MENU

長屋の売却方法5選|一戸だけ売れる条件・査定・切り離しの注意点

長屋や連棟式建物、テラスハウスは、自分が何を売れるのかを確認できれば、一戸だけでも売れることがあります。壁が隣の住戸とつながっているからといって、売る前に切り離したり、解体したりする必要はありません。

気になるのは、隣と共有している壁でしょう。ただ、買主が本当に知りたいのはその先です。「買ったあと、どこまで自由に使い、直し、建て替えられるのか」。この答えを決めるのは、建物の呼び名ではありません。権利、建築の条件、そして隣の住戸と共有している部分です。

この記事の結論
長屋の売却は、まず登記で「何を売れるのか」を確かめ、次に道路・建築の条件と、隣の住戸との共有部分を調べます。資料で不明点を減らせば、現状のまま仲介する、直接買い取ってもらう、隣家に売る、全住戸をまとめて売る、といった方法を同じ条件で比べられます。

査定の前に、いったん止めたいこと
査定を受ける前に、切り離し・解体・大がかりな修繕を進めないでください。隣の住戸の口約束だけで、工事や更地渡しを約束するのも危険です。登記・道路・構造を確認し、必要な同意を書面に残し、工事費を引いた手取りまで比べてから決めます。

目次

長屋は一戸だけでも売却できる?

売れるかどうかは、外から見ても分かりません。決めるのは、次の3つです。

1.権利

土地と建物のうち、どこまでが自分のものか。自分だけで売れる範囲は、登記を見れば分かります。

2.建築条件

敷地が法律上の道路に接しているか。建替えや大きな改修に、どんな制限があるか。

3.隣の住戸とのつながり

壁・屋根・柱・基礎・配管・通路を、どこまで隣と共有しているか。現地と資料で確かめます。

長屋が売れにくいといわれるのは、壁がつながっているからではありません。買主が「買ったあと、どう使えるのか」を判断しにくいからです。逆にいえば、この3つを説明できる物件は、買主が検討しやすい状態に近づきます。

長屋・連棟式建物・テラスハウスとは

総務省統計局は「長屋建」を、2戸以上の住宅を一棟に連ねた建て方と説明しています。各住宅は壁を共通にしながら、それぞれが外部への出入口を持ちます。テラスハウスもこの区分に含まれ、「連棟式建物」は、こうした建物を指す実務上の呼び方です。

ただし、テラスハウスやタウンハウスという名称は、広告上の商品名として使われることもあります。名前を見ても、土地が一戸ごとに分かれているか、建物が戸別に登記されているか、マンションと同じ区分所有のしくみ(区分所有法)が当てはまるかは分かりません。

長屋売却の出発点:建物の形は、見ればわかります。一方、売れる権利の中身は、土地と建物の登記事項証明書や契約書を見なければわかりません。

同じ長屋でも、売れる権利は5通りに分かれる

見た目が同じ長屋でも、登記と土地の権利によって結論は変わります。自分がどれに当たるかを確かめましょう。

1.土地・建物が一戸ごとに別登記

売れる範囲:原則として、その土地と建物を一戸単位で売れます。

次に見ること:隣の住戸との接合部分、越境、共有している設備、住宅ローンの担保として設定された抵当権。

2.マンションと同じ区分所有になっている

売れる範囲:自分だけが使う住戸部分(専有部分)を売れます。壁や屋根など、みんなで使う部分(共用部分)の持分と、敷地を使う権利は、原則として住戸と一緒に移ります。

次に見ること:管理規約、共用部分の範囲、敷地権、未納金、過去の集会での決議。

3.土地・建物の全体を、割合で共有している

売れる範囲:自分の持分(全体に対する自分の取り分の割合)は売れます。ただし「右端の一戸」のような特定の部分を、自分だけの建物として引き渡せるとは限りません。

次に見ること:持分の割合、各戸の使い方についての合意、共有者全員で売る可能性。

4.一棟で一つの登記。一人が全体を所有している

売れる範囲:一棟まるごとなら売れます。一戸だけを独立した不動産として売るには、戸別の建物として登記できるかなどの確認が必要です。

次に見ること:建物の構造、区分建物として登記できるか、敷地の分け方、分けたあとの各敷地が道路に接するか。

5.借りた土地に建っている

売れる範囲:建物と、土地を借りて使う権利(借地権)をあわせて譲渡します。契約の内容によっては、地主の承諾が必要です。

次に見ること:借地契約の内容、譲渡を承諾してもらう条件、借地借家法上の手続。

区分所有(2)と共有(3)は似て見えますが、中身が違います。区分所有では、共用部分の持分や敷地を使う権利を、住戸から切り離して売ることは原則できません。一方、3の共有で持っているのは建物全体に対する「割合」です。いま住んでいる一戸が、そのまま自分だけの所有物になっているわけではありません。

