空き家に引き取り先が見つかる可能性はあります。ただし、どんな空き家でも無料で引き取ってもらえるわけではありません。
価格を0円にしても、受け手には登記や税金がかかり、取得後は修繕、解体、管理などの負担が生じます。残置物(家の中や敷地に残った家具・荷物)の処分や測量をどちらが負担するかは、契約条件によって変わります。
まず確認するのは、値下げ幅ではなく、建物の安全性、名義、接道(敷地が道路にどう接しているか)、建て替えの可否、境界、残置物です。差し迫った危険がなければ、解体や全面リフォームの前に、今の状態で仲介・買取の査定を取りましょう。
この記事では、引き取り方法ごとのお金の流れ、0円でも引き取り手がつかない原因、手放す方法を試す順番と費用、名義が外れたかの確認までを順に説明します。
- 買取・0円譲渡・有償引取の違い
- 引き取り手がつかない原因
- 空き家を手放す7つの方法
- 0円譲渡の税金と契約
- 有償引取と国庫帰属の注意点
土地・建物の登記事項証明書、固定資産税の課税明細、建物の内外を写した写真、直近1年の管理費が分かる資料をまとめます。全部そろわなくても、手元にあるものから相談を始めて構いません。
屋根材が落ちそう、建物が傾いている、庭木が隣地へ倒れそうといった場合は、安全を優先してください。立入りを避け、空き家がある市区町村の窓口や建築士などへ相談します。危険がない場合は、引き取り先を探す前に解体や全面リフォームを発注しないことが基本です。
この記事は、日本国内にある個人所有の空き家とその敷地を想定しています。共有者との争い、差押え、成年後見、農地、借地、相続放棄などが関係する場合は、一般的な手順だけで進めず、司法書士、弁護士、税理士、土地家屋調査士、自治体などへ先に相談してください。
\ まずは、今の状態で売れるか確かめる /
空き家の引き取り方法とお金の流れ
「空き家を引き取ってほしい」という一言では、取引の中身は決まりません。売却代金を受け取るのか、無償で譲るのか、引取料を支払うのかによって、契約、税金、確認すべき相手が変わります。
| 方法 | お金の主な流れ | 新しい所有者 | 最初に確認すること |
|---|---|---|---|
| 仲介による売却 | 買主から売主へ売却代金 売主は仲介手数料などを負担 | 個人・法人などの買主 | 成約予想価格 売主負担 販売期間 |
| 不動産会社の買取 | 買取会社から売主へ代金 | 買取会社 | 最終価格 減額条件 決済日 |
| 0円・無償譲渡 | 売買代金はなし 登記費用や税金などは別に発生 | 個人、法人、隣地所有者などの受け手 | 税金 登記 費用と責任の分担 |
| 自治体などへの寄附 | 対価はなし 相手の受入承諾が必要 | 自治体、公益法人など | 利用目的 受入条件 税金と登記 |
| 有償引取 | 今の所有者から事業者などへ引取料 | 契約で定めた取得者 | 契約相手 総額と支払時期 移転登記 |
| 相続土地国庫帰属制度 | 申請者が審査手数料と承認後の負担金を国へ納付 | 国 | 申請資格 土地の要件 必要費用 |
無料なのが相談や査定だけで、契約後は引取料、調査費、登記費などが発生するサービスもあります。契約の名称ではなく、誰がお金を払い、誰の名義へ所有権を移すのかで判断してください。
0円でも空き家の引き取り手がつかない理由
受け手が見ているのは、物件価格だけではありません。取得した後に出ていくお金や手間と、住む・貸す・売る・隣地と一体利用するといった価値を比べています。
取得時の税金・登記・契約費用
+ 修繕・解体・残置物処分・測量などの費用
+ 固定資産税・管理・保険など将来の負担
+ 法律上の制限、境界、権利が不明であるリスク
これらの負担が利用価値を上回れば、価格を0円にしても取引は動きません。主な原因は次の五つです。
住宅需要の少ない立地
