会社名義の土地や社屋を売ることになり、顧問税理士に相談する前に大枠だけでもつかんでおきたい。そう考えて調べ始めた方が最初に戸惑うのが、個人の売却との違いです。
法人には分離課税という仕組みがなく、売却益は本業の利益と合算したうえで法人税が計算されます。マイホームを売るときの3,000万円の特別控除も使えません。その代わり、本業の赤字や過去の繰越欠損金と相殺できます。
見落とされやすいのが消費税で、土地を売った期は本業の納税額が増えることもあります。
- 法人にかかる7種類の税金
- 個人と異なる4つの課税ルール
- 売却益3,000万円の税額計算
- 土地売却で増える消費税負担
- 役員への売却で起きる課税
※本記事の税率・制度は2026年9月時点の法令にもとづきます。
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※2025年9月19日-23日 「サイト評価に関する調査」より
法人の不動産売却でかかる税金の種類
法人が不動産を売って利益が出たとき、納める税金は7種類あります。法人税、地方法人税、法人事業税、特別法人事業税、法人住民税、消費税、印紙税です。
7つの税率を足し合わせても、実際の負担率にはなりません。税率を掛ける対象が、税金ごとに違うからです。
所得から直接計算するのは、法人税と法人事業税の2つだけ。特別法人事業税は法人事業税の額に37%を掛けます。なお、地方法人税と法人住民税は、法人税の額にそれぞれ10.3%と7.0%を掛けます。
つまり法人税が2倍になれば、地方法人税と法人住民税も2倍になります。
残る消費税と印紙税は、所得と関係がありません。消費税は建物の売却代金、印紙税は契約書に書いた金額で決まります。7つの税目を、何を基準に計算するかで並べると次のようになります。
| 税目 | 何に対してかかるか | 税率 |
|---|---|---|
| 法人税 | 所得 | 15%または23.2% |
| 地方法人税 | 法人税額 | 10.3% |
| 法人事業税 | 所得 | 3.5%・5.3%・7.0% |
| 特別法人事業税 | 法人事業税の所得割額 | 37% |
| 法人住民税 | 法人税額 | 7.0% |
| 消費税 | 建物の売却代金 | 土地は非課税 |
| 印紙税 | 契約書の記載金額 | 1万円〜16万円 |
※ 法人事業税・法人住民税は標準税率。自治体により超過税率が適用される場合があります。
法人税と地方法人税
法人税の税率は、資本金の規模と所得の水準で分かれます。国税庁は普通法人の税率について、資本金1億円以下の法人などは年800万円以下の部分が15%、それを超える部分と資本金1億円超の法人は23.2%としています。この15%は租税特別措置法による軽減税率で、財務省の資料によれば平成24年4月1日から令和9年3月31日の間に開始する各事業年度が対象です。
この15%には、令和7年4月1日以後に開始する事業年度から例外が設けられました。国税庁は次の注記を置いています。「令和7年4月1日以後に開始する事業年度において、所得金額が年10億円を超える事業年度については、年800万円以下の部分に適用される税率は17パーセントとなります」。所得が10億円を超えた年度は、軽減税率の枠だけ2ポイント上がります。
条件はもう1つあります。適用除外事業者という区分で、事業年度開始の日前3年以内に終了した各事業年度の所得金額の年平均額が15億円を超える法人などが該当します。この場合、年800万円以下の部分にも19%が適用されます。軽減税率は「資本金1億円以下なら無条件」ではなく、過去の所得水準にも左右されます。
地方法人税は、この法人税額に連動します。地方法人税法第10条第1項は「基準法人税額に対する地方法人税の額は、各課税事業年度の課税標準法人税額に百分の十・三の税率を乗じて計算した金額とする」と定めています。課税標準が所得ではないため、事業税のように所得の区分ごとに率が変わることもありません。一律10.3%です。
法人事業税と特別法人事業税
法人事業税は都道府県が課す税金で、所得割の標準税率は所得の水準で3段階に分かれます。地方税法第72条の24の7第1項第3号は、外形標準課税の対象にならない普通法人について3つの区分を定めています。「各事業年度の所得のうち年四百万円以下の金額 百分の三・五」「各事業年度の所得のうち年四百万円を超え年八百万円以下の金額 百分の五・三」「各事業年度の所得のうち年八百万円を超える金額 百分の七」。
法人税と同じく、所得が増えるほど率が上がる仕組みです。法人税は年800万円以下が15%、超えると23.2%でした。事業税も年400万円以下の3.5%から、年800万円超では7.0%まで上がります。中小企業が「法人税の軽減税率があるから負担は軽い」と考えても、地方税の税率が上がる分、負担は思ったほど軽くなりません。
もう1つ、条文にある「標準税率」という言葉に注意が必要です。標準税率は国が示す目安であり、都道府県は条例でこれを上回る税率を定められます。東京都をはじめ超過税率を採用している自治体もあるため、標準税率で計算した金額は目安にとどまります。自社の所在地の税率は、都道府県税事務所の案内で確かめておきたいところです。
特別法人事業税は、この法人事業税の所得割額に上乗せされる国税です。特別法人事業税及び特別法人事業譲与税に関する法律第7条は、所得割額により事業税を課される法人について「基準法人所得割額に百分の三十七の税率を乗じて得た金額」としています。事業税が189万円なら、その37%にあたる約70万円が別途かかります。外形標準課税の対象となる法人は260%、協同組合などの特別法人は34.5%と区分ごとに率が変わりますが、中小企業の多くは37%の区分にあてはまります。
法人住民税
法人住民税のうち、売却益で増えるのは法人税割です。地方税法第51条第1項は道府県民税について「法人税割の標準税率は、百分の一とする。ただし、標準税率を超える税率で課する場合においても、百分の二を超えることができない」と定めています。市町村民税は同法第314条の4第1項が「法人税割の標準税率は、百分の六とする。ただし、標準税率を超えて課する場合においても、百分の八・四を超えることができない」としています。
標準税率で計算すると、道府県民税1.0%と市町村民税6.0%を合わせて7.0%になります。
条文にはもう一方の数字も書かれています。制限税率です。道府県民税は2.0%、市町村民税は8.4%まで引き上げられます。仮に両方が制限税率まで引き上げられていれば合計10.4%となり、標準税率のときと比べて1.5倍近くになります。同じ売却益でも、会社の所在地によって税額は変わります。
法人住民税にはもう1つ均等割がありますが、こちらは資本金と従業員数で決まる定額のため、不動産を売っても金額は動きません。