借地(5)で地主の承諾を得られないときは、裁判所に許可を求める方法(借地借家法19条)もあります。ここは契約内容で結論が変わるため、独断で進めず専門家へ相談してください。

長屋の売却前に確認する3つのこと

すべてを売主だけで確定させる必要はありません。手元の資料を集め、各項目を「確認済み」「条件付き」「不明」に振り分けます。この整理だけでも、不動産会社が示す査定の根拠を比べやすくなります。

1.権利を確認する

  • 売るのは一棟か、一戸か
  • 建物は単独登記か、区分登記か、共有か
  • 土地は単独所有か、共有か、借地か
  • 相続登記や抵当権の整理は済んでいるか

主な資料は、土地・建物の登記事項証明書、登記識別情報通知または権利証、公図、購入時や借地の契約書です。法律上の判断は弁護士、権利の登記は司法書士、建物の表示登記や境界は土地家屋調査士が相談先になります。

2.建築条件を確認する

  • 前面の通路は、建築基準法上の道路か
  • いまの敷地は、道路に2m以上接しているか
  • 切り離しや敷地分割のあとも、各敷地が条件を満たすか
  • 建替えや大規模な改修に制限はあるか

建築確認済証、検査済証、設計図、自治体の道路資料などを使います。道路と建築規制は自治体の建築指導窓口、建物の状態と工事は建築士へ確認します。

3.隣の住戸とのつながりを確認する

  • 壁、屋根、柱、梁、基礎を共有しているか
  • 給排水管、電気設備、通路を共同で使っているか
  • 過去の増改築や切り離しの記録はあるか
  • 修繕や立入りについて、隣と交わした合意書はあるか

境界確認書、修繕記録、覚書、設計図を、現地の状態と照らし合わせます。ここでわかったことによって、必要な同意、工事の方法、売主が負担する費用や引渡しの条件が変わります。

確認の結果最初に比べる売却方法
権利・道路・建物の状態を説明できるまずは現状のまま仲介する方法を検討
権利はわかったが、法規や構造に未確認がある長屋に詳しい会社の仲介と、直接買取を並べて比較
売却期限までに調査が終わらない未確認の点を明示したうえで、直接買取も検討
隣家が買いたい、または複数の所有者が同時に売れる隣家への売却や、全住戸の一括売却も査定
切り離しの同意・法規・構造・採算をすべて確認できたここで初めて、切り離し後の売却を比較対象に加える
3つの確認の結果から、最初に比較する売却方法を選ぶ目安

土地が分かれていても、建物まで独立しているとは限らない

長屋の土地は、一つの土地を共有している場合、各戸の敷地が別々に分かれている場合、借地の場合があります。注意したいのは、土地を各戸で別々に所有していても、屋根・柱・壁・基礎などは建物の共用部分と判断されることがある点です。

八尾市が委託し、弁護士らの協力で作成した2021年の報告書も、この点を整理しています。土地を各戸別に所有する状態(報告書では「分有」)と、建物が独立しているかどうかは、別の問題です。土地の境界だけを見て「自分側の壁なら自由に壊せる」と判断してはいけません。

道路は「幅4mあるか」だけで判断しない

建築基準法では、建物の敷地は原則として、法律上の道路に2m以上接している必要があります。この状態を「接道」といいます。

ただし、幅が4m未満でも法律上の道路として扱われるもの(42条2項道路)があり、接道の原則にも認定・許可による例外(43条2項)があります。自治体の条例で条件が加わる場合もあります。

そのため、「前の道が4m未満だから再建築できない」とも、「切り離した後も合計で4m接していればよい」とも判断できません。前面通路の種類、道路に接している長さ、敷地の扱いを図面に落とし、物件がある自治体へ確認します。

長屋が売れにくいといわれる5つの理由

長屋だから一律に売れない、ということはありません。「買ったあとに何ができるか」を確かめる項目が多く、未確認のまま残りやすい。だから買主の判断に時間がかかるのです。

1.売買の対象が、見た目だけではわからない

一戸に見えても、実際には建物全体に対する共有持分だったり、区分所有権だったりします。建物の登記と実際の増改築が一致していないこともあり、土地も単独所有とは限りません。

売主が「この家と敷地を売る」と考えていても、登記上の対象が違えば、そのまま売買契約には進めません。先に売買の対象を確定させるか、いつまでに確認するか、確認できなかったらどう扱うかを契約条件に定めます。

