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空き家の引き取り先は?もらい手がなく無料でも売れない家を手放す方法

空き家に引き取り先が見つかる可能性はあります。ただし、どんな空き家でも無料で引き取ってもらえるわけではありません。

価格を0円にしても、受け取る側の負担は0円になりません。登記、税金、修繕や解体、残置物(家の中や敷地に残った家具・荷物)の処分、そして毎年の管理。これらはすべて、受け取った人が引き継ぎます。

だから、引き取り先が見つからないときに効くのは、値下げの上乗せではありません。受け手が負う費用と、物件について「分からないまま」になっている点を、一つずつ減らすことです。

進める順番には理由があります。後戻りできる確認から始め、お金が出ていく方法は最後に回します。

  1. 危険を確認する
    屋根や外壁が落ちそうか、建物が傾いていないか、庭木が隣地へ倒れそうかを見ます。
  2. 土地・建物の条件を整理する
    名義、接道(敷地が道路にどう接しているか)、建て替えの可否、境界、残置物を確かめます。
  3. 今の状態のまま売れるかを調べる
    解体や片付けの前に、仲介(不動産会社に買主を探してもらう方法)と買取(不動産会社が自ら買う方法)の両方を試します。
  4. 使ってくれる人を探す
    空き家バンク、隣地の所有者、0円物件のマッチングサービスを検討します。
  5. 条件付きの方法を比べる
    自治体などへの寄附、相続土地国庫帰属制度、有償引取を比較します。
  6. 名義が変わったことまで確認する
    契約や鍵の受け渡しで終えず、所有権移転登記が完了したかを登記事項証明書で確かめます。

最初に用意したい4点
土地・建物の登記事項証明書(法務局で取れる、所有者や担保などが分かる書類)、固定資産税の課税明細、建物の内外を写した写真、直近1年の管理費が分かる資料。この4点があれば、どこへ相談しても同じ条件で話ができます。全部そろわなくても、手元にあるものから始めて構いません。

危険がないなら、引き取り先を探す前に解体や全面リフォームを発注しないでください。費用をかけても引き取り先が決まるとは限らず、建物を壊したことで「この家を使いたい」という人を逃すこともあります。ただし、屋根材が落ちそう、建物が傾いている、庭木が隣地へ倒れそうといった場合は別です。売却の都合より安全を優先し、空き家がある市区町村の窓口や建築士へ相談してください。

この記事が対象にするのは、日本国内にある個人所有の空き家とその敷地です。共有者と争っている、差押えを受けている、成年後見が必要、農地や借地である、相続放棄を検討中。こうした事情があるときは、一般的な手順だけで進めないでください。司法書士、弁護士、税理士、土地家屋調査士、自治体など、その事情に合う窓口へ先に相談したほうが早く済みます。

目次

空き家の引き取りは「買取」「0円譲渡」「有償引取」でお金の向きが違う

「空き家を引き取ってほしい」という一言では、取引の中身は決まりません。お金を受け取るのか、無償で譲るのか、逆に引取料を払うのか。この違いで、結ぶ契約も、注意すべき点も変わります。

図解|空き家を手放すときのお金の向き

仲介・買取
お金の向き
買主・買取会社 → 今の所有者
新しい所有者:買主・買取会社

0円譲渡・寄附
お金の向き
売買代金はなし(登記費用と税金は別に発生)
新しい所有者:受け手

有償引取
お金の向き
今の所有者 → 引取事業者
新しい所有者:引取事業者

同じ「引き取り」でも、誰がお金を出し、誰が新しい所有者になるかは方法ごとに違います。

※表は横にスクロールできます。

方法お金の主な流れ新しい所有者最初に確認すること
仲介による売却買主から今の所有者へ売却代金。売主は仲介手数料などを負担個人・法人などの買主実際に売れると見込む価格、売主の負担、販売にかかる期間
不動産会社の買取買取会社から今の所有者へ代金買取会社最終価格、減額の条件、残置物・測量・責任の範囲
0円・無償譲渡売買代金はなし。登記費用、税金、支援の費用は別に発生個人、法人、隣地の所有者など税金、所有権移転登記、費用の分担
自治体などへの寄附対価はなし。受け入れには相手の承諾が必要自治体、公益法人(公益のために活動する法人)など利用目的、受入条件、税金、登記
有償引取(有料引取)今の所有者から事業者へ引取料引取事業者など契約相手、総額、支払時期、移転登記、引取後の管理
相続土地国庫帰属制度申請者が審査手数料と、承認後の負担金を国へ納付申請できる人、建物の有無、対象外になる土地の条件
空き家の引き取り方法と、お金・所有権の動き

