- 却下と不承認の違い、主な理由
- 通知後に審査請求・再申請・別の処分方法を選ぶ基準
- 解体や測量の前に、法務局へ確認する内容
相続土地国庫帰属制度では、建物や境界、申請資格、必要書類などに問題があると「却下」、国が通常の管理・処分をするのに過分な費用や労力がかかると判断されると「不承認」になります。
2026年6月30日時点で公表された却下理由のうち、最も件数が多いのは、法定の添付書類が提出されなかったケースです。土地の状態だけでなく、申請者の資格、必要書類、実地調査への対応も確認する必要があります。
却下でも不承認でも、土地の所有権は国へ移りません。通知を受け取ったら、決定書に記載された条文と理由を確認し、前提に疑問があれば審査請求などの期限を調べ、問題を直せるなら再申請、費用が大きければ売却や隣地への譲渡などを検討します。
決定理由を確認するまでは、解体や測量を発注しないでください。1つの問題を直しても、境界、通路、崖、地下埋設物など別の要件が残れば承認されません。決定書と現況資料を法務局へ示し、直す範囲と、ほかに残る問題を確認してから費用をかけましょう。
個別の決定に不服がある場合や、境界・所有権をめぐる争いがある場合は、期限が過ぎる前に弁護士などへ相談してください。
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相続土地国庫帰属制度の却下と不承認の違いは、根拠条文と判断内容にある
却下と不承認は、どちらも国庫帰属が認められない処分ですが、問題とされる要件が違います。「却下は書類だけ、不承認は現地だけ」と単純に分けることはできません。
| 結果 | 根拠 | 主な理由 | 通知後の考え方 |
|---|---|---|---|
| 却下 | 相続土地国庫帰属法2条3項・4条 | 申請できない土地 申請権限がない 必要書類が提出されない 」正当な理由なく調査へ協力しないなど | 理由を補えるか確認し、再申請または審査請求を検討する |
| 不承認 | 同法5条 | 国が通常の管理・処分をするのに過分な費用や労力がかかる | 障害を取り除く費用を確認し、再申請か別の処分方法かを比べる |
| 承認 | 同法5条・11条 | 却下・不承認の要件に該当しないと判断された | 負担金の通知を受けた日の翌日から30日以内に納付する |
相続土地国庫帰属法2条3項は、建物がある土地など、承認申請をできない土地を定めています。同法4条は、申請資格がない場合、申請が法令上の要件に反する場合、正当な理由なく調査へ協力しない場合などの却下を定めています。
一方、同法5条が定めるのは、一定の崖、管理を妨げる地上物や地下埋設物、争訟が必要な土地など、国の管理・処分に過分な費用や労力がかかる土地です。
却下でも不承認でも、納付済みの審査手数料は戻りません。土地の所有権も申請者に残るため、固定資産税、安全管理、草刈りなどの負担は続きます。
承認通知を受けても、負担金を納付するまでは所有権が国へ移りません。負担金を期限内に納めると、その納付時に所有権が国へ移ります。
法務省が示す標準処理期間は8か月です。ただし、土地の状況、関係機関への照会、実地調査などにより、8か月を超える場合があります。
最新統計|申請5,698件・帰属2,885件でも最終的な承認率はわからない
法務省が2026年7月16日に公表した速報値によると、制度開始から2026年6月30日までの申請は5,698件、負担金の納付まで終えて国庫へ帰属した土地は2,885件です。
| 項目 | 件数 |
|---|---|
| 申請 | 5,698件 |
| 国庫へ帰属 | 2,885件 |
| 却下 | 83件 |
| 不承認 | 93件 |
| 取下げ | 1,063件 |
この数字から、帰属2,885件を申請5,698件で割った割合を出すことはできます。しかし、それを制度の最終的な承認率とすることはできません。
申請件数には審査中の案件が含まれ、申請時期も異なります。また、「帰属件数」は承認通知を受けた件数ではなく、負担金を納付して所有権が移った件数です。承認後、負担金を納めていない案件は帰属件数に含まれません。
取下げ1,063件のうち、562件は「有効活用の見込みが生じた」、375件は「却下・不承認であることが判明した」、126件はその他の理由でした。