消費税と印紙税
消費税は、土地と建物で扱いが正反対になります。消費税法第6条第1項は「国内において行われる資産の譲渡等のうち、別表第二に掲げるものには、消費税を課さない」と定め、その別表第二第1号に「土地(土地の上に存する権利を含む。)の譲渡及び貸付け」が挙げられています。土地の売却代金に消費税はかかりません。建物はこの一覧に載っていないため課税されます。
この区分が、土地と建物をまとめて売る契約で問題を生みます。代金の内訳を土地分と建物分にどう分けるかで、預かる消費税の額が変わるためです。建物の割合が大きいほど消費税も増えるので、売主と買主で意見が分かれる場面もあります。実務でよく使われるのが、固定資産税評価額の比率に応じて代金を割り振る方法です。契約書に区分を書いておかないと、決算のときに根拠を示せません。
印紙税は契約書に貼る税金です。租税特別措置法第91条第1項により、平成26年4月1日から令和9年3月31日までに作成される不動産譲渡契約書には軽減税率が適用されます。国税庁が示す軽減後の税額は次のとおりです。
| 契約書に記載された金額 | 印紙税額 |
|---|---|
| 1,000万円超5,000万円以下 | 1万円 |
| 5,000万円超1億円以下 | 3万円 |
| 1億円超5億円以下 | 6万円 |
| 5億円超10億円以下 | 16万円 |
売買代金に比べれば小さな金額です。ただし印紙税は契約書1通ごとにかかるため、売主と買主が1通ずつ原本を保管するなら2通分が必要になります。
7種類のうち、個人が不動産を売るときにも登場するのは消費税と印紙税の2つだけです。残る5つは法人にしかありません。違いは税目の顔ぶれにとどまらず、税額の決まり方そのものに及びます。
\ どの税金も、まずは売却価格から /
個人の不動産売却と異なる課税ルール
「5年を超えて持っていたから税率が下がるはず」。不動産の売却を調べていると必ず出てくるこの話は、個人の譲渡所得のルールです。法人には当てはまりません。
もっとも、法人に5年の条文がないわけではありません。今は適用が止まっているだけです。個人の常識をそのまま持ち込めない点は共通していても、当てはまらない理由は項目ごとに違います。
食い違うのは4点です。売却益の扱い方、所有期間の区分、特別控除の有無、損が出たときの処理。このうち最初の3つは法人に不利に働き、最後の1つだけは法人が有利になります。
| 比べる点 | 個人 | 法人 |
|---|---|---|
| 売却益の扱い | 譲渡所得として分離課税 | 本業の利益と合算 |
| 所有期間5年の区分 | 短期と長期で税率が変わる | 区分なし |
| 3,000万円特別控除 | 居住用財産に適用あり | 適用なし |
| 売却損の通算 | 条件を満たす場合のみ | 制限なし・10年繰越 |
売却益は他の事業利益と合算
法人税法第22条第1項は「内国法人の各事業年度の所得の金額は、当該事業年度の益金の額から当該事業年度の損金の額を控除した金額とする」と定めています。益金と損金をすべて足し引きした残りが所得であり、そこに税率を掛けるのが法人税です。
不動産の売却収入もこの益金に含まれます。財務省は法人税の課税ベースの説明で、益金の額を「商品・製品などの販売による売上収入や、土地・建物の売却収入など」と例示しています。売却収入も本業の売上も、同じ益金として扱われます。
個人は違います。給与所得や事業所得とは切り離し、譲渡所得だけを取り出して税率を掛ける分離課税という仕組みがあるためです。法人にこの分け方がないと、何が起きるか。本業が好調な年に売れば、売却益の分だけ税率の高い区分に入ります。本業が赤字なら、売却益はその赤字と相殺されます。同じ物件を同じ金額で売っても、売る年度によって残る現金が変わるということです。個人名義の売却における譲渡所得の計算は、不動産売却でかかる税金の記事で詳しく扱っています。
所有期間5年による区分なし
法人の税額計算に、所有期間による税率の切り替えはありません。3年で売っても20年で売っても、売却益は同じように所得へ組み込まれます。
ところが、条文を開くと5年という数字は出てきます。租税特別措置法第63条第1項は、法人が短期所有の土地を譲渡したときに「譲渡利益金額の合計額に百分の十の割合を乗じて計算した金額を加算した金額とする」と定めているためです。短期所有の意味も、同条第2項第1号が「所有期間(その取得をした日の翌日から当該土地等の譲渡をした日の属する年の一月一日までの所有期間とする。)が五年以下であるもの」と書いています。
法人にも5年で区切る規定はある。では、なぜ実務で話題にならないのか。答えは同条第8項にあります。「第一項の規定は、法人が平成十年一月一日から令和十一年三月三十一日までの間にした短期所有に係る土地の譲渡等については、適用しない」。1998年から停止が続いており、令和11年3月31日までに売る限り10%の上乗せは発生しません。
「法人に5年ルールはない」という説明は、結論だけを見れば正しいものの、正確には「規定はあるが停止中」です。廃止ではないため、停止が延長されなければ復活する余地があります。数年先の売却を考えているなら、その時点の期限を確かめてから判断するほうが安全です。
3,000万円特別控除の対象外
マイホームを売ったときの3,000万円の特別控除は、個人の居住用財産に用意された制度です。法人が社宅や社員寮を売っても使えません。役員が長年住んでいた建物であっても、名義が法人であれば個人の特例は適用されないという整理になります。
売却益3,000万円の物件で考えると、個人なら控除で課税所得がゼロになる場面です。法人では3,000万円がまるごと所得に乗ります。
同じ物件を同じ値段で売っても、名義が違うだけで税額はゼロと1,000万円近くに分かれるということです。
法人が使える特別控除がまったくないわけではありません。道路拡幅などで土地を収用された場合には、5,000万円まで損金に算入できる制度があります。ただし対象は限られており、個人の売却で当たり前に語られる控除の多くは、法人には存在しないと考えておくのが実務的です。
売却損は他の利益と相殺可能
ここまで法人に不利な違いが続きましたが、損が出たときは逆転します。法人税法第22条第1項のとおり所得は益金から損金を引いた金額なので、不動産の売却損はそのまま本業の利益を減らします。個人の場合、居住用財産など一定の条件を満たさなければ他の所得と通算できない場面がありますが、法人にはその制限がありません。
