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火事になった家は売却できる?半焼のまま売る方法と解体前の判断手順

火事になった家でも売却できます。半焼した建物を残したまま、今の状態で売ることも可能です。火災歴だけを理由に、不動産の売買を禁じる全国一律の規定はありません。

ただし、消防の調査や保険会社の確認が終わる前に、片付けや解体を始めるのは避けてください。現場を変えると、損害状況を確認するための写真や資料が失われるおそれがあります。解体後に再建築できない土地だとわかっても、元には戻せません。

まず消防と保険会社へ連絡し、その後に建物の状態と土地の条件を確認します。必要な情報がそろったら、現況仲介、直接買取、修繕後仲介、解体後の土地売却を、税引前の手取りと売却までの期間で比べましょう。

この記事では、火災後に確認する順番、4つの売り方の比べ方、解体するときの届出・登記・税金、火事があった土地を売るときの注意点を順に説明します。

この記事でわかること
  • 半焼の家を解体せず売る方法
  • 火災後に確認する5つの項目
  • 4つの売り方の手取り比較
  • 解体時の届出・登記・税金
  • 火事があった土地の売り方
消防から立入りを止められている間は、現場に入らない

家財を取り出したい場合も自分で判断せず、火災調査の終了と立入りの可否を管轄の消防署へ確認してください。倒壊や落下などの危険があるときは、売却準備より安全の確保を優先します。

この記事は、日本国内にある居住用不動産の一般的な売却を想定し、制度・法令・公的案内は2026年10月時点の内容です。建物の状態、保険契約、自治体、個別の契約によって結論は変わります。

目次

火事になった家は半焼でも売却できる

火災で傷んだ建物でも、状態と条件に買主が納得すれば売買できます。火災歴だけを理由に不動産の売買を禁じたり、売却前の解体を一律に義務付けたりする全国共通の規定はありません。ただし、建物の状態や把握している不具合を契約内容へ具体的に反映する必要があります。

建物が完全に失われている場合や、倒壊などの危険がある場合は、登記や安全対策を別に考えます。「解体せずに売れる」は、「危険な建物をそのまま放置できる」という意味ではありません。

消防でいう「半焼」は、建物の半分を使えるという意味ではない

消防の火災統計でいう半焼は、焼けた部分の損害額が火災前の建物評価額の20%以上で、全焼には当たらないものを指します。全焼は、損害額が70%以上の場合、または70%未満でも残った部分を補修して再使用できない場合です。

半焼は、消防が被害を記録するための区分です。建物の半分を安全に使える、売却価格が半分になる、といった意味ではありません。焼けた範囲の見た目だけで、建物を使えるかどうかを決めることもできません。

半焼という一語だけでは、次のことはわかりません。

  • 柱・梁・基礎など、建物を支える部分への影響
  • 屋根、外壁、窓、断熱材をどこまで直す必要があるか
  • 電気、ガス、給排水の設備をそのまま使えるか
  • 消火の水、すす、臭いにどこまで対応が必要か
  • 安全に内覧できるか
  • 修繕費をかけた分だけ売却価格が上がるか

建物が立っていても、安心して使えるとは限りません。火災の熱を受けた建物は、調査と診断を行ってから、補修や補強が必要かを判断します。鉄筋コンクリート造や鉄骨造では、目で見る調査に加えて、必要に応じて詳しい試験も行います。

戸建てを調べるときは、建築士などに「どこまで調べるのか」「調査してもわからない部分はどこか」を先に聞いてください。一般的な中古住宅の建物状況調査だけでは、火災の影響を判断しきれない場合があります。

\ まずは、今の状態でいくらになるか確かめる /

火災家屋を解体せず売る前に確認する5項目

元に戻せない作業ほど、判断は後に回します。消防・保険・建物・土地・売却条件の順に確認していけば、片付けや修繕、解体を急ぎすぎずに済みます。

消防の火災調査が終わるまで、焼け跡に手をつけない

消防は、火災の原因や損害を調べます。火災調査の終了と立入りの可否を管轄の消防署へ確認し、許可が出るまでは現場へ入らず、片付けも始めないでください。具体的な手順は地域や現場によって異なるため、管轄消防署の指示を優先します。

倒壊、落下、電気やガスの危険が残ることもあります。書類や貴重品を取り出したいときも、自分で判断して入らず、消防や現場の管理者に確認しましょう。

建物が著しく危険な状態であれば、法令に基づき、行政から安全措置、使用制限、修繕、除却などを求められる場合があります。通常の売却準備より先に、消防や自治体へ相談してください。

