MENU

火事になった家は売却できる?半焼でも解体せず売る方法と判断手順

火事になった家でも売却できます。半焼した建物を残したまま、今の状態で売ることもできます。火災歴があるだけで、売買が禁止されることはありません。

ただし、片付けや解体から手をつけるのは避けてください。消防の調査や保険会社の確認より先に現場を変えると、必要な証拠が残りません。しかも、建物を壊した後で「この土地には新しい建物を建てられない」とわかっても、元には戻せません。

先に決めるのは「壊すか、直すか」ではありません。

決めるのは、どこまで確認できるまで現場に手をつけないか、です。消防、保険、建物、土地、売却条件を確認したうえで、今の状態のまま売る方法、直してから売る方法、壊してから売る方法を比べます。

消防の調査が終わっていない、または立入りを止められている場合は、現場に入らないでください。

家財の持ち出しも片付けも始めず、管轄の消防署の案内に従います。倒壊などの危険があるときは、売却の準備より安全の確保が先です。

解体を決める前に確認する5項目
  • 消防の調査が終わり、安全に立ち入れるか
  • 保険会社へ連絡し、片付け前の写真と必要書類を残したか
  • 建物をこのまま使えるか、どこまで直す必要があるかを調べたか
  • 解体した後に、新しい建物を建てられる土地か確認したか
  • 今の状態で売る、会社に直接売る、直してから売る、壊してから売る、この4つで最後に残るお金を比べたか

最初にすることは、火災後の状況によって変わります。自分の状況に近い行を探してください。

スクロールできます
現在の状況最初の対応売却の主な候補
消防の調査が終わっていない、立入りを止められている現場に入らず、消防の案内に従うまだ売り方を決めない
半焼・部分焼で建物が残っている保険会社へ連絡し、写真と書類を残す。あわせて、建物をこのまま使えるかを調べる今の状態での仲介、直接買取、修繕後の仲介
修繕済みで、過去に火災があった火災時と修繕時の記録を集め、今ある不具合を確認する修繕履歴を示した仲介、直接買取
建物が全焼・消失している保険、撤去、建物がなくなった事実を登記に反映する手続き(建物滅失登記)、土地の条件を確認する土地としての仲介、直接買取
火災で人が亡くなっている建物の損傷とは分けて、不動産会社へ事実を伝える説明内容を整えたうえで売却方法を比較する
火災後の状況別に見る、最初の対応と売却候補

この記事は、日本国内にある居住用不動産の一般的な売却を想定しています。制度・法令・公的案内は2026年7月24日に確認しました。建物の状態、保険契約、自治体、個別の契約によって結論は変わります。

目次

火事になった家は半焼でも売却できる

火災で傷んだ建物でも、状態と条件に買主が納得すれば売買できます。売却前に解体しなければならない、という全国共通の決まりはありません。売買は、売主が権利を渡し、買主が代金を払うと合意すれば成立します(民法)。

ただし、建物が完全に失われている場合や、倒壊などの危険がある場合は、登記や安全対策を別に考えます。「解体せずに売れる」は、「危険な建物をそのままにしておける」という意味ではありません。

「半焼」は、建物の半分を使えるという意味ではない

消防の火災統計でいう半焼は、焼けた損害額が火災前の建物評価額の20%以上で、全焼には当たらないものを指します。全焼は、損害額が70%以上、または直しても使えない場合などです。

半焼は、消防が被害を記録するための区分です。

建物の半分を安全に使える、売却価格が半分になる、といった意味ではありません。焼けた範囲の見た目だけで、建物を使えるかどうかを決めることもできません。

半焼という一語だけでは、次のことはわかりません。

  • 柱・梁・基礎など、建物を支える部分への影響
  • 屋根、外壁、窓、断熱材をどこまで直す必要があるか
  • 電気、ガス、給排水の設備をそのまま使えるか
  • 消火の水、すす、臭いにどこまで対応が必要か
  • 安全に内覧できるか
  • 修繕費をかけた分だけ売却価格が上がるか

