- 確定測量をせずに売れる場合と、先に境界を整理すべき場合
- 測量図や境界確認書を確認するときのポイント
- 測量後と現況売却の手取り・期間・契約条件の比べ方
境界が未確定の土地でも売却契約はできます。土地を売る前に、必ず確定測量をしなければならないという全国一律の決まりはありません。
ただし、省ける場合があるのは確定測量であり、境界や越境の調査・説明ではありません。境界標が見つからない、隣地所有者の確認を得ていない、塀や建物が越境しているといった事実は、買主へ正確に伝える必要があります。
まず法務局の資料と手元の測量図を集め、土地家屋調査士に不足している調査を確認しましょう。そのうえで、確定測量後と現在の状態の2条件で査定を取り、手取り額と売却までの期間を比べます。
- 信頼できる図面と境界標があり、境界をめぐる争いや重大な越境がなければ、確定測量をせずに売れる場合があります。
- 境界位置への異議、土地の一部売却、重大な越境、買主からの確定測量要求がある場合は、売り出す前に境界を整理します。完了の見通しが立たないまま、確定測量を契約条件にしないことも重要です。
この記事は、個人が日本国内の宅地または宅地付き戸建てを売る一般的な場面を想定しています。農地、山林、借地、共有者間で争いがある土地、法人間取引では、必要な手続や確認事項が異なります。
\ まずは今の状態で、いくらになるか確かめる /
境界未確定の土地売却フロー|3つの確認で最初の相談先が決まる
埼玉県の宅地建物取引業に関するFAQでも、境界が未確定という理由だけで土地売買契約を締結できないとはされていません。一方で、宅建業者には、境界標、境界確定の状況、越境、将来の紛争リスクを調査し、買主へ正確に説明することが求められています。
この記事でいう「確定測量」は、隣地所有者や道路・水路などの管理者と境界を確認し、測量図や境界確認書を作るまでの実務を指します。ただし、「確定測量図」は法令で全国一律に定義された名称ではありません。依頼時には、確認する境界と受け取れる成果物まで確かめてください。
杭が一つ見つからない土地と、隣地所有者が別の境界位置を主張している土地では、対応が異なります。次の順に確認すると、最初の相談先と売却方針を絞れます。
- 境界の争い・重大な越境・分筆予定があるか
該当する場合は、売却活動より先に土地家屋調査士へ相談します。所有権や撤去をめぐって対立している場合は、弁護士への相談も必要です。 - 信頼できる図面と境界標が残っているか
残っている場合は、全面的な確定測量を依頼する前に、資料と現地が合っているかを土地家屋調査士に確認してもらいます。 - 買主が未確定部分を理解し、利用・融資の条件にも合うか
条件に合えば、境界非明示や公簿売買を契約条件として検討できます。未確認事項と買主が引き受ける範囲は、必ず書面に残してください。
境界の状態別に、最初の対応と売却方針を整理すると次のとおりです。
| 現在の状態 | 最初にすること | 売却方針の候補 |
|---|---|---|
| 境界標の一部だけが見つからない 信頼できる図面・確認書はある | 資料と現地が合うか確認する | 境界標の復元や必要な範囲の測量で足りるか検討する |
| 図面・確認書がない 隣人との争いは見当たらない | 資料調査と現況測量の見積もりを取る | 確定測量後と現況のままの売却を比較する |
| 隣地所有者が立ち会わない または連絡先が分からない | 土地家屋調査士に資料調査と対応方法を相談する | 必要な手続と期間を確認し、現況売却も含めて検討する |
| 境界位置の主張が食い違う | 自分で杭を打ったり、塀を動かしたりしない | 土地家屋調査士・法務局・弁護士へ相談する |
| 建物・塀・配管などの越境がある | 何が、どちらから、どこまで越えているか記録する | 解消、覚書、買主への引継ぎを検討する |