「相談無料」「査定無料」は、空き家を無料で引き取るという意味ではありません。無料なのは、相談や査定そのものの費用です。見積もりの後に売買になるのか、0円譲渡になるのか、有料サービスになるのか。契約の名前ではなく、実際のお金と所有権の動きで確かめてください。

空き家が0円でも売れないのは、受け手の負担が利用価値を上回るから

買主が見ているのは、物件価格ではありません。受け取った後に出ていくお金と手間を、その家や土地で得られるものと比べています。

受け手が引き受ける負担
= 取得時の税金・登記・契約費用
+ 修繕・解体・残置物処分・測量などの費用
+ 固定資産税・管理・保険など将来の負担
+ 法律上の制限、境界、権利が分からないことによるリスク

この負担が、住む・貸す・売る・隣地と合わせて使うといった価値を上回れば、価格を0円にしても取引は動きません。上回る理由は、だいたい次の五つに分かれます。

立地や用途に合う需要が少ない

交通、買い物、医療、仕事。この条件が弱い地域では、住宅として使いたい人が限られます。別荘地や管理組合のある土地なら、年会費や管理費そのものが負担になります。

ただし、「住宅として売れない」と「誰にも使えない」は別です。隣の土地と合わせて使いたい人、倉庫や工房として見る人、地域活動の場を探している団体。用途を変えると候補が出てくることがあります。買主像を一つに絞る前に、その土地で法律上できる使い方を確かめてください。

建物の修繕・解体と残置物処分に費用がかかる

雨漏り、傾き、腐食、設備の故障、擁壁(高低差のある土地を支える壁)、浄化槽、井戸、石綿(アスベスト)の可能性。こうした要素があると、受け手は購入後の支出を先に計算します。室内に家財が残っていれば、その処分費も加わります。

では、売主が全部片付ければ解決するのか。そうとも限りません。買取会社や、自分で直して使いたい人には、残置物込みのほうが都合がよい場合もあります。まず家族の重要品だけを持ち出し、片付け前の写真と一覧を使って、今の状態のまま引き渡せるかを聞いてみてください。

接道・建て替え・農地など、利用に制限がある

建物を壊すと建て直せない、車で入れない、農地を別の用途に使うには手続が必要。こうした物件は、検討できる人がぐっと減ります。

特に避けたいのは、建て替えできるか分からないまま解体してしまうことです。今の建物を使い続けるという選択肢まで、同時に消えます。公図、地積測量図、建築計画概要書(いずれも法務局や自治体で取れる、土地の形や過去の建築内容が分かる資料)を集め、所在地の建築指導窓口や不動産会社に確認してください。

相続・共有・未登記・境界が整理されていない

売主と登記上の所有者が違う。相続人や共有者の合意がない。建物が未登記のまま。抵当権(住宅ローンなどの担保として金融機関が持つ権利)が残っている。境界で隣地と争っている。こうした状態では、使い道があっても買う決断はできません。

相続登記は2024年4月1日から義務になりました。過去の相続も対象で、正当な理由なく期限内に申請しないと過料の対象になる場合があります。名義が亡くなった人のままなら、募集と並行して司法書士か法務局へ相談してください。

亡くなった人がどの不動産を持っていたか分からないときは、2026年2月2日に始まった「所有不動産記録証明制度」も使えます。ただし、登記記録の氏名・住所が検索条件と一致しない不動産は出てこないことがあります。この証明書だけで調査完了とは考えないでください。

分からない点が多く、受け手が高めの費用を想定している

「古いので詳しいことは不明」「今の状態で引き渡します」。この二行だけでは、受け手は雨漏り、境界、残置物、建て替え、税金のすべてを重めに見積もるしかありません。分からない点は、そのまま費用の上乗せになります。

といっても、分からないことを無理に断定する必要はありません。「確認済み」「未確認」「売主が負担する」「受け手にお願いする」の四つに分けて書くだけで、判断材料は増えます。0円譲渡で大事なのは、欠点を隠すことではなく、受け手が自分の負担額を計算できる状態にすることです。

空き家の売却活動がどこで止まったかで、次の相談先は変わる

「引き取り先が見つからない」は結果です。売却が止まった段階が違えば、原因も、次に当たるべき相手も変わります。

※表は横にスクロールできます。

現在の状況考えられる原因次に確かめること
不動産会社が募集前に断った営業地域、物件の種類、低価格取引の採算が合わない断った理由、低価格の空き家を扱う会社や空き家バンクがあるか
売り出したが問い合わせがない価格、情報量、用途、広告先、地域の需要が合っていない閲覧数と問い合わせ数、競合物件、想定している買主
内覧はあるが申込みがない建物の状態、改修費、残置物と価格の合計が重い見送りの理由、売主が直す場合と今の状態で渡す場合の条件差
申込み後に契約・決済まで進まない融資、接道、建て替え、未登記、境界、権利に問題がある取引を止めた具体的な資料と、解消すべき条件
0円で掲載しても反応がない受け手の総負担が重い、情報が足りない、掲載先が合わない年間の費用、必要な工事、利用制限、未確認事項、別の用途
複数の買取会社に断られた買った後に売り直せる見込みがない、または共通の法令・権利問題がある各社が同じ理由を挙げたか、会社ごとに取扱対象外なのか
売却が止まった段階から考える次の確認事項

