まだ売ると決めたわけではないのに、査定を頼んでもいいのか。そう考えて、まだどこにも連絡していない方は多いはずです。
査定にはAI査定・机上査定・訪問査定の3つがあり、精度も3段階に分かれていそうに見えます。ところが3つを分けているのは、人が対応するかどうかではなく、現地を見たかどうかです。
この違いは、分かることにも営業の連絡が来るタイミングにも表れます。選ぶ基準になるのは物件の種類ではなく、売却をどこまで決めているかです。
この記事では国土交通省などの公開資料をもとに、3つの中身と使い分けを整理しました。
- 3つの査定方法で使う情報の違い
- AI査定が得意な物件と苦手な物件
- 訪問査定で見られる室内と敷地の項目
- 査定額がそろわない理由
- 営業連絡が来るタイミング
※本記事の情報は2026年8月時点のものです。
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不動産査定3種類の違い
3つの違いは、不動産会社が現地を見るかどうかと、価格を出すのが人かシステムかの2点です。
この2点で整理すると、AI査定は現地を見ずにシステムが出すもの、机上査定は現地を見ずに人が出すもの、訪問査定は現地を見て人が出すものになります。名前は3つありますが、判断に必要な材料はこの2点でほぼ決まります。
3つの査定方法の中身
AI査定は、物件の所在地や面積などを入力すると、システムが過去の取引データをもとに価格を自動で算出する方法です。多くのサービスが数十秒から数分で結果を返します。
机上査定は、不動産会社の担当者が物件の情報と書類をもとに価格を出す方法です。現地は見ません。売主から聞いた内容と、登記や間取りといった書類上の情報だけで判断します。
訪問査定は、担当者が実際に物件へ来て、室内と敷地を見たうえで価格を出す方法です。
この並びだけを見ると、担当者が対応する机上査定はAI査定よりかなり精度が高そうに感じられます。ところが不動産会社が査定に使う材料をたどると、机上査定はAI査定と同じ制約を受けていました。
不動産流通推進センターが提供している業務用のシステム「価格査定マニュアル」では、査定価格を出すために次の4つを入力します。
- 所有者からのヒアリング内容
- 現地調査の内容
- 査定者が目視したデータ
- 記録書類・証明書類の内容
このうち2番と3番は、現地を見なければ手に入りません。AI査定と机上査定は、どちらも4つのうち2つを欠いた状態で価格を出しています。人が担当しても、見ていないものは評価できません。
精度を分けているのは、人が対応するかどうかではありません。物件を見たかどうかです。机上査定の数字がAI査定と大きく変わらないことがあるのは、この構造によります。
方法によって精度と手間が変わる
違いは精度だけではありません。同じ軸で並べると、それぞれが何を必要としているかが見えてきます。
| 比較する項目 | AI査定 | 机上査定 | 訪問査定 |
|---|---|---|---|
| 価格を出すのは | システム | 不動産会社の担当者 | 不動産会社の担当者 |
| 現地の確認 | なし | なし | あり |
| 伝える情報 | 物件の所在地や面積など | 物件情報と連絡先 | 物件情報、連絡先、書類 |
| 売り方の提案 | なし | 会社によって簡単な助言 | あり |
| 営業の連絡 | サービスによっては不要 | 申し込み後に発生 | 訪問の時点から発生 |
| 結果の位置づけ | 相場の目安 | 会社の初期の見立て | 売り出し価格の根拠 |
精度の高い方法を選べばよさそうに見えますが、表を横に読むと事情が変わります。「伝える情報」の行が、右に行くほど増えているからです。AI査定なら住所と面積だけで済むところ、訪問査定では連絡先に加えて書類の用意まで必要になります。
3つの選択は、精度を取るか、手間と個人情報の少なさを取るかという交換でした。どちらが正しいという話ではありません。売却をどこまで具体的に考えているかで、払ってよいコストが変わってきます。
簡易査定は机上査定と同じもの
「簡易査定」という言葉を見かけたら、机上査定のことだと考えて構いません。多くの不動産会社とポータルサイトが、この2つを同じ意味で使っています。「机上査定(簡易査定)」と併記しているサイトも珍しくありません。
