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土地を自治体に寄付できる?断られる理由と受け取ってもらえないときの手放し方

土地の寄付は、自治体が「受け取ります」と判断したときだけ成立します。所有者が申し出るだけで、一方的に引き取ってもらうことはできません。

判断を分けるのは、土地の値段ではありません。道路・公園・防災など、公共の用途に使えるかどうかです。売って現金化できるかまで見る自治体もありますが、全国共通の扱いではありません。境界がはっきりしていて建物もない土地でも、使い道がなければ断られることがあります。

測量・解体・伐採は、自治体に相談してから

土地そのものが0円でも、引き取ったあとの草刈りや安全対策には自治体の費用がかかります。しかも、先に土地を整えても、使い道がなければ寄付はできません。「何を直せば再検討してもらえるのか」「費用は誰が払うのか」を確かめてから発注しましょう。

まず手をつけるのは、次の4つです。

  1. 土地の場所(地番)、位置図、現地写真をそろえ、手元にある登記事項証明書や公図も確認する
  2. 道路や公園など、専用の受け入れ制度がないか調べ、自治体が案内する窓口に相談する
  3. 受け入れの見込みと条件がわかるまで、大きな出費をしない
  4. 断られたら、理由を「直せる問題」と「直しても変わりにくい問題」に分ける

この記事では、個人が日本国内の土地を市区町村などへ寄付するときに、自治体が何を見て判断するのか、どの窓口にどう相談するのか、断られたあとに何ができるのかを整理します。基準は自治体ごとに違うため、最後は土地がある自治体で確認してください。

目次

土地を自治体へ寄付できるのは、自治体が受け入れた場合だけ

民法549条は、贈与が「無償で財産を与えます」という意思表示と、相手の「受け取ります」という承諾ではじめて効力を持つと定めています。自治体への寄付も同じ仕組みです。申込書を出した時点では、まだ何も決まっていません。

事前相談や申し出の段階では、所有権も管理責任も所有者のままです。受け入れが決まったら、寄付契約書や受領通知で、所有権が移る日、土地を引き渡す日、管理を引き継ぐ日、登記の予定を確認します。所有権が移る時期は契約の内容で決まり、登記は移った権利を第三者に主張するための手続きです(民法176条・177条)。この2つは、同じ日とは限りません。

寄付ですから、自治体から土地代は支払われません。ただ、自治体の側には引き取ったあとも、草刈り、倒木対策、排水、崖や擁壁(斜面の崩れを防ぐ壁)の点検、近隣からの苦情対応、事故防止、売却手続などが続きます。無料で手に入ることと、無料で管理できることは別です。

「固定資産税の収入が減るから断られる」と言われることもあります。ただ、自治体が公開している基準で実際に見られているのは、公共で使う必要があるか、売りやすいか、境界や権利がはっきりしているか、安全か、管理にどれだけ手間と費用がかかるかです。税収だけで結果は読めません。

土地の状況から、最初の相談先を決める

相談先は、土地の状態を次の3つに当てはめると絞り込めます。全国共通の制度名ではなく、確認する順番を整理するための分類です。

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土地の手がかり最初の相談先主な確認点
道路・公園・緑地・防災など、使い道がはっきりしている道路管理、公園・緑地、都市計画、防災などの担当課対象区域、面積、道路との接し方、既存施設との位置関係、事業計画
使い道は未定だが、自治体の事業や売却に回せそう管財、財産管理、資産経営などの担当課使いたい部署があるか、売却を前提に受け入れる制度があるか、権利・境界・管理の負担
使い道も買い手も見つけにくく、管理の負担が大きい管財担当に一度確認したうえで、不動産会社や法務局にも相談売却、隣地への譲渡、空き地バンク、相続土地国庫帰属制度の可能性
土地の状況別に見る、最初の相談先と確認点

新潟市や名古屋市は、市の事業に使えるかだけでなく、売って現金化しやすいかも判断材料にしています。世田谷区には、寄付者が売却に同意し、その代金を寄付の目的に使える見込みがある不動産を、受け入れ候補とする仕組みがあります。