交通、買い物、医療、仕事などの条件が弱い地域では、住宅として使いたい人が限られます。別荘地や管理組合のある土地では、年会費や管理費も受け手の負担です。
ただし、「住宅として売れない」と「誰にも使えない」は同じではありません。隣地と合わせて使いたい人、倉庫や工房を探す人、地域活動の場所を必要とする団体など、用途を変えると候補が出ることがあります。
修繕・解体・残置物処分の費用
雨漏り、傾き、腐食、設備の故障、擁壁(高低差のある土地を支える壁)、浄化槽、井戸、石綿(アスベスト)の可能性があると、受け手は取得後の支出を多めに見積もります。室内に家財が残っていれば、処分費も加わります。
売主が先にすべて片付けることが、必ずしも有利とは限りません。買取会社や自分で直して使う人には、残置物込みのほうが都合のよい場合もあります。家族の重要品だけを持ち出し、写真を使って今の状態で引き渡せるかを確認してください。
再建築不可・接道なし・農地などの利用制限
建物を壊すと建て直せない、車で入れない、農地を別の用途に使うには手続が必要といった物件は、検討できる人が減ります。
特に避けたいのは、建て替えできるか分からないまま解体することです。現在の建物を使い続ける選択肢まで失う可能性があります。所在地の建築指導窓口や不動産会社へ、接道と建て替えの可否を確認してください。
名義・登記・境界が未整理の物件
売主と登記上の所有者が違う、相続人や共有者の合意がない、建物が未登記のまま、抵当権が残っている、境界で隣地と争っているといった状態では、使い道があっても取引を進めにくくなります。
相続登記は2024年4月1日から義務化され、それ以前の相続も対象です。以前の相続で名義を変えていない場合の期限は、原則として2027年3月31日です。名義が亡くなった人のままなら、募集と並行して司法書士または法務局へ相談してください。
2026年4月1日からは、登記上の住所や氏名が変わったときの変更登記も義務になりました。変更から2年以内に申請し、2026年3月31日以前の変更は2028年3月31日までが期限です。売主の今の住所が登記上の住所と違う場合、所有権を移す前に住所の変更登記が必要になるため、登記事項証明書で住所も確かめておきます。
亡くなった人が所有していた不動産の所在地が分からない場合は、2026年2月2日に始まった所有不動産記録証明制度を利用できることがあります。ただし、登記記録の氏名・住所が検索条件と一致しない不動産などは表示されない場合があるため、固定資産税の課税明細や名寄帳もあわせて確認します。
未確認事項が多い物件
「古いので詳しいことは不明」「今の状態で引き渡します」だけでは、受け手は雨漏り、境界、残置物、建て替え、税金などの負担を重めに見積もるしかありません。
分からないことを無理に断定する必要はありません。「確認済み」「未確認」「売主が負担する」「受け手にお願いする」に分けて書くだけでも、受け手は総費用を計算しやすくなります。
空き家の引き取り先が見つからない段階別の原因
「引き取り先が見つからない」は結果にすぎません。募集がどこで止まったかによって、原因と次に確認すべきことが変わります。
| 現在の状況 | 考えられる原因 | 次に確かめること |
|---|---|---|
| 不動産会社が募集前に断った | 営業地域、物件の種類、低価格取引の採算が合わない | 断った理由 低価格物件を扱う会社や空き家バンクの有無 |
| 売り出したが問い合わせがない | 価格、情報量、用途、広告先、地域の需要が合っていない | 閲覧数と問い合わせ数 競合物件 想定する買主 |
| 内覧はあるが申込みがない | 建物の状態、改修費、残置物と価格の合計が重い | 見送り理由 現況引渡しと売主対応の条件差 |
| 申込み後に契約・決済まで進まない | 融資、接道、建て替え、未登記、境界、権利に問題がある | 取引を止めた具体的な資料 解消すべき条件 |
