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土砂災害特別警戒区域の家は売却できる?レッドゾーン・イエローゾーンの違いと売り方

土砂災害特別警戒区域、いわゆる「レッドゾーン」にある家や土地も売却できます。区域に指定されたからといって、家や土地を売ることも、名義を買主へ移すことも、法律で止められてはいません。売るだけなら、知事の許可も要りません。

ただし、「売れる」と「ふつうの物件と同じ条件で売れる」は別の話です。買主は、今の家に安全に住めるのか、将来建て替えられるのか、住宅ローンや保険を使えるのかまで確認します。そのため、価格や売却期間は、区域と建物の重なり方や、手元に残っている資料によって変わります。

値下げや解体を考える前に、次の3点を確かめてください。

1.区域
イエローかレッドか。敷地と建物のどこまで重なるか

2.建物
建てた時期と区域指定の時期。建築確認や構造の資料が残っているか

3.使い方
買主が今の家に住むのか、建て替え・増改築・開発を考えているのか

この3点がわかれば、そのまま仲介で売る、必要な対策をしてから仲介で売る、不動産会社へ直接売る、という3つの方法を同じ条件で比べられます。反対に、区域の範囲も建物の状態も曖昧なまま「レッドゾーンだから何割引」と決めてしまうと、必要以上に安く手放すおそれがあります。

次のような状態なら、価格査定より先に安全の確認をしてください。

・斜面や擁壁(ようへき。斜面や土地の高低差を支える壁)に、新しい亀裂・膨らみ・傾きがある
・地面や壁から水がにじみ出ている
・行政から勧告や指導を受けている
・災害のあとの安全確認が済んでいない

大雨や地震の直後、異常が見えるときは、斜面や擁壁に近づかないでください。自治体の避難情報に従って安全な場所へ移り、落ち着いてから土砂災害・建築の担当部署へ連絡します。写真は、安全な位置から撮れる場合だけにしてください。

この記事は、一戸建てとその敷地、または住宅用地の売却を想定しています。大規模な開発、福祉・医療・教育施設、事業用の建物は、必要な許可や確認の範囲が変わるため、個別に調べてください。

目次

土砂災害特別警戒区域でも、売買そのものは禁止されていない

土砂災害防止法には、2種類の区域があります。土砂災害警戒区域(イエローゾーン)と、土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)です。レッドゾーンは、イエローゾーンのうち、土砂災害が起きたときに建物が壊れ、住民の生命や身体に著しい危害が生じるおそれがある区域を指します(同法第7条・第9条)。

この法律がレッドゾーンで規制しているのは、主に一定の開発行為と、建物の構造です。すでに建っている家や土地を売買する行為そのものではありません。

イエローゾーンの家も売却できる|レッドゾーンとの違い

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項目土砂災害警戒区域
イエローゾーン
土砂災害特別警戒区域
レッドゾーン
区域の意味土砂災害により、住民の生命・身体に危害が生じるおそれがある区域イエローゾーンのうち、建物が壊れて著しい危害が生じるおそれがある区域
主な制度避難体制の整備、ハザードマップによる周知など左記に加え、一定の開発行為の許可、建物の構造規制、移転などの勧告
売買そのもの禁止されていない禁止されていない
建築・開発への影響区域指定だけを理由に、レッドゾーンと同じ構造規制がかかることはない。ほかの法令は別に確認する建物の用途や工事の内容によって、許可や構造基準への適合が必要
売却時の説明宅地建物取引業者が、区域内であることを重要事項として説明する区域内であることに加え、取引に関係する開発・建築上の制限も確認する
イエローゾーンとレッドゾーンの主な違い

「イエローゾーンなら普通に売れる」「レッドゾーンなら売れない」という二択ではありません。区域の色は、調査の入口にすぎません。実際の売りやすさは、区域が建物に重なるかどうか、今の建物を説明できる資料があるかどうか、買主が将来どう使いたいかで変わります。

「売買」と「開発・建築」の許可を分けて考える

レッドゾーンにある既存の住宅や土地をそのまま売るだけなら、土砂災害防止法第10条の許可は要りません。同条が許可の対象にしているのは、分譲住宅や賃貸住宅、社会福祉施設・学校・医療施設などを建てるための一定の造成・開発です。法律ではこれを「特定開発行為」と呼び、自分で住む住宅は対象の用途から外れています。