火災保険は先に連絡し、片付け前の焼損状態を写真で残す

火災保険に入っている場合は、保険会社または代理店へ早めに連絡します。消防と保険会社の指示に従い、安全に撮影できる範囲で、建物全体が写る引きの写真と、傷んだ箇所に寄った写真の両方を残してください。焼けた建物や家財だけでなく、消火の水による損傷もわかるように撮りましょう。

雨漏りを止めるなどの応急措置や片付けに取りかかれる場合も、手を入れる前に撮影します。保険金の確認方法や必要書類は契約ごとに違うため、先に保険会社へ相談してください。

「保険金の申請を代行します」と勧誘し、高額な手数料や解約料を求める事業者にも注意が必要です。修理や申請支援の契約を結ぶ前に、自分の保険会社へ確認しましょう。

り災証明書と、火災・修繕の記録を集める

火災の「り災証明書」は、消防が火災による被害を受けた事実などを証明する書類です。保険の請求、税金の減免、焼けた物の処分などで求められることがあります。地震や台風などの自然災害で市区町村が発行する罹災証明書とは、窓口や証明内容が異なる場合があります。

証明する内容は、消防本部や自治体によって異なります。火災があった事実だけを証明し、被害の程度や火災原因までは証明しない場合もあります。申請先と必要書類は、管轄の消防署へ確認してください。

売却まで保管する資料
  • り災証明書
  • 火災直後と片付け前の写真・動画
  • 保険会社との連絡記録、保険金の支払通知
  • 建物調査・火災による損傷の診断報告書
  • 修繕・解体の見積書、契約書、請求書、領収書
  • 修繕図面、使用部材、施工写真、保証書
  • 建築確認関係書類、登記事項証明書、境界資料

資料がない項目は、推測で埋めないでください。「資料なし」「未調査」と書き分けておくほうが、後で買主へ説明しやすくなります。

解体前に、火災跡地が再建築できる土地かを確認する

建物を壊しても、土地の法的な条件は良くなりません。今ある建物は残せても、同じ用途や規模の建物を新しく建てられない土地はあります。

都市計画区域・準都市計画区域など、接道規定が適用される区域では、敷地は原則として建築基準法上の道路に2メートル以上接する必要があります。ただし、接道許可などの例外もあります。この道路との接し方が「接道」です。

接道のほかに、建てられる用途、建物の大きさ、道路後退(セットバック)、建てた当時は適法でも現在の基準に合わない状態(既存不適格)、自治体の条例も確認します。自分だけで判定する必要はありません。不動産会社、建築士、自治体の建築相談窓口へ「解体後に同じ用途・規模で建て直せるか」「確認にはどの資料が必要か」と相談してください。

「再建築できないかもしれない」という段階なら、結論が出るまで壊さないのが基本です。解体後に建物を建てられないとわかると、土地の使い道も買主も限られる可能性があります。

火災家屋の売却4案を、同じ資料・同じ条件で比べる

比べるのは査定額の高さではありません。売買代金から費用と住宅ローン返済額を引いて最後に残る「税引前の現金手取り」と、その金額が想定どおり実現しそうかを見ます。ここでいう手取りは、税務上の譲渡所得とは別の現金収支です。条件をそろえるため、どの不動産会社にも同じ写真、書類、調査結果、未確認の項目を渡しましょう。

仲介会社には、査定額のほかに、実際に契約できそうな価格帯、想定期間、追加費用、値下げが必要になる条件を聞きます。買取会社には、現地確認後の買取提示額、価格が変わる条件、残った家財や修繕の負担者、契約を解除できる条件まで確認します。

