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古家付き土地の売却は解体前に3案を比較|手元に残る金額で選ぶ方法と注意点

古家付き土地は、建物を残したままでも売れます。倒壊などの危険がないなら、解体を急がず、まず次の3つの売り方を同じ条件で査定してもらってください。

  1. 現況仲介:古家を残したまま、不動産会社に買主を探してもらう
  2. 更地仲介:先に建物を解体し、更地にしてから買主を探してもらう
  3. 買取:不動産会社に、古家付きのまま直接買ってもらう

このほかに、古家付きのまま買主を探し、契約が決まってから売主が解体する「更地渡し」もあります。独立した4つ目の売り方というより、買主を決めてから更地にして引き渡す進め方です。

3案を比べるとき、見るのは査定額の高さではありません。解体費、測量費、仲介手数料、売れるまでの維持費などを引いた「費用控除後の手残り」と、入金までの期間です。更地のほうが高く売れても、値上がり分より解体費などの負担が大きければ、手元に残る金額はかえって減ります。

なお、この記事でいう手残りは、売却代金から売却費用と住宅ローンの返済額を引き、売却益(税務上の「譲渡所得」)にかかる所得税・住民税はまだ引いていない金額です。税額は購入時の資料、所有期間、使える特例によって人ごとの差が大きいため、売り方ごとの費用差とは分けて考えます。

建物が傾いている、屋根材が落ちそう、隣地へ倒木するおそれがある場合は、安全確保が先です。無理に中へ入らず、自治体の空き家担当窓口や建築士などへ相談してください。

目次

結論|古家付き土地は解体前に3つの売り方を比べる

最初に決めるのは「古家を壊すかどうか」ではありません。「残した場合と壊した場合で、手元に残る金額がどう変わるか」です。

先に壊してしまうと、まだ使えた建物も、税制上の選択肢も元へ戻せません。売れる前から解体費を負担することにもなります。

解体を決める前に確認する5項目

  • 安全性:倒壊、部材の落下、火災、害虫、樹木の越境など、急いで手を打つべき危険はないか
  • 名義:土地と建物の所有者は誰か、相続登記や未登記建物の整理は必要か
  • 再建築の可否:道路の種類、道路に接する長さ、敷地後退(セットバック)などに問題はないか
  • 売り方別の手残り:現況仲介、更地仲介、買取で、費用を引いた後にいくら残るか
  • 契約条件:解体、残置物、境界、地中に残っている物、建物の不具合を、誰がどこまで負担するか

状況別の早見表

迷ったときは、自分の状況に近い行を見てください。「最初に検討する案」は決定ではなく、最初に査定・確認する候補です。

状況別に見た売り方の第一候補
現在の状況 最初に検討する案 次に確認すること
再建築できるか分からない 現況仲介 自治体で道路の種類、接道、必要な許可を確認する
新築用地の需要が強い 更地仲介 解体後の値上がり分が、解体費や維持費を上回るか計算する
売却期限が迫っている 買取 最終価格、契約後に減額される条件、引渡日を確認する
先に解体費を出したくない 現況仲介または更地渡し 契約後に解体する場合の範囲、費用、期限を決める
倒壊や落下の危険がある 安全対策を優先 自治体や建築士へ相談し、立入りや周辺への危険を減らす

査定前に集めておく資料

次の資料を1か所にまとめてから査定を依頼すると、会社ごとの前提がそろい、比べやすくなります。

  • 土地・建物の登記事項証明書(所有者や住宅ローンの担保が分かる書類)
  • 公図(土地の位置関係を示す図)、地積測量図(土地の面積・形状を示す図)、確定測量図など、境界や面積が分かる資料
  • 固定資産税・都市計画税の納税通知書と課税明細書
  • 建築確認済証(建築計画が法令に合っていることを示す書類)、検査済証(完成後の検査結果を示す書類)、図面、増改築や修繕の記録
  • 雨漏り、シロアリ、傾き、給排水、井戸、浄化槽など、把握している不具合の記録
  • 相続した物件なら、誰が何を相続するかをまとめた遺産分割協議書や、相続登記の状況が分かる資料

資料が見つからなくても、査定は依頼できます。ただ、「分からない」ことと「問題がない」ことは違います。未確認の項目はそのまま伝え、誰が何を調べるのかを査定書に書いてもらってください。