一方、この扱いは全国共通ではありません。精華町は、住民福祉に役立つ活用が見込めず、維持管理費が町民の負担になる土地は受け入れられないと案内しています。

自治体が土地の寄付を断る理由は、2種類ある

断られても、「価値のない土地だ」と決まったわけではありません。分かれ目は、お金をかければ直せる問題なのか、土地をどう整えても変わらない問題なのかです。

使い道がない場合は、土地を整えても結果が変わりにくい

次の理由は、測量や解体では動きません。

  • 自治体の事業や計画に、その土地を使う予定がない
  • 道路、公園、防災などの制度の対象区域や条件に当てはまらない
  • 庁内に、引き取りを希望する部署がない
  • 自治体が売りに出しても、買い手が見つかりにくい
  • 公共の役に立つ度合いに比べて、維持管理や安全対策の負担が重い
  • 寄付者が用途を厳しく限定するため、自治体が必要な利用や売却をできない

下妻市の受け入れ基準は、行政で使う予定があることを前提に、維持管理費が大きな財政負担にならないこと、争いの原因にならないことなどを挙げています。新潟市も、市役所・区役所で使えず、市が売却する財産としても受けない場合は、申し出を受け付けないとしています。

この理由で断られたのなら、土地を整える前に、売却、隣地の所有者への打診、空き地バンク、相続土地国庫帰属制度へ切り替えたほうが現実的です。

権利・境界・土地の状態は、直せば再検討されることがある

自治体に使い道の見込みがあるなら、次の問題を解消すれば再検討される場合があります。ただし、着手する前に「直せば受け入れの対象になるのか」を必ず確かめてください。

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断られる主な理由自治体が判断できないこと費用をかける前に確認すること
登記名義が亡くなった人のまま誰と寄付契約を結べばよいか決まらない相続人と、実際に引き継ぐ人を整理し、司法書士に相続登記を相談する
共有者の一部が同意していない土地全体を確実に取得できない共有者全員の意向を確認する。持分だけの寄付を受けてもらえるとは限らない
抵当権・賃借権・差押えなどがある自由に使ったり売ったりできない登記事項証明書と契約書を確認し、権利を消せる条件を専門家に聞く
境界がわからない、隣地と争いがある引き取る範囲と管理する範囲を決められない地積測量図(面積と境界を示す図面)、境界確認書、境界標があるかを確認し、測量まで必要か聞く
建物・塀・埋設物・廃棄物がある撤去費や、事故・環境上のリスクを見積もれない何を撤去すればよいか、撤去後なら受け入れるのかを書面で聞く
崖・擁壁・倒木・排水・土壌汚染の心配がある点検や工事、近隣対応の負担が読めない必要な調査の範囲と合格の基準を聞き、専門調査を先走らない
一つの土地の一部だけを寄付したい寄付を受ける範囲を登記できない土地を分けて登記する「分筆」が必要か、費用は誰が負担するか、順序はどうなるかを確認する
改善できる可能性がある問題と、着手前に確認したいこと

名古屋市は、受け入れが難しい土地の例を公開しています。境界が決まっていない土地、抵当権などの権利がついた土地、維持管理が難しい土地、土壌汚染や不法投棄、崖崩れのおそれがある土地などです。市に費用を負担させることを条件とした寄付も挙げられています。

境界を確定しても、それだけで寄付できるとは限りません。

順序は、まず「自治体に使い道があるか」「売却を前提に受け入れる制度があるか」を確かめ、そのあとで権利や土地の状態を整えることです。

自治体への寄付に向く土地か、8項目で確認する

先に確かめるのは1と2です。自治体に使う目的がなく、売却を前提に受け入れる制度もなければ、境界や土地の状態を整えても結果はほとんど変わりません。「不明」の欄は、相談で聞くことのメモになります。

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確認項目「はい」の場合「いいえ・不明」の場合
1.道路・公園・緑地・防災など、具体的な用途とのつながりがあるその事業の担当課に相談する管財担当に、一般の土地寄付や、売却を前提とする制度がないか聞く
2.寄付したあと、自治体が売却したり、希望と違う使い方をしても構わない該当する制度があれば候補になり得る用途の制限を外せるか考え、外せない理由も伝える
3.登記上の所有者と、現在の所有者が一致している権利の確認を進めやすい相続や住所・氏名変更など、必要な登記を確認する
4.共有者全員が寄付に同意している土地全体の申し出を検討できる同意がないまま、正式な申請や支出へ進まない
5.抵当権・賃借権など、第三者の権利や使用がない利用や処分の障害が少ない権利を消せるか、権利者と専門家に確認する
6.境界の資料があり、隣地との争いがない土地の範囲を確認しやすい手元の資料を見せ、測量まで必要か聞く
7.建物・廃棄物・危険な崖など、大きな管理負担がない土地の状態に関する条件を満たす可能性が上がる自治体が求める改善内容と受け入れ条件を、先に確定させる
8.道路や通路があり、引き取ったあとも土地に入れる管理しやすい土地として説明できる用途ごとの基準や、売れる見込みを個別に確認する
自治体への土地寄付を相談する前の8項目チェック