建物が立っていても、安心して使えるとは限りません。火災の熱を受けた建物は、調査と診断を行ってから、補修や補強が必要かを判断します。鉄筋コンクリート造や鉄骨造では、目で見る調査に加えて、必要に応じて詳しい試験も行います。

戸建てを調べるときは、建築士などに「どこまで調べるのか」「調べてもわからない部分はどこか」を先に聞いてください。一般的な中古住宅の調査だけでは、火災の影響を判断しきれない場合があります。

火災家屋を解体せず売る前に確認する5項目

元に戻せない作業ほど、判断は後に回します。消防、保険、建物、土地、売却条件の順に確認していけば、片付けや修繕、解体を急ぎすぎずに済みます。

1.消防の調査が終わるまで現場の状態を変えない

消防は、火災の原因や損害を調べます。この調査が終わるまでは現場へ立ち入らず、片付けも調査後に始めてください。手続きは地域によって違うため、管轄の消防署の指示を優先します。

倒壊、落下、電気やガスの危険が残ることもあります。書類や貴重品を取り出したいときも、自分で判断して入らず、消防や現場の管理者に確認しましょう。

倒壊などの危険が大きい建物は、行政から修繕、使用制限、取り壊しなどを命じられる場合があります。

通常の売却準備より先に、消防や自治体へ相談してください。

2.保険会社に連絡し、片付け前の状態を残す

火災保険に入っている場合は、保険会社または代理店へ早めに連絡します。写真は、建物全体が写る引きの一枚と、傷んだ箇所に寄った一枚の両方を残します。焼けた建物や家財だけでなく、消火の水による損傷もわかるように撮りましょう。

雨漏りを止めるなどの応急措置や片付けに取りかかれる場合も、手を入れる前に撮影します。保険金の確認方法や必要書類は契約ごとに違うため、先に保険会社へ相談してください。

「保険金の申請を代行します」と勧誘し、高額な手数料や解約料を求める事業者にも注意が必要です。修理や申請支援の契約を結ぶ前に、自分の保険会社へ確認しましょう。

3.り災証明書と火災・修繕の記録を集める

火災の「り災証明書」は、消防が火災の発生などを証明する書類です。保険の請求、税金の減免、焼けた物の処分などで求められることがあります。地震や台風などの自然災害のときに市区町村が発行する罹災証明書とは、窓口も扱いも異なる場合があります。

証明する内容も自治体によって違います。火災があった事実だけを証明し、被害の程度や原因までは証明しない自治体もあります。

売却まで保管する資料
  • り災証明書
  • 火災直後と片付け前の写真・動画
  • 保険会社との連絡記録、保険金の支払通知
  • 建物調査・火災による損傷の診断報告書
  • 修繕・解体の見積書、契約書、請求書、領収書
  • 修繕図面、使用部材、施工写真、保証書
  • 建築確認関係書類、登記事項証明書、境界資料

資料がない項目は、推測で埋めないでください。「資料なし」「未調査」と書き分けておくほうが、後で買主へ説明しやすくなります。

4.解体前に、新しい建物を建てられる土地か確認する

建物を壊しても、土地の法的な条件は良くなりません。今ある建物は残せても、同じ規模の建物を新しく建てられない土地はあります。

建築基準法では、敷地は原則として道路に2メートル以上接する必要があります。ただし、例外や許可の仕組みもあります。この道路との接し方を「接道」といいます。

接道のほかに、建てられる用途、建物の大きさ、道路後退(セットバック)、建てた当時は適法でも今の基準に合わない状態(既存不適格)、自治体の条例も確認します。とはいえ、これらを自分で判定する必要はありません。不動産会社、建築士、自治体の建築相談窓口へ「解体したら、同じ用途・規模で建て直せますか」と聞けば十分です。

「再建築できないかもしれない」という段階なら、結論が出るまで壊さないのが基本です。

解体後に建物を建てられないとわかると、土地の使い道も買主も限られる可能性があります。

5.同じ資料・同じ条件で4つの売却案を比べる

比べるのは査定額の高さではありません。売買代金から費用とローン返済を引いて最後に残るお金、つまり手取りと、その金額が想定どおり実現しそうかを見ます。条件をそろえるため、どの不動産会社にも同じ写真、書類、調査結果、未確認の項目を渡しましょう。