その年に引き切れなかった赤字も、将来へ持ち越せます。国税庁は「確定申告書を提出する法人の各事業年度開始の日前10年以内に開始した事業年度で青色申告書を提出した事業年度に生じた欠損金額は、各事業年度の所得金額の計算上損金の額に算入されます」としています。10年という期間があるため、過去に大きな赤字を出した会社が不動産を売って益を出しても、その益を過去の赤字で消せる可能性があります。
売却損は痛手ですが、税負担が軽くなる分だけ手元に残る金額は増えます。益が出た場合は逆です。本業の利益と合算される分だけ、税額も大きくなります。
\ 税額を左右するのは売却価格です /
法人の不動産売却にかかる税額の計算手順
売却益3,000万円に対して、中小企業が負担する税金の合計は概算で約1,000万円。負担率は約33.3%です。
資料でよく目にする法人実効税率は29.74%です。先ほどの33.3%とは3ポイント以上開きます。29.74%が大法人を前提にした数字で、中小企業にそのまま当てはまらないためです。
しかも、この約1,000万円には2026年4月から始まった税金がまだ入っていません。
計算は3つの段階に分かれます。まず売却益を出し、次に他の所得と合算した所得金額を求め、最後に税目ごとの税率を掛けます。1つの税率表で完結する個人の譲渡所得とは、手順そのものが違います。
固定資産売却益の求め方
売却益は、売却価額から帳簿価額と譲渡費用を差し引いて計算します。帳簿価額とは、取得価額から減価償却の累計額を引いた残りの金額です。土地は減価償却しないため取得価額がそのまま残りますが、建物は年々目減りします。
ここが個人の計算と食い違いやすい部分です。個人は取得費と譲渡費用を引いて譲渡所得を出すのに対し、法人は会計帳簿に載っている簿価を使います。この違いから、思わぬ売却益が出ることがあります。
3,000万円で建てた社屋を2,000万円で売れば、感覚としては1,000万円の損です。しかし減価償却が進んで帳簿価額が500万円まで下がっていれば、税務上は1,500万円の売却益になります。買った値段より安く売っても、税金は発生するということです。古い建物ほどこの現象が起きやすくなります。
譲渡費用には仲介手数料や測量費、建物の取り壊し費用などが含まれます。売却のために直接かかった支出であれば、その分だけ売却益が小さくなります。領収書を残しておくと、決算のときに漏れずに拾えます。
法人実効税率の目安
複数の税金がかかると合計がつかみにくくなるため、目安として使われるのが法人実効税率です。財務省は平成30年度改正後の国・地方の法人実効税率を29.74%としています。
この数字を中小企業に当てはめると、実態より低く見積もることになります。29.74%は法人税率23.2%と大法人向けの法人事業税所得割3.6%などを織り込んだもので、外形標準課税の対象となる大法人を前提にしているためです。所得以外の基準でも課税される代わりに、大法人の所得割の税率は低く抑えられています。
中小法人は税率の組み合わせが違います。年800万円以下に15%の軽減税率が使える一方、法人事業税の所得割は年800万円超の部分で7.0%と大法人より高くなります。有利な要素と不利な要素が同時に働くため、実際の負担率は所得の水準によって上下します。
もう1つ、法人事業税は納付した事業年度の損金になります。売却益が出た期に計算した事業税を実際に納めるのは、申告後の翌期です。その分だけ翌期の所得が小さくなるため、単年の税額を足し合わせた負担率よりも、実際の負担はやや軽く済みます。
売却益3,000万円の税額例
具体的な金額で見ていきます。前提は次のとおりです。
- 資本金1,000万円の普通法人(外形標準課税の対象外)
- 標準税率で計算(超過税率を採用する自治体では金額が変わります)
- 不動産の売却益3,000万円のみが所得(他の損益はゼロ)
- 繰越欠損金なし
| 税目 | 計算 | 税額 |
|---|---|---|
| 法人税 | 800万円×15%+2,200万円×23.2% | 630万4,000円 |
| 地方法人税 | 630万4,000円×10.3% | 約64万9,000円 |
| 法人事業税 | 400万円×3.5%+400万円×5.3%+2,200万円×7.0% | 189万2,000円 |
| 特別法人事業税 | 189万2,000円×37% | 約70万円 |
| 法人住民税 | 630万4,000円×7.0% | 約44万1,000円 |
| 合計 | ― | 約998万6,000円 |
売却益3,000万円に対する負担率は約33.3%です。
実際の申告では百円未満の端数処理などが入るため、あくまで概算として見てください。
表を見ると、法人税630万4,000円に対して、地方法人税と法人住民税の合計が約109万円あります。この2つは法人税額に10.3%と7.0%を掛けた金額です。法人税が増えれば、この109万円も同じ割合で増えます。
前提を変えるとどうなるか。本業で1,000万円の赤字が出ていれば所得は2,000万円です。逆に本業の利益がすでに800万円を超えていれば、売却益の全額に23.2%の税率がかかります。軽減税率の枠を本業で使い切っているためです。売る年度の損益見込みを先に立てておくと、手取りの精度が上がります。
2026年4月から加わる防衛特別法人税
先送りにしていた税金が、防衛特別法人税です。我が国の防衛力の抜本的な強化等のために必要な財源の確保に関する特別措置法第11条は、課税事業年度を「法人の令和八年四月一日以後に開始する各事業年度」と定めています。
負担が出るかどうかは、会社の規模ではなく法人税額の大きさで決まります。同法第14条第1項は「防衛特別法人税の額は、各課税事業年度の課税標準法人税額に百分の四の税率を乗じて計算した金額とする」と定め、その課税標準は第13条第2項が「各課税事業年度の基準法人税額から基礎控除額を控除した金額」としています。基礎控除額は第13条第3項で、通算法人以外の法人については年500万円です。
先ほどの例に当てはめてみます。法人税額630万4,000円から500万円を引いた130万4,000円が課税標準となり、その4%にあたる約5万2,000円が加算されます。合計は約1,003万8,000円、負担率は約33.5%です。
金額としては小さく見えます。注目したいのは、負担が生じる年度と生じない年度がある点です。法人税額が500万円以下の年度は、基礎控除に収まって負担がゼロになります。普段の法人税額が300万円の会社でも、不動産を売った年度だけ600万円になればこの税金がかかります。売却益で法人税額が普段より大きくなる年度だけ負担が生じる仕組みです。売る時期を検討するときは、その年度の法人税額が500万円を超えるかどうかも判断材料になります。
所得に対する税金は、これで計算できます。もっとも、納める税金の総額はまだ確定しません。土地を売った期は、本業の消費税まで動くことがあるからです。