私道や緑地には、一般の土地寄付とは別の基準があります。新座市の私道の寄付では、所有者全員の意思、公道につながっているか、境界、道路の幅、舗装、排水などが審査されます。横浜市の公園緑地の寄付では、おおむね500平方メートル以上、公道への接続または管理用の通路、境界、安全性などが目安です。すでにある公園緑地の隣なら、面積の目安に届かなくても受け入れられる可能性があるとされています。

土地を自治体へ寄付する手続きは、事前相談から始める

1.土地の使い道に合う窓口を探す

まず自治体のサイトで「土地 寄附」「不動産 寄附」「寄附採納(自治体が寄付を受け取ること)」と検索します。案内が見つからないときは、次を目安にしてください。

  • 道路・水路・道路後退部分:道路管理、土木、建築指導
  • 公園・緑地・樹林:公園、みどり、環境
  • 防災用の空地:都市計画、まちづくり、防災
  • 公共施設に隣接する土地:その施設の担当課
  • 使い道が決まっていない土地:管財、財産管理、資産経営

統一の窓口を指定している自治体なら、その案内が優先です。一般の窓口で断られても、道路後退用地(道路を広げるために後退させた部分)などの専用制度に当てはまることがあります。逆に、いま道路として使われている土地でも、市道として必ず受け入れられるわけではありません。

2.手元の資料をそろえ、取り寄せる書類は窓口に確認する

用意するのは、地番、位置図、現地写真です。次の資料は、手元にある分でかまいません。

  • 登記事項証明書:所有者、面積、抵当権などがわかる書類
  • 公図:土地のおおまかな位置と形を示す図面
  • 写真:土地全体、道路との接し方、隣地との境、建物や塀がわかるもの
  • 地積測量図や境界確認書があれば、その写し
  • 固定資産税の納税通知書・課税明細書
  • 購入や相続の経緯、共有者、抵当権、賃貸借がわかる資料
  • 草刈り、伐採、補修など、いま管理にかかっている費用の記録

新潟市は位置図、土地の形や面積を示す図面、登記事項証明書などを、名古屋市は登記簿謄本、公図、地積測量図、写真などを申込書類として案内しています。必要な書類は自治体ごとに違います。手数料を払って取り寄せる前に、相談の段階で本当に必要か確認しましょう。

登記識別情報通知は、事前相談のメールに添付しないでください。

登記識別情報通知は、以前の権利証に当たる重要な書類です。原本も、記載された符号も、メールで送るものではありません。自治体か、手続きを担当する司法書士から、安全な渡し方を聞いてください。

3.自治体が判断できる情報を、一枚にまとめる

「不要なので無料で差し上げます」だけでは、自治体は使い道も将来の負担も判断できません。次の項目を一枚にまとめると、話が進みやすくなります。

  • 土地:所在地・地番、登記上の地目、面積、いまの状態
  • 所有関係:一人で持っているか共有か、登記の名義が現在の所有者と一致しているか
  • 第三者の権利:抵当権、賃貸、通行などの契約があるか
  • 境界:境界標や測量図があるか、隣地と争いがないか
  • 管理:道路から入れるか、建物・塀・廃棄物・樹木・崖などがあるか
  • 想定する使い道:公園への隣接、道路との関係、防災上の利用など
  • 寄付後の条件:自治体が売却したり、希望と違う使い方をしても構わないか
  • 先に聞きたいこと:検討の対象になるか、必要な工事、費用の負担

わからない項目は、推測で埋めずに「不明」と書きます。そのほうが、自治体は追加で何を調べるべきか判断しやすくなります。

4.お金を払う前に、5つの質問をする

  1. 行政での利用、道路・公園などの専用制度、売却を前提とした受け入れ。このどれかの検討対象になりますか
  2. いま、受け入れを妨げている問題は何ですか
  3. 境界確定、分筆、権利の抹消、建物や塀の撤去など、満たせば再検討してもらえる条件はありますか
  4. その手続きはいつ行い、費用は誰が負担しますか
  5. 難しい場合、主な理由は利用計画、売れる見込み、権利・境界、土地の状態、維持管理のどれですか