なお、2026年4月からは、所有者の住所や氏名が変わったときの変更登記も義務化されました。原則として、変更の日から2年以内に申請します。施行前の変更をまだ登記していない場合など、経過措置は法務省の案内を確認してください。

2.建替えや大規模な改修を見通しにくい

買主が見ているのは、今住めるかどうかだけではありません。将来の建替えや修繕まで考えます。接道の条件を満たしていない、建築時と現在で法令が変わった、確認済証や検査済証が見つからない。こうした事情があると、希望する工事ができるかを判断しにくくなります。

2025年4月以降は、木造2階建て住宅などで行う「大規模の修繕・模様替え」について、建築確認が必要となる範囲が広がりました。ここでいう大規模とは、壁・柱・床・梁・屋根・階段のうち一種類以上について、その半分を超えて修繕・模様替えする工事です。

ただし、切り離し工事なら必ず建築確認が必要、という意味ではありません。工事の名前ではなく、どの部分をどこまで変えるのかを建築士と自治体へ示して確認します。

もう一つ、混同しやすい言葉があります。建築時は適法だったのに、その後の法改正などで今の基準に合わなくなった建物を「既存不適格」といい、違反建築とは別のものです。検査済証が見つからないだけで、違反建築と決まるわけでもありません。増改築や切り離しの前に、残る建物も含めて建築士に現状を調べてもらいます。

3.隣の住戸と構造や設備がつながっている

つながっているのは、住戸のあいだの壁だけではありません。屋根、柱、梁、基礎、給排水管、電気設備、通路が連続している長屋もあります。一戸を切り離すと、残る建物の耐震性、防火性、防水性に影響するかもしれません。端の住戸か、両側に建物がある真ん中の住戸かによっても、条件は変わります。

「壁一枚をふさげば終わる」とは考えず、構造の調査、補強の方法、外壁の仕上げ、雨水を防ぐ処理、工事中と工事後の責任まで、まとめて検討します。

4.買主の融資判断に時間がかかることがある

金融機関は、権利関係、接道、建物の状態、担保としての評価などを個別に審査します。「長屋だから住宅ローンを使えない」と一律に決まるわけではありません。ただし、未確認の点が多い物件では、融資を利用できる買主が限られる可能性があります。

売り出す前に、不動産会社へ「どんな資料をそろえ、金融機関へどう事前相談するのか」まで確認しておくと、購入申込みのあとで融資が通らないリスクを減らしやすくなります。

5.長屋だけの相場は、公的データから作れない

国土交通省の不動産情報ライブラリでは、実際の取引価格を地域、面積、構造、建築年、前面道路などから調べられます。しかし、「長屋」「連棟」「テラスハウス」だけを抜き出す項目はありません。

したがって、「長屋は戸建てより何割安い」「買取なら仲介価格の何割」といった全国一律の割合は当てはめられません。周辺相場を土台に、権利、接道、建物の状態、共有部分、買主が負担する調査・工事、契約条件を、物件ごとに調整していきます。

長屋を売却する5つの方法

選択肢は「切り離すか、安く売るか」の二択ではありません。現状のままの仲介と買取を並べ、隣家や一棟売却の可能性も確かめると、価格と実現しやすさを同じ条件で比べられます。

売却方法向いている状況主な利点と確認事項
現状のまま仲介権利・接道・建物の状態を説明でき、販売期間を確保できる利点:広く買主を探せ、工事費を先払いせずに済む
確認:担当者の長屋売却経験、想定する買主、融資の見込み
不動産会社の直接買取期限がある、残置物や劣化がある、一般の買主へ説明しにくい利点:条件が合えば、一般向けの販売活動を省ける
確認:後日の減額条件、費用負担、契約後の責任
隣家への売却隣家が増床や、敷地の一体利用を望んでいる利点:一般の市場とは違う利用価値を検討できる
確認:第三者による査定、境界、共有部分、引渡条件
全住戸の一括売却複数の所有者が、同じ時期・条件で売れる利点:権利や土地をまとめられる可能性がある
確認:代金の配分、抵当権、賃貸借、税金
切り離し・解体後に売却法律・建築・構造を確認でき、工事後に手取りが増える見込みがある利点:独立性や土地利用の選択肢が増える場合がある
確認:同意、行政手続、構造の安全、工事費
長屋を売却する5つの方法の早見表

現状のまま仲介する

最初に検討したいのは、建物をつないだまま売る方法です。「何も調べなくてよい」という意味ではありません。買主が判断できる資料をそろえ、現在の状態と制限を開示して販売します。