ただし、土地を開発して分譲する事業になると、扱いが変わります。必要な開発許可を受ける前は、宅建業者が広告を出したり売買契約を結んだりできない場合があります(宅地建物取引業法第33条・第36条)。「売買できる」という結論は、開発事業に必要な許可の時期まで省略できるという意味ではありません。

「自宅なら何を建てても自由」でもありません。レッドゾーン内で、人が継続して使う部屋のある建物を建てるときは、想定される土石などの力に耐えられる構造にし、建築確認を受ける必要があります。方法は一つではありません。建築基準法施行令第80条の3は、壁などで建物自体を強くする方法とあわせて、門や塀で建物を守る方法も定めています。すべてを鉄筋コンクリート造にしなさいという規定ではなく、区域図に示された力や高さ、建物の配置に応じた設計が求められます。

売却時に調べるのは、「今の建物を使えるか」と「買主が希望する建物を将来建てられるか」の2つです。同じ土地でも、買主の用途や工事の内容が変われば、必要な許可や構造の条件も変わります。

売りやすさを分けるのは、区域の色より「重なり方」と資料

区域に入っているという事実だけでは、売却の難しさは決まりません。敷地の隅だけが区域に入る物件と、建物全体が重なる物件では、買主が確認する内容が変わります。

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物件の状態売却の見通し次に確認すること
イエローゾーンのみ通常の仲介を検討しやすい。ただし、災害リスクの説明は必要正式な区域図、避難場所・経路、被災・修繕歴、ほかの法令による区域
レッドゾーンが敷地の一部だけで、建物には重ならない仲介で売れる余地がある。敷地の使い方への影響は買主の計画で変わるレッド部分の面積と位置、建て替え時の配置、造成や擁壁の条件
レッドゾーンが建物に重なり、建築・構造の資料がある買主や金融機関が判断する材料を出しやすい指定時期、確認済証・検査済証(建築確認と完了検査を受けた証明書)、設計図・構造計算書、改修履歴
レッドゾーンが建物に重なるが、指定前の建物、または資料が足りないすぐに違法・売却不可とはいえないが、買主が判断しにくい指定前に建てられた建物の扱い、増改築歴、安全性、再建築の条件を行政・建築士へ確認
被災、行政対応、安全上の異常がある価格査定より、安全確認と事実の整理が先応急対応、行政文書、被災・修繕の記録、斜面・擁壁の所有者と管理範囲
区域の重なり方と資料の状態から見る確認先

区域指定より前から適法に建っていた家は、指定後の基準に合わない部分があっても、それだけで違反建築物になるわけではありません。建てたときは適法だったのに、その後の法改正や区域指定で今の基準に合わなくなった建物を「既存不適格」と呼びます。国土交通省は、レッドゾーンの指定で既存不適格になった住宅について、「がけ地近接等危険住宅移転事業等」として改修の支援制度も案内しています。

ただし、指定後に無断で増築した場合や、建てたときから別の違反があった場合は話が変わります。「古い家だから既存不適格だろう」と自分で決めず、建築時期、指定時期、増改築の履歴を並べて確認してください。

区域の確認はハザードマップだけで終わらせない

インターネットの地図は、区域を調べる入口です。境界の近くにある物件では、画面の縮尺や表示のずれで判断が変わってしまうため、最後は都道府県が公示した区域図で確かめます。

1.ハザードマップでおおよその位置をつかむ

国土地理院の「ハザードマップポータルサイト」では、土砂災害警戒区域などを地図に重ねて見られます。最初の把握には便利ですが、同サイトのFAQにもあるとおり、データの反映に時間がかかることがあります。色が付いていない場所の安全を保証する地図でもありません。

2.都道府県が公示した区域図で正式な指定を確認する

正式な指定の有無と範囲は、都道府県が公示する区域図で確認します。住所だけでなく、地番(登記上、土地ごとに付けられた番号)も用意してください。名称は自治体によって「告示図書」「法定図書」「区域調書」などと異なりますが、いずれも区域の根拠となる公的な図書です。担当窓口は、国土交通省の「土砂災害防止法に基づく取組」から探せます。