\ 税額の計算は売値の確認から /
建物と土地で分かれる消費税の扱い
土地の売却に消費税はかかりません。この一文だけを読めば、土地を売る会社にとって消費税は無関係に見えます。
ところが、土地を売った期に本業の消費税の納税額が増えることがあります。売却代金に消費税がかからないのに、納める消費税は増える。矛盾しているようですが、消費税のかからない売上が増えると、本業で支払った消費税を差し引ける金額が減るためです。売却額が大きいほど影響も大きく、数百万円単位で納税額が動く場面もあります。
しかも、この負担は決算で気づいても動かせません。手を打てるのは、土地を売った課税期間が終わるまでです。
| 土地・借地権 | 非課税 |
|---|---|
| 建物 | 課税 |
建物は課税・土地は非課税
消費税法第6条第1項は「国内において行われる資産の譲渡等のうち、別表第二に掲げるものには、消費税を課さない」と定めています。その別表第二の第1号に挙げられているのが「土地(土地の上に存する権利を含む。)の譲渡及び貸付け(一時的に使用させる場合その他の政令で定める場合を除く。)」です。借地権などの土地の上に存する権利も、この非課税の範囲に含まれます。
建物はこの一覧に載っていません。事業者である法人が建物を売れば課税取引となり、買主から消費税を預かって納めることになります。
区分がはっきりしているぶん、売買代金の分け方が実務の焦点になります。土地1,500万円・建物1,500万円で契約するか、土地2,000万円・建物1,000万円で契約するかで、預かる消費税の額は変わるためです。買主が消費税の還付を受けられる事業者なら建物の割合を大きくしたがり、そうでなければ逆になります。交渉になる前提で、内訳を決めた根拠を用意しておくと話が早く進みます。
課税売上割合の低下と仕入税額控除
納税額が増える理由は、消費税の計算方法にあります。消費税の納税額は、預かった消費税から支払った消費税を差し引いて計算します。この差し引ける金額が、課税売上割合という数字で制限される場合があります。
消費税法第30条第2項は「前項の場合において、同項に規定する課税期間における課税売上高が五億円を超えるとき、又は当該課税期間における課税売上割合が百分の九十五に満たないときは」として、支払った消費税の全額ではなく、課税売上に対応する部分だけを差し引く計算に切り替わることを定めています。
課税売上割合は、売上全体のうち消費税がかかる売上が占める割合です。土地の売却代金は、消費税がかからない売上として売上全体に加わります。年商1億円の会社が3,000万円の土地を売れば、売上全体は1億3,000万円、うち消費税がかかるのは1億円。課税売上割合は約77%まで落ちます。95%を大きく割り込むため、その課税期間は仕入税額控除が制限されます。
本業の仕入や経費で支払った消費税のうち、差し引けなくなった分はそのまま会社の負担です。土地を売って現金が入った期に、消費税の納税額だけが増える。その原因が課税売上割合の低下です。
課税売上割合に準ずる割合の承認申請
対処法は法律に用意されています。消費税法第30条第3項は、課税売上割合に代えて合理的に算定した割合を使う方法を定めており、その要件を2つ挙げています。1つは「当該割合が当該事業者の営む事業の種類又は当該事業に係る販売費、一般管理費その他の費用の種類に応じ合理的に算定されるものであること」、もう1つは「当該割合を用いて前項第一号ロに掲げる金額を計算することにつき、その納税地を所轄する税務署長の承認を受けたものであること」です。
たまたま土地を売っただけで、事業の実態は前期までと変わっていない。そうした場合に、実態に合った割合で計算させてほしいと申請する仕組みです。
この申請は、決算を締めてから出しても間に合いません。条文は適用時期をこう書いています。「当該事業者の第二号に規定する承認を受けた日の属する課税期間以後の課税期間については」。承認を受けた日が属する課税期間から使えるという意味なので、決算を締めてから気づいても遡れません。
土地を売る課税期間のうちに申請し、承認を得ておく必要があります。
3月決算の会社が2月に土地を売ったなら、残りは1か月です。売却の話が動き出した段階で、顧問税理士に「準ずる割合の申請は必要か」と一言確認しておく。この一手間が数十万円から数百万円の差になることがあります。
簡易課税では第四種事業
ここまでは、預かった消費税から実際に支払った消費税を差し引く原則的な計算を前提にしてきました。簡易課税制度を選んでいる法人は、仕組みそのものが違います。売上にかかる消費税にみなし仕入率を掛けて仕入税額を計算するため、実際に支払った消費税を集計しません。前の節で見た課税売上割合の問題も生じません。
その代わり、別の論点が出てきます。適用できるのは、国税庁によれば基準期間における課税売上高が5,000万円以下の課税期間です。事業区分ごとにみなし仕入率が決まっています。
事業区分は、原則として本業で判定します。自社で使っていた建物の売却は、この原則から外れます。消費税法基本通達13-2-9は「事業者が自己において使用していた固定資産等の譲渡を行う事業は、第四種事業に該当するのであるから留意する」と定めています。第四種事業のみなし仕入率は60%です。
本業が何であっても、この結論は変わりません。不動産賃貸業を営む会社は本業が第六種事業(みなし仕入率40%)に当たりますが、自社ビルの売却部分は第四種として60%で計算します。区分を誤って本業と同じ第六種で申告すると、差し引ける金額が小さくなり、納めすぎになります。
選択の余地がない点も、条文の書き方に表れています。同通達13-2-8は、小売業などから生じた不要物品等について本業の区分で処理することを認めていますが、その不要物品等の定義から「当該事業者が事業の用に供していた固定資産等」を明確に除いています。固定資産の売却は第四種で処理する、という整理です。
なお、販売用に仕入れた不動産は「自己において使用していた固定資産等」に当たりません。不動産業を営む会社は、自社利用の物件と販売用の物件を分けて考える必要があります。
ここまでの税金は、いずれも売却が済んだ後に金額が確定するものでした。一方で、売り方しだいで課税そのものを先送りできる制度もあります。
\ 土地と建物、いくらで売れる? /
法人の不動産売却で使える特例と課税の繰り延べ
法人には3,000万円の特別控除がありません。控除がないなら、売却益にはそのまま課税されるしかない。そう見えます。
ところが、租税特別措置法には別の手段が用意されています。税額を減らすのではなく、課税のタイミングを将来へずらす仕組みです。売った代金で次の不動産を買うなら、その買った資産の帳簿価額を圧縮することで、今期の益金を抑えられます。