権利と建築条件が整理され、居住・賃貸・改修などの使い道を示せる物件なら、一般の買主も候補になります。査定のときは「売れます」という答えだけで終わらせず、想定する買主、融資の事前相談の進め方、販売に使う資料まで聞きましょう。

長屋に詳しい不動産会社へ直接買い取ってもらう

直接買取では、不動産会社などが買主になります。一般の買主を探す販売活動を省ける一方、提示額には、再販売までの調査、工事、保有、販売にかかる負担が含まれます。

ただし、買取なら必ず早く売れるとは限りません。契約内容と実物が違った場合に売主が負う責任(契約不適合責任)も、必ず免除されるわけではありません。売買価格、査定後の減額条件、残置物や測量の負担、解除条件、代金を受け取って所有権を移す日(決済日)、契約不適合責任の範囲を、書面で確認します。別の会社が仲介に入れば、直接買取でも仲介手数料がかかる場合があります。

隣家へ売る

隣家にとっては、隣の住戸を手に入れることで、敷地や建物を一体で使える可能性があります。買う意思があるかを尋ねる価値はありますが、当事者だけで価格交渉を進めると、境界、共有部分、引渡しの条件が曖昧になりがちです。

価格査定と仲介は宅地建物取引業者、複雑な契約や権利の調整は弁護士、所有権移転登記は司法書士に相談します。

長屋全体をまとめて売る

複数の所有者が合意できるなら、全住戸や敷地をまとめて売る方法もあります。単独で売るより土地利用の幅が広がる場合がある一方、所有者ごとの抵当権、賃貸借、売却代金の配分、税金を調整しなければなりません。

まず全員が同じ時期・条件で売れるかを確かめ、そのうえで一棟全体の価格と各戸の価格を分けて査定します。

売却以外の選択肢:保有・賃貸と比べる

急いで売る必要がなければ、賃貸や当面の保有も比較の対象です。賃料だけを見るのではなく、修繕費、空室、管理、固定資産税、将来の大規模修繕、隣との調整を差し引いて考えます。

賃貸中のまま売ると、買主が賃貸借契約や敷金の返還義務などを引き継ぐことがあります。空室の住宅として売る場合とは買主層も評価方法も違うため、二つの査定を混ぜないことが大切です。

長屋・テラスハウスを切り離して売却する前の5条件

5つの方法のうち、切り離しだけは性質が違います。売る住戸だけでなく、残る建物にも手を入れるからです。共有している壁や屋根などを変えたり取り除いたりする場合は、売却準備ではなく、別の判断として慎重に検討します。

隣の同意は「何人必要か」だけでは決まらない

八尾市の2021年報告書は、区分所有法が適用される長屋の一部を取り壊す場合、共用部分をなくすことや、残る建物への影響が問題になると整理しています。その後、2026年4月に改正区分所有法が施行されました。

現行の区分所有法17条では、共用部分の形や働きを大きく変える場合、原則として集会の決議が必要です。まず、区分所有者の過半数が出席し、その出席者の議決権の合計が全体の過半数に達していれば、集会が成立します。そのうえで、出席した区分所有者の人数と、出席者が持つ議決権のそれぞれ4分の3以上の賛成を得ます。規約の定めや、特別な影響を受ける区分所有者の承諾などによる例外もあります。

ただし、一戸の切り離しを「共用部分の変更」だけで処理できるとは限りません。共用部分をなくすこと、建物全体としての一体性、通常の共有関係など、別の論点が生じるためです。

「4分の3でよい」「全員の同意が必要」と、数字だけで決めない
必要な決議や同意は、権利の形と工事の内容で変わります。法律上の判断は弁護士、権利の登記は司法書士、建物の表示登記や境界は土地家屋調査士へ確認してください。

切り離しは、次の5条件を上から順に確認し、すべて満たしてから検討します。

  1. 権利関係が確定している
    建物の登記の単位、区分所有法が適用されるか、土地は所有か借地か、共用部分はどこまでかを確認します。
  2. 必要な決議・同意を書面で確認できる
    集会の議事録、承諾書、共有者との合意書など、権利の形に合う記録を用意します。工事の範囲、費用、補強、残る外壁、雨漏りへの対応、立入り、損害が出た場合の扱いも書き込みます。
  3. 切り離し後も建築条件を満たせる
    道路の種類、各敷地の接道、建てられる用途や規模を定める用途地域、敷地に対して建てられる大きさの基準(建ぺい率・容積率)、防火規制、再建築できるか、建築確認が必要かを、自治体と建築士へ確認します。
  4. 残る建物の安全と防水を確保できる
    壁だけでなく、柱、梁、屋根、基礎、配管、防火、外壁の仕上げを調査し、補強と復旧の方法を設計します。
  5. 工事後の手取りが、現状のまま売る場合を上回る見込みがある
    工事、設計・申請、測量・登記、仮住まい、隣への補償、追加工事の予備費まで含めて比べます。