基礎調査の結果の公表、指定の予定、正式な区域指定は、それぞれ別の状態です。資料名、公表日、告示番号、指定日を控えて、今どの段階にあるのかを確かめます。

3.敷地境界と建物の位置を区域図に重ねる

確認するのは「住所が区域に入っているか」だけではありません。

  • 敷地全体のうち、どの部分が区域に入るか
  • 建物の外周に区域が重なるか
  • 道路に接する部分や、将来建物を置きたい場所に重なるか
  • 土砂災害の種類は、急傾斜地の崩壊・土石流・地すべりのどれか
  • レッドゾーンの場合、区域図に示された土石などの力や高さはどのくらいか

公図(法務局にある土地の位置関係図)、測量図、建物配置図を区域図と照らし合わせます。境界線が近い、区域図の縮尺が粗い、敷地境界が決まっていないときは、資料を持って自治体の窓口へ相談し、必要に応じて土地家屋調査士や建築士へ重ね図の作成を依頼します。

4.土砂災害の区域以外の規制も確認する

土砂災害警戒区域だけを見ても、建築や土地利用の条件はわかりません。砂防指定地、急傾斜地崩壊危険区域、地すべり防止区域、災害危険区域、宅地造成等工事規制区域などが重なることがあります。道路に接する条件、都市計画、擁壁の扱いも、別に確認する項目です。

自治体へそのまま伝えられる質問例

「この地番の敷地と建物は、今の公示資料上、イエローゾーン・レッドゾーンのどこまで重なりますか。指定日と土砂災害の種類も教えてください。あわせて、今の住宅をそのまま使う場合と、同じ用途で建て替え・増改築する場合に分けて、土砂災害防止法、建築基準法、条例、ほかの区域指定による手続きや構造の条件があれば、担当部署と根拠資料を教えてください」

回答した部署名・担当者名・確認日と、質問のときに伝えた条件を記録します。口頭の回答だけで売却条件を決めず、根拠になる図書や制度のページも保存してください。

レッドゾーン物件の売却価格に、全国共通の減額率はない

「レッドゾーンなら一律10%下落」「必ず30%安い」と決められる公的な相場表はありません。価格への影響は、区域の重なり方、建物が基準に合っているか、必要な対策費、融資の見通し、地域の需要、比べられる成約事例によって変わります。

買主が価格に織り込むのは、災害のリスクだけではありません。「建て替えの条件がわからない」「融資を受けられるか判断しにくい」といった不確かさも、値引きを求める理由になります。売却前の調査は、買主へ説明するためだけでなく、わからないことを理由に余計な値引きを受けないためにも必要です。

国土交通省も、不動産鑑定評価に災害リスクと対策を反映する方法を、物件ごとに見る価格形成要因として整理しています。全国の売買に共通する固定の減額率を示したものではありません。

砂防学会誌に載った調査は、2021年の地価調査地点を使い、区域指定の前後を含む904地点を分析したものです。ただし、そのうち828地点は指定前から地価が下がっていて、指定後もその傾向が続いていました。レッドゾーンに当たる地点は11地点しかなく、区域指定だけの影響は切り分けられていません。この結果から、個別の物件の値下がり率を計算することはできません。

相続税評価の補正率を、そのまま売却価格へ使わない

国税庁の財産評価基本通達20-6には、相続税・贈与税を計算するための評価方法があります。道路ごとに定めた価格をもとに計算する「路線価方式」の一定の宅地では、敷地全体に占めるレッドゾーン部分の割合に応じて、次の補正率を使います。

敷地全体に占めるレッドゾーン部分相続税・贈与税評価の補正率
10%以上40%未満0.90
40%以上70%未満0.80
70%以上0.70
国税庁の財産評価基本通達20-6に基づく補正率

この補正率は、実際の売値を10%・20%・30%下げるための表ではありません。

相続税・贈与税を計算するための評価ルールです。固定資産税評価額に地域ごとの倍率を掛ける「倍率方式」の地域では、この補正を別に適用しない扱いもあります。売却価格は、成約事例、建物の状態、対策費、需要などをもとに査定します。

査定は「何割下がるか」ではなく内訳で見る

査定額を次の3つに分けると、金額の理由が見えます。

査定額の考え方

近い条件の成約事例をもとにした価格
− 確認できた追加費用(構造対策、擁壁、測量、解体など)
− 実際の売れやすさや融資条件を反映する調整
= 査定額の目安

追加費用と売れやすさの調整を分けるのは、同じリスクを二重に差し引かないためです。比べた成約事例の価格にレッドゾーンの影響がすでに含まれているのに、そこへさらに一律の減額率を重ねると、査定額は必要以上に低くなってしまいます。