法務局の図面、過去の測量図、現地の境界標が合わない場合や、買主が確定測量図の交付を購入条件にしている場合は、売買契約を急がないでください。確認できていない境界を確定済みとして説明したり、完了時期が読めない測量を無条件で約束したりすると、契約違反につながるおそれがあります。
境界が未確定でも売却契約はできる|公簿売買・境界非明示の限界
売買する土地の面積を登記簿の数字にするか、実際に測った数字にするかは、売主と買主の契約で決められます。
ただし、面積の基準を決めても、現地で境界を示すか、越境をどう処理するか、未確認部分を誰が負担するかまでは決まりません。契約書でよく使われる次の4つの言葉は、それぞれ意味する範囲が異なります。
| 用語 | 簡単にいうと | その言葉だけでは決まらないこと |
|---|---|---|
| 公簿売買 | 登記簿面積を基準に売買し、実測との差額を精算しない | 測量を行うか、境界を示すか、越境をどう扱うか |
| 実測売買 | 実測面積を基準に売買代金を精算する | どの測量成果を使うか、すべての境界が確認済みか |
| 境界非明示 | 売主が現地で境界点を示さない | 既知の越境や境界問題の説明まで不要になるか |
| 現況有姿 | 現在の状態を前提に引き渡す | 売主の責任がどこまで制限されるか |
契約書に「公簿売買」「境界非明示」「現況有姿」と書くだけでは足りません。未確認の境界点、境界標の有無、渡す図面、越境の状況、引渡しまでに行う作業を具体的に決める必要があります。
確定測量図の交付を契約条件にすると、あとから省略できない
売買契約で確定測量図の交付や境界明示を約束すると、その時点で「できれば行う作業」ではなく、売主が履行すべき契約条件になります。
不動産適正取引推進機構が紹介した裁判例では、売主が確定測量図を交付する条件で契約したものの、隣地所有者の協力を得られず、約定の期限までに図面を交付できませんでした。裁判所は確定測量図の交付を契約の重要な要素と判断し、買主による解除と手付金の返還、違約金などの請求を認めています。
隣地所有者が立ち会うかどうかは、売主だけでは決められません。確定測量を契約条件にするなら、契約前に土地家屋調査士へ相談し、必要な立会い、公有地管理者との協議、完了の見込みを確認してください。期限までに終わらない場合の延長、代替条件、解除の扱いも契約書に定めます。
未確定と伝えても、説明不足なら契約不適合責任を問われ得る
引き渡した土地が種類・品質・数量などについて契約内容に適合していない場合、買主は、それぞれの要件を満たせば、追完、代金減額、損害賠償、契約解除などを求めることがあります。これが「契約不適合責任」です。
「境界は未確定です」と伝えるだけで、すべての責任がなくなるわけではありません。売主が把握している越境、過去の境界協議、隣地所有者から受けた異議、境界標を動かした経緯は、買主へ書面で伝えてください。
売主の責任を限定する特約を設けても、売主が知りながら告げなかった事実については、責任を免れないことがあります。
筆界未定地と境界未確定は違う|土地売却で選ぶ手続が変わる
境界標が見つからない土地と、地籍調査の成果上「筆界未定」とされている土地は同じではありません。
言葉を混同すると、必要のない大がかりな手続を選んだり、反対に必要な調査を飛ばしたりする可能性があります。
土地売却で影響する筆界と所有権界の違い
- 筆界
- 土地が登記された際に、隣の土地との区画を示すものとして定められた線
- 所有権界
- 実際に所有権が及ぶ範囲を示す線
土地の一部売買や時効取得などの特別な事情がなければ、筆界と所有権界は一致しているのが一般的です。
筆界は、隣り合う所有者が合意しただけでは自由に動かせません。一方、筆界の位置が明らかになっても、越境物を誰が所有し、誰が撤去するかまで自動的に決まるわけではありません。