却下・不承認の理由は、1つの事件に複数含まれる場合があります。そのため、理由別の件数を合計しても、却下83件や不承認93件とは一致しません。
| 公表された却下理由 | 件数 |
|---|---|
| 法定の添付書類が提出されなかった | 37件 |
| 現に通路として使われている土地だった | 22件 |
| 境界が明らかでなかった | 21件 |
| 申請権限を持たない人による申請だった | 10件 |
| 建物がある土地だった | 4件 |
| 水道用地、用悪水路またはため池として使われていた | 1件 |
公表された理由の中で最も多いのは、法定の添付書類が提出されなかったケースです。土地の現況に大きな問題がなくても、申請者の資格、相続による取得を示す資料、図面、写真などがそろわなければ審査を進められません。
一方、取下げ理由で最も多いのは「有効活用の見込みが生じた」ことでした。却下や不承認の要件が見つかった土地でも、隣地所有者、地域の利用者、事業者などにとって利用価値がある可能性は残ります。
却下や不承認は、その土地に市場価値がないという判定ではありません。
\ 却下された土地にも買い手がつくことがあります /
相続土地国庫帰属制度の却下要件は、申請できない土地の5類型
相続土地国庫帰属法2条3項に定められた次の5類型に該当する土地は、承認申請ができません。申請後に該当すると判明すれば、同法4条に基づき却下されます。
- 建物がある土地
- 担保権または使用・収益を目的とする権利が設定されている土地
- 通路など、他人による使用が予定されている土地
- 基準を超える特定有害物質で土壌が汚染されている土地
- 境界が明らかでない、または所有権の存否・帰属・範囲に争いがある土地
見た目だけで判断せず、登記記録、契約書、現況写真、公図、隣地所有者との認識などを照合して確認します。
建物がある土地は却下対象|登記済みなら解体後に滅失登記も行う
現に建物がある土地は、建物の登記があるかどうかにかかわらず申請できません。土地の一部に建物がある場合も、その建物を含む一筆全体が申請対象外になります。
建物を取り壊して申請する場合、登記された建物であれば、解体後に建物滅失登記も行います。未登記の小屋や物置でも、屋根や壁があり土地に定着して使用できる状態なら、法律上の建物に当たる可能性があります。
反対に、小規模な工作物は建物ではなく、国による管理・処分を妨げる地上物として不承認要件の審査対象になる場合があります。自己判断で解体せず、現況写真と図面を法務局へ示して扱いを確認してください。
解体すれば申請できる状態になっても、境界、通路、崖、地下埋設物など別の要件が残れば承認されません。建物付きのまま売る場合、解体して売る場合、解体して国庫帰属を申請する場合の総額を比べましょう。
\ 解体前に、建物付きの売却価格を確かめる /
抵当権・地上権・賃借権などが残る土地は、抹消や終了の手続が必要
抵当権などの担保権、地上権、地役権、賃借権など、第三者が土地を使用・収益できる権利が設定されている土地は申請できません。国が自由に管理・処分できず、担保権が実行されれば所有権を失う可能性もあるためです。
住宅ローンなどの債務を完済していても、登記簿に抵当権が残っていれば、そのままでは申請できません。金融機関などから必要書類を受け取り、抵当権抹消登記を済ませます。
登記簿だけでは確認できない利用関係にも注意してください。第三者へ貸している、配管や通行の契約がある、地域の共同利用に供している場合は、契約書と現地の使われ方を突き合わせます。
通路・墓地・境内地・水路は、登記地目ではなく現況で判断される
次の土地が一筆の中に含まれている場合は、他人による使用が予定されている土地として申請できません。
- 現に通路として使われている土地
- 墓地内の土地
- 境内地
- 現に水道用地、用悪水路またはため池として使われている土地
登記地目が宅地や山林でも、現況が通路なら対象になります。近隣住民が通っている私道、農作業用の通路、水路として利用されている部分などは、図面と現地の両方を確認しなければ判断できません。
2026年6月30日時点の統計では、現に通路として使われていたことを理由とする却下は22件で、建物を理由とする4件を上回っています。