国土交通省の「不動産情報ライブラリ」では、取引価格の情報と災害リスクの情報を重ねて確認できます。ただし、公開される取引の位置は個人情報保護のために加工されていて、建物の構造資料や区域との細かな重なりまではわかりません。相場を知る入口として使い、最後は区域の内と外で似た成約事例を、不動産会社や不動産鑑定士に確認します。

査定書で確認する7項目
  • 比べた成約事例と、その物件がイエロー・レッドのどちらにあるか
  • 対象地のうち区域に入る範囲と、建物への重なり
  • 今の建物を使う場合と、建て替える場合をそれぞれどう評価したか
  • 構造対策、擁壁、測量、解体など、価格から見込んだ費用
  • 住宅ローンを使う買主を想定しているか
  • 想定する販売期間と、値下げを検討する条件
  • 査定後の調査で減額する可能性がある項目

根拠が「レッドゾーンなので何割減」だけなら、その割合を使った資料と計算の内訳を求めましょう。

売り方は3つ|現況のまま仲介・対策後に仲介・不動産会社へ直接売却

売り方は、レッドゾーンだからといって自動的に決まるものではありません。区域と建物の調査結果をそろえてから、次の3つを比べます。

現況のまま仲介で売る

区域の範囲と建物の状態を説明でき、今の家をそのまま使う買主を探せるなら、まず検討したい方法です。市場で広く買主を探せるため、不動産会社へ直接売るより高い価格で成約する可能性があります。

一方で、買主の住宅ローン審査や建築計画の確認に時間がかかることがあります。広告を出す前に資料をそろえ、買主が購入を申し込む前から重要な事実を確認できる状態にしておきます。

対策工事や資料整備をしてから仲介で売る

安全のために必要な工事を行い、構造資料や行政への照会記録を示せれば、買主は判断しやすくなります。ただし、工事費をそのまま売却価格へ上乗せできるとは限りません。

工事の前に、建築士による対策案、必要な行政手続き、複数の工事見積もり、工事後の査定をそろえます。そのうえで、現況のまま売る案と工事後に売る案の税引前の概算手取りをそれぞれ計算し、その差で判断してください。

工事後に売る場合の税引前概算手取り

工事後の成約予想価格
− 工事費
− 設計・申請・測量費
− 仲介手数料などの売却費用
− 工事中・販売中の保有費
− 決済時に返済する住宅ローン残高

区域の解除を前提に工事するなら、さらに慎重な確認が必要です。土砂災害防止法第9条は、対策工事などで指定の理由がなくなったとき、都道府県が区域を解除できると定めています。ただし、私有地で工事をすれば自動的に解除される、というものではありません。設計の前に都道府県へ相談し、解除の要件・手続き・見込みを書面で確認します。解除が公示される前に「区域外」として売り出すことはできません。

不動産会社へ直接売る(買取)

不動産会社が買主になる直接買取は、売却の期限を優先したいとき、住宅ローンを使う個人の買主が見つかりにくいとき、調べても不明点が残るときに比べたい方法です。不動産会社が再販売や工事のリスクを引き受けるため、仲介より早く条件を固めやすい反面、再販売の費用と事業者の利益が価格に反映され、一般には仲介より価格が低くなりやすい傾向があります。

「専門の買取業者なら必ず買う」「仲介手数料がないから必ず手取りが多い」とは限りません。契約の前に、最終価格、調査後に減額される条件、契約を解除できる条件、残置物・測量・登記の費用負担、契約不適合責任(引き渡した物件が契約で約束した状態に合わない場合の売主の責任)、代金を受け取る日を比べます。