ややこしいのは、AI査定を簡易査定と呼ぶサービスもある点です。「簡易査定」とだけ書かれている場合、それが担当者の見立てなのか、システムが自動で出した数字なのかは、その場では判別できません。
見分ける目安は、連絡先の入力を求められるかどうかです。氏名や電話番号の入力が必要なら、担当者が対応する机上査定である可能性が高くなります。住所と面積だけで結果が出るなら、AIによる自動算出の可能性が高いです。申し込む前に、そのサービスが何を返してくれるのかを確認しておくと、想定外の連絡を避けられます。
では、そのAI査定は何を根拠に価格を出しているのでしょうか。
AI査定の仕組みと精度
AI査定の精度を決めているのは、AIの性能ではなく参照できる取引事例の数です。
同じ物件でも、地域や種類によって数字の当てになり方が変わります。なぜそうなるのかは、AI査定が価格を出す手順をたどると分かります。
AI査定が使うデータ
AIという言葉から、膨大なデータを独自に解析する高度な仕組みを思い浮かべるかもしれません。実際に使われているのは、不動産会社の担当者と同じ「事例比較方式」です。査定したい物件と条件の似た取引事例を選び、両者を比べて価格を出します。
不動産流通推進センターの価格査定マニュアルでは、土地の査定を次のように計算しています。
事例地の単価は10.0万円/㎡です。これに、査定地の評点110を事例地の評点105で割った数字をかけます。さらに査定地の面積100.0㎡と流通性比率1.00をかけると、査定価格はおよそ1,048万円になります。
「似た土地がこの値段で売れたから、条件の差の分だけ上下させる」という計算でした。AI査定が担っているのは、この事例集めと条件比較を自動でこなす部分です。計算の考え方そのものは、人が手でやっていたころから変わっていません。
ここから分かるのは、比較できる事例がなければ計算が成り立たないという点です。取引の多い地域と物件では事例が豊富に集まり、少ない地域では選択肢が減ります。AI査定の結果に地域差が出るのは、性能の差ではなく材料の差によるものです。
分かるのは金額だけ
AI査定が返してくるのは金額の数字だけです。その物件をどう売ればよいかという話は付いてきません。
これは不動産会社に査定を頼んだ場合と比べると差がはっきりします。宅地建物取引業法では、売買の媒介契約を結んだとき、不動産会社は書面を作って依頼者に渡すよう定めています。その書面に記載する事項は次のとおりです。
- 物件を特定するための表示
- 売買すべき価額または評価額
- 他の不動産会社に重ねて依頼できるかどうか
- 建物状況調査を実施する者のあっせんに関する事項
- 媒介契約の有効期間と解除に関する事項
- 指定流通機構への登録に関する事項
- 報酬に関する事項
- その他国土交通省令・内閣府令で定める事項
価額は8つのうちの1つにすぎません。売却は価格を決めて終わりではなく、どこに情報を出し、どんな条件で契約し、いくら報酬を払うかまで含めた一連の手続きです。AI査定はこのうち価格の見当をつける部分だけを担当しています。
数字が出た時点で売却の準備が整ったように感じられますが、実際にはまだ準備の最初の段階です。AI査定は「不動産会社に相談すべきかどうか」を判断する材料として使うのが、無理のない位置づけになります。
物件種別とエリアによって精度が変わる
AI査定はマンションで比較的近い数字が出て、戸建てと土地ではぶれやすくなります。理由は査定の方式そのものにあります。
価格査定マニュアルでは、中古マンションと住宅地を事例比較方式で査定します。同じマンションや似たマンションの取引事例を選び、条件を比べて価格を出す手順です。マンションは同じ建物の中に似た住戸が複数あり、周辺にも似た規模の物件が建っています。比較の材料が集まりやすい物件です。
一方、戸建住宅は土地と建物を分けて査定し、それぞれの結果を合算します。建物部分は、同じ建物を今建てた場合の新築価格をもとに、経過年数やリフォーム、維持管理の状況を踏まえて現在の価格を求めます。この「維持管理の状況」は、書類にもデータベースにも載っていません。戸建てでAI査定の数字がぶれるのは、価格の一部を決める要素が現地にしかないためです。
エリアの影響も同じ理屈で説明できます。価格査定マニュアルは定期借地権マンションを査定の対象から外しています。その理由として挙げられているのが「中古物件としての流通量が極めて少ない」「取引事例が充足していない」「取引事例比較による査定が慣習化していない」の3点です。事例が足りなければ比較ができない、という構造がここにも表れています。