\ 4つの案を、同じ資料で査定してもらう /

半焼した家を売却する4つの方法と向き不向き

同じ家でも、売り方によって、先に出すお金と売却条件が固まる時点が変わります。比べるのは次の4つです。

  • 現況仲介
    今の状態のまま買主を探す
  • 直接買取
    不動産会社などが買主になる
  • 修繕後仲介
    直してから買主を探す
  • 解体後の土地売却
    壊して、土地として買主を探す
スクロールできます
売却方法向いている状況資金・期間の特徴主な注意点
現況仲介建物の状態を説明でき、今の状態で検討する買主が見込める先に出す費用は比較的少ない
買主が決まるまで価格も時期も未確定
内覧時の安全や買主の融資・火災保険の条件で、候補者が限られることがある
直接買取早く手放したい
修繕費や解体費を先に出しにくい
現地確認後に条件が固まれば、仲介より時期と価格を確定しやすい後日の減額・解除条件、残った家財や工事の負担者を確認する
修繕後仲介建物を使えると確認でき、価格の上昇分が総費用を上回る見込み修繕費を先に支払う
工事費、完成時期、成約価格が変動する
追加工事、売れ残り、直していない部分の扱いを確認する
解体後の土地売却建物を使いにくく、土地の需要があり、手取りが他案を上回る解体費と廃棄費を先に支払う
工事後も成約価格は未確定
再建築、アスベスト、届出、登記、解体後の税負担を先に確認する

火災家屋を現況のまま仲介する

火災家屋を解体せず、今の状態で買主を探す方法です。修繕費や解体費を先に出さずに始められます。買主の候補は、土地を重視する個人や、自分で建物を直せる事業者などです。

一方で、安全に内覧できない、損傷の範囲がわからない、買主の住宅ローン審査や火災保険の引受条件を満たしにくい、といった事情で買主が限られる場合があります。

なお、「今の状態で売る」ことと「何も説明しなくてよい」ことは別です。把握している火災、修繕、不具合は、告知書や売買契約書へ具体的に反映させます。

半焼した家を不動産会社などに直接買取してもらう

直接買取では、不動産会社などが買主になります。今の状態のまま買い取る会社なら、売主が修繕も解体もせずに進められる場合があります。

ただし、買取価格には、買主が負担する修繕・解体、保有、再販売の費用やリスク、事業としての利益が反映されます。仲介の査定額と買取提示額は、同じ性質の数字ではありません。

残置物(家の中に残した家財や荷物)の撤去費、測量費、仲介手数料の有無、契約後に減額される条件までそろえて比べてください。別の仲介会社から買取会社を紹介された場合は、仲介手数料がかかるかも確認します。

焼損部分を修繕してから仲介する

直せば、安全面や現在の状態が伝わりやすくなり、検討できる買主が増えることはあります。ただし、「直せば高く売れる」という理由だけでは判断できません。

見るのは、修繕後の手取りが現況売却より増えるかどうかです。価格の上昇分が、修繕費、追加工事への備え、工事中の保有費、売却までの時間に見合わなければ、売却価格が上がっても手取りは増えません。

2階建ての戸建てや延べ面積200㎡を超える建物では、壁・柱・床・はり・屋根・階段といった主要構造部のどれかについて過半を直す工事(大規模の修繕)に、着工前の建築確認が必要です。2025年4月の建築基準法改正で、それまで対象外だった木造2階建ての住宅も対象になりました。焼損の範囲が広い場合は、建築確認の要否と、そのための期間・費用を建築士に確認し、修繕後仲介の比較に含めてください。

工事をするなら、調べた範囲、直した範囲、直していない部分、保証の有無を記録します。見た目をきれいにしただけで、火災の影響がすべて解消したように伝えるのは避けましょう。

火災家屋を解体して、土地として仲介する

建物を使いにくく、土地としての需要が見込める場合は有力な方法です。ただし、解体費を払えば必ず高く売れる、というわけではありません。

次のどれかが未確認なら、解体契約はいったん止める
  • 消防と保険会社の確認
  • 建物をこのまま使えるか
  • 解体後に再建築できるか
  • 現況仲介の成約見込額と直接買取の提示額
  • 解体・廃棄・アスベスト・登記・税を含めた手取り

\ 解体を契約する前に、現況の査定を取る /

火事になった家の売却価格は「相場の何割」と決まっていない

火災の被害が同じように見えても、価格への影響は物件ごとに違います。損傷の範囲、土地、修繕歴、買主、契約条件が変われば、下がり方も変わるからです。火災を理由に価格を一律で割り引く公的な基準はありません。

目安をつかむなら、まず公的な「不動産情報ライブラリ」などで近隣の取引価格を調べ、火災がなかった場合の土地・建物の水準を確認します。同サイトでは、取引当事者へのアンケートを基に加工した「不動産取引価格情報」や、レインズの情報を個別取引が特定できないよう加工した「成約価格情報」などを確認できます。いずれも個別の家の査定額ではありません。