古家付き土地とは|「築何年から」という基準はない

古家付き土地とは、古い建物を残したまま、土地の価値を中心に売り出す不動産のことです。「築何年以上なら古家」という全国共通の法的基準はありません。築年数だけでなく、建物の状態、耐震性、立地、買主の目的を見て、土地として売るのか、中古住宅として売るのかを決めます。

ここで気をつけたいのは、広告の書き方と契約の中身が別だという点です。「古家付き土地」「建物価格0円」と広告に書いても、建物が自動的に契約の対象外になるわけではありません。土地と建物のどちらを売るのか、買主が建物を使うのか壊すのか、契約でどんな状態を約束するのかによって、売主の責任は変わります。

引き渡した家や土地が契約で約束した状態と違えば、買主から修理などの対応、代金の減額、損害賠償、契約解除を求められることがあります。これが「契約不適合責任」です。契約時に説明していなかった雨漏りやシロアリ被害が、引渡し後に見つかった場合などが典型です。

「古家価格0円」としても、それだけで責任が消えるわけではありません。把握している不具合、アスベストの調査記録、地中の旧基礎や浄化槽などは不動産会社へ伝え、物件の状態を記す「物件状況報告書」と契約書へ具体的に書き込んでもらいましょう。

売り方は「現況仲介・更地仲介・買取」の3つ

3案を同じ条件で並べると、価格だけでなく、先に必要なお金、入金までの時間、契約後に残る責任の違いが見えてきます。

現況仲介・更地仲介・買取の違い
売り方 向きやすい状況 主な利点 主な注意点
現況仲介
(古家を残して売る)
再建築の条件が未確認、建物を使いたい需要がある、先に解体費を出したくない 建物を残したまま、市場の反応を見られる 買主が解体費や不確実な点を価格から差し引いて考えやすい
更地仲介
(解体してから売る)
新築用地の需要が強く、解体後の値上がり分が総費用を上回る 買主が建築計画を立てやすく、土地の形も見えやすい 解体費を先払いし、売れ残っている間の税金や管理費も負担する
買取
(不動産会社が直接購入)
売却期限が短い、管理の負担を早く止めたい、現況のまま引き渡したい 買主を探す期間を短縮しやすく、引渡し条件も個別に調整できる 修繕・再販売の費用や事業者の利益が見込まれるため、仲介より価格が低くなりやすい

ただし、「仲介なら必ず高い」「買取なら売主は何も責任を負わない」とは限りません。買取でも、契約後に価格を下げる条件、残置物の扱い、境界をどこまで示すか、契約不適合責任の範囲は契約ごとに違います。提示額だけでなく、あとから金額や負担が変わる条件まで確認してください。

契約後に解体する「更地渡し」という進め方

更地渡しは、現況仲介と更地仲介の中間です。古家付きのまま買主を探し、売買契約が成立してから、売主の負担で解体して更地を引き渡します。

買主が決まる前に解体費を払わずに済む一方、契約条件があいまいだと決済の直前で揉めます。追加工事が出たときの費用、解体が遅れたときの引渡日、井戸・浄化槽・旧基礎などをどこまで撤去するのかまで、契約書で決めておきます。

解体するかどうかは「手残り」で決まる

判断材料は査定額ではなく、費用を引いた後の手残りと、入金までの期間です。

査定額を並べただけでは、どの案が有利かは分かりません。売り方ごとに、次の式で条件をそろえます。

費用控除後の手残り(税引前)=売却代金−売却に必要な費用−住宅ローンの返済額

売却益にかかる所得税・住民税をここで引かないのは、購入時の資料、所有期間、使える特例によって、人ごとの差が大きいからです。反対に、住宅ローンの返済額は手元のお金を減らしますが、税金を計算するときの「売却費用」には入りません。手残りと税額は、別々に計算します。