| 0円で掲載しても反応がない | 受け手の総負担が重い、情報が足りない、掲載先が合わない | 年間費用 必要な工事 利用制限 未確認事項 |
| 複数の買取会社に断られた | 再販売の見込みがない、または共通の法令・権利問題がある | 各社が同じ理由を挙げたか 会社ごとの取扱対象外か |
1社に断られただけなら、その会社の営業地域や仕入れ方針に合わなかっただけかもしれません。一方、複数社が同じ資料を見て同じ問題を挙げたなら、査定先を増やすより、その問題を整理するほうが先です。
\ 1社で断られても、他社に聞いてみる /
売れない空き家を手放す7つの方法と試す順番
解体や高額な引取料の支払いは、後戻りしにくい選択です。建物に差し迫った危険がなければ、今の状態で試せる方法から順に当たります。
| 順番 | 方法 | 向いている状況 | 主な注意点 | 完了を確認する状態 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 今の状態で仲介・低価格売却 | 一般の買主が使える可能性がある | 売出価格と成約予想価格を混同しない | 決済と所有権移転登記 |
| 2 | 専門分野の買取 | 期限がある、改修や片付けを任せたい | 価格、売主負担、減額条件を比べる | 決済と所有権移転登記 |
| 3 | 空き家バンク・隣地・用途別マッチング | 地域や特定用途に需要がありそう | 自治体やサイトが契約当事者になるとは限らない | 契約と所有権移転登記 |
| 4 | 0円・無償譲渡 | 代金より管理負担の終了を優先する | 税金、登記費用、責任を合意する | 所有権移転登記と費用精算 |
| 5 | 自治体・公益法人などへの寄附 | 相手に公共・事業利用の目的がある | 相手が承諾しなければ成立しない | 受入決定と所有権移転登記 |
| 6 | 相続土地国庫帰属制度の事前相談 | 相続などで取得した土地が要件を満たしそう | 建物付きは申請できない 相談前に解体を決めない | 承認後、負担金を納めて国へ帰属 |
| 7 | 有償引取 | 市場・0円譲渡・公的制度でも出口がない | 前払い、追加料金、登記、引取後の管理を確認 | 移転後の登記事項証明書 |
倒壊のおそれがあれば、安全対応が先です。また、処分期限が迫っている場合は、仲介だけを長く続けず、買取や有償引取の条件を同時に比べる方法もあります。
仲介・買取の条件と仲介手数料の特例
仲介については、今の状態で実際に売れると見込む価格、販売期間、想定する買主を確認します。買取については、最終価格、価格が確定する日、決済可能日を聞いてください。
あわせて、解体、測量、残置物撤去などを売主が負担する条件と、取扱いが難しい場合の直接の理由を書面でもらいます。「査定額」だけでは、手取りや売却可能性を判断できません。
2024年7月1日から、売買価格800万円以下の宅地・建物には仲介手数料の特例があります。公式には「低廉な空家等」と呼ばれますが、実際に空き家であるかどうかは問いません。
事前に依頼者と合意することなどを条件に、一方の依頼者から受け取れる仲介手数料の上限は税込33万円です。通常の計算式より高くなる場合もあるため、媒介契約を結ぶ前に、特例を使うかどうかと実際の支払額を確認してください。
低価格の物件でも不動産会社が扱いやすくなる一方、売買代金より仲介手数料が大きくなることがあります。上限額ではなく、実際に支払う金額と売却後の手取りで判断してください。
\ 解体・片付けの前に、条件を聞く /
空き家バンクの仕組みと自治体ごとの違い
空き家バンクは、売りたい・貸したい所有者と、使いたい人をつなぐ仕組みです。登録しても自治体が買い取るわけではなく、買主や借主が見つかることを保証する制度でもありません。