仲介会社には、査定額のほかに、実際に契約できそうな価格帯、想定期間、追加費用、値下げが必要になる条件を聞きます。買取会社には、現地確認後の買取提示額、価格が変わる条件、残った家財や修繕の負担者、契約を解除できる条件まで確認します。

半焼した家を売却する4つの方法

同じ家でも、売り方によって、先に出すお金と、価格が決まる時期が変わります。比べるのは次の4つです。

  • 現況仲介:今の状態のまま買主を探す
  • 直接買取:不動産会社などが買主になる
  • 修繕後仲介:直してから買主を探す
  • 解体後の土地売却:壊して、土地として買主を探す
スクロールできます
売却方法向いている状況資金・期間の特徴主な注意点
現況仲介建物の状態を説明でき、今の状態で検討する買主が見込める先に出す費用は比較的少ない。買主が決まるまで価格も時期も未確定内覧、安全、買主の融資や火災保険の条件で、候補者が限られることがある
直接買取早く手放したい。修繕費や解体費を先に出しにくい現地確認後に条件が固まれば、仲介より時期と価格を確定しやすい後日の減額・解除条件、残った家財や工事の負担者を確認する
修繕後仲介建物を使えると確認でき、価格の上がり方が総費用を上回る見込み修繕費を先に支払う。工事費、完成時期、成約価格が変動する追加工事、売れ残り、直していない部分の扱いを確認する
解体後の土地売却建物を使いにくく、土地の需要があり、手取りが他案を上回る解体費と廃棄費を先に支払う。工事後も成約価格は未確定再建築、アスベスト、届出、登記、解体後の税負担を先に確認する
半焼した家を売却する4つの方法の比較

現況のまま仲介する

火災家屋を解体せず、今の状態で買主を探す方法です。修繕費や解体費を先に出さずに始められます。買主の候補は、土地を重視する個人や、自分で建物を直せる事業者などです。

一方で、買主が限られる事情もあります。安全に内覧できない、損傷の範囲がわからない、買主が住宅ローンや火災保険を利用しにくい、といった場合です。

なお、「今の状態で売る」ことと「何も説明しなくてよい」ことは別です。わかっている火災、修繕、不具合は契約内容へ反映させます。

不動産会社などに直接買い取ってもらう

直接買取では、不動産会社などが買主になります。今の状態のまま買い取る会社なら、売主が修繕も解体もせずに進められる場合があります。

ただし、買取価格には、買主が負担する修繕・解体、保有、再販売の費用やリスク、そして事業としての利益が反映されます。仲介の査定額と買取提示額は、同じ性質の数字ではありません。残置物(家の中に残した家財や荷物)の撤去費、測量費、仲介手数料の有無、契約後に減額される条件までそろえて比べてください。別の仲介会社から買取会社を紹介された場合は、仲介手数料がかかるかも確認します。

修繕してから仲介する

直せば安全面と今の状態が伝わりやすくなり、検討できる買主が増えることはあります。ただし、「直せば高く売れる」だけでは判断できません。

見るのは、修繕後の手取りが現況売却より増えるかどうかです。価格の上がり方が、修繕費、追加工事への備え、工事中の保有費、売却までの時間に見合わなければ、売却価格が上がっても手取りは増えません。

工事をするなら、調べた範囲、直した範囲、直していない部分、保証の有無を記録します。見た目をきれいにしただけで、火災の影響がすべて消えたように伝えるのは避けましょう。

解体して土地として仲介する

建物を使いにくく、土地としての需要が見込める場合は有力な方法です。ただし、解体費を払えば必ず高く売れる、というわけではありません。

次のどれかが未確認なら、解体契約はいったん止めます。

消防と保険会社の確認/建物をこのまま使えるか/解体後に再建築できるか/現況仲介の成約見込額と直接買取の提示額/解体・廃棄・アスベスト・登記・税を含めた手取り

火事になった家の売却価格に一律の下落率はない

火災があった家の価格を「通常の何割」と決める公的な基準はありません。損傷の範囲、土地、修繕歴、買主、契約条件が違えば、価格への影響も変わります。

目安をつかむなら、まず公的な「不動産情報ライブラリ」などで近隣の取引価格を調べ、火災がなかった場合の土地・建物の水準を確認します。ただし、掲載されているのは、取引した人へのアンケートをもとに匿名化し、金額を丸めた情報です。個別の家の査定額ではありません。