1社に断られただけなら、その会社の営業地域や仕入れ方針に合わなかっただけかもしれません。一方、別の会社が同じ資料を見て同じ問題を挙げたのなら、査定先を増やしても答えは変わりにくい。その問題を片づけるほうが先です。

売れない空き家の引き取り先は、後戻りできる方法から探す

解体と、高額な引取料の支払い。この二つは後戻りがききません。危険がなければ、今の状態のまま試せる方法から順に当たります。

先に挙げた「売れるかを調べる」「使ってくれる人を探す」「条件付きの方法を比べる」を、具体的な方法に開くと次のようになります。

※表は横にスクロールできます。

順番方法向いている状況主な注意点手放せたと確認できる状態
1今の状態のまま仲介・低価格売却一般の買主が使える可能性がある売出価格と、実際に売れる見込み価格を混同しない代金の決済と所有権移転登記
2専門分野の買取期限がある、改修や片付けを任せたい価格だけでなく、売主の負担と減額条件も比べる代金の決済と所有権移転登記
3空き家バンク・隣地・用途別マッチング地域や特定の用途なら需要がありそう自治体やサイトが契約の当事者になるとは限らない契約と所有権移転登記
40円・無償譲渡代金より、管理負担を終えることを優先する税金、登記費用、契約上の責任を先に合意する所有権移転登記と費用の精算
5自治体・公益法人などへの寄附相手に具体的な公共・事業利用がある相手が承諾しなければ成立しない寄附受入れの決定と所有権移転登記
6相続土地国庫帰属制度の事前相談相続などで得た土地が制度の要件を満たしそう建物付きは申請できない。相談前に解体しない承認後、負担金を納めて国に帰属
7有償引取(有料引取)市場・0円譲渡・公的制度でも出口がなく、費用を払って終えたい前払い、登記未了、契約相手、引取後の管理を確認移転登記後の登記事項証明書
売れない空き家を手放す方法の検討順

ただし、この順番を守らないほうがよい場面もあります。倒壊のおそれがあれば安全対応が先です。期限が迫っているなら、仲介を長く続けるより、買取と有償引取を同時に比べたほうが早いこともあります。国庫帰属を考える場合も、解体や申請を急がず、まず法務局に相談します。どの方法を選んでも変わらないのは、お金を払う前に「所有権を移せる条件」を確かめる点です。

仲介と買取は、解体・片付け前に確認する

まず不動産会社に聞きます。四つをまとめて聞くと答えが混ざるので、分けて質問してください。

  1. 今の状態のまま仲介する場合、実際に売れると見込む価格と期間はどれくらいか
  2. 今の状態のまま買い取る場合、最終価格はいくらで、いつ確定するか
  3. 解体、測量、残置物撤去などを売主が負担するのは、どういう条件のときか
  4. 取扱いが難しい場合、その直接の理由と、判断に使った資料は何か

2024年7月1日から、価格800万円以下の宅地・建物には仲介手数料の特例があります。公式には「低廉な空家等」と呼ばれますが、住んでいるかどうかは関係ありません。事前に依頼者と合意することなどを条件に、依頼者の一方から受け取れる仲介手数料の上限は税込33万円です。契約前に、対象になるかと、実際の手数料額を確かめてください。

この特例のおかげで、低価格の物件を扱ってくれる会社が見つかることはあります。ただし、売主の手取りが増える制度ではありません。売買代金が少額なら、代金より手数料のほうが大きくなることもあります。仲介契約(媒介契約)を結ぶ前に、上限額ではなく実際に払う額を聞いておきます。

空き家バンクは「買い取る制度」ではなく、利用希望者との接点

空き家バンクは、売りたい・貸したい所有者と、使いたい人をつなぐ掲示板のような仕組みです。自治体が買い取ってくれる制度ではありません。全国版空き家・空き地バンクを使えば、参加している自治体の物件をまとめて探せます。ただし、登録できる条件、0円物件の扱い、内覧や契約への関わり方、補助制度は自治体ごとに違います。

たとえば橋本市は、0円物件に加えて、売買価格1万円未満の少額物件も空き家バンクで扱っています。その一方で、交渉と契約に市は介入しないと明記しています。これは一つの自治体の例で、全国共通の運用ではありません。物件がある自治体には、次の点を聞いてください。