使える手段は4つありますが、効き方は同じではありません。所得そのものを減らせるのは、収用等の特別控除だけです。買換え特例は課税の先送りで、繰越欠損金は過去の赤字の活用にとどまります。土地重課の停止にいたっては、「かからないはずの税金」の確認にすぎません。
| 特定資産の買換え特例 | 課税を将来へ先送り(売却益の80%まで) |
|---|---|
| 収用等の特別控除 | 所得を最大5,000万円減らす |
| 繰越欠損金 | 過去10年の赤字と相殺 |
| 土地重課の適用停止 | 令和11年3月31日まで上乗せなし |
特定資産の買換え特例による圧縮記帳
売った不動産の代金で別の不動産を買う場合、一定の要件を満たせば売却益への課税を先送りできます。租税特別措置法第65条の7第1項が定める特定の資産の買換えの特例です。
条文は圧縮限度額を次のように定めています。「その圧縮基礎取得価額に差益割合を乗じて計算した金額の百分の八十(当該譲渡をした資産が同表の第二号の上欄に掲げる資産に該当し、かつ、当該買換資産が同号の下欄に掲げる資産(同欄のハに掲げる区域内にあるものに限る。)に該当する場合には、百分の六十)に相当する金額」。買った資産の帳簿価額を減らし、その減らした分を損金にできるという内容です。減らせる金額は、原則として売却益の80%まで。一定の地域への買換えでは60%までになります。
条件は3つあります。1つ目は期間で、条文は昭和45年4月1日から令和11年3月31日までの譲渡を対象としています。2つ目は買換資産の取得時期で、譲渡した事業年度に取得し、取得の日から1年以内に事業の用に供することが求められます。3つ目が手続きで、条文は「政令で定めるところにより納税地の所轄税務署長にこの項の規定の適用を受ける旨の届出をした場合における当該買換資産に限る」としています。届出を忘れると適用できません。
80%という数字は、税金が8割減ることを意味しません。これは免税ではなく繰り延べだからです。帳簿価額を下げた分だけ将来の減価償却費が小さくなり、次に売るときの売却益も大きくなります。今期の税負担を抑えて、資金を次の物件に回したいときに使う制度です。税金そのものが消えるわけではありません。
収用等があった場合の5,000万円特別控除
道路の拡幅や公共事業のために土地を手放す場合には、特別控除が用意されています。根拠は租税特別措置法第65条の2第1項です。自分から売りに出したわけではなく、事業のために手放さざるを得なかった。その事情を考慮した制度なので、通常の売却では使えません。適用には収用等の事実を証する書類も必要になります。
控除できる金額は、常に5,000万円というわけではありません。控除の対象は、受け取った補償金等の額が譲渡直前の帳簿価額と譲渡経費の合計を超えた部分だからです。その超える部分と5,000万円のうち、少ないほうが損金になります。帳簿価額の高い土地であれば、そもそも超える部分が5,000万円に届きません。5,000万円という枠の大きさではなく、自社の帳簿価額がいくらかで控除額が決まるということです。
金額の枠は年単位で管理されます。同じ年に複数の資産を収用された場合、5,000万円は合算での上限です。複数年にわたる事業では、どの年に譲渡が成立するかで控除できる金額が変わることもあります。役所から用地買収の打診があった段階で、税理士に相談しておくと選択肢が広がります。
繰越欠損金との相殺
過去に出した赤字は、売却益と相殺できます。国税庁は繰越控除の対象を、各事業年度開始の日前10年以内に開始した事業年度の欠損金額としています。その事業年度に青色申告書を提出していることが条件です。
10年分の赤字を全部使える、とは限りません。中小法人等以外の法人は、繰越控除前の所得金額の50%が控除の限度だからです。3,000万円の売却益に対して繰越欠損金が3,000万円あっても、控除できるのは1,500万円までという計算になります。
この制限は、中小法人等には及びません。国税庁は中小法人等を「普通法人のうち、資本金の額もしくは出資金の額が1億円以下であるもの(100パーセント子法人等および大通算法人を除きます。)または資本もしくは出資を有しないもの、公益法人等、協同組合等、人格のない社団等」としています。資本金1億円以下の会社であれば、繰越欠損金がある限り所得金額まで全額を控除できます。過去に3,000万円の赤字を出した会社が3,000万円の売却益を計上しても、所得をゼロにできる計算です。
売却の時期を決めるとき、繰越欠損金の残高と使える期限を確認しておく価値があります。10年目を迎える欠損金があるなら、その期に売るという判断もありえます。適用には、欠損金が生じた事業年度に青色申告書を提出し、その後も連続して確定申告書を提出していることが必要です。
土地重課制度の適用停止
法人が土地を売ったときに、通常の法人税に上乗せして課される制度があります。租税特別措置法第62条の3第1項は「当該土地の譲渡等に係る譲渡利益金額の合計額に百分の五の割合を乗じて計算した金額を加算した金額とする」と定めています。所有期間5年以下の短期所有については、第63条第1項がさらに重い10%の加算を定めています。
条文を読む限り、土地を売れば5%か10%の上乗せがあることになります。しかし、どちらも現在は動いていません。第62条の3第15項に「第一項の規定は、法人が平成十年一月一日から令和十一年三月三十一日までの間にした土地の譲渡等については、適用しない」とあり、第63条第8項も短期所有について同じ期限で適用を止めているためです。
令和11年3月31日までに売却する限り、5%も10%も発生しません。
「停止中」とだけ書かれることが多い部分ですが、条文には期限が入っています。恒久的な廃止ではありません。過去には期限が来るたびに延長されてきた経緯があるものの、延長されなければ復活します。
数年先の売却を計画しているなら、その時点で条文の期限がどうなっているかを確かめてから判断してください。売却益が5,000万円なら、5%でも250万円の差になります。
土地重課の停止は全社に及びますが、残る3つは要件を満たす会社しか使えません。買い換える予定はなく、収用でもなく、繰越欠損金も残っていない。その場合に残るのが、自社の判断で損金を作るという方法です。
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法人の不動産売却益を抑える方法
法人税は所得に対して課されます。所得は益金から損金を引いた金額です。売却益という益金は動かせないので、税負担を抑えるには損金を増やすしかありません。
損金を増やす方法として、経費を使えばよいと考えるかもしれません。ただし、税金を減らすためだけに不要な支出をすれば手元の現金は減ります。