測量・分筆・登記の費用を誰が払うかは、一律ではありません。一般の寄付では寄付者の負担でも、甘楽町の道路後退用地の制度のように、一定の場合は自治体が測量・分筆・所有権移転登記の費用を負担する例があります。使える専用制度がないか、先に確認しましょう。

5.現地調査と庁内の確認を経て、受け入れの可否が決まる

自治体は、関係する部署に使う予定があるかを確認し、現地の状態、権利、境界、管理の負担、売れる見込みなどを調べます。受け入れられる場合は、書類の提出、条件の整備、寄付契約、所有権移転登記へ進みます。

回答までの期間も自治体によって違います。名古屋市は申し込みからおおむね1か月、世田谷区は可否の回答まで1~2か月と案内しています。いずれも各自治体の例で、条件の整備や登記まで終わる期間ではありません。

手続きが終わったら、登記事項証明書で名義が変わったことを確認します。寄付契約書、受領通知、費用の領収書も一緒に保管してください。

土地の寄付を断られたら、理由を記録して次を決める

断られた直後に確かめたいのは、「何を直すか」より先に、直せば受け入れの対象になる理由なのかです。

再相談の余地があるケース

  • 自治体に具体的な利用計画があるか、引き取りを希望する部署がある
  • 相続登記、共有者の同意、抵当権の抹消、境界確認などを求められた
  • 道路・公園・防災など、別の専用制度を案内された
  • 塀や廃棄物の撤去など、条件と完了の基準を具体的に示された

指摘された項目ごとに、直した内容と、それを裏づける資料をそろえます。見積額が大きいときは、寄付以外の方法にかかる総額と比べてから決めてください。

別の手放し方へ移ったほうがよいケース

  • 自治体に利用計画がなく、庁内にも引き取りを希望する部署がない
  • 自治体が売りに出しても、買い手が見つかりにくい
  • 対象区域、最低面積、道路との接続など、土地の位置や形に関する基準を満たさない
  • 直しても、大きな維持費や安全対策が残る
  • 寄付後の用途や売却に関する制限を外せない

使い道のない土地を測量しても、使い道は生まれません。同じ申し出を繰り返すより、民間の買い手、隣地の所有者、地域のマッチング制度、国庫帰属制度の順に可能性を調べましょう。

自治体が土地を受け取ってくれないときの選択肢

自治体に断られても、土地の価値がゼロだと決まったわけではありません。自治体は公共の用途と公費の負担で判断しますが、民間の買い手や隣の所有者は、別の使い道を見ています。

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選択肢合いやすい状況最初に確認すること
自治体へ無償で貸す制度・登録制度公園、防災用地、防災協力農地など、地域の制度に合う所有権、利用期間、日常の管理、返すときに元へ戻す範囲、税の扱い
不動産会社を通じた売却住宅、事業、資材置場など、民間の需要を探せる査定額の種類、想定する買い手、売主が行う工事、概算の手取り
隣地の所有者への売却狭い土地や、単独では使いにくい土地境界、越境、価格、測量、契約の方法
空き家・空き地バンク移住、住宅、事業など、地域の需要と合う土地だけでも登録できるか、成約支援の範囲、不動産会社との併用
個人・法人・公益団体への譲渡相手に具体的な使い道があり、税と管理の負担も理解している相手の同意、税金、登記費用、寄付後の管理
相続土地国庫帰属制度相続などで取得し、土地の要件を満たす申請の資格、土地の状態、審査手数料、承認後の負担金
民間の有料引取サービス売却も公的制度も難しく、契約のリスクを十分に調べられる実際の契約相手、総費用、登記と支払いの順序、返金条件、引取後の管理
当面は持ち続けて管理する急いで手放すと、多額の費用や不利な契約につながる草刈り、安全点検、近隣への連絡、再査定の時期
自治体への寄付を断られた後に比べたい選択肢

寄付せず、自治体に使ってもらう方法もある

公共の用途に合っていても、自治体が所有権まで欲しいとは限りません。地域限定の制度ですが、大阪市のまちかど広場は、条件に合う民有地について、おおむね20年間、無償で貸す形(使用貸借)を想定しています。船橋市の防災協力農地は、災害時の避難や復旧に使う農地を、あらかじめ登録しておく制度です。