  • 0円や少額の譲渡でも登録できるか
  • 老朽化、残置物、未登記建物、建て替えの制限がある物件も対象か
  • 現地確認と掲載写真は誰が行うか
  • 問い合わせ対応、交渉、契約書、登記は誰が担うか
  • 改修、片付け、解体、移住に使える補助制度があるか

空き家バンクで反応がなくても、隣の土地の所有者には価値があるかもしれません。駐車場、通路、庭、建て替えるときの敷地の広さ。隣と一体にすると使い道が生まれるためです。直接話すのが気まずければ、地域の不動産会社を通して意向を確かめる方法もあります。

自治体への寄附は、利用目的がある場合の例外的な選択肢

贈与は、渡す側だけでは成立しません。受け取る側の承諾が必要です。自治体への寄附も同じで、取得後の管理費や解体費は公費から出ます。そのため、公共利用の予定がない不動産を受け付けない自治体もあります。

たとえば周南市は、空き家などの不動産の寄附を原則受け付けていないと案内しています。生駒市も、都市計画道路にかかる土地など、公共スペースとして使う必要性が高いものを除いて受け付けていません。自治体に相談するときは、「不要だから引き取ってほしい」ではなく、道路、防災、地域活動など、自治体側に取得する理由があるかを確かめます。

公益法人、NPO、自治会へ譲る場合も、相手に使う目的と、維持費を払える体制が必要です。法人への寄附では、渡した側に「時価で売ったものとみなす」所得税の問題が生じる場合があります。契約前に、税理士か税務署へ確認してください。

0円譲渡は、欠点まで見える「物件負担票」を作ると進めやすい

0円譲渡では、きれいな紹介文より、受け手が総費用を計算できる資料のほうが効きます。ここでは、受け手の負担を書き出した一覧を「物件負担票」と呼びます。最低限、次の内容を一枚にまとめます。

  • 土地と建物の所在地・地番・家屋番号(登記簿上の土地・建物の番号)・面積
  • 登記上の所有者、共有者、相続登記、抵当権の状況
  • 建物の構造、築年、雨漏り、傾き、設備、修繕の履歴
  • 接道、建て替え、都市計画、農地、境界について確認済みのこと
  • 残置物、井戸、浄化槽、擁壁、樹木、越境(塀や枝などが境界を越えている状態)の状況
  • 固定資産税、管理費、草刈り、保険など直近1年の負担
  • 売主が負担する費用と、受け手に負担してほしい費用
  • 未確認のことと、その確認先

以下は書き方の見本で、架空の物件です。実在する物件や成約事例ではなく、金額も相場を示すものではありません。

0円譲渡用・物件負担票の記入例

所在:A県B市(地番・家屋番号は問い合わせ後に資料で提示)
土地・建物:宅地210㎡、木造2階建て80㎡、1978年築
名義:所有者1名。相続登記済み。登記事項証明書上、抵当権なし
建物:2階天井に過去の雨漏り跡あり。現在の漏水、耐震性、給排水は未調査
接道・建て替え:前面道路の種類と建て替えの可否は未確認。市の建築指導窓口へ照会予定
境界:北・西側に境界標あり。東・南側は未確認。確定測量は未実施
残置物:家具・衣類が2室分。写真一覧あり。家族の重要品は引渡し前に搬出
直近1年の負担:固定資産税4万2,000円、草刈り2万4,000円。管理組合費なし
譲渡条件:譲渡代金0円。所有権移転登記の費用と取得側の税金は受け手負担を希望。残置物、贈与者の責任範囲、引渡日は契約書で合意
未確認:浄化槽の使用可否、東・南側の境界、建て替えの可否

隠すよりも、「何が分からないか」と「どこへ聞けば分かるか」を書いたほうが、受け手は調査費を見積もれます。すべてを売主負担で調べ切る必要もありません。受け手が現れた段階で、誰が何を確認するか、成立しなかったときの費用を誰が持つかを決めれば足ります。

0円でも税金・登記費用はなくならない

個人から個人へ無償で譲ると、受け手に贈与税がかかる場合があります。著しく低い価格で売った場合も、時価との差額が贈与とみなされることがあります。贈与税は、1年間(1月1日〜12月31日)にもらった財産の合計から110万円の基礎控除を引いて計算します。判定にはその年に受けたほかの贈与も入るため、空き家の分だけでは決まりません。不動産の評価額も、売出価格と同じとは限りません。

受け手には不動産取得税もかかる場合があります。贈与で所有権移転登記をするときの登録免許税は、原則として固定資産課税台帳の価格などをもとに、税率2%で計算します。どちらが払うかは契約で決められますが、法律上の納税義務者まで契約で入れ替えられるとは限りません。