同マニュアルは、次のような物件も査定の対象外としています。
- 新築住宅、豪邸や由緒ある旧家、投資用の住宅
- 開発用地、工業用地、事業用や業務用の土地
- 農地、山林、農家集落地域にある用地、別荘地
- 建物が建てられない、または再建築できない土地
- 定期借地権マンション、収益物件、店舗や事務所と併設された居住用マンション
自分の物件がこれらに当てはまる場合、AI査定でも数字が出ないか、出ても参考にしづらいものになる可能性があります。マンションの査定について詳しく知りたい方は、マンション売却の査定に関する記事もあわせてご覧ください。
同じ「現地を見ない」方法でも、担当者が出す机上査定には別の材料が加わります。
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※2025年9月19日-23日 「サイト評価に関する調査」より
机上査定でわかること
机上査定は、書類に書いてあることを不動産会社が読み解いた結果です。
AI査定との違いは、担当者がその地域の取引状況を知っている点にあります。同じデータを見ても、地元で売買を扱っている人間が判断すれば、事例の選び方や補正のかけ方が変わります。ただし、書類に載っていない情報が使えないという制約はAI査定と同じです。
机上査定が使う情報
価格査定マニュアルの評価項目は、書類で確認できるものと、現地でしか確認できないものに分かれます。
土地の評価では、交通の便として駅からの徒歩分数、日照・採光、道路幅員、方位、敷地の形状が項目に入っています。このうち徒歩分数、道路幅員、方位、敷地の形状は、地図と登記の資料から把握できます。日照や採光の実際の具合は、現地に立たなければ分かりません。
中古マンションの評価項目は、所在階、室内の維持管理状況、耐震性の3つです。所在階は書類で分かります。耐震性も、建築時期から旧耐震基準か新しい基準かの見当はつきます。残る室内の維持管理状況は、写真があっても実物を見るまで判断できない項目です。
つまり机上査定は、評価項目のうち書類で埋まる部分だけを埋めて価格を出しています。残りは標準的な状態と仮定して計算するしかありません。
評価の仕組みも知っておくと、数字の見方が変わります。価格査定マニュアルでは各項目に評点を設定し、標準の状態を0点として上下に振る仕組みです。たとえば交通の便では、駅から近いほど評点が上がり、評価額も高くなります。マンションの所在階なら3階が標準で、そこより上の階は評点が加算されます。耐震性は、長期優良住宅に相当する性能なら加点、旧耐震基準なら減点という形です。
この評点の積み上げが査定価格です。書類で確認できる項目が多いほど、机上査定でも実態に近づきます。逆にいえば、駅からの距離や階数が価格の大部分を占めるような物件では、机上査定と訪問査定の差が小さくなる傾向があります。室内の状態で価値が大きく動く物件ほど、現地を見た査定との開きが出やすいでしょう。
なお、不動産会社の担当者も勘だけで数字を出しているわけではありません。この価格査定マニュアルは年間3,630円(税込)で利用できる業務用ソフトで、多くの不動産会社が査定の根拠づくりに使っています。机上査定であっても、一定の手順に沿った計算が背後にあります。
売り出し価格に使えない理由
複数社の机上査定がおおむね同じ金額に落ち着けば、その額で売り出してよさそうに思えます。ところが、この段階でそろっている数字にはまだ抜けがあります。
価格査定マニュアルの計算式に入っている「流通性比率」という項目が、それを示しています。これは査定物件が売りやすいか売りにくいかという市場流通性の度合いを表したものです。査定価格が大きく逸脱していないか、物件の需給状況、地域の特性といった市場性から調整をかけます。売れやすさの見立てを、最後に価格へ反映させる仕組みです。
この調整は、物件の状態を把握していなければ精度が上がりません。室内が傷んでいるのか手入れが行き届いているのかで、買い手の反応は変わります。机上査定の段階では、その部分が仮定のまま残っています。