火災後の価格は、次のように分けて考えると、費用の見落としを防げます。正式な不動産鑑定の計算式ではなく、売却方法を比べるための整理です。

今の状態での価値(現況価値)の考え方

現況価値
= 土地価値
+ 火災後も残る建物の利用価値
− 修繕・解体・廃棄・アスベスト対応などの費用
− 調査・売れるまでの維持・資金調達の費用
− 買主が見込む、想定外の費用や値下がりへの備え

残った建物に使い道があるか、どの費用を誰が負担するかで、結果は変わります。個別の価格は、不動産の利用状況や地域、契約条件なども踏まえて判断します。

税金を引く前の売却手取り

税引前の現金手取り
= 売買代金
+ 固定資産税等の精算金(受け取る場合)
− 調査・修繕・解体費
− 仲介手数料などの売却費
− 売れるまでの保有費
− 住宅ローン返済額

固定資産税等の精算金とは、その年の税額を引渡し日で分け、引渡し後の分を買主から受け取るお金です。売買契約で決めるもので、法律で一律に義務付けられた支払いではありません。なお、売主が受け取った精算金は、税務上は譲渡収入に含まれます。

保険金と売買代金は、性質の違うお金です。火災保険は契約に基づいて建物などの損害を評価するもので、土地の価格は建物の保険価額に含まれません。保険金をそのまま不動産の売却価格とみなすことはできません。

火災後に手元へ残る資金全体を比べるなら、売却手取りに、受取額と受取条件が確定した保険金などを足し、仮住まい費用のように売却の計算へ入れていない支出を引きます。売却益にかかる税金は、購入代金を含む取得費や所有期間によって変わるため、現金手取りとは別に試算します。

火災物件の4つの売り方を、税引前手取りで比べる計算例

次の数字は、比べ方を示すための架空例です。実在する地域や物件の相場、火災物件の値下がり幅を示すものではありません。

住宅ローン残高は900万円。火災がなければ2,800万円ほどで売れる見込みで、土地だけなら2,100万円と仮定します。固定資産税等の精算金、保険金、売却益にかかる税金は、この比較から外しています。

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売却方法売買代金調査・修繕・解体など売却費保有費ローン返済税引前手取り
修繕後仲介2,60058095249001,001
現況仲介1,950707512900893
直接買取1,72040154900761
解体後の土地売却2,1003508012900758
単位は万円。架空の計算例で、相場や値下がり幅を示すものではありません。

この例で、修繕後仲介と現況仲介の手取り差は108万円です。修繕後の成約価格が想定より108万円下がるか、追加工事や売却の遅れで負担が108万円増えると、順位は入れ替わります。目立つのは2,600万円という売却価格ですが、判断に使うのは1,001万円という現金手取りです。

仲介手数料には上限があり、物件価格800万円以下の宅地・建物である「低廉な空家等」は、建物の使用状態を問わず、売主から受け取る仲介手数料の上限が30万円の1.1倍(税込33万円)になる特例があります。火災で価格が下がった家も対象になり得るため、媒介契約を結ぶときに手数料の額を確認しましょう。実際の売却費は、契約価格、不動産会社への依頼内容、登記や測量の必要性で変わるため、内訳を確認してください。

実際に比べるときは、同じ資料を渡した各社の回答と見積書を使います。金額がわからない費用は0円にせず「未確認」として残し、標準的な場合と多めにかかる場合の2通りで計算します。金額と合わせて、価格が確定する時点、減額・解除となる条件、完了までの想定期間も確認します。

\ 4つの売り方の査定額をそろえる /

火災歴と事故物件扱いを、買主へどう告知するか

火災があった家を売るときは、「事故物件に当たるか」という呼び名だけで判断しないほうが安全です。建物の物理的な損傷と、火災で人が亡くなった場合の心理的な影響は、分けて整理します。

焼損と修繕歴は、契約不適合責任を踏まえて事実で伝える

引き渡した物件が契約で合意した品質などを満たしていない場合、それぞれの要件を満たせば、買主から修理、代金の減額、損害賠償、契約解除を求められることがあります。これを「契約不適合責任」といいます。

「現状有姿」は、今の状態のまま引き渡すという契約上の表現です。現状有姿の特約や、責任を制限する特約があっても、売主が知りながら伝えなかった事実についてまで責任を免れられるとは限りません。