1,000万円使って330万円の税金が減っても、670万円が出ていく計算です。
現実的なのは、もともと予定していた支出のタイミングを売却の年度に合わせるという発想になります。
| 役員退職金の支給 | 不相当に高額と判断された部分は損金にならない |
|---|---|
| 修繕費と除却損の計上 | 資本的支出はその年度に全額を損金にできない |
| 決算期をまたぐ時期の調整 | 買主との交渉や融資の実行日に左右される |
役員退職金の支給
役員の退任が近い時期に不動産の売却が重なるなら、退職金の支給時期は検討に値します。法人税法第34条第1項は役員給与の損金不算入を定めていますが、その対象から「退職給与で業績連動給与に該当しないもの」を除いています。定期同額給与や事前確定届出給与のような形式の制限を受けないため、金額の設定に一定の自由度があります。
退職金は金額が大きくなりやすく、数千万円の売却益を相殺できる規模になることもあります。受け取る役員側でも退職所得は他の所得と分けて計算され、勤続年数に応じた控除があるため、給与として受け取るより手取りが残りやすい形です。会社は損金にでき、受け取る側の税負担も軽い。売却益が出た年度に支給する意味は、ここにあります。
自由度があるといっても、金額を青天井に設定できるわけではありません。不相当に高額と判断された部分は損金として認められないためです。同業同規模の会社の水準や、その役員の在任期間、功績などから合理性を説明できる金額に収める必要があります。金額の根拠となる資料を残し、株主総会の決議も適切に行っておくことが前提になります。
修繕費と除却損の計上
先送りにしていた設備の修繕や、使わなくなった資産の処分も、売却益が出る年度に合わせる選択肢があります。法人税法第22条第3項は損金の額に算入すべき金額として、売上原価のほか「当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用」と「当該事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るもの」を挙げています。
老朽化した空調設備の入れ替え、外壁の補修、古い機械の廃棄。いずれ必要になる支出であれば、益が出た年度に実施することで税負担を抑えられます。とくに使われていない固定資産を帳簿から落とす除却損は、現金の支出を伴わずに損金を作れる手段です。
工事をすれば全額が損金になる、とは限りません。修繕費と資本的支出の区分があるためです。資産の価値を高めたり使用可能期間を延ばしたりする支出は資本的支出とされ、その年度に全額を損金にできません。減価償却で数年に分けて経費にしていくため、その年度に期待した効果は出ません。工事の内容によって判断が分かれるため、見積書の段階で税理士に確認しておくと計画が立てやすくなります。
決算期をまたぐ売却時期の調整
法人税は事業年度ごとに計算されます。同じ売却でも、引き渡しが3月末になるか4月初めになるかで、益金が計上される事業年度が変わります。
すでに本業で大きな利益が出ている年度に売却益が加わると、所得が増えて高い税率の区分に入ります。翌期の見込みが控えめなら、引き渡しを翌期に回すことで低い税率の区分に収まる場合もあるでしょう。逆に、翌期に大きな投資や修繕を予定しているなら、その損金と売却益を同じ年度にそろえる考え方もあります。
とはいえ、この調整が使える場面は限られます。売却の時期は買主との交渉で決まる部分が大きく、税金の都合だけでは動かせないからです。買主が住宅ローンを使う場合は融資の実行日にも縛られます。決算月の直前直後に引き渡しが来そうなときだけ、「1か月ずらせるか」を検討する。その程度の使い方が現実的です。なお、投資用として個人で保有する物件の売却を検討している場合は、投資用マンションの売却で個人の課税ルールを整理しています。
損金を作るこれらの手段は、相手が誰であっても使えます。ところが売る相手を身内にした瞬間、税負担を減らすどころか、想定していなかった課税が加わります。
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役員や関係会社への売却で生じる税務リスク
社長個人に社宅を売る、グループ会社に土地を移す。当事者同士が納得しているなら、金額は自由に決められると考えたくなる取引です。
税務はそう見ません。実際にいくらで売ったかではなく、時価がいくらだったかを基準に計算されるためです。しかも課税は売り手だけで終わりません。売り手の法人と買い手の双方に及びます。1つの取引で二重に負担が生じることになります。
時価より低い価額での譲渡
出発点は法人税法第22条第2項です。条文は益金に算入すべき金額を「資産の販売、有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供、無償による資産の譲受けその他の取引で資本等取引以外のものに係る当該事業年度の収益の額」と定めています。無償による譲渡が並んでいる点に注目してください。タダで渡しても収益が発生したものとして扱われます。
時価5,000万円の土地を3,000万円で売っても、法人は5,000万円で売ったものとして益金を計上します。
実際に受け取った現金は3,000万円です。手元にない2,000万円にも課税されることになります。
不利益はもう1つ重なります。法人税法第37条第8項は「その譲渡又は供与の対価の額が当該資産のその譲渡の時における価額…に比して低いときは、当該対価の額と当該価額との差額のうち実質的に贈与又は無償の供与をしたと認められる金額は、前項の寄附金の額に含まれるものとする」としています。差額の2,000万円が寄附金として扱われ、同条第1項により資本金や所得を基礎に計算した限度額を超える部分は損金になりません。
時価で益金を計上したうえに、値引きした分も損金にできない。安く売ったのに税金は高くなるという結果になります。
売り手と買い手が入れ替わっても、同じ問題が起きます。個人が法人へ安く売る場合です。所得税法第59条第1項第2号は「著しく低い価額の対価として政令で定める額による譲渡(法人に対するものに限る。)」について、時価で譲渡があったものとみなすと定めています。所得税法施行令第169条はこの金額を「譲渡の時における価額の二分の一に満たない金額」としています。社長が個人の土地を自分の会社に時価の半額未満で売れば、社長個人は時価で売ったものとして所得税を課されます。
役員給与と認定される場合
買い手が役員のとき、値引き分は役員への給与とみなされます。法人税基本通達9-2-9は、法人税法第34条第4項に規定する「債務の免除による利益その他の経済的な利益」について「法人がこれらの行為をしたことにより実質的にその役員等…に対して給与を支給したと同様の経済的効果をもたらすもの」と定義しています。
