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住所変更登記の義務化とは?2年以内の期限と5万円の過料が科される条件

引っ越しの手続きは、転出届と転入届を出せば一通り終わります。ところが法務局の登記簿に載っている住所は、それだけでは変わりません。政府広報オンラインによると、令和6年の国土交通省調査で、所有者不明土地の発生原因の29%はこの放置でした。

2026年4月1日からは、住所が変わった日から2年以内に登記を申請する義務があります。怠れば5万円以下の過料。ただし無料の申出で法務局に任せる道もあり、売却の予定があるかどうかで選ぶべき手段が変わります

この記事を読むとわかること
  • 2年以内という申請期限
  • 5万円の過料が科される条件
  • 無料のスマート変更登記
  • 売却前に登記が必要な理由
  • 土地と建物の登録免許税

※本記事の情報は2026年9月時点の法令および法務省の公表内容にもとづいています。個別の事案については法務局または司法書士にご相談ください。

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※2025年9月19日-23日 「サイト評価に関する調査」より

目次

住所変更登記の義務化で決まった申請ルール

不動産の所有者は、住所や氏名が変わった日から2年以内に、登記簿の記載を変更する申請をしなければなりません。

引っ越しのとき、多くの人は市区町村の窓口で転出届と転入届を出します。免許証と金融機関の住所も変えれば、必要な手続きは終わったように見えます。

ただ、この一覧に法務局は入っていません。市区町村に転入届を出しても、法務局が管理する登記簿は書き換わらないからです。変えるには、自分で申請する必要があります。

この状態が積み重なった結果、義務化に至りました。根拠は不動産登記法第76条の5です。

不動産登記法 第76条の5

所有権の登記名義人の氏名若しくは名称又は住所について変更があったときは、当該所有権の登記名義人は、その変更があった日から二年以内に、氏名若しくは名称又は住所についての変更の登記を申請しなければならない。

対象になるのは、引っ越しや結婚で住所・氏名が変わった不動産の持ち主です。これまでは任意でした。2026年4月1日の施行で、期限つきの法律上の義務に変わっています。

背景にあるのは、所有者不明土地の増加。法務省は、相続登記や住所等変更登記がされないことで生まれる土地を2つ挙げています。「不動産登記簿により所有者が直ちに判明しない土地」と、「所有者が判明しても、その所在が不明で連絡がつかない土地」です。

登記簿の住所が10年前のままなら、行政も隣地の所有者も、あなたに連絡を取る手段がありません。では、この2年をいつから数えるのでしょうか。

変更の日から2年以内という申請期限

起算日は「変更があった日」です。転居なら、実際に住所が変わった日から数え始めます。

比較になるのが相続登記です。こちらの期限は「自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から三年以内」。本人が知った時点から数え始めます。

住所変更登記の条文に、この「知った日」という表現はありません。知っていたかどうかに関係なく、住所が変わった事実そのものから2年が進みます。

転入届を出した日が、そのまま期限のスタートになっているわけです。

義務を負うのは所有権の登記名義人

義務を負うのは、その家に住んでいる人ではありません。

条文が対象としているのは「所有権の登記名義人」。登記簿の甲区に所有者として記録されている人を指します。住んでいるかどうかは、条件に入っていません。

この定義から外れる人は、義務を負いません。賃貸物件に住んでいる入居者は対象外です。抵当権者である金融機関にも、この義務は及びません。関係するのは、土地や建物を自分の名義で持っている人だけということになります。

見落としやすいのが共有名義です。夫婦や親子で持っている不動産では、共有者それぞれが所有権の登記名義人にあたります。単身赴任で夫だけ住民票を移したケースでは、夫の住所だけが登記簿とずれます。

名義が共有になっている不動産をお持ちなら、誰の住所が変わったのかを確認しておくと安心です。

法人が不動産を所有している場合も同じです。本店を移転したり社名を変更したりしたときは、不動産登記簿上の住所・名称を変更する必要があります。会社の本店移転登記(商業登記)とは別の手続きです。

2026年4月より前の引っ越しも対象

施行日が2026年4月1日なら、それ以前の引っ越しは対象外に思えます。

法務省の説明は逆です。「施行日より前に住所等を変更した場合であっても、変更登記をしていない場合には義務化の対象となり」と明記しています。

仕組みは、民法等の一部を改正する法律(令和3年法律第24号)附則第5条第7項にあります。施行日前に登記名義人になった人については、第76条の5の「あった日」を「あった日又は第三号施行日のいずれか遅い日」と読み替える規定です。読み替えの結果、施行日前の変更はすべて2026年4月1日が起算日になります。