売り出し中の物件の価格帯と、実際に成約した物件の価格帯にずれがあることも押さえておきたい点です。東日本不動産流通機構が2026年7月度の首都圏(1都3県)のデータをまとめています。中古マンションの成約価格は5,267万円、新規に売り出された物件の登録価格は6,834万円でした。この2つは同じ物件を追いかけた数字ではなく、それぞれ別の物件群の平均です。売り出し価格の水準と成約価格の水準が別々に動いていることを示しています。
机上査定の数字は、複数の不動産会社の見立てを並べて比べるための材料として使うのが向いています。1社の数字だけで価格を決める段階ではありません。
書類で埋まらない項目は、担当者が現地を見て初めて埋まります。では現地で何を見られるのかは、当日まで分からないままです。
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訪問査定で見られる項目
訪問査定で担当者が見ているのは、書類に載らない項目です。
間取りや面積は事前に把握されています。当日に確認されるのは、その物件が実際にどういう状態で、周りとどう接しているかという部分です。何を見られるかを知っておくと、当日に慌てずに済みます。
日程調整から結果までの日数
訪問査定は、申し込みから結果が届くまでに何段階かの手順を踏みます。申し込み、日程の調整、当日の現地確認、そして査定結果の作成という流れです。
かかる日数は不動産会社によって異なります。ただ、日数を左右しているのは不動産会社の処理速度だけではありません。売主側の準備が、そのまま待ち時間に跳ね返ってきます。
理由は、査定に必要な材料の集め方にあります。価格査定マニュアルの入力項目は、所有者からのヒアリング内容、現地調査の内容、査定者が目視したデータ、記録書類・証明書類の内容の4つでした。訪問した日に集まるのは2番目と3番目です。1番目のヒアリングは訪問時に行われることが多いものの、4番目の書類は売主側で用意する必要があります。
書類がそろっていないと、その分だけ結果が出るまでの時間が延びます。登記に関する資料、購入したときの契約書、リフォームをしたなら工事の記録などが該当します。訪問査定に必要な書類については、必要書類をまとめた記事で確認しておくと準備がしやすくなるはずです。
室内のチェック項目
室内を見られると聞くと、部屋の広さや設備の新しさを採点されるように思えます。ただ価格査定マニュアルの項目を見ると、中古マンションで室内に関わるのは所在階、室内の維持管理状況、耐震性の3つでした。広さは面積として別に計算されるため、目視の対象は状態のほうに寄っています。
なかでも幅が大きいのが室内の維持管理状況です。「特に優れる」「優れる」「やや優れる」「普通(標準)」「やや劣る」「劣る」「悪い」の7段階で評価され、評点はマイナス15点からプラス15点まで動きます。標準は0点です。同じ間取りの隣室でも、手入れの状態しだいで評点が上下します。
耐震性は4段階です。長期優良住宅に相当する耐震性能が高いもの、建築基準法に準拠した標準のもの、旧耐震基準のもの、旧耐震基準を満たさないものに分かれます。所在階については3階を標準として、上の階ほど評点が上がります。
戸建住宅の建物部分では、見る項目が増えます。建物の規模、耐震性、使っている部材や設備のグレードと耐用年数、リフォームや維持管理の状態、住宅性能や省エネ設備といった付加価値、そして外観などの現況です。設備のグレードや部材の状態は、写真では判断がつきません。担当者が実物を確認する必要があるのはこのためです。
リフォームの記録が残っているなら、当日に出せるようにしておくと話が早く進みます。付加価値として確認できれば加点の対象になります。
敷地と周辺のチェック項目
土地の評価項目は、交通の便として駅からの徒歩分数、日照・採光、道路幅員、方位、敷地の形状です。徒歩分数は駅から近いほど評点が上がります。
このうち日照と採光は、現地でないと確かめようがありません。地図の上では日当たりのよさそうな向きでも、隣に高い建物が建っていれば話が変わります。方位と敷地の形状も、書類の数字と実際の印象が一致しないことがあります。
敷地が道路とどう接しているかも確認されます。建築基準法では、建築物の敷地は道路に2メートル以上接しなければならないと定めています。ただし例外が2つ設けられました。1つは、幅員4メートル以上の道に2メートル以上接していて、利用者が少なく特定行政庁が支障なしと認めた建築物です。もう1つは、敷地の周囲に広い空地があり、特定行政庁が建築審査会の同意を得て許可したものになります。