一筆の一部だけが通路であれば、分筆して申請部分から外す方法を検討できます。ただし、測量と分筆に費用をかけても、残った土地に境界、崖、地下埋設物などの問題があれば承認されません。
分筆後の形状によって売却価格が下がる可能性もあります。法務局、土地家屋調査士、不動産会社へ同じ図面と現況資料を示してから判断しましょう。
基準を超える土壌汚染がある土地は申請できない
土壌汚染対策法上の特定有害物質が、相続土地国庫帰属法施行規則で定める基準を超えている土地は申請できません。
過去に工場、クリーニング工場、ガソリンスタンドなどとして利用されていた履歴や、指定区域に関する資料、既存の調査報告書がある場合は法務局へ提出します。過去の利用履歴があるだけで、直ちに基準超過と決まるわけではありません。
土壌調査や浄化には大きな費用がかかる場合があります。申請のためだけに調査を発注せず、手元の資料を法務局、自治体の環境担当課、必要に応じて土壌汚染の専門家へ示して、必要な調査範囲を確認してください。
境界が明らかでない土地は、確定測量の有無だけで決まらない
境界が明らかでない土地や、所有権の存否・帰属・範囲に争いがある土地は申請できません。問題になるのは、次のような状態です。
- 申請者が認識している境界を現地で示せない
- 隣地所有者と境界の認識が食い違っている
- 申請者以外にも所有権を主張する人がいる
- 所有権の有無、帰属または範囲について争いがある
確定測量や境界確認書は、一律に必須とされているわけではありません。既存の境界標、塀、地形、工作物、申請者が置いた目印などにより、申請者が認識する境界を現地で示せることが必要です。
さらに、隣地所有者との認識に相違や争いがないことも確認されます。公図に線が引かれていても現地の範囲を示せない場合や、隣地所有者から異議が出ている場合は問題になります。
境界の認識が食い違っている場合は土地家屋調査士へ資料と現地の確認を依頼し、所有権の争いに発展している場合は弁護士へ相談してください。
土地の要件を満たしても、申請権限・添付書類・実地調査で却下される
土地が5つの却下要件に該当しなくても、申請者の資格、必要書類、実地調査への対応に問題があれば却下されます。公表された却下理由でも、土地の状態だけでなく、添付書類や申請権限に関するケースが多く含まれています。
相続・相続人への遺贈で取得した人が申請できる
申請できるのは、相続、または相続人が遺言によって受ける遺贈により、その土地の所有権や共有持分を取得した人です。制度開始前に相続した土地も対象になります。
売買だけで単独所有権を取得した人は、原則として申請できません。法人は相続人になれないため、法人が売買などで単独取得した土地も原則として対象外です。
共有地は共有者全員で申請します。共有者のうち一人でも相続または相続人への遺贈により持分を取得していれば、ほかの共有者が売買などで持分を取得していても、共有者全員による共同申請が可能です。
家族は、資料収集や申請書の作成を手伝ったり、申請書を法務局へ持参したりできます。ただし、申請者として記載するのは土地所有者本人です。業務として申請書類の作成を依頼できる専門家は、弁護士、司法書士、行政書士です。
審査中に売却、相続などで所有者が変わる場合は、申請を取り下げるか、新しい所有者が申請者の地位を承継する手続を行う必要が生じることがあります。売買契約や所有権移転登記を進める前に、申請先の法務局へ確認してください。
添付書類の未提出は、公表された却下理由で最多の37件
申請書には、申請者、土地の所在・地番・地目・地積などの法定事項を記載し、必要書類を添えます。審査手数料は一筆あたり14,000円で、収入印紙により納付します。
全案件に共通する主な添付書類は、次の4点です。
- 申請する土地の位置と範囲を明らかにする図面
- 申請地と隣接地との境界点を明らかにする写真
- 申請地の形状を明らかにする写真
- 申請者の印鑑証明書
このほか、相続や遺贈により取得したことを示す戸籍、遺産分割協議書、遺言書など、事案に応じた資料が必要になります。
2026年6月30日時点の公表統計では、法定の添付書類が提出されなかったことが37件の却下理由になっています。写真が境界点を示していない、相続で取得したことを証明できない、共同申請者がそろっていないといった場合は補正が必要です。