こうした制度も全国共通ではありません。所有権の扱い、日常の管理は誰がするのか、利用期間、返すときの状態、税の扱いを担当課に確認してください。

売却では「査定額」だけで判断しない

自治体が使わない土地でも、住宅、資材置場、駐車場、農林業、隣地との一体利用など、民間では使い道が見つかることがあります。不動産会社に次の点を聞き、そのまま売る案と、整えてから売る案を比べます。

  • 提示額は「売り出す価格」「成約を見込む価格」「不動産会社の買取価格」のどれか
  • どんな使い道と買い手を想定しているか
  • 売却を難しくしている条件は何か
  • 測量、造成、伐採、残置物の撤去を売主が行う必要があるか
  • そのまま売る場合と、整えてから売る場合で、概算の手取りはいくら違うか

狭い土地や道路に接しにくい土地は、隣の所有者に相談する

単独では使いにくい土地でも、隣地と一体なら庭、通路、駐車場などに使えることがあります。不動産会社を通すか、手紙で購入や賃借の意向を確認します。

ただし、無償なら受け取ってもらえるとは限りません。個人から土地を無償で受け取ると、原則として受け取った人に贈与税の問題が生じ、不動産取得税や登記費用も考える必要があります。詳しくは国税庁「財産をもらったとき」で確認できます。

では価格を下げればよいかというと、個人の間で時価より著しく低い価格にすると、時価との差額が贈与とみなされる場合があります。「著しく低い」の線引きに、一律の割合はありません。「1円」のような実態に合わない価格を決める前に、国税庁の案内を読み、税理士に相談してください。

空き地バンクは、寄付ではなく買い手を探す制度

国土交通省の全国版空き家・空き地バンクでは、参加している自治体が登録した物件を、まとめて探せます。所有者が全国版のサイトへ直接登録するのではなく、土地がある自治体の制度を通して登録します。

土地だけは扱わない自治体や、移住促進などに目的を限る自治体もあります。登録しても成約は保証されません。不動産会社の売却活動と併用できるかも確認しましょう。

公益団体や法人への寄付は、税の扱いが自治体と違う

自然保護、福祉、地域活動など、土地に合う目的があれば、公益団体や法人も候補になります。ただし、相手の同意と、寄付後も維持や処分ができる見通しが必要です。

税の扱いも変わります。個人が法人へ土地を寄付すると、原則として時価で売ったものとみなし、譲渡所得(売却などで得た利益)を計算します。時価が取得費などを上回れば、寄付した側に所得税が生じる可能性があります。一定の公益法人への寄付には非課税の承認制度がありますが、期限や条件があります。契約する前に国税庁の案内を読み、税務署か税理士に相談してください。

相続した土地なら、相続土地国庫帰属制度も検討する

相続土地国庫帰属制度は、自治体に断られた土地を国が代わりに引き取ってくれる制度ではありません。相続などで取得した土地について審査を受け、承認されたら負担金を納めて、国へ引き渡す制度です。

利用できる人

法務省の制度概要によると、主な対象は次の人です。

  • 相続、または相続人への遺贈(遺言による贈与)で、土地の所有権や共有持分を取得した人
  • 制度が始まる前に相続した土地の所有者
  • 共有地では、相続などで持分を取得した人を含む共有者全員

売買だけで手に入れた土地や、法人が単独で持つ土地は、原則として対象外です。共有地は、少なくとも一人が相続などで持分を取得していれば、別の理由で持分を得た共有者も含めた全員で申請できる場合があります。一人だけでは申請できません。

相続放棄とも違います。裁判所の案内にあるとおり、相続放棄は、土地だけでなく亡くなった人の権利と義務をすべて引き継がない手続きです。すでに相続した人が、いらない土地だけを国へ渡す制度とは意味が異なります。

申請できない、または承認されにくい土地

法務省の要件一覧は、申請そのものができない土地と、審査で承認されない土地を分けています。

申請の段階で問題になる主な土地

  • 建物が建っている
  • 抵当権や、他人が土地を使う権利(地上権・賃借権など)がついている
  • 通路、墓地、水路などとして、他人の利用が予定されている
  • 基準を超える特定有害物質による土壌汚染がある
  • 境界が明らかでない、または所有権の範囲に争いがある