私道に面している場合は、その負担についても後の手続きで説明の対象になります。宅地建物取引業法は、売買契約が成立するまでに宅地建物取引士が書面を交付して説明すべき事項を定めており、私道に関する負担はその1つです。ほかにも、登記された権利の種類と内容、都市計画法や建築基準法などの法令に基づく制限の概要、飲用水・電気・ガスの供給と排水施設の整備状況が含まれます。既存の建物であれば、建物状況調査を実施したかどうかとその結果の概要、設計図書や点検記録の保存状況も説明事項です。
境界の状況も現地で見ることになります。土地の境界を公的に確定させる地籍調査は、令和7年度末の時点で全国の進捗率が53%でした。優先実施地域に限れば81%まで上がります。ただし都市部の人口集中地区では、法務局が実施している登記所備付地図作成作業の実績を合算しても30%にとどまります。地籍調査に着手していない市町村が全体の5%、過去に実施したものの現在は休止している市町村が12%あり、あわせて約2割の市町村で調査が行われていません。
これらは査定額そのものを決める数字ではなく、売買の手続きの中で確認される事項です。ただし敷地がどういう状態にあるかは書類だけでは分からないため、現地を見る工程が必要になります。
掃除と片付けの範囲
訪問査定の前に大がかりな掃除をすべきかどうかは、多くの方が迷うところです。
判断の基準になるのは、評価されるのが「室内の維持管理状況」という項目である点です。その日たまたま散らかっているかどうかではなく、住まいが日ごろどう手入れされてきたかを見る項目になっています。前日に慌てて片付けても、評点が大きく動くわけではありません。
一方で、見えないと確認できない部分はあります。設備の状態やリフォームの跡は、物が積み上がっていると目視できません。収納の中や設備の周りに担当者が近づけるようにしておくと、確認の漏れが減ります。
水回りは実際に使う場所として確認されやすい箇所です。普段どおりの清掃をして、換気をしておく程度で十分です。傷や不具合がある場合、隠すよりも先に伝えたほうが後の話が進みやすくなります。査定の段階で把握されていれば、その前提で価格と売り方の相談ができます。
ここまでの3つを実際に使うと、次の疑問が出てきます。同じ物件なのに、出てくる金額がそろいません。
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3つの査定額がそろわない理由
査定額が会社ごとに違うこと自体は、異常ではありません。
3社に頼めば3つとも違う額が出ます。確かめたいのは金額の大小ではなく、その数字に説明がついているかどうかです。
会社ごとに額が違う理由
同じ計算式を使うなら、どの会社に頼んでも近い数字が出そうなものです。ずれるのは、式の中に判断が2か所あるからでした。
1つ目は事例の選び方です。事例比較方式では、まず似た取引事例を選びます。この「似た」の判断が会社によって違うところ。同じマンションの別の住戸を使うのか、近隣の別のマンションを使うのかで、出発点の単価が変わってきます。
2つ目は、計算の最後にかかる流通性比率です。この比率は査定物件が売りやすいか売りにくいかを表します。査定価格が大きく逸脱していないか、物件の需給状況、地域の特性といった市場性から調整される数字です。その地域でどれくらい動きがあるかの見方が違えば、最終的な数字も違ってきます。
ここで注意したいのは、極端に高い数字が出たときです。複数社に依頼して1社だけ大きく上振れしている場合、その根拠を聞いてみる価値があります。査定額が高すぎると感じたときの考え方については、査定額が高いケースを扱った記事も参考になるはずです。査定を受けるときの一般的な注意点は、不動産査定の注意点をまとめた記事で確認できます。
査定額は成約価格と同じではない
査定額は不動産会社の見立てであって、その金額で売れることを保証する数字ではありません。
2026年7月度の首都圏(1都3県)では、中古マンションの成約価格が5,267万円でした。成約㎡単価は84.17万円/㎡で、どちらも前年同月比で下落しています。成約件数も3,638件、前年同月比マイナス8.6%と4か月連続の減少でした。相場は下がっている、と読めます。
ところが同じ月、新しく売り出された中古マンションの登録価格は6,834万円でした。登録㎡単価は117.86万円/㎡で、どちらも前年同月比で20%を超える上昇です。売れた価格は下がり、売り出す価格は2割上がっている。矛盾しているように見えます。