3案の手残りを比べた計算例

次の表は、比べ方を示すための仮想例です。実際の相場や解体費を表すものではありません。

3案の費用控除後の手残り(仮想例)
項目 現況のまま仲介 更地にして仲介 不動産会社が直接買取
売却代金 1,600万円 1,800万円 1,350万円
仲介手数料 59.4万円 66.0万円 0円
解体・整地費 0円 220万円 0円
残置物処分費 15万円 15万円 0円
測量・境界関係費 45万円 45万円 0円
登記・契約などの費用 10万円 18万円 10万円
入金までの維持費 12万円 22万円 3万円
住宅ローンの返済額 500万円 500万円 500万円
費用控除後の手残り(税引前) 958.6万円 914.0万円 837.0万円

この例では、更地の売却代金は現況より200万円高いのに、解体費などが増えるため、現況のまま売ったほうが44.6万円多く残ります。「更地にすれば高く売れる」が、そのまま「手元に多く残る」にはならないということです。

買取は手残りが最も少ない一方、早く売れる分だけ維持費や管理の手間を抑えられます。その差額を「時間を買う費用」と考えて選ぶ判断もあります。

なお、買取の列は、不動産会社が買主となり、仲介会社を通さない直接取引を想定しています。仲介会社が入る取引では、買取でも仲介手数料がかかる場合があります。

表の仲介手数料は上限額で計算しています。売買価格(税抜)が400万円を超える場合、消費税込みの上限は「売買価格×3.3%+6万6,000円」という速算式で求められます。ただし、800万円以下の宅地・建物には、媒介契約(不動産会社へ売却を依頼する契約)を結ぶときの合意を前提として、一方の依頼者から受け取れる仲介手数料を税込33万円までとする特例があります。低価格の古家付き土地では、速算式だけで予算を組まないようにしましょう。

自分の物件で比べるときの入力項目

成約予想価格とは、売出価格ではなく、実際に契約できそうな価格のことです。各社へ「現況の成約予想価格」と「更地の成約予想価格」の両方を出してもらい、次の項目を同じ表へ入れていきます。

  • 成約予想価格と、その根拠になった近隣の取引事例
  • 想定する販売期間
  • 解体・整地費の見積額と、追加費用が出る条件
  • 測量、残置物処分、登記、印紙、仲介手数料
  • 売れるまでの固定資産税、保険、草木の管理費、現地へ行く交通費
  • 住宅ローンの残高と、繰上返済に伴う費用
  • 特別控除を含めた、譲渡所得にかかる税金の概算

近隣の取引価格は、国土交通省の「不動産情報ライブラリ」で調べられます。「宅地(土地)」と「宅地(土地と建物)」を分け、町名、面積、前面道路、形状、取引時期が近い事例を見ます。ただし、公表されている価格は、個別の事情まで反映した査定額ではありません。不動産会社には、どの事例を使い、対象地との違いをどう調整したのかまで説明してもらいましょう。

古家を解体せずに売ったほうがよいケース

再建築できるか分からない、相続空き家の特例を検討している、解体の追加費用が読めない。このどれかに当てはまるなら、急いで壊さないほうが安全です。

現況のまま売ることに意味があるのは、建物に価値がある場合だけではありません。判断材料がそろっていない段階では、選択肢を残せること自体が利点になります。

再建築できるか分からない

建築基準法では、原則として建物の敷地が、同法上の道路に2m以上接している必要があります。ただし、道路の扱い、例外となる許可、自治体ごとの条例は土地によって違います。今の家が建っていても、同じ規模の家を建て直せるとは限りません。

再建築に制約がある土地で先に古家を壊すと、建物を使うという選択肢まで失います。自治体の建築指導窓口で、少なくとも次を確認してから判断してください。

  • 前面道路は建築基準法上の道路か
  • 敷地は道路に何m接しているか
  • 道路幅を確保するため、敷地を後退させる「セットバック」が必要か
  • 再建築に許可や認定が必要か
  • 建てられる建物の用途・大きさ・高さに、どんな制限があるか

窓口では「この土地は再建築できますか」とだけ尋ねるより、地番、公図、建物の配置図を示して「道路の種類、道路に接している長さ、必要な手続き、建物の主な制限を知りたい」と伝えたほうが、確認漏れを防げます。

古家を使いたい買主が見込める

構造や立地に魅力があり、改修して住みたい人や、店舗・アトリエへ転用したい人が見込めるなら、土地だけに絞ると買主候補を狭めてしまいます。

ただし、「リフォームすれば住める」と売主だけで決めつけるのは避けましょう。中古住宅として売り出すなら、建築士による建物状況調査で耐震性、雨漏り、給排水などを確認し、分かっていることと未確認のことを分けて伝えます。