更地渡しを先に約束しない

権利の形に合う決議・同意、自治体と建築士の確認、構造の調査、追加工事も含む見積り。これらがそろう前に、更地渡しを約束するのは避けましょう。未解決の条件が残ると、契約どおりに工事を終えられないおそれがあります。

条件付きで契約する場合は、何をいつまでに確認するか、確認できなければ契約を成立させないのか、それとも解除できるのかを契約書に定めます。こうした「停止条件」「解除条件」の設計は、不動産取引に詳しい弁護士へ確認すると安心です。

長屋の売却価格はどう調べる?

権利や接道の複雑さは価格に影響します。それでも、「戸建てより一律に何割安い」とは置き換えられません。周辺相場を出発点に、買主が負う費用と、解消できない不確実性を分けて考えます。

1.周辺相場を土台にする

国土交通省の不動産情報ライブラリや、不動産会社が使うレインズの成約事例から、取引の時期、地域、土地・建物の面積、築年、構造、前面道路が近い物件を探します。長屋だけを正確に抜き出せないため、まずは基準となる価格帯をつかみます。

2.長屋特有の条件を分けて調整する

査定書では、すべてを「長屋だから」の一言でまとめず、調整の理由を次の項目に分けてもらいます。

  • 土地:接道、形、境界、単独所有か共有か借地か
  • 建物:築年、構造、劣化、耐震性、修繕の履歴
  • 権利・法規:登記、再建築、既存不適格、増改築の履歴
  • 連棟特有の条件:共有する壁・屋根・基礎・配管、隣との合意
  • 取引条件:残置物、測量、修繕、引渡しの時期、契約後に残る責任

査定根拠を確かめる考え方
周辺市場を基にした土地・建物の価値
+ 利用・収益の可能性
- 買主が負担する調査・調整・工事
- 解消できない不確実性

これは価格を自動計算する式ではありません。査定額が高いか低いかだけでなく、どの項目を、どの資料を使って調整したのかを確かめるための枠組みです。

3.4種類の価格を混同しない

  • 査定価格:不動産会社が資料や事例から示す価格。売却を保証する価格ではない
  • 売出価格:売主が市場へ提示する価格
  • 想定成約価格:販売期間や条件を踏まえ、契約に至ると会社が見込む価格
  • 買取提示額:不動産会社などが買主として示す価格。後日の減額条件や費用負担の確認が必要

査定価格だけを並べると、最も高い数字を出した会社が有利に見えます。しかし比べるべきなのは、想定成約価格の根拠と、費用を引いた税引前の概算手取りです。

4.同じ条件で手取りと実現しやすさを比べる

各社の査定書と見積書を受け取ったら、同じ項目へ転記します。金額が確定していない費用は、無理に数字を入れず「条件付き」または「不明」と書いてください。

売却方法比較する価格差し引く費用
現状のまま仲介想定成約価格確定:仲介手数料、登記費用など
条件付き:測量、修繕、残置物の撤去など
直接買取書面で示された買取提示額確定:登記費用など。仲介会社が入れば仲介手数料
条件付き:後日の減額、測量、残置物の撤去など
切り離し後に仲介工事後の想定成約価格確定:仲介手数料、設計・工事・登記費用
条件付き:追加の補強、隣への対応、申請、追加工事など
売却方法ごとの価格と費用の比較
売却方法実行するための条件契約後に残る主な責任
現状のまま仲介買主の融資、販売期限など契約不適合責任、境界、設備など
直接買取減額・解除の条件、決済資金など契約書で定めた範囲
切り離し後に仲介決議・同意、行政手続、構造の安全など工事の完成、残る建物への責任など
売却方法ごとの実行条件と契約後の責任

全方式に共通する記入項目:税引前の概算手取りは「価格-費用-ローン残高」で計算し、売却益にかかる税金は別に見積もります。根拠の状態は「確認済み/条件付き/不明」のいずれかで記録してください。

まず、希望する時期までに売れるか、同意・法規・構造などの条件を満たせるかを確認します。そのうえで、条件付きの費用を含む手取りと、契約後に残る責任を比べます。

不動産会社を比較するときの8つの質問

高い査定額は、不明点を解消しなくても提示できます。会社の違いが表れるのは、その金額の前提を説明できるかどうかです。誰が何を調べ、どの買主へどう売るのか。次の8つで確かめましょう。

