引と、土地だけの近隣の取引をどう使ったのかを尋ねます。国土交通省の「不動産情報ライブラリ」でも実際の取引価格を見られますが、道路、形、面積、時期、個別の事情が違うため、公表事例だけで自宅の価格は決まりません。
売却価格が低いときは、仲介手数料の扱いにも注意が必要です。800万円以下の宅地・建物には、媒介契約(仲介を依頼する契約)を結ぶときに説明を受け、依頼者が合意すれば、通常の計算式を超えて、一方の依頼者から税込33万円まで受け取れる特例があります。価格が低いほど手取りへの影響が大きいので、媒介契約を結ぶ前に金額を確認してください。
「今のまま売る」と「責任を負わない」は別の話
ボロ家の契約では、「古い家だから」「今の状態のまま」の一言で済ませてはいけません。どの状態を前提に売買するのかを、具体的に決めておきます。
引き渡した土地・建物が、契約で決めた種類、品質、数量に合っていない場合、買主は状況に応じて、修理などの対応(追完)、代金の減額、損害賠償、契約の解除を求められます。これが契約不適合責任です。
個人が売主の売買でも、この責任の範囲や期間は特約で調整できます。ただし、売主が知っていながら買主へ伝えなかった事実については、責任を負わないとする特約(免責特約)があっても責任を免れません。買主が不具合を売主へ知らせる期間についても、「引渡しから1年で必ず終わる」と決まっているわけではありません。
そこで、契約前に次の3段階をそろえます。
雨漏り、傾き、シロアリ、修繕、増改築、越境、境界、石綿(アスベスト)調査など、分かる事実と不明な点を整理します。
口頭だけで済ませず、告知書や物件状況報告書へ具体的に書きます。
何を今のまま引き渡すのか、誰が何を負担するのか、責任の対象と期間を契約書で確認します。
告知書には、法律で決まった全国共通の様式はありません。それでも国土交通省は、売主にしか分からない履歴や状態について告知書を出してもらい、買主へ渡すことが望ましいとしています。「古い家なので一切不明」で済ませず、分からない項目は「不明」と書き、把握している事実は隠さず書きます。
ボロ家を売るまでの流れ|安全確認から契約条件まで
実際の売却は、安全確認から始め、資料と権利、複数の見立て、契約条件の順に固めていきます。
外から撮れる範囲で写真を残します。倒壊、落下、火災、衛生上の危険があれば立ち入りを止め、自治体や専門家へ相談します。
登記事項証明書、固定資産税の課税明細書、購入時の契約書、図面、測量図、修繕記録を探します。見つからない資料と未確認の点も、あわせて書き出します。
道路への接し方と建て替えの可否は自治体、登記は司法書士・土地家屋調査士、税は税務署や税理士へ確認します。
建物を使う仲介、土地としての仲介、今のままの買取。どれを想定した提案なのかを聞きます。
実際に売れると見込む価格、売主の負担、期間を比べ、残す物、費用、引渡し後の責任を書面で定めます。
代金の受け取りと引渡し(決済)では、売買代金の残りを受け取り、買主への名義変更と、鍵・書類の引渡しを行います。利益が出た場合だけでなく、特例を使う場合にも確定申告が必要なことがあります。契約書や費用の領収書は、申告まで保管してください。
売れないときは、値下げの前に「止まった場所」を変える
反応がないとき、まず思いつく手は値下げです。ただ、そもそも買主へ届いていないのか、届いても使いみちが伝わらないのか、契約条件で止まっているのか。どこで止まったかによって、直すべき場所は変わります。
| 止まった場所 | 見直す内容 |
|---|---|
| 査定を断られる | 対応地域外か、その物件種別が不得意か、買った後の使いみちがないのか理由を聞き、専門分野の違う会社へ |
| 広告を見てもらえない | 写真、価格帯、物件種別、広告を出す地域の範囲、空き家バンクなど、届け先を見直す |
| 問い合わせはあるが内覧されない | 危険性、立ち入り方法、残った家財、建物調査の有無、土地資料の見せ方を確認 |
| 内覧後に進まない | 修繕・解体費、建て替えの可否、境界など、買主が判断できずにいる項目を整理 |
| 申込み後に止まる | 住宅ローン、契約不適合責任、測量、家財、価格の調整条件を確認 |
| 買取価格に納得できない | 価格から差し引かれる費用と、買った後の販売計画の説明を受け、得意分野の違う会社の条件と比較 |
同じやり方のまま値下げを重ねるより、まず買主層を変えられないかを考えます。建物として見せるのをやめて土地へ切り替える、仲介だけでなく買取も検討する、空き家バンクで地域外の買主へ届ける、といった手です。
空き家として放置する前に知っておきたい制度
すぐに売らない場合も、管理は続きます。管理が足りず、このまま放置すると周辺へ深刻な影響を及ぼすおそれがある空き家は「管理不全空家等」、倒壊の危険や衛生上の問題がある空き家は「特定空家等」と判断され、自治体から指導や勧告を受けることがあります。
住宅が建つ土地の固定資産税などを軽くする制度(住宅用地特例)から外れるのは、単に家が古い、空き家になった、管理不全空家と判断された、というだけではありません。空家等対策特別措置法にもとづく勧告を受けた敷地が対象外になります。
また、構造上すでに住宅とは認めにくいなど、そもそも住宅用地に当たらないと判断される場合もあります。いずれにせよ、税額が一律に6倍になるわけではありません。自治体から通知が届いたら放置せず、求められた措置と期限を確認してください。
自治体によっては、危険な空き家の解体や改修に補助制度があります。ただし、対象、補助率、上限、事前申請、指定業者などの条件は地域ごとに異なります。工事契約や着工のあとでは申請できない制度もあるため、所在地の自治体の公式サイトと窓口で先に確認してください。
相続したボロ家は、売る時期と税の条件を先に確認する
相続した古い空き家には、一定の要件を満たすと、家を売った利益(譲渡所得)から最高3,000万円を差し引ける特例があります。売却代金から3,000万円を引く制度ではない点に注意してください。
主な対象は、1981年5月31日以前に建てられ、分譲マンションのような区分所有建物ではなく、相続が始まる直前まで亡くなった人(被相続人)が一人で住んでいた家屋などです。
亡くなった人が老人ホームなどへ入所していた場合も、要介護認定、家財の保管、利用状況などの要件を満たせば対象になることがあります。ほかにも、売却代金が1億円以下であること、相続後に貸したり住んだりしていないことなどの条件があります。
制度そのものの適用期限は2027年12月31日です。ただし個々の売却には、それとは別に「相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで」という期限があります。
2024年1月1日以後の売却では、要件を満たせば、売却した翌年2月15日までに買主が耐震改修するか、建物を全部取り壊す方法も対象になり得ます。つまり、売主が必ず売却前に解体しなければならないわけではありません。
この場合の特約は法律上の必須要件ではありませんが、買主の協力を得られずに特例を使えなくなる事態を避けるため、工事の期限や必要書類への協力を契約で明確にしておくことが重要です。適用には、工事完了を示す書類、市区町村の確認書、確定申告などが必要です。相続人が3人以上の場合の控除上限など個別の条件もあるため、解体や契約の前に税務署または税理士へ確認してください。
ボロ家の売却でよくある疑問
住めないほどボロボロでも売れますか?