3つの方法は、最高価格ではなく「手取り」と「成立条件」で比べる

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比較項目現況仲介対策後の仲介直接買取
価格の根拠区域の内と外で似た成約事例、今の家を使える買主の需要工事後の査定と、工事で減らせる不確かさ再販売価格、工事・保有・再販売の費用
売主の主な負担仲介手数料、測量・調査など左記に加え、設計・申請・工事・工事中の保有費測量・残置物・登記などの負担を契約で確認
成立の前提買主が現況を理解し、融資・保険・契約条件を確認できること工事が完了し、工事後の需要と融資の見通しがあること買取会社の調査、資金、社内決裁が終わること
時間の見通し買主が見つかるまで変わる工事期間と販売期間の両方が必要予定を固めやすいが、会社ごとに異なる
契約後の確認説明の内容、特約、売主責任の範囲工事保証と既存部分の責任を分ける免責、告知、契約後の減額・解除の条件
現況仲介・対策後の仲介・直接買取の比較

比べる数字は、査定額ではなく税引前の概算手取りです。

売却代金
− 仲介手数料(仲介の場合)
− 調査・測量・工事などの費用
− 印紙税・登記・司法書士報酬など
− 売れるまでの保有費
− 決済時に返済する住宅ローン残高

譲渡所得税などの税金は、買ったときの価格や費用、所有期間、特例が使えるかどうかで変わります。この比較とは分けて、税理士か税務署へ確認してください。

売却前にそろえる資料

資料は、買主への説明のためだけではありません。査定額のばらつきを減らすためにも役立ちます。見つからないものは「なし」と決めつけず、「未取得」「不明」と記録してください。

区域と土地に関する資料
  • 最新の告示図書・法定図書、告示番号、指定日
  • 公図、地積測量図(法務局にある土地の測量図)、確定測量図、境界確認書
  • 区域図と敷地・建物の位置を重ねた図
  • 土地・建物の登記事項証明書、建物配置図
  • 砂防指定地など、重なる法令・条例の確認資料
  • 公共の対策工事や補助制度について自治体から受け取った文書
建物と安全性に関する資料
  • 建築確認の申請書、確認済証、検査済証、建築計画概要書
  • 設計図、構造図、構造計算書、地盤調査の資料
  • 増改築、耐震・土砂対策、擁壁工事の図面と完了記録
  • 被災、雨漏り、亀裂、修繕、保険金請求の履歴
  • 行政からの指導・勧告、相談の記録
  • 斜面・擁壁・排水施設の所有者、管理者、点検記録

各社へ同じ資料一式を渡して査定を依頼します。ある会社には災害の履歴を伝え、別の会社には伝えない状態では、査定額を公平に比べられません。

「告知義務」は、宅建業者の重要事項説明と売主の情報提供に分けて考える

「レッドゾーンは売主に告知義務がある」と一文でまとめると、誰が何をするのかが見えなくなります。法律で決まっている重要事項説明と、売主が知っている事実を伝えることは、別のものです。

宅地建物取引業法第35条と同法施行規則第16条の4の3により、宅地建物取引業者は、物件が土砂災害警戒区域内にあるとき、その事実を契約前の重要事項として説明します。レッドゾーンはイエローゾーンの中に指定されるため、レッドゾーンの物件も対象です。取引に関係する場合は、特定開発行為の許可制など、レッドゾーン特有の法令上の制限も説明事項になります。詳しい取扱いは、国土交通省の「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」にも示されています。

この法律上の説明をするのは宅地建物取引業者です。とはいえ、売主が何も伝えなくてよいわけではありません。区域指定のほかに、知っている被災・修繕の履歴、斜面や擁壁の異常、行政からの指導、建築・構造資料の不足を、仲介会社へ正確に伝えます。

宅建業者を介さない個人間の売買では、第35条に基づく宅建業者の説明手続きはありません。それでも、区域や既知の不具合が契約の前提になることは変わらず、売主の契約上の責任がなくなるわけでもありません。区域と建築の条件が複雑な物件では、宅地建物取引士や弁護士の確認を省かないほうが安全です。

基礎調査の結果や指定の予定が公表されている場合も、正式な指定と混同せず、わかっている情報を仲介会社へ渡してください。法律上の説明項目に当たるかどうかだけでなく、買主の判断にとって重要な事実かどうかという観点で、説明する内容と時期を決めます。

説明を契約直前の重要事項説明だけに詰め込むのも避けたいところです。事実を確認したうえで、広告、販売図面、内見時の資料、重要事項説明書、物件状況報告書(売主が物件の状態を記す書類)、売買契約書の内容をそろえます。以前に買ったときの重要事項説明書をそのまま流用せず、購入申込みのときと契約前に、最新の指定状況を確認してください。