答えは、この2つが別々の物件を数えているところにあります。成約価格はその月に契約が成立した物件、登録価格はその月に売り出された別の物件群の平均です。同じ家を追いかけた数字ではないため、差額を値下がり幅として読むことはできません。売り主側の希望と、買い主が実際に払った金額が、それぞれ別に動いていると考えるのが正確です。
この乖離は在庫にも表れています。首都圏の中古マンションの在庫件数は47,151件、前年同月比プラス5.5%で5か月連続の増加でした。売り出しても決まらない物件が積み上がっている状態です。中古戸建住宅は23,197件、同マイナス1.2%で6か月連続の減少と、逆の動きを見せています。成約価格も戸建住宅は3,933万円、前年同月比プラス0.6%とほぼ横ばいでした。
つまり査定額が高く出たとしても、それが売り出し中の価格帯に引っ張られた数字である可能性があります。手元の物件がどのあたりに位置するかは、平均値と比べると見当がつきます。成約した中古マンションの平均専有面積は62.57㎡、平均築年数27.70年。中古戸建住宅は土地面積143.96㎡、建物面積102.74㎡、築年数25.11年でした。
時期による変動もあります。成約件数は2025年7月の3,979件から、2026年7月には3,638件まで減りました。前年同月比は2025年9月のプラス46.9%がピークです。その後は2026年4月マイナス1.2%、5月マイナス3.4%、6月マイナス1.3%、7月マイナス8.6%と推移しています。半年前の査定額が今も通用するとは限りません。
査定書に書かれる根拠
査定書を受け取ったら、金額よりも先に見てほしい場所があります。その金額をどう出したかという説明の部分です。
これは不動産会社の親切心の問題ではありません。宅地建物取引業法には、媒介契約を結ぶ際の定めがあります。不動産会社が書面に記載する売買すべき価額または評価額について意見を述べるときは、その根拠を明らかにしなければならないという内容です。根拠の説明は法律上の義務です。
確認したいのは次のような点です。
- どの取引事例と比べたのか
- その事例と自分の物件で、どの条件がどう違うと判断されたのか
- 売れやすさの見立てをどう反映させたのか
多くの不動産会社は価格査定マニュアルのような業務用ソフトを使って計算しています。年間3,630円(税込)で利用できるもので、売却価格提案書を出力する機能も備わっています。手順に沿った計算をしているのであれば、根拠の説明ができるはずです。
説明を求めても具体的な答えが返ってこない場合、その数字を判断の材料にするのは難しくなります。逆に、事例と補正の中身まで説明してくれる担当者なら、その後の相談も進めやすくなります。
では、自分は今どの方式を使えばよいのでしょうか。
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検討段階別の査定方法の選び方
マンションだからAI査定、戸建てだから訪問査定という分け方にはなりません。選ぶ基準は物件ではなく、自分がどこまで決めているかです。
同じ人でも、半年前と今では適した方式が変わります。物件は変わっていなくても、必要な情報の精度が変わるからです。
相場だけ知りたい段階
「うちはいくらくらいなのだろう」という段階なら、AI査定で足ります。
精度が低いと言われる方法をなぜ勧めるのか。この段階で必要なのが、正確な金額ではなく桁の見当だからです。住宅ローンの残債と比べてどうか、住み替え先の予算に届きそうか。そうした判断に使うだけなら、相場の目安があれば足ります。
サービスによっては連絡先を入力せずに使えます。営業の連絡を受けたくない段階では、この点が大きな利点になります。ただし出てくるのは金額だけで、売り方の助言は付いてきません。数字を見て「思ったより高い」「これでは足りない」と感じたら、次の段階に進む合図です。
戸建てや土地の場合、AI査定の数字はマンションほど当てになりません。桁を確認する用途にとどめて、金額を鵜呑みにしないほうが安全です。
この段階でできる準備もあります。登記に関する資料や購入時の契約書がどこにあるかを確認しておくことです。次の段階に進んだとき、書類の所在が分かっているだけで話が早く進みます。リフォームをしたことがあるなら、その記録も探しておくと後で使えます。