「0円だから税金も0円」とはなりません。税額は、売主と受け手の関係や、受け手が個人か法人かでも変わります。固定資産税評価証明書などを用意して、契約前に税理士、税務署、都道府県税事務所へ確認してください。

0円譲渡の契約書で決めること

無償で譲る場合も、口約束と鍵の受け渡しだけで終えないでください。少なくとも次の内容を、契約書と物件状況の資料に書き残します。

  1. 譲渡する土地・建物・共有部分(共有持分)の正確な表示
  2. 0円譲渡か、少額の売買か、別のサービス契約を伴うか
  3. 所有権を移す日と、所有権移転登記を申請する日
  4. 登録免許税、司法書士報酬、契約書、証明書などの費用負担
  5. 固定資産税、管理費、公共料金、保険を切り替える基準日
  6. 残置物、設備、鍵、図面、境界資料をどこまで渡すか
  7. 雨漏り、越境、未登記、井戸など、売主が知っている事実
  8. 引き渡した物件が契約内容と違った場合、贈与者がどこまで責任を負うか。責任を限定するなら、その範囲と例外
  9. 登記や許可が進まない場合の解除、費用、返還
  10. 引渡し後の管理、近隣への対応、連絡先

土地・建物を譲り受けたら、所有権移転登記が必要です。個人同士の取引でも、司法書士や宅地建物取引業者に契約と登記の流れを確認し、登記が終わったら新しい登記事項証明書を取ってください。

空き家を手放す実質コストは、売却代金を差し引いて比べる

「売れる方法」と「お金を払って引き取ってもらう方法」を比べるとき、広告に出ている価格は使えません。所有権が移るまでに自分が出す総額で比べます。

税金を含める前の実質手放しコスト
= 仲介・引取・契約・登記・測量・撤去などの売主負担
+ 成立までの固定資産税・管理費
- 売主が受け取る売買代金

税金まで含めるなら、この金額に売主側の税額を足します。税額は、売買か贈与か、相手が個人か法人かで変わります。抵当権が残っていれば抹消費用も加え、ローン残高の返済に必要なお金は取引費用と分けて計算してください。

架空の条件で計算すると、次のようになります。実際の相場を示すものでも、標準料金でもありません。税金は当事者と物件によって変わるため、表には入れていません。

※表は横にスクロールできます。

項目10万円で仲介売却0円譲渡有償引取
売主が受け取る代金10万円0円0円
仲介・マッチング・引取の費用33万円11万円44万円
契約・証明・登記関連の売主負担3万円6万円9万円
成立までの管理・保有費6万円3万円0円
残置物・測量などの追加負担この例では見込まずこの例では見込まずこの例では見込まず
税金を含める前の実質手放しコスト32万円20万円53万円
この時点の確定度買主は未確定受け手は未確定審査・契約の条件付き
架空条件による実質手放しコストの比較例

この例では0円譲渡がいちばん安く見えます。ただし、受け手が現れなければ成立せず、待っている間の管理費は増え続けます。有償引取は金額が大きくても、引取条件と登記日が決まっているなら、期限を優先する場面では候補になります。

金額が近いときに決め手になるのは、金額以外の条件です。

  • 最終的に誰が買主・無償で受け取る人になるか
  • 価格と費用が確定する日
  • 所有権移転登記を申請し、完了する日
  • それまでの固定資産税、管理、事故の負担
  • 契約できなかった場合の返金と、すでに使った費用
  • 引渡し後に売主へ残る責任
  • 売主側の税金、抵当権の抹消費用、ローン返済に必要な手元資金

有償引取サービスは、前払いより先に「名義が外れる条件」を確認する

有償引取(有料引取)は、所有者がお金を払って、事業者に不動産の所有権を移してもらうサービスです。通常の売買とはお金の向きが逆ですが、将来の管理費や、危険な状態になったときの対応費まで含めて考えると、候補に入ることがあります。

避けたいのは、次の三つです。料金を払ったのに所有権移転登記がされない。普通に売れる物件まで有償引取へ回してしまう。引き取った後、事業者が管理しない。

国土交通省が紹介している自主規制では、引取料金を払うのは所有権移転登記を申請するとき(引渡日)以降とし、前金は原則として払わないとされています。利用時の注意点としては、契約の費用と条件、売却を含むほかの方法との比較、引き取った後の管理方針も挙げられています。

国土交通省の2026年1月調査では、インターネット上で確認できた提供事業者は71社で、うち宅地建物取引業(不動産の売買や仲介を業として行うための免許)を持つ事業者は約60%でした。これは国が登録した事業者数でも、安全性のお墨付きでもありません。同じ資料で紹介されている自主ガイドライン案にも、法的な強制力はありません。会社の肩書だけで決めず、契約内容と、登記・支払いの順序を見てください。