契約書で具体的にすること
  • 区域の種類、根拠資料、指定日、敷地・建物への重なり
  • 今の建物について確認できたこと、確認できなかったこと
  • 被災・修繕・擁壁・排水・行政対応の履歴
  • 将来の建て替え、開発許可、区域解除を保証しないこと
  • 買主へ渡した図面、報告書、見積書
  • 契約不適合責任の範囲と期間
  • 住宅ローンが承認されなければ契約を解除できる条件(ローン特約)、申込先、期限
  • 契約から引渡しまでに災害が起きた場合の対応

「現況有姿(今の状態のまま引き渡すこと)」「契約不適合責任を負わない」と書けば、説明しなくてよいわけではありません。

民法第572条は、売主責任を負わない特約があっても、売主が知りながら買主へ伝えなかった契約不適合については免責されない旨を定めています。区域指定そのものが常に契約不適合になるわけではなく、責任の有無は契約の内容と個別の事情で変わります。

被災や行政対応がある、売主と買主の認識が食い違っている、責任の範囲で争いがあるときは、契約の前に弁護士へ確認してください。

住宅ローンと火災保険は「区域内だから不可」とは限らない

住宅ローン

土砂災害防止法には、レッドゾーンにあるという理由だけで住宅ローンを一律に使えなくする規定はありません。実際の審査で見られるのは、金融機関と商品ごとの基準、物件を担保としてどう評価するか、建物が法令に合っているか、再建築の条件、構造資料、買主の返済能力などです。

商品によっては、区域に関する明確な制限があります。たとえば住宅金融支援機構の賃貸住宅向け建設融資は、建設する賃貸住宅がレッドゾーン内に含まれる場合を対象外としています。これは賃貸住宅向けの商品条件であり、一般の持ち家向け住宅ローンがすべて使えないという根拠にはなりません。

売主側で融資の可否を決めつけず、買主が使う予定の金融機関へ、区域図と建築資料を出して事前審査と物件の確認を依頼します。先に売買契約を結ぶ場合は、ローンが承認されなかったときに契約を解除できる「ローン特約」の対象と期限を、契約書で具体的に定めます。

火災保険・地震保険

豪雨や台風による土砂崩れの損害は、火災保険に水災補償が付いていて、契約上の支払条件を満たす場合に、補償の対象となることがあります。日本損害保険協会も、水災補償の対象例として土砂崩れを挙げています。地震や噴火が原因の土砂災害は、火災保険の水災補償ではなく、地震保険の契約条件を確認します。

区域指定だけで加入できるかどうかや保険料が決まる、業界共通のルールはありません。取扱いは保険会社や商品によって違います。売主が今の保険を使えていても、買主が同じ条件で加入できる保証にはなりません。買主自身が保険会社や代理店へ、見積もりと補償条件を確認します。

土砂災害警戒区域・特別警戒区域の家を売却する4段階

売却は、区域の確認だけでは終わりません。安全、建物、売り方、契約を次の順にそろえると、調査漏れと手戻りを減らせます。

STEP
安全を確保し、正式な区域を確認する

大雨や地震の直後、異常があるときは、斜面や擁壁に近づかず、避難情報に従います。安全を確認できたら、最新の告示図書と地番で正式な区域を調べ、公図・測量図・配置図を使って建物に重なるかを確かめます。

STEP
建物と将来の使い方を調べる

区域の指定時期、建築時期、確認済証・検査済証、構造資料、増改築の履歴を整理します。今の建物を使う場合、同じ用途で建て替える場合、買主が希望する用途に変える場合を分けて、行政と建築士へ確認します。

構造確認、測量、擁壁、排水、解体などは、必要性が確認できた項目だけ見積もります。補助制度を使う場合は、対象、申請時期、予算、売却時の扱いを、契約と着工の前に自治体へ確認してください。

STEP
同じ資料で3つの売り方を査定する

区域内の物件を扱った経験がある不動産会社へ同じ資料を渡し、現況仲介、対策後の仲介、直接買取を比べます。価格だけでなく、査定の根拠、費用、期間、成立条件、売却後に残る責任を書面でもらいます。

STEP
融資・説明・契約の条件をそろえる

買主が確認できる区域図、建築資料、調査結果を整理します。融資や保険は「使える」と決めつけず、買主が個別に確認できる状態にします。契約の前に区域指定や行政対応の更新を調べ、重要事項説明書、物件状況報告書、契約書の内容を一致させます。