受付後に法務局から補正を求められた場合は、指定された期間内に不足を補います。不備が見つかった時点ですぐ却下されるとは限りませんが、必要な補正をしなければ却下される可能性があります。
法務局の実地調査に正当な理由なく協力しないと却下される
法務局は審査に必要な場合、現地で実地調査を行います。申請者に同行や資料提出などの協力を求めることがあり、正当な理由なく応じなければ却下されます。
申請者本人が現地へ行けない場合は、土地の状況に詳しい家族、親族、専門家など、申請者が指定した人に同行してもらえる場合があります。
遠方に住んでいる、高齢や病気で移動が難しいなどの事情があるときは、法務局からの連絡を放置せず、同行者、日程、必要な対応を相談してください。
相続土地国庫帰属制度で却下・不承認になると誤解されやすい6つの条件
見た目に問題がありそうでも、直ちに却下・不承認となるとは限りません。反対に、書類や登記を形式的に整えただけでは足りない場合もあります。
| よくある誤解 | 実際の扱い |
|---|---|
| 相続登記が終わっていない土地は申請できない | 相続で取得したことを証明する資料があれば申請できる場合があります。 ただし、取下げ・却下・不承認となった場合は相続登記を進める必要があります。 |
| 確定測量がなければ必ず却下される | 確定測量や境界確認書は一律の必須書類ではありません。 現地で認識する境界を示せて、隣地との争いがないことが重要です。 |
| 木や柵が1つでもあれば不承認になる | 土地の性質に照らして、通常の管理・処分を妨げるかどうかで判断されます。 森林の通常の樹木や安全な柵が直ちに不承認になるとは限りません。 |
| 勾配30度・高さ5メートル以上の崖があれば必ず不承認になる | 数値基準に当たる崖があり、さらに通常の管理に過分な費用・労力がかかる場合が不承認要件です。 |
| 農地や森林は対象外 | 農地・森林も申請できます。 ただし、利用状況、管理状態、土地改良区の賦課金、森林整備の必要性などが審査されます。 |
| 売れない土地なら国が引き取る | 市場での売れやすさは承認要件ではありません。 国が通常の管理・処分をできる状態かどうかで判断されます。 |
特に境界については、「測量していないから申請できない」と決めつける必要はありません。一方、境界標があっても、隣地所有者がその位置に異議を述べていれば問題は残ります。
確認するのは書類の有無だけではなく、現地で土地の範囲を示せるか、隣地所有者との認識が一致しているかです。
相続土地国庫帰属制度の不承認要件は、管理・処分の負担で判断される5類型
却下されずに審査へ進んでも、国が通常の管理・処分をするのに不釣り合いに大きな費用や労力がかかると判断されれば不承認になります。不承認要件は、大きく次の5種類です。
| 不承認要件 | 主な具体例 | 改善前に確認すること |
|---|---|---|
| 一定の崖があり、管理負担が過大 | 勾配30度以上・高さ5メートル以上の崖があり、擁壁工事などが必要 | 崖の位置、危険性、必要な工事範囲を確認し、高額工事を先に発注しない |
| 管理・処分を妨げる地上物がある | 危険な枯れ木・竹、補修が必要な工作物、放置車両など | 何をどの状態まで除去すれば要件を解消できるかを確認する |
| 除去が必要な地下埋設物がある | 産業廃棄物、建築ガラ、基礎、浄化槽、井戸、大きな石など | 調査範囲、撤去範囲、撤去後に必要な証明資料を確認する |
| 争訟によらなければ管理・処分できない | 袋地の通行が妨げられている 不法占拠、排水の流入 使用・収益の妨害 | 当事者間の協議で解決できるか、法的手続が必要かを確認する |
| その他、過分な費用・労力がかかる | 災害防止措置、 危険な鳥獣・病害虫への対応、 追加整備が必要な森林、 土地改良区等の金銭債務 | 必要な措置、継続的な管理、金銭負担を行政資料や専門家の調査で特定する |
何か物があるだけで不承認になるわけではありません。土地の性質や利用状況に照らし、その物が通常の管理・処分をどの程度妨げるかが判断されます。