解体費を先に負担したくない

解体では、建物本体の工事費だけでなく、アスベスト、地中の基礎、井戸、浄化槽、庭石、樹木、高低差を支える壁(擁壁)、狭い進入路などが追加費用につながります。

現況のまま売っても、この費用が消えるわけではありません。買主がその分を価格から差し引いて考える可能性はあります。それでも、金額の固まっていない工事を売主が先に抱えずに済む点は、大きな違いです。

相続空き家の特例を検討している

一定の相続空き家を売った場合、売却益から最高3,000万円を差し引いて税金を計算できる特例があります。2024年1月1日以後の売却では、相続人が古家付きのまま売り、買主が売却した年の翌年2月15日までに耐震改修または建物の全部を取り壊した場合も、ほかの要件を満たせば対象になり得ます。

つまり、この特例を使うために、売主が必ず先に解体しなければならないとは限りません。ただし、買主が期限までに工事を終えることが前提です。買主の義務、工事完了の確認方法、期限に遅れた場合の扱いを、税理士と、不動産取引の専門家である宅建士へ確認してください。

更地にしてから売ったほうがよいケース

解体後の値上がり分が、解体・整地費、増える税負担、工事中の維持費を上回る根拠があるときに選びます。

「古い家は印象が悪いから」という理由だけで更地にするのは早すぎます。現況と更地の価格差、費用差、想定する買主の違いを数字にしてから判断します。

新築用地の需要が強い

周辺で土地取引や建て替えが多く、買主の中心が新築希望者なら、更地にすることで建物の配置や日当たりを想像しやすくなります。ただし、判断の根拠にするのは売主が希望する売出価格ではなく、近隣で実際に契約された価格です。

建物が危険で、管理を続けにくい

倒壊や部材の落下など、周囲へ被害を及ぼすおそれがある建物は、売り方より安全対策が優先です。解体する場合は、複数社から書面で見積もりを取り、工事範囲と追加費用の条件を比べてください。

買主を決めてから更地渡しにできる

更地にする理由はあるものの、売れ残るリスクを避けたい場合は、契約後に解体する更地渡しが候補になります。契約前に解体見積もりを取り、次の内容を売買契約書へ入れます。

  • 解体する建物・塀・樹木・コンクリート土間・基礎の範囲
  • 地中から物が見つかった場合の費用負担
  • 解体完了と、建物がなくなったことを登記簿へ反映する「建物滅失登記」の期限
  • 工期が延びた場合の引渡日
  • 解体業者の事故や近隣への損害が起きた場合の対応
  • 買主が求める整地の状態

登記のある建物を取り壊した場合、所有者は取り壊した日から1か月以内に建物滅失登記を申請する必要があります。解体業者から取り壊し証明書などを受け取り、境界や建物登記の専門家である土地家屋調査士、または法務局へ手続きを確認しましょう。

「更地にすると固定資産税が6倍」は本当か

実際の請求額がそのまま6倍になるわけではありません。納税通知書を手元に置き、市区町村へ翌年度の見込み額を聞くのが確実です。

住宅の敷地には、税額のもとになる評価額を下げる「住宅用地の特例」があります。固定資産税では、1戸当たり200㎡までの小規模住宅用地は土地価格の6分の1、200㎡を超える一般住宅用地は3分の1が、税額計算の土台になります。都市計画税にも、それぞれ3分の1、3分の2とする特例があります。

建物を解体して住宅用地でなくなると、原則として翌年度からこの特例が使えなくなる可能性があります。固定資産税は毎年1月1日の状態が基準になるため、解体と売却が年をまたぐ場合はとくに注意してください。

それでも「6倍」という数字は、そのまま当てはまりません。家を壊すと住宅用地の軽減は外れますが、同時に、建物にかかっていた固定資産税はなくなります。土地の評価額や、税負担の急増を抑える調整の影響も物件ごとに違うため、全国共通の倍率は出せないのです。