「軽い火事だった」「完全に直った」という評価だけでは足りません。何が起き、どこまで調査・修繕し、何が未確認なのか。これを、物件の状態を買主に知らせる書面(告知書)、写真、報告書、契約書で具体的にそろえます。

分類不動産会社へ伝える内容
火災発生日、発生した場所、消防の調査・り災証明書の有無
被害焼損・消火による損傷、危険箇所、立ち入れない場所
調査調査者、実施日、調べた範囲、わからなかった範囲
修繕工事内容、施工会社、工事日、未修繕部分、保証
現在の状態雨漏り、臭い、設備不良など、把握している不具合
資料の不足写真なし、報告書なし、未調査部分など

売却活動中に新しい不具合が見つかったら、告知書と契約条件を更新します。

火災で人が亡くなった場合は、心理的瑕疵の告知として別に整理する

焼損は修繕で改善できますが、人の死をどう受け止めるかは買主によって違います。取引実務では、この種の事情を心理的瑕疵と呼ぶことがあります。

居住用不動産で人の死が生じた場合について、国土交通省は「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を公表しています。これは、不動産会社が買主や借主へ伝える内容と、調査の考え方を示したもので、火災による建物被害そのものを一律に扱う基準ではありません。

よく言われる「おおむね3年」は、賃貸借の取引で、自然死・日常生活の中での不慮の死以外の死や、特殊清掃などが行われた自然死があった場合の目安です。売買に一律の3年ルールはありません。買主から尋ねられた場合や、社会的な影響が大きいなど特別な事情がある場合も含め、個別に判断します。

亡くなった方や遺族のプライバシーにも配慮が必要です。氏名、年齢、遺族を特定できる情報などをむやみに伝えず、発生時期、場所、死因の区分、特殊清掃の有無など、買主の判断に必要な範囲を不動産会社と整理します。判断が難しい場合は、弁護士へ確認してください。

人が亡くなった建物を取り壊した後の土地取引は、このガイドラインが直接示す対象には含まれません。また、ガイドラインに沿えば民事上の責任がすべてなくなるわけでもありません。解体したから説明不要と決めず、個別に確認します。

火災家屋を解体するときの業者選び・届出・登記・税金

比べた結果、解体して土地として売ると決めた場合も、すぐに工事を発注しないでください。見積もりに含まれる範囲と、発注者や工事施工者が行う手続きが残っています。

解体業者は登録・許可と、火災家屋特有の見積もり範囲を確認する

解体工事を行う事業者は、原則として、解体工事業の登録、または土木工事業・建築工事業・解体工事業の建設業許可のいずれかが必要です。登録・許可の有無を確認し、複数の会社から見積もりを取り、工事内容を書面で契約します。

火災家屋では、建物本体のほかに次のものが見積もりに含まれるかを確認します。焼けた家財、基礎・浄化槽・庭木、工事中の養生、運搬、処分です。「一式」だけの見積もりでは、どこから追加費用になるのか判断できません。

10平方メートル超は建築物除却届、80平方メートル以上は建設リサイクル法の届出

床面積の合計が10平方メートルを超える建築物を取り壊すときは、建築基準法に基づく「建築物除却届」が必要です。届出義務者は原則として除却工事を施工する者です。建替えを伴う場合は建築工事届との関係も含め、提出方法を特定行政庁へ確認してください。

一方、木材やコンクリートなどの特定建設資材を使った建物で、解体する床面積の合計が80平方メートル以上になる場合は、建設リサイクル法の届出が必要です。発注者または自主施工者が原則として、工事着手の7日前までに都道府県知事や特定行政庁の市長などへ届け出ます。目的と届出主体が異なる手続きなので、どちらか一方で済むとは限りません。

自治体の条例や窓口によって、追加の手続きがある場合もあります。届出を業者に任せるときも、発注者として、提出先、提出日、届出内容、委任状の有無を確認しましょう。

アスベストの事前調査は、解体する建物の規模を問わない

建築物の解体・改修工事では、工事の規模にかかわらず、対象部分のすべての建材について、アスベスト(石綿)を含むかを工事前に調べる必要があります。2023年10月以降に着工する建築物の工事では、原則として、必要な資格を持つ人が事前調査を行います。

建築物の解体部分が80平方メートル以上なら、アスベストの有無にかかわらず、事前調査結果の行政報告が必要です。アスベストが見つかった場合は、建材の種類によって作業方法や別の届出も必要になります。見積もりでは、事前調査、分析、除去、処分のどこまで含むかを分けてもらいましょう。