2026年6月30日時点で公表された主な不承認理由は、次のとおりです。1つの事件に複数の理由が含まれるため、合計は不承認93件と一致しません。
- 管理・処分を妨げる地上物がある土地:45件
- 追加整備が必要な森林:36件
- 災害防止措置が必要な土地:11件
- 通常の管理費以外の金銭債務が生じる土地:10件
- 一定の崖がある土地:7件
- 使用・収益が妨害されている土地:5件
- 通行が妨害されている土地:4件
- 除去が必要な地下埋設物がある土地:3件
無駄な撤去や工事を避けるには、その物が管理・処分をどう妨げているのか、どの状態まで直せば要件を解消できるのかを先に特定します。
却下・不承認の通知後は、審査請求・再申請・別ルートの3分岐で決める
却下や不承認の通知を受けても、土地を処分する方法がなくなったわけではありません。まず、決定書に書かれた根拠条文と認定された事実を、提出資料や現況と照らし合わせます。
決定の前提が事実と違うのか、問題を直せるのか、直す費用が大きすぎるのかによって、次に選ぶ方法が変わります。
決定の前提に疑問があるなら、審査請求の期限を先に確認する
次のような疑問がある場合は、工事や再申請へ進む前に、決定書と提出資料が一致しているかを確認します。
- 申請権限がないとされたが、相続で取得したことを示す資料を提出している
- 通路として使われているとされた範囲や利用状況が、現地と異なる
- 境界に争いがあるとされたが、隣地所有者の回答内容を確認できていない
- 工作物や樹木が管理を妨げるとされた具体的な理由がわからない
- 提出した書類が未提出として扱われている
法務省のQ&Aでは、却下・不承認に対して審査請求ができると案内されています。原則的な期限は、処分があったことを知った日の翌日から起算して3か月以内です。請求先は法務省民事局です。
行政不服審査法には、処分の日の翌日から1年という外側の期限もあります。また、取消訴訟には審査請求とは別の期限があります。起算日、例外、選ぶべき手続は個別事情で変わるため、決定書と提出資料を持って早めに弁護士へ相談してください。
決定書、申請書の控え、提出資料、法務局とのやり取りをそろえ、まず審査請求や訴訟の期限と争点を確認してください。
理由を解消できるなら、再申請の総額を計算する
一度却下・不承認になった土地でも、具体的な理由を解消すれば再申請できます。審査中に問題が判明した場合も、法務局が認める相当の期間内に要件を解消できることがあります。
ただし、再申請できることと、再申請したほうが経済的に有利であることは別です。次の費用を合計し、現況で売る場合や保有を続ける場合と比べます。
国庫帰属を目指す総額の目安
= 問題の是正費用
+ 再申請する各筆の審査手数料
+ 承認後の負担金
+ 所有権が移るまでの税金・管理費
+ 専門家へ依頼する場合の費用
審査手数料は一筆あたり14,000円です。取下げ、却下、不承認となっても返還されないため、再申請では新たな手数料が必要になります。
承認後の負担金は20万円が基本です。ただし、一部の市街地の宅地、一定の農用地、森林などは面積に応じて計算されます。隣接する同じ種類の土地について、負担金をまとめて計算できる特例もあります。
解消費用が大きいなら、国庫帰属以外の方法へ切り替える
大規模な崖の工事、広い森林の整備、地下廃棄物の撤去、長引く境界・通行の紛争などは、国庫帰属のためだけに解消すると費用倒れになる可能性があります。
決定書で指摘された事情を不動産会社にも共有し、現況のまま売る場合と、問題を直して売る場合の2条件で査定を受けましょう。是正後の価格上昇が工事費を下回るなら、工事をせず価格へ反映して売るほうが合理的な場合があります。
却下理由が国庫帰属制度上の条件に合わないというだけなら、隣地所有者や特定用途の買主には利用価値があるかもしれません。一方、境界の争い、地下埋設物、第三者の権利など、買主の判断に影響する事項は契約前に具体的に伝える必要があります。
\ 費用倒れになる前に、売却価格も比べる /
解体・測量・撤去を発注する前に、理由別の断念ラインを決める
問題を直せそうな場合でも、工事や手続を発注する前に、どの状態になったら別の方法へ切り替えるかを決めておきましょう。自分の決定書に近い理由を、次の表から確認してください。
| 理由 | 発注前の確認 | 別ルートへ切り替える目安 |