  1. 登記上、売却する土地・建物・持分をどのように特定しましたか
  2. 前面通路の種類と接道を、どの資料・窓口で確認しますか
  3. 切り離さずに売る場合、どんな買主を想定し、融資をどう事前相談しますか
  4. 査定に使った成約事例は、いつ、どの地域の、どの種類の物件ですか。査定価格、売出価格、想定成約価格を分けていますか
  5. 調査、測量、登記、修繕を含む売主の負担と、税引前の概算手取りはいくらですか
  6. 直接買取では誰が買主になり、後から減額・解除できる条件は何ですか
  7. 契約不適合責任、残置物、境界、共有設備を、契約でどう扱いますか
  8. どの専門家の確認が必要ですか。現時点で実行できない条件を一覧にできますか

回答は3段階に分ける

  • 確認済み:公的資料や現地調査で確定している
  • 条件付き:同意や行政への照会など、条件を満たせば実行できる
  • 不明:追加の調査が必要

「おそらく大丈夫」を、そのまま契約条件にしないための整理です。

長屋を売却する流れ

長屋では、一般的な売却手続に入る前に、権利と建築条件を確認します。この順番を守って進めると、不要な工事や査定のやり直しを避けやすくなります。

  1. 登記と手元の資料を集める
  2. 自治体と専門家へ事前に確認する
  3. 複数社へ同じ資料で訪問査定を頼む
  4. 売却方法と媒介契約を決める
  5. 買主向けの資料を整えて売り出す
  6. 売買契約、代金決済、引渡しを行う

1.登記と手元の資料を集める

最初に、土地・建物の登記事項証明書、公図、地積測量図、建物図面などを取得します。法務局では、登記事項証明書のほか、地図・公図、地積測量図、建物図面・各階平面図を請求できます。

あわせて、自宅で次の資料を探してください。

  • 登記識別情報通知または権利証
  • 境界確認書、越境や通路に関する覚書
  • 建築確認済証、検査済証、設計図
  • 増改築、切り離し、耐震、修繕の記録
  • 壁、屋根、配管、工事に関する隣との合意書
  • 固定資産税納税通知書
  • 住宅ローン残高と抵当権の資料
  • 賃貸中なら、賃貸借契約書、敷金、修繕の履歴

資料が見つからなくても、隠す必要はありません。「ない」「不明」と明示し、代わりに何を調べるかを決めます。

契約や代金決済が近づくと、必要書類は不動産会社と司法書士が個別に指定します。主なものは、本人確認書類、実印・印鑑証明書、住所の移転をつなぐ住民票や戸籍の附票、物件状況報告書、付帯設備表、抵当権を外すための書類です。共有者がいる場合は、全員の売却意思と、決済当日に出席できるかも早めに確認します。

2.自治体と専門家へ事前に確認する

相談先は、確認する内容によって変わります。

  • 自治体の建築指導窓口:道路、接道、建築規制
  • 建築士:建物の構造、劣化、切り離しや補強の工事
  • 土地家屋調査士:境界、土地・建物の表示に関する登記
  • 司法書士:相続、抵当権、所有権移転など権利に関する登記
  • 弁護士:共有部分、必要な同意、複雑な契約、紛争
  • 税理士:売却益にかかる税金や特例

不動産会社が窓口になる場合も、回答の出どころを確認しましょう。「役所で聞いた」で終わらせず、照会した部署、日付、見せた図面、回答の内容を記録してもらいます。

3.複数社へ同じ資料で訪問査定を頼む

長屋は、現地を見なければ隣との接合や劣化の状態をつかみにくい物件です。机上査定だけで会社を決めず、各社に同じ資料と同じ売却希望時期を伝えて、訪問査定を比べます。

現状のままの仲介、直接買取、隣家・一棟売却、切り離し後の売却のうち、実行できる方法だけを提示してもらいます。売主が負担する工事や測量まで、同じ比較表へそろえてください。

4.売却方法と媒介契約を決める

価格だけでなく、期限内に実行できるか、必要な同意・手続がそろうか、条件付きの費用を含む手取りはいくらか、契約後にどの責任が残るかを順に確認して選びます。

仲介を選ぶ場合は、不動産会社へ売却活動を依頼する媒介契約を結びます。一般媒介、専任媒介、専属専任媒介では、依頼できる会社の数や、自分で見つけた買主と直接契約できるかなどが違います。不動産会社が売却価格について意見を述べるときは、根拠を示すこととされています。