火災で建物が焼失したら、1か月以内に建物滅失登記を申請する

建物が全部焼失して登記上の建物がなくなったとき、または建物を全部取り壊したときは、表題部所有者や所有権の登記名義人は原則として、建物がなくなった日から1か月以内に「建物滅失登記」を申請します。半焼後の工事で、登記された種類・構造・床面積などが変わった場合は、建物表題部の変更登記が必要になることがあります。

登記上の建物が現状と合っているかわからないときは、法務局または土地家屋調査士へ確認してください。

解体して更地にしても、固定資産税が「必ず6倍」になるわけではない

住宅がなくなった土地は、原則として、住宅用地に対する固定資産税・都市計画税の課税標準の特例を受けられなくなる可能性があります。ただし、税額は1月1日時点の状態、土地の評価額、負担調整、都市計画税、家屋分の税額、建替え中や災害後の特例などを踏まえて決まります。

そのため「解体すると固定資産税が必ず6倍になる」とは単純にいえません。土地の住宅用地特例が外れ、負担が増える場合はありますが、最終的な税額は個別に異なります。解体前に、市区町村の固定資産税担当へ、いつから、年間いくら変わる見込みかを確認しましょう。

解体費と火災損失は、譲渡費用と雑損控除に分けて確認する

土地を売るために、その土地上の建物を取り壊した費用と建物の損失額は、一定の場合に、売却益を計算するときに差し引く「譲渡費用」になります。一方、通常の修繕費、固定資産税、維持費は、原則として譲渡費用になりません。

住宅ローンの返済は、現金の手取りを減らしますが、売却益から差し引く譲渡費用ではありません。買主から受け取る固定資産税等の精算金は、税務上の譲渡収入に含まれます。

火災による住宅や家財の損失は、一定の条件を満たすと、雑損控除または災害減免法による所得税の軽減を受けられる場合があります。両方を併用するのではなく、適用できる場合は有利な方法を選びます。保険金で補われる額、所得、損害の程度などで判定が変わるため、不動産の売却益とは分けて確認してください。

マイホームを売ったときの3,000万円特別控除も、自動では適用されず、確定申告が必要です。火災で家屋がなくなった敷地と、所有者が取り壊した敷地では、売却の期限と土地の使い方の条件が次のように異なります。

項目火災で家屋が焼失した敷地家屋を取り壊した敷地
売却の期限災害があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで(火災前に住まなくなっていた家は、住まなくなった日から数える)取り壊した日から1年以内に売買契約を結び、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る
土地の使い方住まなくなった日以後の用途は問わない取り壊してから売買契約までの間、貸駐車場などに使わない

半焼で家屋が残っている場合は、家屋と一緒に売るか、取り壊してから敷地を売るかで要件が変わります。このほか、前年・前々年にこの特例を受けていないこと、親子や夫婦など特別の関係がある人への売却でないことなども要件です。売却時期や解体の時期を決める前に、税務署または税理士へ確認してください。

り災証明書、保険金の通知、解体・修繕の契約書と領収書は捨てずに保管し、税務署または税理士へ相談してください。

\ 解体費をかける前に、手取りを試算する /

火事があった土地は売れる?更地にした後の告知と確認事項

火事があった土地も、更地にして売却できます。建物がなくなれば焼け跡は見えなくなりますが、火災があった事実、地中に残った物、土地の法的な条件は残ります。買主は、これらを確かめてから購入を判断します。

火事があった土地の価格を左右する3つの条件

土地として売るときの価格は、近隣の土地の取引価格が出発点になります。不動産情報ライブラリでは、地域ごとの土地の取引価格や成約価格を調べられます。

一方で、火災があった土地だという理由だけで価格を一律に割り引く公的な基準はありません。価格に差が出やすいのは、次の3つの条件です。

条件価格への影響
再建築できるか接道や用途地域の制限で建て直せない土地は、使い道と買主が限られる
地中の状態基礎・浄化槽・焼けたがれきが残っていると、買主が撤去費用を見込む
人の死の有無火災で人が亡くなった場合、受け止め方は買主によって異なる

3つ目は、気にしない買主もいれば購入を見送る買主もいるため、影響の大きさを前もって決められません。複数の不動産会社に同じ情報を渡し、査定額と想定する買主を比べてください。