納税通知書の土地・家屋の内訳を手元に置き、市区町村へ「今年中に解体した場合、翌年度はいくらになる見込みですか」と尋ねてください。これがいちばん早く、正確です。

反対に、税負担を抑えるためだけに危険な空き家を残すのも適切ではありません。放置による危険や衛生上の問題があり、自治体から「管理不全空家等」や「特定空家等」として勧告を受けると、建物が残っていても住宅用地の特例から外れます。

売却前に調べたい6項目|価格と契約条件が変わる

名義、境界、再建築、地中に残っている物、アスベスト、残置物。この6つは、査定額だけでなく契約条件も変えます。

1.土地と建物の名義

売却するには、原則として登記上の所有者と売主を一致させます。土地は相続登記済みでも、建物だけ亡くなった親の名義のまま、あるいは未登記ということがあります。土地と建物の登記事項証明書を別々に取り、所有者、住宅ローンの担保である抵当権、地番・家屋番号を確認します。

相続登記は2024年4月1日から義務化され、過去の相続も対象です。不動産を相続したと知った日から3年以内に申請する必要があります。2024年4月1日より前に相続を知っていた未登記の不動産は、原則として2027年3月31日が期限です。

2.境界と実際の面積

古い土地では、境界標が見つからない、登記上の面積と実際の面積が違う、塀や屋根が隣地にはみ出している、といったことが起こります。測量が必ず売主負担になるわけではありませんが、買主や金融機関が境界の確定を求めることはあります。

査定時には、「登記上の面積で売る公簿売買か、測量した面積で売る実測売買か」「境界をどこまで示す必要があるか」「越境は解消するのか、書面で買主へ引き継ぐのか」を確認します。

ここでも解体の順番が関わります。建物を壊すと、塀や境界の手がかりまで失うことがあるためです。測量と解体のどちらを先にするかは、土地家屋調査士へ相談してください。

3.再建築と土地利用の制限

道路に接する条件のほか、私道の権利、通行・工事の承諾、セットバック、擁壁、がけ、土砂災害、浸水、建てられる建物の用途などは、買主の建築計画と価格に直結します。不動産情報ライブラリで都市計画や防災情報を確認し、最終的には自治体や専門家が持つ資料と照らし合わせます。

4.地中に残っている物と過去の土地利用

建物を壊すと、古い基礎、浄化槽、井戸、配管、廃材などが見つかることがあります。過去に工場、クリーニング店、ガソリンスタンドなどとして使われていた土地では、土壌汚染の調査が必要になる場合もあります。

知らないことまで断定する必要はありません。ただし、過去の建物、増改築、埋め戻し、事業利用について把握している事実は、不動産会社へ伝えます。そのうえで契約書には、何を撤去して引き渡すか、契約後に未知の物が地中から出たら誰がどこまで負担するかを決めておきます。

5.アスベストと解体の追加費用

アスベストの使用状況は、外観だけでは判断できません。過去の調査記録がある場合、宅地建物取引業者はその内容を重要事項として説明する必要があります。また、解体工事では法令に基づく事前調査が必要です。見積書には、調査、分析、除去、処分のどこまでが含まれるのかを書いてもらいましょう。

6.残置物と住宅設備

家具、仏壇、物置、庭石、エアコンなどは、処分費だけでなく所有権の問題もあります。相続人が複数いる場合、ほかの相続人の私物を一人の判断で捨てないようにします。

また、「現況渡し」が、残置物をすべて買主負担にする意味とは限りません。残す物、撤去する物、買主へ所有権を移す物を一覧にし、写真と契約書の内容を一致させます。

契約書には「古家0円」ではなく負担の中身を書く

「現況有姿(今の状態で引き渡す)」「古家価格0円」「契約不適合責任を負わない」。こうした言葉だけでは足りません。負担する対象、金額、期限まで具体的に決めます。

古家付き土地のトラブルは、不具合があること自体より、「誰がどこまで負担するのか」があいまいなときに起こります。

売買契約前にそろえる確認項目

  • 土地と建物の両方を売買の対象にするか
  • 建物を使う前提か、解体する前提か
  • 土地と建物の売買代金をどう分けるか
  • 雨漏り、シロアリ、傾き、給排水など、把握している不具合
  • 井戸、浄化槽、古い基礎、廃材など、地中にある可能性がある物
  • 残置物、庭木、塀、物置、エアコンなどの扱い
  • 境界をどこまで示すか、測量や越境の解消を誰が行うか
  • 契約不適合責任を負う対象、期間、買主からの請求方法
  • 解体する人、費用、範囲、期限、追加工事の負担
  • 引渡し前に建物が壊れた場合や、近隣へ被害が出た場合の対応