|---|---|---|
| 建物 | 法務局へ建物の扱いを確認し、建物付き・解体後の両方で査定を取る | 解体後も別の要件が残る、または建物付きで売るほうが手取りが多い |
| 抵当権・地役権・賃借権 | 金融機関、権利者、司法書士などへ抹消・終了条件を確認する | 権利者の合意が得られない、または費用に対して処分効果が小さい |
| 通路・水路 | 法務局、土地家屋調査士、道路・水路管理者へ利用範囲を確認する | 分筆後も利用・売却・国庫帰属が難しい |
| 境界・所有権の争い | 土地家屋調査士や弁護士へ必要な調査・手続・期間を確認する | 争いが長期化する、または費用と期間が許容範囲を超える |
| 地上物・地下埋設物 | 撤去範囲、追加工事の条件、完了を示す資料を確認する | 撤去範囲や追加費用の上限を決められない |
| 森林・災害・鳥獣 | 市町村、森林組合、専門事業者へ必要措置と継続管理を確認する | 一度の作業で終わらず、継続的な管理費が大きい |
| 申請書類の不足 | 法務局へ不足書類と補正方法を確認する | 相続人・所有者を確定できない、または境界を現地で示せない |
見積書には、作業範囲、完了条件、追加費用が発生する条件、受け取れる図面・写真・証明書などを記載してもらいます。「国庫帰属の要件を満たすための作業」という一式表示だけでは、どこまで直るのか判断できません。
工事後の資料を法務局へどのように提出するか、売却に切り替えた場合に買主へ説明できるかも確認しておくと、費用が無駄になりにくくなります。
\ 工事前に、現況で売る手取りを確かめる /
国庫帰属が却下・不承認になった土地の処分・管理方法は7つ
国庫帰属以外の方法は、無料か有料かだけで選べません。所有権が移るか、誰が土地を利用・管理するか、税金や登記費用がどうなるかまで確認します。
| 選択肢 | 向く可能性がある土地 | 確認すること |
|---|---|---|
| 現況のまま仲介・買取で売る | 住宅、事業、農林業、資材置場などの需要を探せる土地 | 成約見込み価格 買取価格 売主が直す範囲 諸費用を差し引いた手取り |
| 隣地所有者へ売却・譲渡する | 狭小地、接道が弱い土地、単独では利用しにくい土地 | 境界、越境 一体利用の価値 測量費 売買・贈与に伴う税金 |
| 空き家・空き地バンクへ登録する | 地域の移住、住宅、事業利用に合う土地 | 土地だけの登録可否 自治体が契約へ関与する範囲 利用条件 |
| 自治体・法人・個人へ寄付する | 公共利用、事業利用、隣地利用など具体的な用途がある土地 | 受入れの可否 用途制限 登記費用 寄付・贈与に伴う税務 |
| 農地・森林の地域制度へ相談する | 農地バンクや森林経営管理制度の対象となる土地 | 貸借、管理委託 売買のどれか 所有権と管理責任が誰に残るか |
| 民間の有料引取サービスを使う | 通常の売却と公的制度が難しく、契約の安全性を確認できる土地 | 引取料、契約相手 登記と支払の順序 返金条件 引取後の管理方針 |
| 当面保有して管理する | 急いで処分すると費用や契約リスクが大きい土地 | 年間の税・管理費 安全点検 再検討する時期 緊急時の連絡先 |
農地バンクや森林経営管理制度を利用しても、必ず所有権を手放せるとは限りません。貸借や管理委託にとどまる場合があるため、所有権、管理責任、費用負担を確認してください。
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却下後の売却は、現況と是正後の2条件で査定を比べる
国庫帰属で問題になった事情は、売却価格や契約条件にも影響します。ただし、買主が自分で解体、伐採、造成などを行う前提なら、所有者が先に問題を直さなくても売れる場合があります。
不動産会社には、決定書、登記事項証明書、公図、現況写真、境界資料を同じ条件で渡し、次の2通りを確認してください。
| 査定条件 | 確認する金額 |
|---|---|
| 現況のまま売る場合 | 仲介の成約見込み価格、販売期間、不動産会社の買取価格 |
| 問題を直してから売る場合 | 是正後の成約見込み価格と、工事・測量・登記などを差し引いた手取りの概算 |