更地にしても、火災歴と人の死は告知書に書く

建物を壊しても、そこで火災が起きた事実は消えません。火災歴や人の死が買主の判断に重要な事実にあたる場合、売主が知りながら告げなかったことで、引渡し後に責任を問われるおそれがあります。不動産会社(宅地建物取引業者)が、買主の判断に重要な影響を及ぼす事実を故意に告げないことも、宅地建物取引業法で禁じられています。

国土交通省の人の死の告知に関するガイドラインは、建物を取り壊した後の土地取引を直接の対象にしていません。ただし、対象外であることは、告げなくてよいという意味ではありません。告知書には、次の内容を事実のまま書きます。

分類告知書に書く内容
火災発生時期、焼失・損傷した建物、消防の調査の有無
人の死有無と発生時期。伝える範囲は不動産会社と整理する
解体解体した時期、撤去した範囲、地中に残した物
未確認の点撤去の記録がない範囲、調べていない部分

解体後は、地中の残存物と境界標を確かめてから売る

引き渡した土地から、撤去したはずの基礎や焼けたがれきが見つかると、買主から撤去や代金の減額を求められることがあります。品質に関する不適合では、買主が不適合を知った時から1年以内に売主へ通知すれば、こうした請求ができます。売買契約で、売主が責任を負う期間を別に決めることもあります。

これから解体する場合は、基礎・浄化槽・庭木の根などをどこまで撤去するかを契約書に書き、工事中と完了後の写真を受け取ってください。廃棄物の処分を確認できる書類(マニフェストの写しなど)を受け取れるかも、契約前に解体業者へ確認します。

境界も確認します。解体工事の前後で境界標が残っているかを確かめ、見当たらない場合は土地家屋調査士へ相談してください。土地の売買では、境界を確定してから引き渡すことを買主が求める場合があります。

火事になった家を売却するまでの6ステップ

この順番は、後から取り返せる作業を先に置くために決めています。安全の確認と記録の保全を飛ばすと、後の調査や交渉で使える材料が減るおそれがあります。

STEP
安全を確保する

消防の調査と立入りの可否を確認し、電気・ガスを含む危険箇所へ近づきません。

STEP
保険と証拠を押さえる

保険会社へ連絡し、片付け前の写真・動画、り災証明書、保険関係の書類を集めます。

STEP
建物・土地・権利を調べる

火災の影響、修繕の範囲、再建築できるか、境界、登記、住宅ローン残高を確認します。登記上の住所や氏名が今と違う場合は、変更登記も必要です。2026年4月1日から、住所等の変更登記の申請は義務になっています。

STEP
4つの売り方を同じ条件で見積もる

現況仲介、直接買取、修繕後仲介、解体後の土地売却について、税引前の現金手取りと完了時期を比べます。

STEP
説明資料と契約条件をそろえる

火災、損傷、調査、修繕、未確認事項を告知書と契約書へ反映します。費用負担、残置物、売却後の責任、解除条件も具体化します。

STEP
売買代金の受領と同時に引き渡す

住宅ローンが残る場合は、決済時に完済して担保の登記である抵当権を抹消できるよう、早めに金融機関と調整します。建物がなくなった場合は、建物滅失登記も進めます。

火災物件の売却に対応できる不動産会社を見分ける8つの質問

見るのは取扱件数の多さだけではありません。調査結果を査定額や契約条件へ具体的に反映できるかどうかです。各社へ同じ質問をして、回答を比べましょう。

相談時に同じ条件で聞く8つの質問
  1. 御社は仲介会社ですか、買主ですか
    誰が買い、誰に手数料を払うのかを確認します。
  2. 査定には何の資料が必要ですか
    写真だけで決めず、り災証明書、調査、修繕、土地の条件まで見る会社かがわかります。
  3. その金額は査定額、成約見込額、買取提示額のどれですか
    数字の意味と、価格が確定する時点を確認します。
  4. 金額が変わるのは、どのような場合ですか
    現地調査後の減額、廃棄物、境界、契約解除の条件を書面にしてもらいます。
  5. 調査・修繕・解体は誰が手配し、費用を負担しますか
    紹介料を含め、売主と買主の負担範囲を確認します。
  6. 今の状態で仲介する場合、どのような買主を想定しますか
    買主の資金調達、火災保険、改修、再建築まで具体的に説明できるかを見ます。
  7. 火災歴を契約書へどのように反映しますか
    告知書だけで終わらせず、資料、未確認事項、売却後の責任まで整えるかを確認します。
  8. 税引前手取りはいくらで、完了はいつですか
    売却価格だけでなく、費用と期間を含む比較表を出してもらいます。