契約前に書面で確定する10項目

  1. 契約相手
    広告上のサービス名ではなく、所有権を取得する個人・法人の正式名称と住所
  2. 相手の役割
    買主、無償で受け取る人、仲介、紹介、相談業務のどれに当たるか
  3. 対象の不動産
    土地、建物、私道の共有部分、物置などの附属建物を含め、何を移すか
  4. 引取料の総額
    税込額と、司法書士、調査、出張、測量、撤去の費用を含むかどうか
  5. 追加料金
    境界、残置物、未登記、農地、管理費の滞納などで増える条件
  6. 支払時期
    契約時、登記申請時、登記完了後のどこで払うか
  7. 登記の流れ
    担当する司法書士、必要書類、申請日、完了の確認方法、費用負担
  8. 責任・解除
    物件が契約内容と違った場合の責任(契約不適合責任など)、事前に伝える事項、解除、違約金、返金
  9. 引取後の管理
    草刈り、建物の安全、近隣からの苦情、税金・管理費を誰が担うか
  10. 完了時に受け取る資料
    領収書、契約書、登記申請の受付資料、移転後の登記事項証明書

契約前に調査費や申込金を求められても、その場で払わないでください。まず、請求の理由と返金条件を確かめます。契約後の着手金についても、何が終わったら返金されなくなるのか、引き取れなかったときは戻るのかを聞いておきます。所有権移転登記の必要書類を司法書士が確認したうえで、登記申請と支払いをどう連動させるかまで書面にしてください。

相手が指定する司法書士だけでは不安なら、自分で選んだ司法書士に契約書を見てもらう方法もあります。

宅地・建物を継続的に扱う事業者なら、国土交通省の「宅地建物取引業者検索」で、広告の会社名、法人名、免許番号、所在地が一致するかを調べられます。「ネガティブ情報等検索サイト」では、行政処分の履歴が分かります。

ただし、免許があるだけで安全とは言えません。取引の形によっては、宅地建物取引業法の規制が及ばない場合もあります。契約相手と、引き取った後の管理を担う会社が別法人なら、その法人も確認が必要です。免許の確認は入口にすぎず、決め手は契約、登記、支払いの三点です。

相続土地国庫帰属制度は、建物付きの空き家をそのまま国へ渡す制度ではない

相続土地国庫帰属制度は、相続または相続人への遺贈(遺言によって財産を受け取ること)で得た土地を、条件を満たせば国に引き取ってもらう制度です。売買などで自分から取得した人や、相続では土地を取得できない法人は、原則として使えません。共有地なら、要件を満たす共有者を含め、共有者全員でそろって申請します。

建物がある土地は申請できません。建物が登記されていなくても、実際に建っていれば同じです。だからといって、制度を使えるか確かめる前に解体すると、解体費だけが残ることになります。先に法務局へ相談してください。

次のような土地も、申請を受け付けてもらえない、または審査で承認されない場合があります。

  • 抵当権や、第三者が土地を借りる権利(賃借権)などが設定されている
  • 他人の利用が予定されている
  • 土壌汚染がある
  • 境界が明らかでない、または所有権の範囲に争いがある
  • 一定の崖があり、管理に過大な費用や手間がかかる
  • 管理や処分を妨げる物が地上または地下にある
  • 隣地との争いを解決しなければ管理・処分できない
  • 災害防止、森林の整備、管理費の未払いなどで過大な負担がかかる

対象になるか判断しにくい場合は、土地がある都道府県の法務局・地方法務局の本局へ問い合わせてください。

審査手数料は、登記上の土地1区画(1筆)につき1万4,000円です。申請を取り下げた場合も、受け付けられなかった場合も、承認されなかった場合も返ってきません。承認された後は、10年分の標準的な管理費用を考えた負担金を納めます。負担金は1筆20万円が基本ですが、土地の種類、場所、面積によって20万円を超えることもあります。通知が届いた日の翌日から30日以内に納め、納めた時点で所有権が国へ移ります。

国に引き取ってもらうまでの負担
= 解体・残置物処分・必要な修正の費用
+ 1筆ごとの審査手数料
+ 承認後の負担金
+ 国へ移るまでの固定資産税・管理費

まずは、土地の登記事項証明書、地図、写真、相続関係の資料を用意して、土地がある都道府県の法務局・地方法務局の本局へ事前相談します。相談では、申請できる人、土地の条件、必要書類、負担金の見込みを確かめます。

空き家の解体前に、売れる場合と売れない場合の両方を計算する

解体すれば見た目はよくなり、土地として検討してもらいやすくなります。ところが、解体費を払っても、接道、境界、立地、需要の問題はそのまま残ります。建て替えできない土地なら、建物をなくしたことで使い道がさらに狭くなることもあります。