個人同士の売買、事業者から消費者への売買、宅建業者が売主になる売買では、売主の責任を軽くする特約の扱いが違います。ひな型をそのまま使わず、取引の相手と建物の使い道に合わせて、宅建士や弁護士へ確認してください。

古家付き土地の売却にかかる費用と税金

売却費用、住宅ローンの返済、譲渡所得にかかる税金は、同じ「出ていくお金」でも計算上の扱いが違います。分けて整理すると、手元に残る金額と税額を混同せずに済みます。

すべての費用が、どの物件にもかかるわけではありません。自分の物件に必要な項目だけを、支払う時期と支払先まで含めて整理します。

古家付き土地の売却で発生しやすい費用
費用 発生しやすい場面 確認すること
仲介手数料 仲介で売買契約が成立したとき 上限額、支払時期、800万円以下の物件に関する特例
印紙税 紙の売買契約書を作るとき 契約金額、軽減措置の期限
測量・境界確定費 境界が不明、実際に測った面積で売るとき 隣接地、道路など公共用地との境界、完了までの期間
解体・整地費 更地渡し、売却前の解体 アスベスト、基礎、井戸、塀、樹木を含む範囲
残置物処分費 家財などを撤去するとき 適正な処分方法、所有者の同意
登記費用 住宅ローンの担保を外す、住所・相続・建物の滅失を登記するとき 誰が申請し、決済までに何を終えるか
譲渡所得にかかる税金 売却益が出たとき 購入時の費用、売却費用、所有期間、使える特例
売れるまでの維持費 売却活動中 固定資産税、保険、管理、交通、修繕

税金は「売却代金」ではなく「利益」にかかる

土地・建物を売ったときは、原則として次の式で、税金の対象になる利益を計算します。

税金の対象となる利益=売却代金−(取得費+譲渡費用)−特別控除額

取得費とは、購入代金や購入時の手数料などです。建物の取得費は、築年数などに応じた価値の減少分を差し引いて計算します。譲渡費用とは、仲介手数料や、売るために直接必要となった測量費、土地を売るために行った建物の取り壊し費用などです。所有期間は、売った年の1月1日時点で5年を超えるかどうかで、税率の区分が変わります。

気をつけたいのは、古い購入資料が見つからないときです。すぐに概算の取得費だけで計算すると、税額が大きくなる場合があります。売買契約書、領収書、通帳、住宅ローン資料などを探し、取得費の証拠にできる資料を税理士または税務署へ確認してください。

相続空き家の3,000万円特別控除

相続または遺言で財産を受け取る「遺贈」によって取得した一定の空き家と敷地を売る場合、売却益から最高3,000万円を差し引いて税金を計算できる特例があります。主な条件は次のとおりです。

  • 対象の家屋が、原則として1981年5月31日以前に建築されている
  • 分譲マンションなど、1棟の一部を所有する建物ではない
  • 相続開始の直前に、原則として亡くなった人以外が住んでいない
  • 相続から売却まで、一定の事業、貸付け、居住に使っていない
  • 相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る
  • 売却代金が1億円以下である
  • 2027年12月31日までに行う対象売却である
  • 家屋を残して売る場合は耐震基準を満たすか、定められた期間内に耐震改修または全部の取り壊しを行う

2024年1月1日以後の売却で、対象財産を取得した相続人が3人以上の場合、控除の上限は1人当たり2,000万円です。このほか、ほかの特例と同時に使えるか、亡くなった人が老人ホームへ入所していた場合、母屋と離れがある場合などに、細かな条件があります。