「必ず高く売れる」「火災は伝えなくてよい」「先に壊せば問題ない」と断定する会社には注意してください。少なくとも、今の状態で仲介する案と直接買取の案を比較してもらいます。解体を勧められたら、解体前と解体後の手取りを出してもらいましょう。

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火事になった家の売却でよくある質問

住宅ローン、り災証明書、保険金、解体後の説明、隣家からの延焼の5点に答えます。

住宅ローンが残っていても売却できますか?

売却代金や自己資金で住宅ローンを完済し、抵当権を抹消できれば売却できます。

売却代金だけでは足りない可能性がある場合は、修繕や解体を契約する前に金融機関へ相談してください。

り災証明書がなければ売却できませんか?

り災証明書は、全国一律の売買成立要件ではありません。

ただし、火災があった事実の確認、保険、税金、焼けた物の処分などで役立ちます。証明する内容は消防本部や自治体によって異なるため、管轄の消防署へ発行条件を確認してください。

火災保険金を受け取ってから売却できますか?

保険金の支払条件、修理しない場合の扱い、金融機関との取り決めは、契約によって違います。

売却や解体を予定していることを保険会社へ伝え、書面や記録が残る形で確認してください。保険金を受け取れる前提で売却費用を使わないことも大切です。

解体すれば火災や死亡の説明は不要になりますか?

解体しただけで、過去の事実が自動的に説明対象から外れるわけではありません。建物の物理的な損傷はなくなっても、解体した理由、地中に残った物、人の死などは別に検討します。

把握している事実を不動産会社へ伝え、買主の判断に重要かどうかを個別に整理してください。

隣家からの延焼でも火災の事実を伝えますか?

出火元が自宅でなくても、自宅の損傷や修繕内容は、買主が判断するための情報です。

延焼や消火による被害、調査、修繕、未確認の部分を、事実に沿って伝えます。隣家との損害賠償や保険の問題は、売買契約とは分けて相談しましょう。

火事になった家の売却は、解体の判断を最後に回す

火事になった家は、半焼でも、解体せずに売却できます。ただし半焼は消防上の損害区分であり、建物を使えるか、いくらで売れるかを示すものではありません。

先に進めるのは、消防と保険会社への確認、片付け前の記録、建物と土地の調査です。そのうえで、現況仲介、直接買取、修繕後仲介、解体後の土地売却を、税引前の現金手取りと契約条件で比べます。

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未確認の項目があるうちは、解体を止める

保険、建物をこのまま使えるか、解体後に再建築できるか、現況売却の見積もり。このどれかが未確認なら、解体はいったん止めてください。

火災後の売却で損失を防ぐのは、早く壊すことではなく、元に戻せない判断を最後に回すことです。

出典

総務省消防庁「令和7年版 消防白書 2.火災による死者の状況」
東京消防庁「火災に遭われた方へ」
堺市「り災証明書・証明書交付願」
日本建築総合試験所「火害調査・診断」
三井住友海上「火災保険 修理はいつ始めてもよいですか」
日本損害保険協会「住宅の修理などに関するトラブルにご注意」
日本損害保険協会「火災保険の建物の評価」
e-Gov法令検索「民法」
e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」
名古屋市「接道許可(建築基準法第43条)」
e-Gov法令検索「建築基準法」
国土交通省「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」
国土交通省「不動産取引価格情報」
国土交通省「不動産取引に関するお知らせ」
奈良県「解体工事業」
国土交通省「建築工事届・建築物除却届」
神奈川県「かながわの建設リサイクル」
厚生労働省「建築物石綿含有建材調査者講習」
厚生労働省「石綿事前調査結果報告システムについて」
e-Gov法令検索「不動産登記法」
法務省「住所等変更登記の義務化について」
札幌市「土地の固定資産税・都市計画税」
国税庁「譲渡費用となるもの」
国税庁「土地建物を売ったときの収入金額に含める金額」
国税庁「災害や盗難などで資産に損害を受けたとき(雑損控除)」
国税庁「災害減免法による所得税の軽減免除」
国税庁「マイホームを売ったときの特例」

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