筆界未定地は、確定測量図がないだけの土地とは違う
「筆界未定」は、地籍調査で土地相互間の筆界を確認できず、調査成果上、筆界未定として処理された状態を指します。
境界標がない、確定測量図を持っていないというだけでは、筆界未定地とは限りません。まず登記事項証明書、法務局の地図・図面を取得し、土地家屋調査士に登記上と現地の状態を確認してもらってください。
地積測量図・公図・境界確認書は「何を確認できるか」で見分ける
手元から測量図が一枚出てきても、図面の名称だけでは、誰がどの境界点を確認したのかまではわかりません。隣地所有者の確認を得ずに作られた図面もあります。
| 資料 | 主に確認できること | その資料だけでは分からないこと |
|---|---|---|
| 土地の登記事項証明書 | 所在、地番、地目、登記面積、名義人、権利関係 | 現地の境界点がどこにあるか |
| 法務局の地図 不動産登記法14条1項地図 | 土地の位置と区画を、現地に再現できる精度で示す情報 | 現在の塀、建物、越境や所有権界の状況 |
| 地図に準ずる図面 一般に公図 | 土地の位置、形状、地番の並びの概略 | 現地に境界を正確に再現できる精度があるか |
| 地積測量図 | 作成当時の土地形状、辺長、地積、境界点など 年代によって記載内容は異なる | 現在の隣地所有者全員が境界を確認済みか |
| 現況測量図 | 塀、建物、既存の境界標など、現在の利用状況と寸法 | 隣地所有者との境界合意や筆界の確定 |
| 確定測量図・境界確認書 | 関係者が確認した境界点、測量結果、合意の記録 | すべての境界が対象か、作成後に現地が変わっていないか |
公図は土地の位置や並び方を調べるのに役立ちますが、現地で境界を正確に復元できるとは限りません。地積測量図も、作成年代や作成目的によって記載内容・精度が異なり、図面があることだけで境界確定済みとは判断できません。
手元の図面が売却に使えるかは、次の6点で確認します。
- 誰が、いつ、何の目的で作った図面か
- 座標や基準点から境界点を再現できるか
- 隣地所有者と道路・水路などの管理者が確認しているか
- 現地の境界標、塀、建物と図面が合っているか
- 作成後に分筆、合筆、地積更正、建替え、塀の作り直しがないか
- 越境についての覚書や別紙がないか
全宅連の重要事項説明書様式では、すべての隣地所有者の立会いを得て境界が確定し、官有地に接する場合は官民査定手続も経た図面を「確定測量図」としています。ただし、実際の書類は名称だけで判断せず、署名した人、対象となる境界点、公有地との確認範囲まで見てください。
\ 手元の図面のままで売れるか、査定で確かめる /
確定測量なしで土地を売れるかは、7つの条件で決まる
「測量費を節約したい」という理由だけで確定測量を省くと、買主が限られ、値下げや契約後の負担が測量費を上回ることがあります。
判断材料は、手元の資料、隣地所有者との関係、買主の利用目的、融資条件、契約で何を約束するかです。
確定測量なしでも売却を進められる条件
- 信頼できる測量図・境界確認書と、現地の境界標が合っている
- 資料、現地、売主への聞き取りから、境界への異議や越境の兆候が見当たらない
- 一筆の土地全体をそのまま売る
- 登記面積を基準にし、実測との差額を精算しない
- 越境がない、または位置と処理方法が書面で整理済み
- 買主の建築・融資計画が確定測量図を前提にしていない
- 売主が確定測量図の交付や境界標の新設を契約で約束しない
次の条件がそろうほど、全面的な確定測量をせずに売却できる可能性が高まります。
ただし、境界や越境に争いの兆候がある場合は、条件の数だけで判断せず、既存資料と現地の状態を土地家屋調査士に確認してもらってから売り出してください。
売り出す前に測量・境界整理が必要になる条件