その具体例の2つ目に挙げられているのが「役員等に対して所有資産を低い価額で譲渡した場合におけるその資産の価額と譲渡価額との差額に相当する金額」です。時価5,000万円の建物を3,000万円で役員に売れば、差額の2,000万円が給与として扱われます。
給与なら損金になるのでは、と考えたくなるところです。ここで退職金とは扱いが分かれます。この2,000万円は、法人税法第34条第1項が定める定期同額給与や事前確定届出給与のいずれにも当てはまりません。したがって法人の損金になりません。一方、受け取った役員側では給与所得として所得税と住民税がかかります。法人では損金にならず、個人では課税される。もっとも不利な形です。
高く買えば問題ないかというと、そちらにも規定があります。同じ9-2-9の3つ目には「役員等から高い価額で資産を買い入れた場合におけるその資産の価額と買入価額との差額に相当する金額」が挙げられているためです。社長が個人所有の不動産を自分の会社に高く売りつけた場合も、差額は給与として扱われます。安く売っても高く買っても、時価から離れれば同じ問題が起きます。
不動産の時価の求め方
時価を基準に課税されるなら、時価を正確に出せばよいことになります。ところが、不動産の時価に一つの正解はありません。公的な価格指標が4種類あり、それぞれ目的が違うためです。
| 指標 | 公表元 | 位置づけ |
|---|---|---|
| 地価公示価格 | 国土交通省 土地鑑定委員会 | 標準地の正常な価格として毎年公示されます |
| 相続税路線価 | 国税局長 | 売買実例価額や公示価格などを基に評定されます |
| 不動産鑑定評価額 | 不動産鑑定士 | 個別の土地について鑑定した価額です |
| 固定資産税評価額 | 市町村 | 固定資産税の課税標準になる価額です |
このうち、取引価格の指標として法律に位置づけられているのが地価公示価格です。地価公示法第2条第2項は「正常な価格」を「土地について、自由な取引が行なわれるとした場合におけるその取引…において通常成立すると認められる価格」と定義しています。同法第1条の2には、土地の取引を行う者は類似する利用価値を持つ標準地の公示価格を指標として取引するよう努めなければならない、という努力義務も置かれています。
相続税路線価も参考になりますが、そのまま使うのは危険です。財産評価基本通達1は時価を「不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額」とし、その価額は同通達の定めによって評価した価額によるとしています。この通達は相続税や贈与税の評価基準であり、法人税の時価と必ず一致するものではありません。相続税評価額で売れば安全、とまでは言えません。
指標が複数あり、どれか1つが正解というわけでもありません。そうであれば、決めた金額の根拠を後から説明できる状態にしておくことが実務上の備えになります。金額が大きい取引や、後から税務署と見解が分かれそうな取引なら、不動産鑑定士の鑑定評価という方法があります。鑑定には費用がかかりますが、数千万円の課税リスクと比べれば選択肢に入るでしょう。
売却価額が決まれば、課税される金額も定まります。あとはその金額を帳簿に載せるだけ、と言いたいところですが、ここにも取り違えやすい処理が残っています。
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法人の不動産売却の仕訳と申告手続き
不動産の売却は、複数の勘定科目が同時に動く取引です。土地と建物を帳簿から消したうえで、預かった消費税を計上し、差額を損益に振り分けます。
売却代金が3,100万円入ったなら、売上を3,100万円立てればよい。そう処理すると誤りになります。法人の会計では、売却代金をそのまま売上に計上しません。帳簿価額との差額だけを、固定資産売却益または固定資産売却損として計上します。損益計算書では特別損益の区分に表示されます。
固定資産売却益が出た場合の仕訳例
たとえば、帳簿価額が土地1,500万円・建物800万円の不動産を売るとします。売却代金は土地2,000万円・建物1,000万円で、建物分の消費税等100万円を別に受け取りました。税抜経理を採用している場合の仕訳は次のとおりです。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 現金預金 | 3,100万円 | 土地 | 1,500万円 |
| 建物 | 800万円 | ||
| 仮受消費税等 | 100万円 | ||
| 固定資産売却益 | 700万円 |
入金額は3,100万円ですが、利益として計上するのは700万円だけです。この700万円は、土地の差額500万円と建物の差額200万円の合計になります。土地と建物を1つの仕訳にまとめても、資産ごとに分けて記帳しても問題ありません。ただし消費税の計算では建物分だけが課税対象になるため、内訳がわかるように記録を残しておきます。
仲介手数料などの譲渡費用は、支払手数料として別に計上する方法と、売却益から直接差し引く方法があります。どちらでも所得金額は同じです。社内で処理の方法を統一しておくと、後から見返すときに迷いません。
固定資産売却損が出た場合の仕訳例
売却価額が帳簿価額を下回るときは、差額が固定資産売却損になります。帳簿価額が土地2,500万円・建物1,200万円の不動産を売った場合を見てみます。売却代金は先ほどと同じ土地2,000万円・建物1,000万円、消費税等100万円です。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 現金預金 | 3,100万円 | 土地 | 2,500万円 |
| 固定資産売却損 | 700万円 | 建物 | 1,200万円 |
| 仮受消費税等 | 100万円 |
損が出ているのに、仮受消費税等100万円が残っている点に注意してください。建物の売却には、損益にかかわらず消費税がかかります。赤字なら消費税も発生しない、という関係にはありません。預かった100万円は納付する義務があります。
一方、この700万円の売却損は本業の利益から差し引かれます。その事業年度の所得を上回る赤字になれば、翌期以降10年にわたって繰り越せます。売却損は資金面では痛手ですが、税額を減らす効果は確実に働きます。
法人税と消費税の申告期限
申告の期限は、法人税も消費税も同じ考え方です。法人税法第74条第1項は「内国法人は、各事業年度終了の日の翌日から二月以内に、税務署長に対し、確定した決算に基づき次に掲げる事項を記載した申告書を提出しなければならない」と定めています。3月決算の会社なら5月末日が期限です。