全国版空き家・空き地バンクでは、参加自治体の物件をまとめて探せます。ただし、0円・少額物件を登録できるか、老朽化・残置物・未登記建物がある物件を扱うか、交渉や契約を誰が支援するか、改修や片付けの補助があるかは自治体ごとに異なります。
たとえば橋本市の空き家バンクでは、2024年度から、0円または1万円未満で譲る「無償譲渡物件」も扱っており、無償譲渡物件に限って更地も登録できます。一方、交渉と契約は当事者の間で行い、市は介入しません。全国共通の運用ではないため、物件所在地の自治体へ確認してください。
空き家バンクで反応がなくても、隣の土地の所有者には、駐車場、通路、庭、建て替え時の敷地として価値があるかもしれません。直接話しにくい場合は、地域の不動産会社を通して意向を確認できます。
自治体への寄附と受け入れ条件
贈与や寄附は、渡す側だけでは成立せず、受ける側の承諾が必要です。自治体への寄附では、取得後の管理費や解体費が公費負担になるため、公共利用の予定がない不動産を受け付けない自治体があります。
たとえば周南市では、空き家などの不動産の寄附を原則として受け付けていません。生駒市でも、都市計画道路にかかる土地など、公共スペースとして使う必要性が高いものを除き、寄附を受け付けていません。
公益法人、NPO、自治会へ譲る場合も、相手に利用目的と維持費を負担できる体制が必要です。個人が法人へ不動産を寄附すると、原則として時価で譲渡したものとみなされる場合があります。国・地方公共団体への寄附や、承認を受けた一定の公益法人への寄附では扱いが異なるため、契約前に税理士または税務署へ確認してください。
空き家の0円譲渡に必要な物件資料
0円譲渡では、きれいな紹介文より、受け手が総費用を計算できる資料のほうが役立ちます。受け手が引き継ぐ可能性のある負担を、欠点や未確認事項も含めて一枚にまとめておきましょう。
資料には、次の内容を書いてください。確認できていない項目も削除せず、「未確認」と書いて確認先を示します。
| 確認項目 | 資料に書く内容 |
|---|---|
| 不動産と権利 | 所在地、地番、家屋番号、面積、登記上の所有者、共有者、相続登記、抵当権の状況 |
| 建物の状態 | 構造、築年、雨漏り、傾き、設備の故障、修繕履歴、残置物の量 |
| 土地の条件 | 接道、建て替えの可否、用途地域、農地、境界、越境の状況 |
| 付帯設備・土地上の物 | 井戸、浄化槽、擁壁、樹木、物置、私道の共有持分など |
| 毎年かかる費用 | 固定資産税、管理費、草刈り、保険など、直近1年間にかかった金額 |
| 費用と責任の分担 | 登記、測量、残置物処分、修繕などを、売主と受け手のどちらが負担するか |
| 未確認事項 | まだ確認できていないことと、市区町村、不動産会社、司法書士などの確認先 |
以下は架空の物件を使った記入例です。実在する物件や成約事例ではなく、金額も相場を示すものではありません。
所在・規模
A県B市。宅地210㎡、木造2階建て80㎡、1978年築。
名義・担保
所有者1名。相続登記済み。登記事項証明書上、抵当権なし。
建物
2階天井に過去の雨漏り跡あり。現在の漏水、耐震性、給排水は未調査。
接道・境界
建て替えの可否は未確認。北・西側に境界標あり、東・南側は未確認。確定測量は未実施。
残置物・年間負担
家具・衣類が2室分。固定資産税4万2,000円、草刈り2万4,000円。
譲渡条件
譲渡代金0円。登記費用と取得側の税金は受け手負担を希望。残置物、責任範囲、引渡日は契約書で合意する。
欠点を隠すより、「何が分からないか」と「どこへ確認すればよいか」を書いたほうが、受け手は調査費を見積もれます。すべてを売主負担で調べ切る必要はなく、受け手が現れた段階で、誰が何を確認するかを決める方法もあります。
0円譲渡でかかる贈与税・不動産取得税・登録免許税
個人から個人へ無償で譲ると、受け手に贈与税がかかる場合があります。著しく低い価格で売った場合も、時価との差額が贈与とみなされることがあります。