複数のAI査定を試して数字を比べる方法もあります。サービスによって参照する事例が違うため、結果には幅が出るのが普通です。1つの数字を信じるより、いくつかの結果の範囲として捉えるほうが実態に近づきます。ただしこの段階で出た幅は、あくまで相場の目安です。売り出し価格の候補として扱う段階ではありません。
売るか迷っている段階
売却を具体的に考え始めたものの、まだ決めきれていない段階では、机上査定を複数社に依頼するのが向いています。
複数社に頼む目的は、一番高い数字を探すことだと思われがちです。ただこの段階で高い数字を見つけても、売れる保証にはなりません。比べる価値があるのは金額そのものより、なぜ差が出たのかという説明のほうです。
地域の状況をよく知っている会社なのか、その物件の種類を扱い慣れているのか。事例の選び方を聞けば、説明の内容から伝わってきます。1社の数字だけでは、それが高いのか低いのかも判断できません。
複数社にまとめて依頼したい場合は、一括査定という手段があります。一括査定サイトの仕組みについては、関連する記事で確認できます。ここで連絡先を伝えることになるため、連絡を受けても構わない段階になってから使うのが現実的です。
売却時期が決まった段階
売る時期が見えていて、価格を決める段階に入ったら、訪問査定が必要になります。
売り出し価格を決めるには、現地を見た情報が要ります。室内の維持管理状況、設備の状態、日照や採光、敷地の状況。これらは書類にもデータベースにも載っておらず、机上査定やAI査定の段階では標準的な状態と仮定されたままです。
訪問査定にはもう1つの役割があります。担当者と実際に会って話す機会になることです。査定額の根拠を説明できるか、こちらの事情を聞いたうえで売り方を提案してくれるか。売却を任せる相手を見極める場でもあります。
複数社に訪問査定を依頼すれば、金額と対応の両方を比べられます。手間はかかりますが、この段階での比較は後の売却期間に影響します。
こうして査定を進めるとき、多くの方が気にするのが、その後の連絡と契約の話です。
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査定後の営業連絡と媒介契約
査定を頼むと断りにくくなりそうですが、法律の上ではまだ何も始まっていません。
売却を任せる約束は、書面を交わして初めて成立します。査定はその手前で価格の見立てを聞くだけの手続きです。ここを押さえておくと、依頼への抵抗が減ります。
方式別の連絡のタイミング
営業の連絡がいつ来るかは、方式によってはっきり違います。
AI査定は、サービスによっては連絡先を入力せずに使えます。この場合、査定を受けたことが不動産会社に伝わりません。連絡が来ることもありません。ただし、AI査定と名乗っていても連絡先の入力を求めるサービスはあります。入力欄に氏名や電話番号があるかどうかで判断できます。
机上査定は、不動産会社の担当者が対応するため、申し込みの時点で連絡先を伝えることになります。結果の連絡が来て、そこから会話が始まる流れ。複数社に依頼すれば、その社数だけ連絡が来ます。
訪問査定は、日程を決める時点で担当者とのやり取りが始まります。連絡が来るのを待つのではなく、こちらの都合を伝える側に回るということです。3つの中で、最も早い段階から相手と向き合う方法になります。
連絡を受けたくない段階ならAI査定、話を聞いてもよい段階なら机上査定以降、という切り分けができます。
連絡の頻度が気になる場合は、申し込みのときに希望を伝えておく方法もあります。電話ではなくメールでの連絡を希望する、日中は仕事のため夕方以降にしてほしい、といった内容です。査定の依頼は売主からの相談ですから、こちらの都合を伝えて構いません。
連絡が来ること自体を過度に警戒する必要もありません。査定額の根拠を聞ける機会でもあります。どの事例と比べたのか、地域の状況をどう見ているのか。こうした質問への答え方から、その会社に任せてよいかどうかの判断材料が得られます。
査定を受けても媒介契約の義務はない
売却を不動産会社に依頼するときに結ぶのが媒介契約です。査定とは別の手続きになります。
宅地建物取引業法には、媒介契約を締結したときの手順が定められています。不動産会社は遅滞なく書面を作成し、記名押印して依頼者に交付しなければなりません。書面に記載するのは、物件を特定する表示と、売買すべき価額または評価額です。あわせて他社に重ねて依頼できるかどうか、建物状況調査を実施する者のあっせん、有効期間と解除も入ります。指定流通機構への登録や報酬に関する事項も記載事項です。