工事による価格上昇が工事費を下回るなら、国庫帰属のために直すより、その費用を価格へ反映して現況のまま売るほうが合理的な場合があります。
\ 現況と是正後、同じ資料で査定を比べる /
隣地所有者への売却・譲渡は、単独で使いにくい土地でも成立することがある
細長い土地、道路に接していない土地、狭小地、法面などは、一般市場では買い手が限られます。一方、隣地と一体にすれば、通路、庭、駐車場、建築計画、管理範囲の整理に使える場合があります。
隣地所有者へ連絡するときは、所在地・地番、面積、境界資料、現況、希望条件を簡潔に伝えます。相手が一人だけでは価格を比べにくいため、不動産会社の査定も取っておきましょう。
無償で譲れば簡単に解決するとは限りません。受け取る側には、所有権移転登記、不動産取得税、固定資産税、維持管理の負担が生じます。個人間の贈与では、贈与税の確認も必要です。
自治体への寄付は、国庫帰属の代わりに必ず使える制度ではない
法務省のQ&Aは、国庫帰属以外の選択肢として、地方公共団体などへの寄付も挙げています。
ただし、自治体が土地を受け入れるのは、道路、公園、防災、公共施設の拡張など具体的な利用目的がある場合や、売却・貸付による活用が見込める場合が中心です。所有者から申出があっても、自治体に受け入れる義務はありません。
公共施設に隣接している、道路の後退部分である、地域計画と関係するといった事情があれば、関係する事業の担当課へ相談します。利用計画がないまま、寄付のためだけに測量や撤去を先行させないでください。
相続放棄では、却下された土地だけを選んで手放せない
相続放棄は、特定の土地だけでなく、被相続人の権利と義務を一切受け継がないための手続です。原則として、自分のために相続が始まったことを知ったときから3か月以内に、家庭裁判所へ申述します。
国庫帰属が却下されたあとに、その土地だけを選んで相続放棄することはできません。まだ3か月以内で、遺産を処分していないなど判断の余地がある場合は、ほかの財産・債務や次順位の相続人への影響も含め、早めに弁護士へ相談してください。
相続財産を調べても判断材料がそろわない場合は、相続放棄の申述期間を伸長する申立てを検討できることがあります。相続放棄が受理されても、土地の所有権が直ちに国へ移るわけではありません。
有料引取サービスは、所有権移転登記と支払の順序を確認する
民間の有料引取サービスは、土地を売って代金を受け取る取引とは反対に、元の所有者が事業者へ引取料を支払い、土地を引き取ってもらう仕組みです。
国土交通省の検討資料では、利用時の主な確認事項として次の点が挙げられています。
- 料金を支払う前に、事業者への所有権移転登記が行われたことを確認する
- 費用、引取条件、追加料金、返金条件を契約書で確認する
- 通常の仲介・買取を含むほかの方法と費用を比較する
- 引取後に事業者が土地をどのように管理するか確認する
広告の窓口と実際の契約相手が同じか、登記申請と支払の順序、契約が成立しなかった場合の返金も確認します。契約前に、その事業者と利害関係のない司法書士や弁護士へ契約書を見せると安心です。
法務局本局の30分相談で、却下理由と再申請の可否を確かめる
相続土地国庫帰属制度の相談は、全国の法務局・地方法務局の本局で受け付けています。原則として事前予約が必要で、対面、電話、ウェブによる相談を利用できます。
土地がある都道府県を管轄する本局へ相談するのが基本です。相談時間は1回30分で、相談時の回答は正式な承認を保証するものではありません。
却下・不承認の決定書と一緒にそろえる相談資料10点
すべてそろっていなくても相談できます。取得できていないものは「未取得」と書いておきましょう。
- 却下または不承認の決定書
- 申請書の控えと、提出した添付書類の一覧
- 登記事項証明書
- 法務局で取得した地図・公図
- 地積測量図、境界確認書、その他の測量図面
- 土地全体、境界点、接道、建物・工作物・樹木がわかる写真
- 固定資産税の納税通知書
- 相続や遺贈による取得を示す戸籍、遺産分割協議書、遺言書など
- 抵当権、賃貸借、通行、土地改良区の賦課金などに関する資料
- 是正を検討している場合は、工事・測量・撤去の見積書
却下理由と是正範囲を特定する、法務局への6つの質問
相談の冒頭では、次のように伝えると状況を共有しやすくなります。