審査で承認されない可能性がある主な土地

  • 一定の崖があり、管理に大きすぎる費用や手間がかかる
  • 管理や処分を妨げる工作物、車両、樹木などが地上にある
  • 除かなければ管理できない物が地下にある
  • 隣地の所有者などと裁判をしなければ、管理も処分もできない
  • そのほか、通常の管理・処分に大きすぎる費用や手間がかかる

建物を壊せば条件の一つは消えますが、ほかの条件と負担金は残ります。解体費を払う前に、法務局へ相談してください。

審査手数料と負担金

審査手数料は、土地1筆につき1万4,000円です。「1筆」は、登記上の一つの土地を指します。申請を取り下げても、却下や不承認になっても、返ってきません。

承認されたら、その土地の標準的な10年分の管理費をもとにした負担金を納めます。原則は1筆20万円ですが、一部の市街地の宅地、農用地区域などの田畑、森林は、面積に応じて20万円を超える場合があります。隣り合う同じ区分の土地は、申し出れば一つの土地としてまとめて計算できる場合があります。

負担金は、通知を受け取った日の翌日から30日以内に納めます。納めた時点で、所有権が国へ移ります。申請の前に、法務省の負担金の案内で金額と計算方法を確認してください。

申請の前に法務局へ相談する

相談先は、原則として土地がある都道府県の法務局・地方法務局の本局です。対面、電話、ウェブでの相談があり、いずれも予約が必要です。法務省の案内では、登記事項証明書、登記所が備える地図の写し、境界の資料、土地全体がわかる写真などを準備するよう勧めています。

相談での見解が、承認を保証するわけではありません。それでも先に相談すれば、返ってこない審査手数料を払ったり、不要な工事を発注したりする失敗を減らせます。

自治体へ土地を寄付するときの税金と費用

売買代金はありませんが、税金や手続きの費用まですべて0円になるわけではありません。

国や自治体への寄付なら、寄付者の譲渡所得は課税されない

個人が法人へ土地を無償で渡すと、原則として時価で売ったものとみなし、譲渡所得(売却などで得た利益)を計算します。ただし、国や地方公共団体へ財産を寄付した場合は、その寄付がなかったものとみなされ、寄付者の譲渡所得は課税されません。国税庁は、この非課税に特別な手続きは要らないと案内しています。詳しくは国税庁「国や地方公共団体又は公益を目的とする事業を行う法人に財産を寄附したとき」で確認できます。

これは、自治体が土地を受け入れたあとの話です。断られた段階では、そもそも土地の移転が起きていません。

寄附金控除の計算は、時価ではなく取得費が基準になる

自治体へ土地を寄付しても、時価の全額が所得から差し引かれるわけではありません。国税庁のQ&Aによると、「特定寄附金」の額になるのは、その土地の取得費と、寄付のために支出した金額の合計です。

寄附金控除額
=「その年の特定寄附金の合計額」と「総所得金額等(税法上の所得の合計)の40%」のうち低い金額-2,000円

これは所得から差し引く金額で、同じ額が戻ってくるわけではありません。また、寄付によって施設を自分だけが使えるなど、寄付者に特別な利益がある場合は、特定寄附金に当たらないことがあります。

寄附金控除は自動では適用されません。自治体が交付する受領証などを保管し、国税庁の案内に従って確定申告します。相続した土地で取得費がわからない場合や、ほかにも寄付がある場合は、契約書、相続の資料、測量・登記費用の資料をそろえて、税務署か税理士に相談してください。

相続や遺贈で取得した土地を、相続税の申告期限までに国や自治体などへ寄付した場合、一定の条件を満たせば相続税の非課税財産になることがあります。期限までに寄付そのものを終える必要があるため、相続税の申告が必要な人は、国税庁の案内を確認し、早めに税理士へ相談してください。

固定資産税は、年の途中で寄付しても月割りにならない

固定資産税・都市計画税は、原則として毎年1月1日に固定資産課税台帳へ所有者として登録されている人に、その年度分がまとめて課税されます。小平市の2026年度の案内でも、2月に売却して名義変更を終えた場合、その年度分は1月1日時点の売主に課税されると説明しています。

寄付でも、申し出た日が税の区切りになるわけではありません。納付書が届いたら自己判断で支払いを止めず、寄付を受け入れた部署と固定資産税の担当に、名義変更日と課税の扱いを確認してください。