つまり媒介契約は書面を交わして成立するものです。査定を受けただけでは、この手続きは始まっていません。査定額に納得できなければ、その会社に依頼しないという選択ができます。
契約を結んだ後についても、期間の定めがあります。他社に重ねて依頼することを禁じる専任媒介契約の有効期間は、3か月を超えることができません。これより長い期間を定めた場合でも、期間は3か月として扱われます。更新は依頼者の申し出によってでき、更新のときから3か月を超えることはできません。契約を結んでも、期間が来れば見直す機会があるということです。媒介契約の種類ごとの違いは、一般媒介と専任媒介を比較した記事で確認できます。
査定を頼む前に売却を決めておく必要はありません。むしろ、査定で出てきた数字と説明を材料にして、売るかどうかを考える順番が自然です。
よくある質問
読み方や所要時間など、申し込む前に引っかかりやすい点をまとめました。
机上査定は何と読みますか
「きじょうさてい」と読みます。机の上だけで、つまり現地に行かずに書類とデータから価格を出すことを指した言葉です。「机上評価」と書かれている場合も同じ意味で使われています。
机上査定と訪問査定では、どちらが高い金額になりますか
どちらが高くなるとは決まっていません。訪問査定では現地の状態が価格に反映されるためです。室内の維持管理が行き届いていれば机上査定より高くなり、傷みが見つかれば下がることもあります。価格査定マニュアルでは室内の維持管理状況を7段階で評価し、評点はマイナス15点からプラス15点の幅で動きます。上にも下にも振れる項目です。
訪問査定では家の中のどこまで見られますか
マンションでは所在階、室内の維持管理状況、耐震性が評価項目です。戸建てではこれに加えて、建物の規模、部材や設備のグレードと耐用年数、リフォームや維持管理の状態、住宅性能や省エネ設備、外観などの現況が対象になります。収納の中まで細かく調べられるというより、設備や内装の状態を確認するための目視が中心です。
訪問査定は何時間くらいかかりますか
所要時間は不動産会社によって異なります。物件の広さや種類、確認する項目の数でも変わってきます。当日の予定を組む必要があるなら、申し込みのときに目安を聞いておくと確実です。
AI査定の精度はどのくらいですか
サービスによって差があり、共通の数値はありません。ただし精度が変わる理由ははっきりしています。AI査定は過去の取引事例と比べて価格を出すため、事例が多い物件と地域では計算の材料がそろい、少なければ選択肢が減ります。マンションで比較的近い数字が出やすく、戸建てや土地でぶれるのはこのためです。
査定は無料ですか。費用が発生することはありますか
多くの不動産会社が査定を無料で行っています。ただし条件はそれぞれ異なるため、申し込む前に確認しておくと安心です。なお、不動産会社が使う業務用のシステムには利用料がかかります。不動産流通推進センターの価格査定マニュアルは年間3,630円(税込)で、これは不動産会社側の負担になります。
地方や田舎の物件でもAI査定は使えますか
使える場合と、結果が出ない場合があります。AI査定は取引事例との比較で価格を出すため、取引の少ない地域では材料が集まりません。価格査定マニュアルでも、農地や山林、農家集落地域にある用地、別荘地は査定の対象外としています。数字が出た場合でも、都市部のマンションと同じ感覚で受け取らないほうが安全です。
\ 連絡が来る前に、まず相場だけ確認 /
出典
- e-Gov法令検索・宅地建物取引業法(施行日:2026-04-01)
- e-Gov法令検索・建築基準法(施行日:2026-05-27)
- 公益財団法人不動産流通推進センター・「価格査定マニュアル」による査定方法(2026年版)
- 公益財団法人不動産流通推進センター・「価格査定マニュアル」の査定対象(2026年版)
- 公益財団法人不動産流通推進センター・価格査定マニュアル(2026年版)
- 公益財団法人東日本不動産流通機構・Market Watch 月例速報 サマリーレポート 2026年7月度(公表日:2026-08-10)
- 国土交通省・地籍調査Webサイト 全国の地籍調査の実施状況(令和7年度末時点・令和8年6月調べ)