5.買主向けの資料を整えて売り出す

雨漏り、シロアリ、傾き、未登記の増改築、過去の切り離し、共有の配管、越境、隣との取り決め。把握している事実は、物件状況報告書などに記載します。わからないことを推測で「なし」とせず、どこまで調べ、何がわかったかを残します。

建物状況調査(インスペクション)は、建物のうち構造上重要な部分や、雨水の侵入を防ぐ部分などを調べるものです。すべての不具合がないことを保証する調査ではなく、調べられない箇所もあります。長屋でどこまで調査できるか、隣側への立入りが必要かを、実施する建築士へ事前に確認します。

6.売買契約、代金決済、引渡しを行う

買主が提示した価格だけでなく、融資の見込み、境界、残置物、修繕、切り離し、引渡しの時期、契約不適合責任を確認して契約します。買主の融資が通らなかった場合に契約を解除できる「融資特約」では、対象の金融機関、借入予定額、承認期限、解除期限を曖昧にしないことが大切です。

住宅ローンが残っている場合は、決済時に完済して抵当権を外せるよう、金融機関と司法書士へ早めに連絡します。決済日には、残代金の受領、ローンの完済、抵当権抹消と所有権移転の申請、固定資産税などの精算、鍵・書類の引渡しを同日に進めるのが一般的です。

なお、固定資産税などの精算は、売主と買主の契約によるものです。譲渡所得から差し引く「譲渡費用」と同じではありません。

売却した翌年は、売却による利益(譲渡所得)の申告が必要かを確認します。自宅として使っていた長屋は、条件を満たせば譲渡所得から最高3,000万円を差し引く特例の対象になり得ます。この特例を使う場合は、税額がゼロでも確定申告が必要です。取り壊してから売る場合は、契約の時期や敷地の使い方にも条件があるため、工事の前に確認してください。

長屋売却にかかる費用と税金

売却価格が最も高い方法でも、手元に最も多く残るとは限りません。とくに切り離しでは工事費や調査費が増えます。物件と売り方ごとに、次の式で比べましょう。

手元に残る金額の目安(税引前)
売買代金 - 売却に必要な費用 - 住宅ローン返済額

住宅ローンの返済額は、手元に残る現金には影響します。しかし、売却益にかかる税金の計算で、取得費や譲渡費用として差し引けるものではありません。税額は別に計算します。

  • 仲介手数料:法律上の上限内で、媒介契約時に合意します。上限が自動的な請求額になるわけではありません。
  • 印紙税:紙の売買契約書に記載する金額などで決まります。一定の電子契約では、課税文書を作らないため印紙税がかかりません。
  • 登記関連費用:抵当権抹消、住所・氏名の変更、未登記や建物変更の調査・登記、司法書士などの報酬です。
  • 測量・境界費用:境界標や図面の有無、隣接する土地、土地の筆数によって変わります。
  • 建物調査費用:インスペクション、耐震・構造調査、設備調査など。調べる目的と範囲で変わります。
  • 工事費:残置物の撤去、修繕、切り離し、補強、外壁、防水、解体など。現地調査のあとに見積もります。
  • 譲渡所得にかかる税金:売却額から取得費、譲渡費用、使える特別控除を差し引いて計算します。

仲介手数料

仲介手数料の上限は、売買価額を区分して計算します。200万円以下の部分は5.5%、200万円を超え400万円以下の部分は4.4%、400万円を超える部分は3.3%です。いずれも消費税込みの率です。

また、売買価額800万円以下の宅地・建物は、「低廉な空家等」と呼ばれる媒介手数料の特例の対象になり得ます。名前に「空家」とありますが、使用中か空き家かは問いません。通常の上限を超える場合でも、依頼者一人から受け取れる上限は税込33万円です。

この特例には、媒介契約時の事前合意が必要です。800万円以下なら自動的に33万円を請求できる制度ではありません。

印紙税と登記費用

紙の不動産売買契約書は、記載金額が10万円を超え、2027年3月31日までに作成されるものに印紙税の軽減措置があります。税額は契約金額で変わるため、国税庁の税額表で確認します。

抵当権抹消登記と、住所・氏名の変更登記の登録免許税は、原則として不動産1個につき1,000円です。土地の筆数や建物の家屋番号が複数なら、その分だけ個数も増えます。司法書士への報酬は別です。

売却益にかかる税金

譲渡所得は、原則として「収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除」で求めます。購入時の契約書や建築費の領収書が見つからなくても、すぐに取得費をゼロと決めず、まず資料を探してください。

取得費がわからないときは、売却額の5%を概算取得費にできる場合があります。ただし、税金の対象となる利益が大きくなりやすいため、税理士や税務署への確認が欠かせません。