市区町村が交付する「被相続人居住用家屋等確認書」なども必要です。売り方を決める前に、税務署または税理士へ確認してください。

古家付き土地の売却で迷ったときの相談先

名義、境界、建築、税金、契約のすべてを、一人の専門家が判断できるわけではありません。困っている内容に合う相談先を選び、手元の資料を持参すると話が早く進みます。

確認したい内容ごとの主な相談先
確認したいこと 主な相談先 持参したい資料
所有者の名義、相続登記 司法書士 登記事項証明書、戸籍、遺産分割協議書
境界、測量、建物滅失登記 土地家屋調査士 公図、測量図、登記事項証明書
再建築の可否、建物の安全性 自治体の建築指導窓口、建築士 地番、公図、配置図、建物の写真
売却益の税金、3,000万円特別控除 税務署、税理士 購入時・売却時の契約書、領収書、相続資料
売買条件、告知、売主の責任 宅建士、紛争のおそれがあれば弁護士 査定書、物件状況報告書、契約書案、調査記録

査定で不動産会社に聞く8つの質問

選ぶ基準は査定額の高さではありません。実際に契約できそうな価格の根拠と、費用を引いた後の手残りを説明できるかどうかです。

数字だけを見比べると、前提の違う提案を選んでしまいます。各社へ同じ資料を渡し、次の質問への回答を査定書に書いてもらいましょう。

  1. 現況の成約予想価格と更地の成約予想価格は、それぞれいくらか
  2. 根拠にした成約事例はどれで、対象地との違いをどう調整したか
  3. 道路、再建築、境界、擁壁、私道について、確認済みと未確認の項目は何か
  4. 古家を「土地」「中古住宅」のどちらとして売り、どんな買主を想定するか
  5. 想定する販売期間と、何か月売れなければ価格や売り方を見直すか
  6. 解体、測量、残置物、登記、仲介手数料を引くと、手元にいくら残るか
  7. 買取の場合、提示価格が確定する時点と、契約後に減額される条件は何か
  8. 契約不適合責任、地中に残っている物、残置物を、どこまで売主負担にするか

「更地なら高く売れます」と言われたら、価格差と費用差を数字で示してもらいます。「現況で問題ありません」と言われたら、契約で売主が負担する範囲を示してもらいます。回答が書面になると、査定額だけでは見えない違いが比べられます。

古家付き土地を売却する流れ

「安全確認→資料整理→3案の査定→手残り比較→契約→引渡し」の順に進めます。

1.危険箇所を確認し、必要なら立入りを制限する

倒壊、部材の落下、漏電、ガス、害虫、樹木の越境などを確認します。危険がある場合は、自分で修理や片付けを始めず、自治体や専門業者へ相談します。

2.名義・境界・再建築条件を整理する

登記事項証明書、公図、測量図、建築資料を集めます。相続、未登記建物、境界不明、再建築の制約が見つかったら、査定と並行して司法書士、土地家屋調査士、自治体、建築士へ確認します。

3.同じ条件で3案の査定を取る

現況仲介、更地仲介、買取について、成約予想価格、期間、費用、契約条件をそろえます。解体案には、現地を見た解体業者の見積もりを使います。

4.手残りと期限で売り方を決める

最も高い査定額ではなく、費用を引いた後の手残り、入金時期、売れ残った場合の負担で決めます。税の特例に期限がある場合は、税理士の確認も判断材料に加えます。

5.仲介の依頼内容または買取条件を確認する

仲介を選ぶ場合は、不動産会社に売却を依頼する「媒介契約」を結び、売出価格、販売方法、報告の頻度、売り方を見直す時期を決めます。2025年1月からは、不動産会社向けの物件情報ネットワークであるレインズの売主専用画面で、「公開中」「書面による購入申込みあり」などの取引状況を売主が確認しやすくなっています。

買取を選ぶ場合は、買主となる法人名、最終価格、契約後に価格が変わる条件、残置物、測量、契約不適合責任、代金を受け取る日を確認します。

6.告知内容と契約条件を具体化する

物件状況報告書には、記憶している事実と資料をもとに記入します。分からない項目を推測で埋めず、契約書、契約前に物件や取引条件を説明する重要事項説明書、エアコンなど設備の状態を記す付帯設備表との食い違いをなくします。

7.代金の受領・引渡しと売却後の手続きを行う

代金の受領、所有権の移転、鍵や資料の引渡し、固定資産税などの精算を行います。解体した場合は建物滅失登記、売却益が出た場合や特例を使う場合は確定申告の準備を進めます。