- 図面がない、作成経緯が分からない、図面と境界標が合わない
- 隣地所有者が別の境界位置を主張している
- 土地の一部を売るための分筆や、登記面積の訂正を予定している
- 実測面積と単価で売買代金を精算する
- 越境の有無・範囲が分からない、建物本体や擁壁の越境が疑われる
- 買主や金融機関が、建築・分筆・融資のために確定測量図を求めている
- 引渡しまでの確定測量図の交付や境界明示を契約条件にする
これは点数表ではありません。「売り出す前に測量・境界整理が必要になる条件」に重大な事情が一つでもあれば、ほかの条件がそろっていても調査を先にします。
とくに境界位置の対立、土地の一部売却、建物本体や擁壁の越境がある場合は、現況のまま売り出さず、先に専門家へ相談してください。
一筆の土地の一部だけを独立した土地として移転登記するには、通常は分筆登記が必要です。分筆登記や地積更正登記では、土地を測量し、地積測量図などの申請資料を作成する必要があります。
\ 測量を頼む前に、現況の査定額を知る /
境界未確定の土地を売却する4つの方法
売り方は「測量する・しない」の二択ではありません。手元の資料、境界をめぐる争いの有無、買主の利用目的によって、主な方法は4つに分かれます。
| 売却方法 | 向いている状態 | 主なメリット | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 確定測量後に仲介で売却 | 資料が不足し、買主が建築・融資・分筆を予定している | 買主が土地の利用範囲を判断しやすい | 費用と期間がかかり、関係者の協力を得られるとは限らない |
| 既存資料を検証し、必要な範囲だけ測量 | 信頼できる図面と境界標があり、境界をめぐる争いがない | 全面的な確定測量をやり直さずに済む場合がある | 土地家屋調査士による資料と現地の照合が必要 |
| 境界非明示・現況のまま仲介または買取 | 買主が未確定部分を理解し、土地全体を契約条件に沿って購入する | 測量完了を待たずに進められる場合がある | 買主が限られ、価格や契約条件にリスクが反映されやすい |
| 境界問題を解決してから売却 | 境界位置の対立、筆界未定、重大な越境がある | 売却後に紛争を持ち越しにくい | 筆界特定、話し合い、訴訟などに時間と費用がかかる場合がある |
確定測量を終えてから仲介で売却する
個人の買主も広く対象にし、土地を使える範囲を明確にしたい場合に向いています。買主が住宅を建てる土地、分筆を予定する土地、面積差が価格へ大きく影響する土地では、確定測量図が重要な判断材料になります。
測量の結果、登記面積との差が見つかっても、必ず地積更正登記を行うとは限りません。差の内容と売買条件を踏まえ、必要性を土地家屋調査士と不動産会社に確認してください。
既存の地積測量図を検証し、必要な範囲だけ測量する
過去の確定測量図、境界確認書、現地の境界標がそろっているなら、土地家屋調査士に資料と現地を照合してもらい、不足部分だけを調査する方法があります。境界標が一部なくても、信頼できる座標や基準点が残っていれば、元の位置を確認できる場合があります。
「古い図面だから使えない」「境界標が一つないから全面的な確定測量が必要」と一律には決まりません。反対に、新しい図面でも、隣地所有者の確認を得ていない現況測量図の場合があります。図面の名称だけでなく、誰がどの境界点を確認したかで判断します。
境界非明示・現況のまま仲介または買取で売却する
買主が未確定部分を理解し、利用目的や資金調達にも支障がなければ、境界非明示の条件で売れる場合があります。仲介で買主を探す方法と、不動産会社などへ直接売る買取が候補です。
ただし、買取なら必ず測量不要になるわけではありません。「売主が確定測量や越境解消を終えた後の買取価格」と、「現在の状態で残る調査・解決費用を買主が負担する買取価格」は、別の条件として提示してもらいます。