売れる可能性はあります。建物を使えなくても土地に需要がある場合や、不動産会社が解体や修繕まで含めて採算を見込める場合があるためです。ただし、需要より費用や法律上の制約が大きければ、買取を含めて売れないこともあります。危険な家には入らず、土地の条件と今の状態を扱える会社へ相談してください。
家財やごみを残したまま買取してもらえますか?
家財を残したまま査定する会社はありますが、すべての会社が引き受けるわけではありません。何を残せるか、危険物や貴重品はないか、所有権を誰が放棄するか、処分費を価格から差し引くのかを、契約前に確認します。
再建築不可の家は売れませんか?
売買そのものが禁止されるわけではありません。今の建物を使う、隣地の所有者が買う、不動産会社が買い取る、といった可能性があります。一方で、買主の使い方や住宅ローンが制限されるため、価格や売却期間には影響しやすくなります。道路の見た目だけで再建築不可と決めつけず、自治体で確認した結果を買主へ伝えます。
一社に査定や買取を断られたら、もう売れませんか?
一社に断られただけでは判断できません。対応地域外、建物の再生が不得意、土地の買い手を見つけにくい、権利や道路を確認できない。理由はさまざまです。何が障害だったのかを聞き、別の買主層や再生方法を持つ会社でも同じ理由になるのかを確かめます。
まとめ|工事の前に、ボロ家の価値が残る場所を確かめる
ボロ家は、古いから売れないのではありません。建物を使う、土地を使う、不動産会社が直したり壊したりして生かす。どの道でも、見込める価値より費用とリスクが上回ったときに、売却が難しくなります。
ですから、いきなり解体や全面リフォームへ進む必要はありません。危険がなければ、今の状態と分かっている不具合を一枚にまとめ、同じ条件で複数の見立てを取ります。
- 建物を使う買主へ、仲介で売れるか
- 古家付き土地として、土地の需要へつなげられるか
- 今のままの買取なら、何をどこまで引き受けてもらえるか
この3点への答えと、最終的に自分が負担する金額を並べれば、価格だけでは見えなかった進路が見えてきます。
主要な根拠資料
以下は、いずれも2026年7月24日に内容を確認しました。
- 中古戸建て住宅に係る建物評価の改善に向けた指針(国土交通省) — 築年数だけに偏らない建物評価
- 建築基準法(e-Gov法令検索) — 第42条の道路、第43条の接道
- 建築基準法上の道路情報の整備について(国土交通省) — 自治体による道路情報の公開
- 既存住宅状況調査技術者講習制度(国土交通省) — 調査者と調査対象
- 宅地建物取引業法における建物状況調査に関するQ&A(国土交通省) — 調査の任意性と限界
- 民法(e-Gov法令検索) — 第562条~第566条、第572条
- 宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方(国土交通省) — 売主による告知書の提出
- 不動産情報ライブラリ(国土交通省) — 不動産取引価格情報
- 不動産取引の仲介手数料・低廉な空家等の特例(国土交通省) — 800万円以下の宅地・建物に関する特例
- 相続登記の申請義務化に関するQ&A(法務省) — 申請期限と経過措置
- 相続人申告登記について(法務省) — 制度の効果と売却時の扱い
- 住所等変更登記の義務化に関するQ&A(法務省) — 2026年4月施行の申請義務
- 空き家・空き地バンク総合情報ページ(国土交通省) — 自治体ごとに異なる利用条件
- 固定資産税・都市計画税(土地・家屋)のQ&A(東京都主税局) — 1月1日基準、住宅用地特例、解体後の扱い
- 建築物等の解体等工事における石綿規制(環境省) — 事前調査、調査者、報告対象
- 空き家対策特設サイト(国土交通省) — 管理不全空家等、勧告、住宅用地特例
- 空家等対策の推進に関する特別措置法(e-Gov法令検索) — 第13条、第22条
- 空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報(国土交通省) — 自治体による空き家対策への財政支援
- No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例(国税庁) — 適用要件、期限、添付書類
- 空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除(国土交通省) — 制度概要、確認書、売却後工事の特約例