2026年中に売る場合は、2026年1月1日時点で所有期間が5年を超えるかどうかで、長期と短期に分かれます。長期の税率は所得税15%・住民税5%、短期は所得税30%・住民税9%で、所得税には復興特別所得税が加わります。

自宅を売ったときの3,000万円特別控除は、今住んでいる家のほか、住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る旧自宅なども対象になり得ます。親子や夫婦など特別な関係の相手への売却は対象外です。

建物を取り壊した敷地には、取壊しから1年以内に売買契約を結ぶこと、契約までほかの用途に使わないことなどの追加条件があります。共有、店舗・賃貸併用、ほかの税制特例との関係は個別に確認してください。

長屋の売却でよくある質問

長屋の一戸だけでも売却できますか?

売却する土地・建物・持分を特定でき、その権利を移せる状態なら、一戸単位の売却を検討できます。ただし、見た目の一戸と登記上の範囲が一致するとは限りません。まず、土地と建物の登記事項証明書を確認してください。

売却するだけでも隣人の同意が必要ですか?

自分だけで売れる権利を売ることと、共有部分を変えたり建物を切り離したりすることは別です。売却の対象が共有持分である、規約や契約に制限がある、工事を売却の条件にする、といった場合は確認事項が増えます。「長屋なら必ず全員の同意が必要」と一律に決まっているわけではありません。

真ん中の住戸も売れますか?

売る権利を特定できれば、真ん中の住戸も一戸単位で売れる場合があります。ただし両側の住戸と接しているため、端の住戸より切り離し工事の選択肢が限られることがあります。切り離しを前提にせず、まずは現状のままの仲介と直接買取を査定しましょう。

道路幅が4m未満なら再建築できませんか?

道路幅だけでは決まりません。建築基準法42条2項道路に当たる場合や、43条2項の認定・許可を検討できる場合があります。反対に、幅4m以上でも法律上の道路ではない通路もあります。道路の種類と接道を自治体へ確認してください。

長屋では住宅ローンを利用できませんか?

長屋という名称だけで融資の可否は決まりません。金融機関が、権利、接道、建物の状態、担保価値、買主の返済能力などを審査します。不動産会社には、想定する買主だけでなく、融資の事前相談の進め方も尋ねましょう。

未登記の増築や、過去の切り離しがあっても売れますか?

直ちに売れないとは限りません。ただし、登記と現状の違い、工事が法令に合っていたか、建物の構造への影響を調べる必要があります。建築士、土地家屋調査士、不動産会社へ資料と現地を見せ、必要な是正・登記と、事実を開示して売る方法を比べてください。

「現状のまま引き渡す」と書けば、売却後の責任はなくなりますか?

今の状態のまま引き渡す「現況有姿」という表現だけで、売主の説明や契約上の責任がすべてなくなるわけではありません。知っている雨漏り、シロアリ、共有の配管、越境、過去の工事などを伝え、何をそのまま引き渡し、どの責任をどこまで負うかを契約書で明確にします。

まとめ|先に切り離さず、「何を売るか」を確定する

長屋は、売る権利を特定できれば、一戸単位で売却できる場合があります。つながった壁そのものが障害になるわけではありません。大切なのは、最初から切り離しを前提にせず、「自分は何を売れるのか」を確定することです。

はじめに、次の4種類を集めましょう。

  1. 土地・建物の登記事項証明書
  2. 公図、測量図、境界確認書
  3. 建築確認に関する書類と、増改築・修繕の記録
  4. 隣との共有部分や工事に関する合意書

そのうえで、自治体と建築士に接道・再建築・工事の扱いを確認し、同じ資料を使って複数の不動産会社へ訪問査定を依頼します。比べるのは、査定額の高さだけではありません。実行の条件を満たせるか、必要な費用を引いた税引前の概算手取りはいくらかまで確かめます。

リビンマッチでは、物件の所在地や条件を入力し、条件に合う複数の不動産会社へ無料で査定を依頼できます。依頼後は、紹介された会社から連絡を受け、査定内容を比較してから、必要な会社と媒介契約を結ぶ流れです。

リビンマッチ自体が物件を買い取るサービスではなく、査定額での売却を保証するものでもありません。長屋の取扱経験、査定の前提、現状のままの仲介と買取の違いを同じ質問で確かめ、自分の物件に合う売却方法を選びましょう。紹介できる会社数は、地域や物件の条件によって異なります。


参考資料

法令・制度・公開情報は2026年7月24日に確認しました。個別物件の権利関係、建築できるか、必要な同意、税金は、所在地と事情に応じて自治体および有資格者へ確認してください。

目次