古家付き土地の売却で避けたい5つの失敗

後戻りできない解体や処分を先に進めず、価格・費用・権利・契約条件を確認してから動きます。

査定前に解体する

再建築の条件、税金、解体後の価格が未確認のまま壊すと、手元に残る金額が減っても元へ戻せません。危険がなければ、現況と更地の査定、解体見積もり、市区町村への税額確認を先に行います。

解体費を坪単価だけで決める

同じ延べ床面積でも、構造、アスベスト、前面道路、重機の進入、基礎、塀、樹木、地中に残っている物によって金額は変わります。現地調査を受け、追加料金が発生する条件を書いた見積書を2社以上から取ります。

高い査定額だけで会社を選ぶ

査定額は、その金額で売れることを約束するものではありません。成約事例、想定期間、値下げの基準、手元に残る金額、契約条件まで説明できる会社を選びます。

「現況渡しなら何も責任を負わない」と考える

現況渡しは、今の状態で引き渡すことを示す言葉です。それだけで売主の責任がすべてなくなるわけではありません。知っている事実を伝えず、契約内容とも食い違えば、売主の責任を軽くする特約があっても問題になる可能性があります。

相続人の合意前に工事や処分を進める

複数人で共有する物件では、売却、解体、残置物の処分に、ほかの権利者の同意が必要になることがあります。名義と遺産分割の状況を確かめ、合意内容を書面にしてから契約や工事を進めます。

古家付き土地の売却に関するよくある質問

古家付き土地は、解体しないと売れませんか?

解体しなくても売れます。現況のまま仲介する方法、不動産会社へ買い取ってもらう方法、契約後に売主が解体して更地で引き渡す方法があります。危険がなければ、解体前に3案の手残りを比べてください。

古家付き土地と中古住宅のどちらで売るべきですか?

建物が使えるか、買主が建物の利用を望むかで決めます。築年数だけで線を引かず、建物状況調査、耐震性、修繕履歴、地域の需要を確認します。土地と中古住宅の両方の売却に詳しい会社へ、それぞれの成約予想価格を出してもらうと判断しやすくなります。

家財道具はすべて片付けてから査定すべきですか?

査定前にすべて処分する必要はありません。買取では残置物ごと引き取る条件を交渉できる場合があり、仲介でも売買契約までに撤去範囲を決められます。まず処分費を見積もり、売り方ごとの費用へ入れて比べます。

未登記の古家があっても売却できますか?

売却の検討はできます。ただし、課税資料と現在の状態が一致しない、所有者を確認できない、住宅ローンの審査や建物滅失登記が進まないなど、取引上の支障が出ることがあります。固定資産税の課税明細、建築資料、相続資料を持って、土地家屋調査士と不動産会社へ確認してください。

古家を残したままでは売れないとき、何から見直せばよいですか?

まず、問い合わせがないのか、内見後に断られるのかを分けます。問い合わせがなければ、価格、広告の見せ方、想定する買主を見直します。内見後に断られるなら、解体費、再建築の条件、境界、建物の状態を見直します。

原因を分けたうえで、更地渡しや買取の手残りを再計算してください。理由を特定せずに値下げだけを続けると、問題が解決しないまま手元に残る金額が減っていきます。

まとめ|古家付き土地は「壊す前」に売り方を比べる

古家付き土地は、そのままでも売れます。危険がないなら、現況仲介、更地仲介、買取の3案について、実際に契約できそうな価格、費用、期間、契約条件をそろえ、手残りで比べるのが最初の一歩です。更地のほうが高く売れても、手元に多く残るとは限りません。

いったん手を止めて確認したいのは、再建築できるか分からない、相続人の合意がない、相続空き家の特例を検討している、解体の追加費用が読めない場合です。反対に、税金を抑えるためだけに、危険な建物を残すべきではありません。

まずは、登記事項証明書、固定資産税の課税明細、測量図、建築資料、不具合の記録を集めてください。同じ資料を各社へ渡し、「現況」「更地」「買取」の手残りを1枚の表にまとめれば、査定額の高さに引きずられず、自分に合う売り方を選べます。

参考資料

※税制、登記、建築、契約の取扱いは、物件の所在地、当事者、利用状況、契約内容などで変わります。個別の売却では、自治体、不動産会社、税理士、司法書士、土地家屋調査士、建築士、必要に応じて弁護士へ確認してください。

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