危険がなければ、次の四つがそろうまで工事を発注しない。これが基本です。

  1. 今の状態のまま売る場合の見込み価格、または買取の条件
  2. 更地(建物のない土地)にした場合の見込み価格と、それでも売れなかった場合の見通し
  3. 現地調査にもとづく解体見積もりと、追加費用が発生する条件
  4. 解体補助、固定資産税などを軽くする仕組み、国庫帰属を使える見込み

住宅が建っている土地には、条件を満たすと固定資産税などが軽くなる「住宅用地特例」があります。建物を壊すと、毎年1月1日時点の状態や土地の使い方によって、翌年度からの扱いが変わる可能性があります。

逆に、建物が残っていても特例から外れる場合があります。管理が不十分で、このままでは特定空家になるおそれがある「管理不全空家」、倒壊などの危険が高い「特定空家」。これらについて市区町村から勧告を受けると、住宅用地特例の対象外になります。該当しそうなら、所在地の市区町村へ問い合わせてください。

「解体すると固定資産税が必ず6倍になる」「建物を残せば軽減が続く」。どちらも一律には決まりません。工事の前に、所在地の市区町村へ翌年度の扱いを確認してください。

自治体によっては、解体補助が使えます。ただし、交付決定の前に契約や着工をすると対象外になる制度もあります。対象建物、申請時期、施工業者、上限額は自治体ごとに違うため、見積もりの前後で所在地の空き家窓口に問い合わせます。

空き家の引き取りは、契約上の移転時期と登記名義の両方を確認する

契約書に署名した。鍵を渡した。引取料も払った。それでも、所有権や管理の負担がいつ移る契約なのか、登記の名義が変わったのかは、これだけでは分かりません。完了までの段取りを、契約書に落とし込みます。

  1. 土地、建物、物置などの附属建物、私道の共有部分といった対象を、登記資料と照合する
  2. 契約相手の本人・法人情報と、所有権を取得する人・法人の名義を一致させる
  3. 司法書士が、登記識別情報(いわゆる権利証に当たる重要書類)、印鑑証明書、委任状などを確認する
  4. 代金または引取料、鍵、必要書類の受け渡しと、所有権移転登記の申請を連動させる
  5. 登記が完了したら、新しい登記事項証明書で所有者を確認する
  6. 固定資産税、管理組合、保険、電気・水道、近隣の連絡先を切り替える
  7. 契約書、領収書、登記完了の資料、物件状況の資料を保管する

登記申請の受付資料は、「申請したこと」を示すだけの資料です。最後は、登記完了後の登記事項証明書で、新しい所有者と、移す予定だった土地・建物のすべてが反映されているかを確かめます。未登記の建物や複数の土地があるときは、移し忘れがないかも見てください。

契約で決めた移転時期までは、管理を止めないでください。国庫帰属も、承認だけでは終わりません。負担金を納めた時点で、所有権が国へ移ります。

空き家の引き取りで、契約や工事を止めて先に相談するケース

次に当てはまるなら、募集を続ける前に、その事情に合う窓口へ相談してください。

※表は横にスクロールできます。

状況先にすること主な相談先
屋根・外壁の落下、倒壊、火災などの危険がある立入りを避け、安全措置と公的支援を確認する市区町村の空き家・建築窓口、建築士、対応業者
登記上の所有者が亡くなった人のまま相続人、遺産分割、相続登記を整理する司法書士、必要に応じて弁護士
抵当権・差押えが残っている登記事項証明書、残債と滞納額、抹消の条件を確認する債権者、司法書士、必要に応じて弁護士
共有者が反対している、連絡が取れない勝手に売却・解体・残置物処分をしない弁護士、司法書士
相続放棄を検討中家や価値のある物を処分する前に手続を確認する家庭裁判所、弁護士
境界・越境・通行で争いがある測量を発注する前に、争点と必要な手続を整理する土地家屋調査士、弁護士
建て替えられるか分からない解体前に道路と建築の条件を確認する自治体の建築指導窓口、建築士
法人への寄附・0円譲渡を考えている渡す側と受ける側、両方の税金を確認する税理士、税務署、都道府県税事務所
有償引取で前払いを求められた支払時期、返金、登記、契約相手を第三者と確認する司法書士、弁護士、宅建業の相談窓口
手続を進める前に専門窓口へ相談したいケース

空き家を放置すれば、劣化と近隣への影響が進みます。市区町村から管理不全空家・特定空家に関する勧告を受けると、住宅用地特例から外れる場合があります。建物の設置や保存に問題があって他人に損害を与えた場合は、民法717条にもとづく責任が問題になることもあります。売却が難しくても、所有権が移るまでは、点検、草木の手入れ、戸締まり、危険箇所への対応を続けてください。

空き家の引き取りに関するよくある質問

国や自治体は、空き家を無料で引き取ってくれますか?