暦年課税の贈与税は、1年間(1月1日〜12月31日)にもらった財産の合計から110万円の基礎控除を引いて計算します。その年に受けたほかの贈与も合算するため、空き家の評価額だけでは税額を判断できません。
受け手には不動産取得税がかかる場合もあります。贈与による所有権移転登記の登録免許税は、原則として固定資産課税台帳の価格などをもとに税率2%で計算します。契約で費用負担を決めても、法律上の納税義務者そのものが入れ替わるわけではありません。
税額は、物件の評価、売主と受け手の関係、受け手が個人か法人かでも変わります。固定資産税評価証明書などを用意し、契約前に税理士、税務署、都道府県税事務所へ確認してください。
0円譲渡の契約書で決める5項目
無償で譲る場合も、口約束と鍵の受け渡しだけで終えないでください。少なくとも次の内容を、契約書と物件状況の資料に残します。
- 対象と取引の形
土地、建物、私道持分、附属建物の表示と、0円譲渡・少額売買・別サービスの有無 - 所有権と登記
所有権を移す日、登記申請日、担当する司法書士、完了の確認方法 - 費用と基準日
登録免許税、司法書士報酬、固定資産税、管理費、公共料金などの負担区分 - 物件の状態と責任
残置物、雨漏り、越境、未登記、井戸などの既知事項と、譲渡後に責任を負う範囲 - 不成立・解除時の処理
登記や許可が進まない場合の解除、費用、書類や鍵の返還、引渡し後の管理
登記が終わったら、新しい登記事項証明書を取り、新しい所有者と対象不動産を確認してください。
空き家を手放す費用の比べ方
売却と有償引取を比べるときは、広告に出ている価格や引取料だけで判断できません。所有権が移るまでに、自分が実際に負担する総額で比べます。
= 仲介・引取・契約・登記・測量・撤去などの売主負担
+ 成立までの固定資産税・管理費
− 売主が受け取る売買代金
税金まで含める場合は、売主側の税額を加えます。抵当権が残っていれば抹消費用も加え、ローン返済額は取引費用と分けて資金を確認してください。
売却で利益(譲渡所得)が出る場合は、低未利用土地等の特例で、譲渡所得から最大100万円を差し引けることがあります。都市計画区域内の空き地・空き家などを、建物を含めて500万円以下(市街化区域などは800万円以下)で売る場合が対象で、2028年12月31日までの譲渡に適用されます。売った年の1月1日時点で所有期間が5年を超えること、親子や夫婦など特別な関係にある人への売却でないこと、売却後に買主が利用すること、市区町村の確認を受けた書類を確定申告書に添えることなどが条件です。
以下は架空の条件による計算例です。実際の相場や標準料金を示すものではなく、当事者によって変わる税金は含めていません。
| 項目 | 10万円で仲介売却 | 0円譲渡 | 有償引取 |
|---|---|---|---|
| 売主が受け取る代金 | 10万円 | 0円 | 0円 |
| 仲介・マッチング・引取の費用 | 33万円 | 11万円 | 44万円 |
| 契約・証明・登記関連の売主負担 | 3万円 | 6万円 | 9万円 |
| 成立までの管理・保有費 | 6万円 | 3万円 | 0円 |
| 税金を含める前の実質的な負担額 | 32万円 | 20万円 | 53万円 |
| この時点の確定度 | 買主は未確定 | 受け手は未確定 | 審査・契約の条件付き |
この例では0円譲渡の費用が最も少なく見えますが、受け手が現れなければ成立しません。比較するときは、総額だけでなく、費用が確定する日、所有権移転登記の予定日、それまでの管理負担、不成立時の返金、引渡し後に残る責任も確認してください。
\ 売れた場合の金額も並べて比べる /
空き家の有償引取サービスの注意点
有償引取は、所有者がお金を払い、事業者などへ不動産の所有権を移す方法です。通常の売買とはお金の向きが逆ですが、将来の管理費や危険箇所への対応費を含めて考えると、候補になる場合があります。