火災後の価格は、次のように分けて考えると、費用の見落としを防げます。正式な不動産鑑定の計算式ではなく、比べるための整理です。

今の状態での価値(現況価値)の考え方

土地価値
+ 火災後も残る建物の利用価値
− 修繕・解体・廃棄・アスベスト対応などの費用
− 調査・売れるまでの維持・資金調達の費用
− 買主が見込む、想定外の費用や値下がりへの備え

残った建物に使い道があるか、どの費用を誰が負担するかで、結果は変わります。個別の価格は、不動産の利用状況や地域なども踏まえて判断します。

税金を引く前の売却手取り

売買代金
+ 固定資産税等の精算金(受け取る場合)
− 調査・修繕・解体費
− 仲介手数料などの売却費
− 売れるまでの保有費
− 住宅ローン返済額

固定資産税等の精算金とは、その年の税額を引渡し日で分け、引渡し後の分を買主から受け取るお金です。売買契約で決めるもので、法律で一律に義務付けられた支払いではありません。

保険金と売買代金は、性質の違うお金です。火災保険は契約に基づいて建物の損害を評価するもので、土地は建物の保険金額に含まれません。保険金をそのまま不動産の売却価格とみなすことはできません。

火災後に手元へ残る資金全体を比べるなら、売却手取りに、受取額が確定した保険金などを足し、仮住まい費用のように売却の計算へ入れていない支出を引きます。売却益にかかる税金は、購入代金を含む取得費や所有期間によって変わるため、別に試算します。

4つの売り方を同じ物差しで比べる計算例

次の数字は、比べ方を示すための架空例です。実在する地域や物件の相場、火災物件の値下がり幅を示すものではありません。単位は万円です。

住宅ローン残高は900万円。火災がなければ2,800万円ほどで売れる見込みで、土地だけなら2,100万円と仮定します。固定資産税等の精算金、保険金、売却益にかかる税金は、この比較から外しています。

スクロールできます
売却方法売買代金調査・修繕・解体など売却費保有費ローン返済税引前手取り
修繕後仲介2,60058095249001,001
現況仲介1,950707512900893
直接買取1,72040154900761
解体後の土地売却2,1003508012900758
4つの売却方法を同じ条件で比べた架空の計算例。単位は万円

この例で、修繕後仲介と現況仲介の手取り差は108万円です。

修繕後の成約価格が想定より108万円下がるか、追加工事や売却の遅れで負担が108万円増えると、順位は入れ替わります。目立つのは2,600万円という売却価格ですが、判断に使うのは1,001万円という手取りです。

仲介手数料には上限があり、800万円以下の低額な空き家等には別の上限制度があります。実際の売却費は、契約価格、不動産会社への依頼内容、登記や測量の必要性で変わるため、内訳を確認してください。

自分の数字を入れる手取り比較シート

金額がわからない欄は、0円ではなく「未確認」と記入します。未確認の費用は、標準的な場合と多めにかかる場合の2通りで計算すると、判断しやすくなります。

スクロールできます
比較項目現況仲介直接買取修繕後仲介解体後の土地売却
成約見込額/現地確認後の提示額__万円__万円__万円__万円
固定資産税等の精算金__万円__万円__万円__万円
建物調査・安全対策__万円__万円__万円__万円
片付け・残置物撤去__万円__万円__万円__万円
修繕費__万円__万円__万円__万円
解体・廃棄・アスベスト対応__万円__万円__万円__万円
測量・境界対応__万円__万円__万円__万円
仲介手数料などの売却費__万円__万円__万円__万円
売却までの固定資産税・管理費等__万円__万円__万円__万円
住宅ローン返済額__万円__万円__万円__万円
税引前手取り__万円__万円__万円__万円
確定した保険金・補助金__万円__万円__万円__万円
仮住まいなど別枠の支出__万円__万円__万円__万円
火災後に手元へ残る資金__万円__万円__万円__万円
価格が確定する時点________
減額・解除となる条件________
完了までの想定期間________
現況仲介・直接買取・修繕後仲介・解体後の土地売却を比べる記入用シート

火災歴は買主へどう伝える?