比べるのは価格だけではありません。調査後の減額・撤回条件、測量費、越境対応、残置物、契約不適合責任、決済日をそろえて比較してください。
\ 現況のままの仲介と買取を、同じ条件で比べる /
筆界特定などで境界問題を解決してから売却する
隣地所有者と合意できないときは、何を明らかにしたいのかによって手続を選びます。
- 登記上の筆界を公的に明らかにしたい
法務局の筆界特定制度を検討します。 - 所有権の範囲や越境を含めて話し合いたい
土地家屋調査士会の境界問題相談センターなどによる裁判外の話し合いを検討します。 - 最終的な法的判断が必要
境界確定訴訟、所有権確認訴訟などを弁護士へ相談します。
筆界特定制度は、資料調査や測量などをもとに、土地が登記された際の筆界の位置または範囲を法務局が特定する制度です。新しい境界を作る制度ではなく、所有権の範囲や越境物の撤去義務まで判断する制度でもありません。
売却期限がある場合は、管轄法務局に手続と標準処理期間を確認してください。希望時期に間に合わないときは、売却先や契約条件の見直しも必要です。
越境したまま売却するなら、越境の方向と処理方法を確定させる
越境があっても、現在の状態と処理方法を売主・買主・隣地所有者の間で明確にできれば、売却できる場合があります。ただし、基準となる境界線が分からなければ、越境しているかどうかも判断できません。
まず境界資料と現地を照合し、越境物の所有者、位置、方向、範囲を確認します。
| 状態 | 主なリスク | 売却前の対応 |
|---|---|---|
| 自分の建物・屋根・塀・配管が隣地へ出ている | 撤去や修正を求められ、買主が費用を引き継ぐ可能性がある | 撤去の可否、費用、建物への影響を調べて協議する |
| 隣地の建物・塀・配管が自分の土地へ入っている | 買主が使える範囲が狭まり、建替え時に問題が表面化する | 勝手に撤去せず、将来の処理方法を書面にする |
| 塀・擁壁が境界上にあり、所有者が分からない | 修繕、撤去、事故時の負担を決めにくい | 設置経緯と所有者を調べ、工事権限と費用負担を整理する |
| 樹木の枝が越えている | 落葉、日照、建物への接触などの問題が起きやすい | 原則として所有者へ切除を求め、自ら切れる条件は民法を確認する |
| 樹木の根が越えている | 舗装、配管、構造物や樹木を傷める可能性がある | 境界と影響を確認し、所有者や専門家へ相談する |
| 越境かどうか自体が分からない | 誤った説明や撤去で紛争を広げる | 境界資料と現況測量を照合する |
越境の処理は「解消・覚書・買主への引継ぎ」の3通り
- 引渡しまでに解消する
雨樋、フェンス、物置などを移設・撤去します。建物本体や擁壁は安全性や建築法規にも関わるため、施工会社、建築士、土地家屋調査士へ相談してから工事します。 - 越境の事実と将来の処理を覚書に残す
すぐに撤去すると建物への影響が大きい場合は、建替えや大規模修繕の際に解消する条件などを書面にします。 - 買主が現在の状態を引き継ぐ条件で売る
買主が越境と将来の負担を理解し、価格と契約条件に反映して引き継ぎます。既存の覚書がある場合も、買主へ引き継げる内容かを確認します。
覚書には、越境物の所有者・種類・位置・範囲、根拠となる図面と写真、点検や敷地立入りの扱い、撤去時期、費用負担、建替え・売却・相続時の扱い、買主へ引き継ぐ権利義務を記載します。
覚書を作っても、境界そのものが確定するわけではありません。また、現在の所有者間の合意が、将来の所有者へ当然に同じ内容で引き継がれるとは限りません。法的な効力に不安がある場合は、弁護士へ確認してください。
売却準備のために、隣地所有者の塀や建物を自分で切ったり撤去したりしてはいけません。樹木についても、枝と根では民法上の扱いが異なります。