避けたいのは、料金を払っても所有権移転登記がされないこと、通常の売却が可能な物件を比較せず有償引取へ回すこと、取得後に適切な管理が行われないことです。
国土交通省が2026年1月にインターネット上で調べたところ、有償引取りをサービスに含む事業者は71社で、2024年12月時点の59社から増えていました。宅地建物取引業の免許を持つ事業者は約60%です。事業者への相談では、相続土地国庫帰属制度を断られた物件に関するものが目立っています。この71社は国が登録・認定した事業者数ではなく、安全性を保証する資料でもありません。
業界団体(不動産有料引取業協議会)の自主規制では、引取料金の支払いを所有権移転登記の申請時以後とし、前金を原則として受け取らない考え方が示されています。2026年2月時点では、契約前に「調査費」「申込金」などの名目で金銭を受け取らないことや、契約が成立しなかった場合に受け取った金銭を全額返すことを盛り込んだガイドラインも検討されています。ただし、いずれも法律による一律の規制ではありません。支払いと登記の順序は、利用者自身が契約書で確認する必要があります。
有償引取の契約前に書面で決める5項目
- 契約相手と取得者
サービス名ではなく、契約相手と所有権を取得する個人・法人の正式名称、住所、役割 - 対象不動産
土地、建物、私道持分、物置など、所有権を移す範囲 - 総額と追加料金
引取料、司法書士、調査、出張、測量、撤去などを含む税込総額と、料金が増える条件 - 登記と支払い
担当司法書士、必要書類、申請日、完了確認、支払日、引き取れなかった場合の返金 - 責任と引取後の管理
解除、違約金、契約不適合責任、草刈り、建物の安全、近隣対応、税金・管理費の負担
請求の理由、業務内容、不成立時の返金条件を確認します。所有権移転登記に必要な書類を司法書士が確認したうえで、登記申請と支払いをどう連動させるかを書面にしてください。
相手が指定する司法書士だけでは不安なら、自分で選んだ司法書士に契約書を確認してもらう方法もあります。
宅地・建物を扱う事業者については、国土交通省の宅地建物取引業者検索で、広告上の会社名、法人名、免許番号、所在地が一致するかを確認できます。ネガティブ情報等検索サイトでは、行政処分の履歴も確認できます。
ただし、免許があるだけで安全とは判断できません。契約相手と取得者、引取後の管理を担う法人が異なる場合は、それぞれの役割を確認してください。
\ 有償引取を決める前に、査定も取る /
相続土地国庫帰属制度の条件と費用
相続土地国庫帰属制度は、相続または相続人への遺贈(遺言によって財産を受け取ること)で取得した土地を、要件を満たす場合に国へ帰属させる制度です。売買などで取得した人や法人は、原則として申請できません。
共有地では、要件を満たす相続人などを含め、共有者全員で申請します。
建物が未登記でも、実際に建っていれば申請できません。制度を使えるか確認する前に解体を発注すると、解体費だけが残る場合があります。先に法務局へ相談してください。
次のような土地は、申請できない、または審査で承認されない場合があります。
- 建物、抵当権、賃借権などがある
- 第三者の利用が予定されている、または土壌汚染がある
- 境界が明らかでない、所有権の範囲に争いがある
- 一定の崖、地上・地下の障害物などがあり、管理や処分に過大な負担がかかる
- 隣地との争い、災害防止、森林整備、管理費の滞納などにより、国の管理負担が大きい
審査手数料は、登記上の土地1区画(1筆)につき1万4,000円です。申請を取り下げた場合、却下された場合、承認されなかった場合も返還されません。
承認後は、10年分の標準的な管理費用を考慮した負担金を納めます。1筆20万円が基本ですが、土地の種類、場所、面積によっては20万円を超えます。通知が届いた日の翌日から30日以内に納め、納付した時点で土地の所有権が国へ移ります。