消費税も同様で、消費税法第45条第1項は「事業者は、課税期間ごとに、当該課税期間の末日の翌日から二月以内に、次に掲げる事項を記載した申告書を税務署長に提出しなければならない」としています。
この期限が、資金繰りで問題になります。4月に売却代金が入り、決算が3月なら、納税は翌年の5月末。1年以上先です。その間に代金を設備投資や借入返済に回してしまうと、納税の時期に手元が足りなくなります。
売却益3,000万円なら1,000万円前後の税金がかかることは先に見たとおりなので、その分は動かさずに残しておく判断が必要です。
法人事業税や法人住民税は、都道府県税事務所と市町村へそれぞれ申告します。国と地方で提出先が分かれるため、どこに何を出すかを税理士と確認しておくと漏れがありません。
法人の不動産売却は、売値が決まった時点で手取りが決まるわけではありません。売る年度の損益、繰越欠損金の残高、消費税の申告方法、そして売る相手。この4つで結果が変わります。査定を取って売値の目安が見えたら、次に開くのは自社の決算書です。
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よくある質問
売却を検討する段階で質問が集まりやすい点を、6つに絞って答えます。
法人が不動産を売却すると消費税はかかりますか
建物の売却にはかかり、土地の売却にはかかりません。消費税法第6条第1項と別表第二第1号が、土地とその上に存する権利の譲渡を非課税と定めています。建物は非課税の一覧に含まれないため課税対象です。
土地と建物を一括で売る場合は、代金の内訳を土地分と建物分に分けて消費税を計算します。契約書に区分を明記しておくと処理がスムーズです。なお、土地の売却は非課税売上として課税売上割合を下げるため、本業の消費税の納税額に影響することがあります。
法人所有の不動産を5年以内に売却すると税金は高くなりますか
現時点では高くなりません。租税特別措置法第63条第1項は、所有期間5年以下の土地の譲渡について譲渡利益金額の10%を加算すると定めています。ただし同条第8項が、令和11年3月31日までの譲渡には適用しないとしています。
個人の場合は所有期間5年以下の短期譲渡所得に高い税率がかかりますが、法人にはこの区分がありません。条文自体は存在するため、停止期限が延長されなければ将来復活する可能性はあります。
法人が不動産を売却するメリットは何ですか
売却損が出たときに、本業の利益と相殺できる点です。法人税法第22条第1項により所得は益金から損金を引いた金額なので、不動産の売却損はそのまま所得を減らします。その年度で引き切れない赤字は10年間繰り越せます。
売却益が出た場合も、過去の繰越欠損金があれば相殺できます。中小法人等であれば控除限度の制限がないため、所得金額まで全額を控除できます。一方で、個人のような3,000万円の特別控除は使えません。
簿価より高く売れた場合はどう処理しますか
売却価額と帳簿価額の差額を、固定資産売却益として計上します。帳簿価額は取得価額から減価償却の累計額を引いた金額です。譲渡費用がある場合は、その分だけ売却益が小さくなります。
長く保有していた建物は減価償却が進んで帳簿価額が下がっています。そのため、取得したときの価格を下回る金額で売っても、帳簿価額を上回れば売却益が発生します。買値より安く売って損をした感覚でも、税金は生じます。
個人が所有する不動産を自分の会社に売却できますか
売却自体はできますが、価額の設定に注意が必要です。所得税法第59条第1項第2号と所得税法施行令第169条が関係します。時価の2分の1に満たない価額で法人へ譲渡すると、時価で譲渡があったものとみなして所得税が計算されます。
逆に時価より高い価額で会社に売った場合は、法人税基本通達9-2-9により、その差額が役員への給与として扱われます。法人では損金にならず、個人では給与所得として課税されます。時価の根拠を鑑定評価などで残しておくと、後の説明がしやすくなります。
NPO法人や宗教法人が不動産を売却しても法人税はかかりますか
法人の区分によって税率が変わります。国税庁の税率表は、公益社団法人・公益財団法人・非営利型法人の収益事業から生じた所得を2段階に分けています。年800万円以下の部分が15%、それを超える部分が23.2%です。特定非営利活動法人は、公益法人等とみなされるものに含まれます。
収益事業に該当するかどうかで課税関係が変わるため、個別の判断は所轄の税務署または税理士に確認してください。
出典
- 国税庁 タックスアンサー No.5759 法人税の税率(令和7年4月1日現在法令等)
- 国税庁 タックスアンサー No.5762 青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除(令和7年4月1日現在法令等)
- 国税庁 タックスアンサー No.6505 簡易課税制度(令和7年4月1日現在法令等)
- 国税庁 タックスアンサー No.6509 簡易課税制度の事業区分(令和7年4月1日現在法令等)
- 国税庁 タックスアンサー No.7108 不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置(令和8年4月1日現在法令等)
- 国税庁 消費税法基本通達 第13章第2節 事業区分の判定(令和5年課消2-9改正)
- 国税庁 法人税基本通達 第9章第2節第2款 経済的な利益の供与(平成22年課法2-1改正)
- 国税庁 財産評価基本通達 第1章 総則(平成12年課評2-4改正)
- e-Gov法令検索 法人税法(昭和40年法律第34号・公布日:1965-03-31)
- e-Gov法令検索 消費税法(昭和63年法律第108号・公布日:1988-12-30)
- e-Gov法令検索 租税特別措置法(昭和32年法律第26号・公布日:1957-03-31)
- e-Gov法令検索 地方税法(昭和25年法律第226号・公布日:1950-07-31)
- e-Gov法令検索 地方法人税法(平成26年法律第11号・公布日:2014-03-31)
- e-Gov法令検索 特別法人事業税及び特別法人事業譲与税に関する法律(令和元年法律第4号・公布日:2019-03-29)
- e-Gov法令検索 我が国の防衛力の抜本的な強化等のために必要な財源の確保に関する特別措置法(令和5年法律第69号・公布日:2023-06-23)
- e-Gov法令検索 所得税法(昭和40年法律第33号・公布日:1965-03-31)
- e-Gov法令検索 所得税法施行令(昭和40年政令第96号・公布日:1965-03-31)
- e-Gov法令検索 地価公示法(昭和44年法律第49号・公布日:1969-06-23)
- 財務省 法人課税に関する基本的な資料