火災があった家を売るときは、「事故物件に当たるか」という呼び名だけで判断しないほうが安全です。建物の物理的な損傷と、火災で人が亡くなった場合の心理的な影響は、分けて整理します。

建物の損傷・修繕歴は、評価ではなく事実で伝える

引き渡した物件が契約で合意した品質などを満たしていない場合、買主から修理、代金の減額、損害賠償、契約解除を求められることがあります。これを「契約不適合責任」といいます。

「現状有姿」は、今の状態のまま引き渡すという契約上の表現です。現状有姿の特約や、責任を制限する特約があっても、売主が知りながら伝えなかった事実についてまで責任を免れられるとは限りません。

「軽い火事だった」「完全に直った」という評価だけでは足りません。

何が起き、どこまで調査・修繕し、何が未確認なのか。これを、物件の状態を買主に知らせる書面(告知書)、写真、報告書、契約書で具体的にそろえます。

分類不動産会社へ伝える内容
火災発生日、発生した場所、消防の調査・り災証明書の有無
被害焼損・消火による損傷、危険箇所、立ち入れない場所
調査調査者、実施日、調べた範囲、わからなかった範囲
修繕工事内容、施工会社、工事日、未修繕部分、保証
現在の状態雨漏り、臭い、設備不良など、把握している不具合
資料の不足写真なし、報告書なし、未調査部分など
火災・被害・調査・修繕について整理する事実

売却活動中に新しい不具合が見つかったら、告知書と契約条件を更新します。

火災で人が亡くなっている場合は別に整理する

居住用不動産で人の死が生じた場合の公的なガイドラインは、不動産会社が買主や借主へ伝える内容と、調査の考え方を示しています。火災による建物被害そのものを一律に扱う基準ではありません。

よく言われる「おおむね3年」は、一定の場合の賃貸借についての目安です。売買に一律の3年ルールはありません。買主から尋ねられた場合や、社会的な影響が大きいなど特別な事情がある場合も含め、個別に判断します。

亡くなった方や遺族のプライバシーにも配慮が必要です。氏名、年齢、詳しい発見状況まで伝えるのではなく、時期、場所、死因の区分、臭いや汚れを取る特殊清掃の有無など、買主の判断に必要な範囲を不動産会社と整えます。判断が難しい場合は、弁護士へ確認してください。

人が亡くなった建物を取り壊した後の土地取引は、このガイドラインの対象外です。また、ガイドラインに沿えば民事上の責任がすべてなくなるわけでもありません。解体したから説明不要と決めず、個別に確認します。

火災家屋を解体するときの届出・登記・税金

比べた結果、解体して土地として売ると決めた場合も、すぐに工事を発注しないでください。見積もりに含まれる範囲と、発注者として関わる手続きが残っています。

解体業者は登録・許可と見積もりの範囲を確認する

解体工事は、解体工事業の登録または建設業許可がなければ請け負えません。まず登録・許可を確認し、複数の会社から見積もりを取り、工事内容を書面で契約します。

火災家屋では、建物本体のほかに、焼けた家財、基礎、浄化槽、庭木、工事中の養生、運搬、処分が見積もりに含まれるかを確認します。「一式」だけの見積もりでは、どこから追加費用になるのか判断できません。

10平方メートル超の解体届と、80平方メートル以上の届出は別

10平方メートルを超える建築物を取り壊すときは、建築基準法に基づく「建築物除却届」が必要です。除却とは、建物を取り壊すことです。

一方、木材やコンクリートなどの特定建設資材を使った建物で、解体する床面積の合計が80平方メートル以上になる場合は、建設リサイクル法の届出が必要です。発注者が原則として、工事着手の7日前までに都道府県知事などへ届け出ます。目的の違う手続きなので、どちらか一方で済むとは限りません。