越境した根は民法233条4項に切り取れる旨の規定がありますが、境界の思い違いや樹木・構造物への損傷を避けるため、先に所有者や専門家へ相談するのが安全です。
確定測量の費用・期間に全国一律の相場はない|土地ごとに見積もる
同じ広さの土地でも、確定測量の見積額と期間は変わります。作業量を左右するのは、面積だけではありません。
隣接地の数、所有者の状況、道路・水路との境界、既存資料の精度、境界標、越境、分筆・地積更正の有無などが影響します。全国一律の金額や完了日ではなく、対象土地ごとの見積もりで判断してください。
日本土地家屋調査士会連合会が示す一般的な流れは、資料調査、現地測量、資料と測量結果の検討、仮の境界点の復元、関係者の立会い、境界標の設置、境界確認書の取り交わしです。必要に応じて登記申請も行います。
確定測量の見積書で確認する8項目
総額だけでは、作業範囲を比較できません。次の8点を確認してください。
- 隣接する民有地だけでなく、道路・水路など公有地との境界確認も含むか
- すべての隣接地と所有者を調べる費用を含むか
- 境界標の探索、復元、新設をどこまで含むか
- 建物、塀、配管などの越境測定を含むか
- 境界確認書と確定測量図を作成・交付するか
- 地積更正、分筆、筆界特定は別料金か
- 立会いを得られない場合や異議が出た場合、どこまで費用が発生するか
- 受け取る成果物を売買契約や将来の登記に使えるか
相見積もりでは、すべての土地家屋調査士へ同じ資料を渡し、調査・測量の範囲をそろえてください。総額が安くても、公有地との境界確認、越境測定、境界確認書、登記が含まれていなければ、同じ条件ではありません。
期間は、隣接地所有者や公有地管理者との日程調整、資料の有無、境界への異議などで変わります。筆界特定まで進む場合は、通常の測量とは別に期間を見込んでください。
法務局が公表する筆界特定の標準処理期間も地域によって異なり、秋田地方法務局では6か月、福岡法務局では9か月とされています。これは個別案件の完了日を保証するものではなく、通常の確定測量にかかる期間でもありません。
税務上は、土地・建物を売るために直接かかった測量費は、譲渡所得の計算で差し引く「譲渡費用」に該当する場合があります。
ただし、売却と直接関係しない調査費や紛争費用まで同じ扱いになるとは限りません。請求書と契約書を保管し、申告時に税務署または税理士へ確認してください。
\ 測量費をかける価値があるか、査定で見極める /
隣地所有者が境界の立会いに応じないときは、理由別に相談先を選ぶ
立会いが進まない理由が日程なのか、境界位置への異議なのかで、次の対応は異なります。日程調整の問題と、境界位置をめぐる対立を分けて考えてください。
| 状況 | 最初の相談先 | 検討する対応 |
|---|---|---|
| 所有者や相続人の連絡先が分からない | 土地家屋調査士 | 登記・戸籍などの調査、既存資料で判断できるかの確認 |
| 連絡は取れるが日程が合わない | 土地家屋調査士 | 再日程や書面による確認など、適切な方法を検討 |
| 筆界の位置について意見が違う | 土地家屋調査士、法務局 | 筆界特定制度を検討 |
| 所有権の範囲や越境の処理でもめている | 境界問題相談センター、弁護士 | 話し合い、調停、合意書、必要に応じて訴訟を検討 |
| 売却期限までに解決しそうにない | 不動産会社、土地家屋調査士、弁護士 | 現況のまま購入する相手、価格、解除条件を見直す |
相談先は、次のように役割が分かれています。
- 土地家屋調査士
筆界資料、現地測量、境界標、分筆、地積更正など - 宅建業者・宅地建物取引士
売却方法、買主への説明、重要事項説明書、売買契約の条件など - 弁護士
所有権の範囲、越境紛争、契約解除、責任を限定する条項、覚書の法的効力など - 税理士・税務署