買主へ渡した資料は一覧にし、引渡しのあとも、いつ何を説明したか確認できる形で保管してください。

レッドゾーン物件を任せる不動産会社への質問

「レッドゾーンに詳しい」という言葉だけで選ばず、どう調べ、どう査定するのかを確認します。

  • この自治体で、同じ種類の区域内の物件を扱った事例はあるか
  • 区域の内と外で、どの成約事例を査定に使ったか
  • 敷地と建物への重なりを、どの図面で確認したか
  • 建築士、土地家屋調査士、行政と連携できるか
  • 住宅ローンを使う買主へ、いつ、どの資料を案内するか
  • 売り出したあと、どの条件になったら価格や売り方を見直すか
  • 買取の場合、契約後の調査・減額・解除の条件は何か
  • 買取会社自身が買主か。代金の準備と支払日は決まっているか

一律の値下がり率を示す会社、区域の範囲を調べずに「絶対に仲介では売れない」と断定する会社、最終価格や減額条件を書面にしない会社だけで決めないでください。別の会社にも同じ資料を渡して、査定を比べます。

土砂災害警戒区域・特別警戒区域の売却でよくある質問

ハザードマップと都道府県の区域図が違うときは、どちらを使いますか?

法的な指定の有無と境界は、都道府県の最新の告示図書で確認します。ハザードマップはおおよその状況を見るための地図で、更新時期や縮尺が異なることがあります。両方の取得日を残し、表示が食い違うときは、都道府県の担当部署へ地番と図面を示して確認してください。

売却活動中に新しくレッドゾーンへ指定されたら、契約はどうなりますか?

まず広告、販売図面、重要事項説明書、査定の前提を更新し、建物への重なりと建築の条件を調べ直します。すでに売買契約を結んでいる場合、指定によって契約が自動的に解除されるとは限りません。説明の内容、契約条項、買主の目的、融資への影響を、仲介会社と、必要に応じて弁護士へ確認します。

移転などの勧告を受けた家でも売却できますか?

勧告を受けたことだけで、売買が自動的に禁止されるわけではありません。ただし、安全性と行政対応を曖昧にしたまま売り出すべきではありません。勧告書、対象範囲、必要な対応、移転・改修支援の条件を確認し、売却する場合はその内容を買主へ明示します。

区域に指定されたら、行政が買い取るか、値下がり分を補償してくれますか?

少なくとも土砂災害防止法には、区域指定だけを理由に行政が土地を買い取ったり、売却価格の下落分を補償したりする一般的な制度はありません。移転・改修への補助や融資は別にありますが、勧告の有無、建物の状態、自治体の制度・予算などの条件があります。自治体から対象と金額を書面で確認できるまでは、売却の収支に含めないでください。

売る前に古家を解体したほうがよいですか?

安全上の緊急対応や行政上の必要がない限り、再建築の条件と建物付きの査定を確認する前に解体しないでください。今の建物を使いたい買主を失いますし、解体したあとに希望する建物を建てられないとわかっても、元には戻せません。現況のまま仲介、解体後の土地売却、直接買取を、同じ時点で比べてから決めます。

まとめ|最初にするのは値下げではなく、区域と建物の確認

土砂災害防止法上、レッドゾーンに指定されたことだけを理由に、既存の家や土地の通常の売買が禁止されることはありません。売却の難しさを分けるのは、区域の色ではなく、敷地・建物との重なり、区域指定と建築の時期、構造資料、買主の使い方、融資の条件です。

最初にするのは値下げではありません。都道府県の最新の告示図書を取り、公図・測量図・配置図と照らし合わせて、建物にどこまで区域が重なるかを確認します。そのうえで、建築士と行政に、今の建物を使う場合と建て替える場合の条件を尋ね、同じ資料を使って現況仲介・対策後の仲介・直接買取を比べてください。

区域の境界、建物の安全性、行政対応がわからないまま売り出したり、先に解体したりしないこと。

全国一律の減額率ではなく、査定の根拠と費用の内訳を見ること。この順番で進めれば、根拠のない値下げや説明漏れによるトラブルを抑えやすくなります。

出典

情報確認日:2026年7月24日

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