自治体の条例や窓口によって、追加の手続きがある場合もあります。届出を業者に任せるときも、発注者として、提出先、提出日、委任状の有無を確認しましょう。

アスベストの事前調査は建物の規模を問わない

建築物の解体・改修工事では、規模にかかわらず、アスベスト(石綿)を含む建材が使われていないかを工事前に調べる必要があります。2023年10月以降、建築物の調査は原則として、必要な資格を持つ人が行います。

建築物の解体部分が80平方メートル以上なら、アスベストの有無にかかわらず、事前調査結果の報告対象です。アスベストが見つかった場合は、建材の種類によって作業方法や別の届出も必要になります。見積もりでは、事前調査、分析、除去、処分のどこまで含むかを分けてもらいましょう。

建物がなくなったら、建物滅失登記を行う

建物が焼失したとき、または全部を取り壊したときは、所有者は原則として、建物がなくなった日から1か月以内に「建物滅失登記」を申請します。半焼後の工事で、登記された種類・構造・床面積などが変わった場合も、変更登記が必要になることがあります。

登記上の建物が現状と合っているかわからないときは、法務局または土地家屋調査士へ確認してください。

解体後の固定資産税は「必ず6倍」ではない

住宅がなくなった土地は、原則として、住宅用地に対する固定資産税・都市計画税の軽減を受けられなくなる可能性があります。ただし実際の税額は、土地の評価、1月1日時点の状態、自治体の扱い、災害に関する特例などで決まります。

そのため「解体すると税金が必ず6倍になる」とは単純にいえません。軽減がなくなって負担が増える場合はあります。解体前に、市区町村の固定資産税担当へ、いつから、年間いくら変わる見込みかを確認しましょう。

解体費と火災による損失の税務は分けて確認する

土地を売るために建物を取り壊した費用や、建物の損失額は、一定の場合に、売却益を計算するときに差し引く「譲渡費用」になります。一方、通常の修繕費、固定資産税、維持費は、原則として譲渡費用になりません。

住宅ローンの返済は、現金の手取りを減らしますが、売却益から差し引く費用ではありません。買主から受け取る固定資産税等の精算金は、税務上の売却収入に含まれます。

火災による住宅や家財の損失は、一定の条件を満たすと、雑損控除または災害減免法による所得税の軽減を受けられる場合があります。保険金で補われる額、所得、損害の程度などで判定が変わるため、不動産の売却益とは分けて確認します。

マイホームを売ったときの3,000万円特別控除も、自動では適用されません。災害で家屋がなくなった敷地と、所有者が取り壊した敷地では、売却期限や土地利用の条件が異なります。売却時期を決める前に、適用条件を確認してください。

り災証明書、保険金の通知、解体・修繕の契約書と領収書は捨てずに保管し、税務署または税理士へ相談してください。

火事になった家を売却する流れ

売却準備は、安全の確認から始めます。証拠を残したうえで、建物と土地の調査へ進みます。

  1. 安全を確保する
    消防の調査と立入りの可否を確認し、電気・ガスを含む危険箇所へ近づきません。
  2. 保険と証拠を押さえる
    保険会社へ連絡し、片付け前の写真・動画、り災証明書、保険関係の書類を集めます。
  3. 建物・土地・権利を調べる
    火災の影響、修繕の範囲、再建築できるか、境界、登記、住宅ローン残高を確認します。
  4. 4つの売り方を同じ条件で見積もる
    現況仲介、直接買取、修繕後仲介、解体後の土地売却について、税引前手取りと完了時期を比べます。
  5. 説明資料と契約条件をそろえる
    火災、損傷、調査、修繕、未確認事項を告知書と契約書へ反映します。費用負担、残置物、売却後の責任、解除条件も具体化します。
  6. 売買代金の受領と同時に引き渡す
    住宅ローンが残る場合は、決済時に完済して担保の登記である抵当権を抹消できるよう、早めに金融機関と調整します。解体した場合は建物滅失登記も進めます。