測量費や関連費用を譲渡費用にできるか、売却に伴う税額など
自分で隣地所有者に何度も署名を迫ったり、資料がそろう前に境界位置を断定したりすると、その後の話し合いが難しくなることがあります。まず土地家屋調査士に資料を渡し、確認済みの点と未確認の点を整理してもらってください。
確定測量後と現況売却は、手取り額と完了の見込みで比較する
測量費がかかるから省く、測量すれば高く売れそうだから行う。どちらも、その理由だけでは判断できません。
比べるのは売出価格ではなく、同じ条件で計算した税引前の現金手取りと、希望時期までに取引を終えられる見込みです。
測量後に売る場合の税引前概算手取り
= 測量後の成約予想価格または買取価格
- 測量・境界解決・登記などの費用
- 追加期間中の維持・保有費用
- 仲介手数料などの売却費用
- 住宅ローン返済額
現況で売る場合の税引前概算手取り
= 境界非明示の成約予想価格または買取価格
- 現況売却でも売主が負う費用
- 仲介手数料などの売却費用
- 住宅ローン返済額
この概算は現金収支を比べるためのもので、税務上の譲渡所得とは別です。譲渡所得税・住民税は、取得費、譲渡費用、所有期間、特例の適用条件をそろえて別に試算します。
計算のもとになる査定額、成約予想価格、買取価格も別の数字です。同じ不動産会社へ、次の2条件を示して金額の前提をそろえてもらいます。
- 売主が、指定範囲の境界確認と必要な越境対応を終えた場合
- 境界を現地で示さない現在の状態で、残る調査・対応を買主が引き受ける場合
それぞれについて、想定買主、融資条件、売却期間、売主負担、価格変更・契約解除の条件を確認します。土地家屋調査士の見積もりも重ねると、測量費を払う価値だけでなく、期限内に引渡しまで終えられるかも判断しやすくなります。
\ 測量後と現況、2条件の査定をそろえる /
境界を確定させずに契約するときの確認10項目
契約書に「境界非明示」と一文を加えるだけでは、決めるべきことが残ります。重要事項説明書、売買契約書、物件状況報告書、測量図、写真の内容をそろえ、次の10項目を確認してください。
- 売買する土地
所在、地番、地目、登記面積、対象となるすべての土地 - 面積の基準
公簿売買か実測売買か、面積差を精算するか - 境界の明示
どの境界点を、何を根拠に、いつまでに示すか。示さない場合はその範囲 - 買主へ渡す資料
測量図、境界確認書、覚書、写真の名称、作成日、作成者 - 未確認の事項
境界点、隣接地、公有地、立会い、境界標のうち未確認のものと、その理由 - 越境
越境物の所有者、方向、位置、範囲、解消または引継ぎの方法 - 引渡し前の作業
測量、境界標の設置、撤去、覚書、登記を誰が行い、費用を誰が負担するか - 作業が終わらない場合
期限延長、代替資料、代金変更、解除、手付金・違約金の扱い - 契約不適合責任
売主が責任を負う範囲、除外する範囲、買主からの通知期限、既知事項との関係 - 買主の利用条件
融資、建築、分筆、将来の売却に必要な条件を満たすか
重要な約束は、口頭説明だけで終わらせず書面にします。実際の特約は、仲介する宅建業者と物件の状態に合わせて作成してください。境界紛争や重大な越境がある場合は、弁護士への確認も必要です。
境界未確定の土地を売却する手順6ステップ
買主を探す前に、すべての境界を確定させる必要があるとは限りません。先に必要なのは、どこまで調べ、何を売買契約の条件にするかを判断できる材料です。
登記事項証明書・法務局の地図・地積測量図と過去の合意書を集める
法務局で、登記事項証明書、地図証明書、地積測量図を取得します。手元では、過去の確定測量図、境界確認書、越境の覚書、売買契約書、物件状況報告書、建築時の配置図、境界標の写真を探します。
登記事項証明書、地図証明書、地積測量図などは、オンラインで交付請求することもできます。