測量・分筆・撤去の費用は、ほかの手放し方と比べる

寄付で生じる可能性がある主な費用は、次のとおりです。

  • 登記事項証明書、公図、印鑑証明書などの取得費
  • 境界確認、測量、分筆登記
  • 相続登記、住所・氏名の変更登記
  • 抵当権などを消す手続き
  • 建物の解体と、建物を登記から消す手続き
  • 塀、樹木、残置物、地下の埋設物の撤去
  • 土壌、地盤、擁壁などの調査・対策
  • 司法書士、土地家屋調査士、税理士、弁護士などへの報酬

正式に受け入れが決まる前に大きな費用を払うなら、次の3案を並べて比べます。

  1. いまの状態のまま売却・譲渡する
  2. 必要な条件だけ整えて自治体へ寄付する
  3. 相続土地国庫帰属制度など、別の制度に必要な費用を払う

比べるのは金額だけではありません。費用をかけても受け入れられない可能性まで含めて判断します。

農地・森林は、一般の宅地と手続きが異なる

農地を農地のまま売買・贈与・貸借するには、原則として農業委員会の許可が必要です。許可のない行為は無効になります。宅地などに変えて使う場合は、別の手続きも必要です。農林水産省の案内と、土地がある市町村の農業委員会で確認してください。

森林では、地域森林計画の対象となる土地を取得した人に、原則として取得から90日以内の届け出が必要です。対象かどうかは、林野庁の案内と、市町村の林務担当で確認できます。

土地の寄付を急ぐときに、してはいけないこと

受け入れの見込みを確かめずに、更地にしない

壊した建物は元に戻せません。住宅用地に対する固定資産税の特例や、建物付きで売る道にも影響します。自治体への寄付、民間への売却、国庫帰属制度の見通しを比べてから決めます。

口頭の「検討できます」を、受け入れ決定と思わない

事前相談は正式な承認ではありません。庁内の確認、現地調査、予算、条件の整備を経て、受け入れ不可になることもあります。費用を払う前に、何を満たせば次の審査へ進むのかを記録に残しましょう。

申し出ている間も、税金の支払いと土地の管理を止めない

事前相談や申し出だけでは、所有権は移りません。とはいえ、所有権が移る日は寄付契約の内容で決まるため、「登記が終わるまでは必ず自分の土地」とも限りません。自治体から管理の引き継ぎを確認できるまでは管理を続け、契約上の移転日と登記の完了を、それぞれ書面で確かめます。

税金や費用を説明せずに、個人・法人へ名義を移さない

個人への贈与では、受け取る人の贈与税、不動産取得税、登記費用が問題になります。法人への寄付では、渡した側に「時価で売ったものとみなす税金」が生じる場合があります。受け取る側が将来の管理と税の負担まで理解したうえで、書面による契約と登記を行ってください。

有料引取サービスで、登記より先に引取料を払わない

有料の引取サービスは、法律で決まった公的な制度ではありません。売買、贈与、業務委託など、契約の中身によって、適用されるルールが変わります。

国土交通省の注意資料も、契約前の確認を求めています。登記と支払いの順序、総額、通常の売却を含むほかの方法、引き取ったあとの管理方針まで確かめましょう。

  • 広告を出している会社と、実際の契約相手は同じか
  • 引取料のほかに、測量・登記・管理などの費用がかからないか
  • 所有権移転登記と支払いは、どちらが先か
  • 引き取ったあと、誰が管理し、再販売する予定があるか
  • 契約できなかった場合の返金条件は何か

契約の前に、その事業者と利害関係のない司法書士・弁護士・税理士へ契約書を見てもらうと安心です。

まとめ

土地を自治体へ寄付できるのは、自治体が受け入れたときだけです。見られているのは値段ではなく、公共で使う見込みがあるか、権利と境界がはっきりしているか、引き取ったあとの管理負担が重すぎないかです。

まず、地番、位置図、現地写真と手元の資料をそろえ、使い道に合う担当課へ相談します。受け入れの対象になるのか、条件は何かがわかるまで、測量、分筆、解体、伐採は発注しません。

断られたら、理由を「条件を整えれば再相談できるもの」と「使い道がなく、整えても変わらないもの」に分けます。後者なら、売却、隣地の所有者、空き地バンク、相続土地国庫帰属制度へ切り替えましょう。この順番で進めれば、見込みのない工事に先にお金を使うことは避けられます。

参考資料

情報確認日:2026年7月24日

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