建物付きの空き家を、国が無条件・無料で引き取る制度はありません。自治体への寄附も、公共利用などの目的があり、自治体が承諾した場合に限られます。相続土地国庫帰属制度は土地を対象とする制度で、建物がある土地は申請できません。審査手数料と、承認後の負担金も必要です。

空き家を0円で個人へ譲っても問題ありませんか?

当事者が合意すれば、0円で譲ることはできます。ただし、受け手には贈与税や不動産取得税がかかる場合があり、所有権移転登記の登録免許税や司法書士報酬も発生します。物件の状態、残置物、境界、費用、責任、登記日を契約書に書き、税金も事前に確かめてください。

建て替えられない空き家にも引き取り先はありますか?

今の建物を使い続けたい人、隣の土地の所有者、建て替えできない物件を専門に扱う事業者が検討する可能性はあります。ただし、必ず見つかるとは限りません。前面道路と接道の状況、建築基準法上の扱い、建物の安全性を確認し、解体する前に今の状態と条件を伝えてください。

空き家バンクに登録しても、もらい手がない場合はどうしますか?

まず、閲覧数、問い合わせ、見送りの理由を確認します。そのうえで、価格だけでなく、写真、想定する用途、年間費用、残置物、建て替え、未確認事項の書き方を見直します。所在地の自治体が0円譲渡を扱えないなら、隣の土地の所有者、地域団体、民間の0円物件マッチングなど、別の接点を探します。どの媒体を使っても、契約と登記を誰が支援するのかは必ず確かめてください。

査定前に空き家を解体・片付けたほうがよいですか?

倒壊などの危険がなければ、先に今の状態での仲介、買取、0円譲渡の条件を確認します。解体や片付けにかけた費用以上に手取りが増えるとは限らないためです。危険がある場合は売却の都合より安全を優先し、補助制度は工事の契約前に自治体へ確かめてください。

有償引取サービスの費用相場はいくらですか?

全国一律で使える公的な相場はありません。土地か建物か、地域、残置物、権利、境界、管理費、事業者が引き取った後の使い方によって変わります。「一律○万円」だけで決めず、引取料、登記、調査、出張、測量、撤去、追加料金を含む総額を、同じ資料でほかの方法と並べて比べてください。

相続放棄をすれば、その空き家だけ手放せますか?

相続放棄は、特定の空き家だけを選んで手放す手続ではありません。原則として、自分のために相続が始まったことを知ってから3か月以内に家庭裁判所へ申し立て、預貯金、ほかの不動産、債務を含めた相続人としての立場全体に影響します。

遺産の一部を処分すると、相続を受け入れたものとして扱われる場合があります。相続放棄を検討している間は、家財や不動産を売ったり捨てたりする前に、家庭裁判所または弁護士へ相談してください。

所有権移転が終わったことは、どう確認しますか?

まず契約書で、所有権と管理の負担が移る時期を確認します。そのうえで、登記完了後に登記事項証明書を取り、新しい所有者、対象となるすべての土地・建物、抵当権などの記載を確かめます。引取料の領収書や鍵の引渡書だけでは、登記の名義が変わった証明にはなりません。

まとめ|0円にする前に、空き家の「見えない負担」を明らかにする

空き家に引き取り先が見つからない理由は、価格だけではありません。0円にしても、登記、税金、修繕、解体、管理、法律上の制限、境界、権利の不明点が残れば、受け手の負担は重いままです。

最初にそろえるのは、土地・建物の登記事項証明書、固定資産税の課税明細、現在の写真、年間の管理費が分かる資料。法務局や自治体で取れる図面は、手元にあるものから足していきます。そして同じ資料を使い、今の状態での仲介、専門分野の買取、空き家バンクと0円譲渡の順に当たります。

有償引取や国庫帰属を選ぶ場合も、契約しただけでは終わりません。民間の取引なら、費用、解除、責任に加えて、所有権と管理の負担が移る時期を契約書で確認し、登記が終わった後の名義まで確かめます。契約と登記の両方を押さえておけば、「料金を払ったのに名義が残っている」という事態は避けられます。

参考資料

情報確認日:2026年7月24日

※登記、税金、建築、契約、補助制度の扱いは、物件、所在地、取得の経緯、当事者、契約内容によって変わります。個別の手続では、法務局、税務署、都道府県税事務所、市区町村、不動産会社、司法書士、税理士、土地家屋調査士、建築士、必要に応じて弁護士へ確認してください。

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