解体・残置物処分・必要な整備費
+ 1筆ごとの審査手数料
+ 承認後の負担金
+ 国へ移るまでの固定資産税・管理費
土地の登記事項証明書、地図、写真、相続関係の資料を用意し、土地がある都道府県の法務局・地方法務局の本局へ事前相談します。申請資格、土地の条件、必要書類、負担金の見込みを先に確かめてください。
空き家の解体前に確認する4点
解体すると土地として検討してもらいやすくなる場合があります。一方、接道、境界、立地、需要の問題は残ります。建て替えできない土地では、建物をなくしたことで使い道が狭くなることもあります。
差し迫った危険がなければ、次の四つを確認してから工事を発注します。
- 今の状態で売る場合の成約予想価格または買取条件
- 更地にした場合の成約予想価格と、売れなかった場合の見通し
- 現地調査にもとづく解体見積りと、追加料金が発生する条件
- 解体補助、固定資産税の扱い、国庫帰属制度を利用できる見込み
住宅が建っている土地には、要件を満たすと固定資産税などの負担を軽くする住宅用地特例があります。建物を壊すと、毎年1月1日時点の状態や土地の利用状況によって、翌年度以後の扱いが変わる可能性があります。
一方、建物を残していても、市区町村から管理不全空家または特定空家に関する勧告を受けると、住宅用地特例の対象外になる場合があります。
「解体すると固定資産税が必ず6倍になる」「建物を残せば軽減が続く」とは一律に決まりません。工事を契約する前に、所在地の市区町村へ翌年度以後の扱いを確認してください。
自治体によっては解体補助を利用できますが、交付決定前に契約や着工をすると対象外になる制度もあります。対象建物、申請時期、施工業者、上限額を、所在地の空き家窓口へ確認してください。
\ 解体の前に、建物付きの査定額を知る /
引き取り完了の確認と所有権移転登記
契約書に署名した、鍵を渡した、引取料を払ったというだけでは、登記名義が変わったことまでは確認できません。契約から登記完了までを、次の順で進めます。
- 対象と契約相手を照合する
土地、建物、附属建物、私道持分と、所有権を取得する個人・法人を登記資料で確認します。 - 必要書類を司法書士が確認する
登記識別情報、印鑑証明書、委任状など、所有権移転登記に必要な書類をそろえます。 - 支払い・引渡し・登記申請を連動させる
代金または引取料、鍵、必要書類の受け渡しと、登記申請の時期を契約書で定めます。 - 登記完了後の名義と管理先を確認する
登記事項証明書で新しい所有者を確認し、固定資産税、管理組合、保険、電気・水道、近隣の連絡先を切り替えます。
登記申請の受付資料は、申請したことを示す資料です。最後は登記完了後の登記事項証明書を取り、新しい所有者と、移す予定だった土地・建物のすべてが反映されているかを確認してください。
契約で定めた移転時期までは、管理を止めないでください。国庫帰属制度でも、承認だけでは所有権は移らず、負担金を納めた時点で国へ帰属します。
先に専門家へ相談すべきケース
次のいずれかに当てはまる場合は、募集を続ける前に、その事情に合う窓口へ相談してください。
| 状況 | 先にすること | 主な相談先 |
|---|---|---|
| 屋根・外壁の落下、倒壊、火災などの危険がある | 立入りを避け、安全措置と公的支援を確認する | 市区町村の空き家・建築窓口、建築士、対応業者 |
| 登記上の所有者が亡くなった人のまま | 相続人、遺産分割、相続登記を整理する | 司法書士、必要に応じて弁護士 |
| 抵当権・差押えが残っている | 残債、滞納額、抹消の条件を確認する | 債権者、司法書士、必要に応じて弁護士 |
| 共有者が反対している、連絡が取れない | 勝手に売却・解体・残置物処分をしない | 弁護士、司法書士 |