必要な測量の範囲を土地家屋調査士に確認する
いきなり確定測量一式を依頼せず、資料と現地を見てもらいます。既存資料の確認、境界標の探索・復元、現況測量、一部の境界確認、全面的な確定測量、分筆・地積更正・筆界特定のうち、どこまで必要かを整理します。
土地家屋調査士は、土地・建物を調査・測量し、不動産の表示に関する登記を扱う専門家です。
現地で境界標と越境の候補を記録する
土地家屋調査士や不動産会社と現地を確認し、杭・鋲・プレート、塀・擁壁・建物、屋根・雨樋、樹木、給排水管、通路の位置を記録します。境界標らしい物を見つけても、自分で動かしたり、新しく打ったりしないでください。
写真には撮影位置と向きを残し、図面の境界点番号と対応させます。「越境なし」と推測で書かず、確認できた範囲と未確認部分を分けます。
確定測量後と現況の2条件で査定を取る
不動産会社へ同じ資料を渡し、確定測量後と現況のそれぞれについて、成約予想価格または買取価格、想定買主、売却期間、売主負担を出してもらいます。
査定の前提が違う会社同士の金額を、そのまま比べないでください。
売却方法を決めてから広告・買付けへ進む
測量、越境解消、境界非明示のどの条件で売るかを決め、広告の記載と買主への説明をそろえます。
購入申込書を受け取る段階で、確定測量の有無、引渡し条件、価格の前提が売主側の想定と合っているかを確認します。
測量が期限までに終わらない場合の処理を契約前に決める
土地家屋調査士に完了の見込みを聞き、重要事項説明書、売買契約書、物件状況報告書、添付図面の記載をそろえます。確定測量が終わっていないなら、完了済みの前提で契約しないでください。
境界未確定の土地売却でよくある質問
測量費の負担、境界非明示の責任、越境の覚書、住宅ローンについて、相談の多い4点をまとめます。
杭が見つからない土地でも、調査と説明は省かずに売る
杭が見つからない、測量図が出てこない。その状態でも、境界未確定であることを理由に土地売買契約が一律に禁止されるわけではありません。省ける場合があるのは確定測量であり、境界や越境の調査と説明ではありません。
まず、登記事項証明書、法務局の地図、地積測量図、過去の測量図・境界確認書・越境の覚書を集めます。
次に、手元の資料で足りるのか、追加調査が必要ならどこまでかを土地家屋調査士に確認してもらいます。そのうえで、確定測量後と現況の2条件で、手取り額と売却を終えられる見込みを比べてください。
隣地所有者と境界位置の意見が違う、重大な越境がある、確定測量の完了時期が読めない場合は、履行できるか分からない測量や越境解消を安易に引渡し条件にしないことが重要です。
現在の状態で契約するなら、未確認事項、買主が引き受ける範囲、調査や測量が終わらなかった場合の処理を、売買契約書へ具体的に記載します。
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出典
埼玉県「宅地建物取引業に関するよくある質問(重要事項)」
不動産適正取引推進機構「確定測量図未交付による契約違反」RETIO No.136
法務省「筆界特定制度」
法務局「土地の境界には、筆界と所有権界とがあります」
国土交通省「国土調査のあり方に関する検討小委員会報告書 参考資料」
盛岡地方法務局「土地・建物の地図・図面など」
法務局「登記事項証明書、地図・図面証明書のオンライン交付請求」
全国宅地建物取引業協会連合会「重要事項説明書・土地建物の売買・交換用」
日本土地家屋調査士会連合会「相談Q&A」
法務省「隣の土地の所有者が分からなくてお困りの方へ」
秋田地方法務局「筆界特定手続の標準処理期間」
福岡法務局「筆界特定手続における標準処理期間について」
不動産適正取引推進機構「不動産売買の手引」令和8年度版
e-Gov法令検索「民法」
国税庁「No.3208 長期譲渡所得の税額の計算」