火災物件に対応できる不動産会社の選び方

見るのは取扱件数の多さではなく、調査結果を査定額や契約条件へ具体的に反映できるかどうかです。各社へ同じ質問をして、回答を比べましょう。

相談時に同じ条件で聞く8つの質問
  • 御社は仲介会社ですか、買主ですか
    誰が買い、誰に手数料を払うのかを確認します。
  • 査定には何の資料が必要ですか
    写真だけで決めず、り災証明書、調査、修繕、土地の条件まで見る会社かがわかります。
  • その金額は査定額、成約見込額、買取提示額のどれですか
    数字の意味と、価格が確定する時点を確認します。
  • 金額が変わるのは、どのような場合ですか
    現地調査後の減額、廃棄物、境界、契約解除の条件を書面にしてもらいます。
  • 調査・修繕・解体は誰が手配し、費用を負担しますか
    紹介料を含め、売主と買主の負担範囲を確認します。
  • 今の状態で仲介する場合、どのような買主を想定しますか
    買主の資金調達、火災保険、改修、再建築まで具体的に説明できるかを見ます。
  • 火災歴を契約書へどのように反映しますか
    告知書だけで終わらせず、資料、未確認事項、売却後の責任まで整えるかを確認します。
  • 税引前手取りはいくらで、完了はいつですか
    売却価格だけでなく、費用と期間を含む比較表を出してもらいます。

調査の前に「必ず高く売れる」「火災は伝えなくてよい」「先に壊せば問題ない」と断定する会社は避けましょう。

少なくとも、今の状態で仲介する案と直接買取の案を比較してもらいます。解体を勧められたら、解体前と解体後の手取りを出してもらいましょう。

火事になった家の売却でよくある質問

住宅ローンが残っていても売却できますか?

売却代金や自己資金で住宅ローンを完済し、抵当権を抹消できれば売却できます。売却代金だけでは足りない可能性がある場合は、修繕や解体を契約する前に金融機関へ相談してください。

り災証明書がなければ売却できませんか?

り災証明書は、全国一律の売買成立要件ではありません。ただし、火災があった事実の確認、保険、税金、焼けた物の処分などで役立ちます。証明する内容は自治体によって異なるため、管轄の消防署へ発行条件を確認してください。

火災保険金を受け取ってから売却できますか?

保険金の支払条件、修理しない場合の扱い、金融機関との取り決めは、契約によって違います。売却や解体を予定していることを保険会社へ伝え、書面や記録が残る形で確認してください。保険金を受け取れる前提で売却費用を使わないことも大切です。

解体すれば火災や死亡の説明は不要になりますか?

解体しただけで、過去の事実が自動的に説明対象から外れるわけではありません。建物の物理的な損傷はなくなっても、解体した理由、地中に残った物、人の死などは別に検討します。把握している事実を不動産会社へ伝え、買主の判断に重要かどうかを個別に整理してください。

隣家からの延焼でも火災の事実を伝えますか?

出火元が自宅でなくても、自宅の損傷や修繕内容は、買主が判断するための情報です。延焼や消火による被害、調査、修繕、未確認の部分を、事実に沿って伝えます。隣家との損害賠償や保険の問題は、売買契約とは分けて相談しましょう。

まとめ

火事になった家は、半焼でも、解体せずに売却できます。ただし半焼は消防上の損害区分であり、建物を使えるか、いくらで売れるかを示すものではありません。

先に進めるのは、消防と保険会社への確認、片付け前の記録、建物と土地の調査です。そのうえで、現況仲介、直接買取、修繕後仲介、解体後の土地売却を、税引前手取りと契約条件で比べます。

保険、建物をこのまま使えるか、解体後に再建築できるか、現況売却の見積もり。このどれかが未確認なら、解体はいったん止めてください。

火災後の売却で損失を防ぐのは、早く壊すことではなく、元に戻せない判断を最後に回すことです。

出典・参考資料

制度・法令・公的案内は2026年7月24日に確認しました。個別の物件、保険契約、自治体によって扱いは異なります。

目次