| 相続放棄を検討中 | 不動産や家財を処分する前に手続を確認する | 家庭裁判所、弁護士 |
| 境界・越境・通行で争いがある | 争点と必要な手続を整理する | 土地家屋調査士、弁護士 |
| 建て替えられるか分からない | 解体前に道路と建築の条件を確認する | 自治体の建築指導窓口、建築士 |
| 法人への寄附・0円譲渡を考えている | 渡す側と受ける側の税金を確認する | 税理士、税務署、都道府県税事務所 |
| 有償引取で前払いを求められた | 支払時期、返金、登記、契約相手を確認する | 司法書士、弁護士、宅建業の相談窓口 |
空き家を放置すれば、劣化や近隣への影響が進みます。市区町村から管理不全空家・特定空家に関する勧告を受けると、住宅用地特例から外れる場合があります。
建物の設置や保存に問題があり、他人へ損害を与えた場合は、民法717条にもとづく責任が問題になることもあります。所有権が移るまでは、点検、草木の手入れ、戸締まり、危険箇所への対応を続けてください。
空き家の引き取りでよくある質問
以下の回答は一般的な原則です。実際に使える方法や税金は、物件の状態、取得の経緯、当事者の関係によって変わります。
【まとめ】空き家の引き取り先は受け手の負担を減らして探す
空き家に引き取り先が見つからない理由は、価格だけではありません。0円にしても、登記、税金、修繕、解体、管理、法律上の制限、境界、権利の未確認事項が残れば、受け手の負担は重いままです。
まず、登記事項証明書、固定資産税の課税明細、現在の写真、年間管理費が分かる資料を用意します。同じ資料を使い、現在の状態での仲介、専門分野の買取、空き家バンク、0円譲渡を順に検討してください。
有償引取や国庫帰属制度を選ぶ場合も、申込みや契約だけでは終わりません。費用、解除、責任、所有権と管理負担が移る時期を確認し、登記完了後の名義まで確かめます。
契約内容と所有権移転登記の両方を確認することで、「料金を払ったのに名義が残っている」といったトラブルのリスクを下げられます。
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本記事は一般的な情報であり、個別の税務・法務・建築上の判断を示すものではありません。物件、所在地、取得経緯、当事者、契約内容によって扱いが変わるため、法務局、税務署、都道府県税事務所、市区町村、不動産会社、司法書士、税理士、土地家屋調査士、建築士、必要に応じて弁護士へ確認してください。
出典
国土交通省「不動産取引に関するお知らせ・空き家等にかかる仲介手数料の特例」
国土交通省「全国版空き家・空き地バンク」
国土交通省「不動産の『引取サービス』について」
国土交通省「社会資本整備審議会 産業分科会 不動産部会(第43回)参考資料」
国土交通省「空家法とは」
e-Gov法令検索「民法」
法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」
法務省「住所等変更登記の義務化について」
法務省「所有不動産記録証明制度」
法務省「相続土地国庫帰属制度の概要」
法務省「相続土地国庫帰属制度において引き取ることができない土地の要件」
法務省「相続土地国庫帰属制度に関するQ&A」
国税庁「贈与税がかかる場合」
国税庁「個人から著しく低い価額で財産を譲り受けたとき」
国税庁「登録免許税の税額表」
国税庁「贈与等により土地建物を法人に譲渡したとき」
国税庁「No.3226 低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の特別控除」
東京都主税局「不動産取得税」
裁判所「相続の放棄の申述」
橋本市「空家バンク制度について」
周南市「空き家の解体・売却・寄附に関するQ&A」
生駒市「不動産を寄附したい」
リビンマッチ「不動産一括査定・売却はリビンマッチ」