「相続土地国庫帰属制度の却下(または不承認)決定を受けました。決定書、申請書の控え、登記事項証明書、公図、現況写真を用意しています」
- どの条文の要件に、土地のどの事実が該当したのでしょうか。
- その事実を解消すれば再申請できますか。完了を示す資料は何ですか。
- 審査中に追加資料の提出や是正をする余地はありましたか。
- 現在わかる範囲で、ほかに却下・不承認の要件となり得る事情はありますか。
- 是正後に申請する場合の筆数、審査手数料、負担金の区分はどこで確認できますか。
- 決定の前提事実に疑問がある場合、審査請求の提出先と期限はどこに記載されていますか。
相談で「直せば申請できそう」と言われても、正式な承認ではありません。実地調査や関係機関への照会により、結論が変わる場合があります。
相談日、確認した資料、回答の前提、次に取得する資料を記録し、不動産会社や専門家へ相談するときにも同じ内容を共有してください。
相続土地国庫帰属制度の却下に関するよくある質問
却下・不承認の通知を受けた人から多い疑問をまとめます。
相続土地国庫帰属制度の却下理由を特定してから、再申請か別ルートかを決める
相続土地国庫帰属制度の却下は、建物、第三者の権利、他人による利用、土壌汚染、境界という土地の5要件だけで決まりません。申請資格、必要書類、法務局の実地調査への対応も確認されます。
2026年6月30日時点で公表された却下理由では、法定の添付書類が提出されなかったケースが最も多くなっています。一方、不承認は、国が通常の管理・処分をするのに過分な費用や労力がかかると判断された場合の処分です。
通知を受け取ったら、決定書の条文と認定された事実を、申請書の控えや提出資料と照合してください。前提に疑問があれば、審査請求や取消訴訟の期限を先に確認します。
理由を直せる場合は、是正費用、再申請の審査手数料、承認後の負担金、所有権が移るまでの管理費を合計します。その総額が大きければ、現況での売却や隣地への譲渡、地域のマッチング制度、寄付、継続保有などへ切り替えましょう。
最初にそろえる資料は、決定書、申請書の控え、登記事項証明書、公図、現況写真です。申請先の法務局へ示し、「どの事実をどこまで直せば、どの要件を解消できるのか」を確認してください。
却下や不承認は、その土地の価値を否定する判定ではありません。
取下げ理由で最も多かったのが「有効活用の見込みが生じた」ことだったように、決定書の内容は、次の処分ルートを選ぶための資料として活用できます。
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※2025年9月19日〜23日、全国20〜60代の男女3,000人を対象にした調査。実施主体:株式会社マーケティングアンドアソシェイツ
※本記事は2026年8月17日時点の法令・公表情報を基にした一般的な解説です。個別の申請・再申請は管轄法務局、不服申立てや紛争は弁護士、境界は土地家屋調査士、登記は司法書士、税金は税務署・税理士などへ確認してください。
出典
e-Gov法令検索「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」
e-Gov法令検索「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律施行令」
e-Gov法令検索「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律施行規則」
法務省「相続土地国庫帰属制度の概要」(公開日:2023年4月24日)
法務省「相続土地国庫帰属制度において引き取ることができない土地の要件」
法務省「相続土地国庫帰属制度に関するQ&A」
法務省「相続土地国庫帰属制度の統計」(公開日:2026年7月16日)
法務省「相続土地国庫帰属制度の相談対応について」
法務省「相続土地国庫帰属制度の負担金」
裁判所「相続の放棄の申述」
農林水産省「農地中間管理機構」
林野庁「森林経営管理制度」
国土交通省「不動産の『引取サービス』について」
リビン・テクノロジーズ株式会社「『リビンマッチ』が全国認知度・今後利用したい不動産査定サイト 6年連続No.1に輝きました!」(公開日:2025年10月9日)