5年前の引っ越しでも、15年前の引っ越しでも、登記簿が旧住所のままなら扱いは同じ。「昔のことだから時効だろう」という理解は成り立ちません。

猶予期限は2028年3月31日

施行日前に住所が変わっていた分の期限は、令和10年(2028年)3月31日です。2026年4月1日を起算日とした2年後にあたります。

法務省の特設ページも「義務化前に住所や氏名・名称に変更があった場合は、令和10年3月末までに登記する必要があります」としています。引っ越しが何回あっても、締切はこの1日。

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残された時間は、この記事を読んでいる時点でおよそ1年半。手続き自体は難しいものではありませんが、書類を集めて法務局に出すまでには時間がかかります。では、この期限を過ぎたら何が起きるのでしょうか。

住所変更登記をしない場合の5万円の過料

過料が科されるかどうかを決めるのは、期限を過ぎたかどうかではなく、法務局からの催告に応じたかどうかです。

条文だけを読むと、期限切れが即座に制裁につながるように見えます。不動産登記法第164条第2項はこう定めています。

不動産登記法 第164条第2項

第七十六条の五の規定による申請をすべき義務がある者が正当な理由がないのにその申請を怠つたときは、五万円以下の過料に処する。

過料は行政上の制裁金で、刑罰ではありません。前科がつくものではないものの、金銭的な負担は生じます。

ところが、この条文を運用する法務省自身が、期限切れと過料を直結させていません。「登記官が義務違反の事実を把握しても、直ちに裁判所への通知(過料通知)を行うこととはしていません」と公表しています。期限を1日過ぎた瞬間に納付書が届く制度ではない、ということです。

では、どこで分かれるのでしょうか。

過料が科されるまでの3つの段階

裁判所へ通知される前に、法務局から催告書が届きます。法務省が示している流れは次の3段階です。

  1. 登記官が義務違反を把握した場合、義務違反者に登記をするよう催告する(催告書を送付する)
  2. 催告書に記載された期限内に登記や申出がされない場合、登記官は裁判所に対してその義務違反を通知する
  3. 通知を受けた裁判所が要件に該当するかを判断し、過料を科する旨の裁判を行う

この催告書を受け取った時点で登記を申請するか、検索用情報の申出をすれば、段階2には進みません。

段階2には例外もあります。催告を受けた人から説明を受けて、変更登記をしないことについて登記官が「正当な理由」があると認めた場合、法務省は通知を行わないとしています。

登記官が催告するきっかけ

催告が先に来るのなら、次に気になるのは登記官がどうやって義務違反を見つけるのかという点でしょう。

法務省は「登記官が登記申請の審査の過程等で把握した情報により行う」としたうえで、具体例を2つ挙げています。

  • 所有権の登記名義人が表示に関する登記の申請をした場合において、申請情報の内容である所有権の登記名義人の住所等が登記記録と合致していなかったとき
  • 住基ネットに対する照会により住所等に変更があったと認められた所有権の登記名義人が、職権による住所等変更登記をすることについての意思確認のための通知を受領したが、当該登記を拒否し、又は期限までに回答をしなかったとき

前者は、建物を増築した、土地を分筆したといった場面です。表示に関する登記を出したときに、住所のずれが見つかります。後者が指すのは、検索用情報の申出をしたのに法務局からの確認に応じなかったケース。

この2つの取扱いは、省令と通達で定められています。不動産登記規則の一部を改正する省令(令和7年法務省令第53号)と、令和7年10月30日付け法務省民二第915号民事局長通達です。運用の基準がここまで具体的に公表されている以上、「見つからないだろう」という前提で放置するのは現実的ではありません。

正当な理由が認められる場面

催告書が届いても、事情によっては登記をしなくてよい場合があります。法務省は、一般に「正当な理由」があると認めることとしている事情を5つ公表しました。

  • 検索用情報の申出又は会社法人等番号の登記がされているが、登記官の職権による住所等変更登記の手続がされていない場合
  • 行政区画の変更等により所有権の登記名義人の住所に変更があった場合
  • 住所等変更登記の義務を負う者自身に重病等の事情がある場合
  • 住所等変更登記の義務を負う者がDV被害者等であり、その生命・身体に危害が及ぶおそれがある状態にあって避難を余儀なくされている場合
  • 住所等変更登記の義務を負う者が経済的に困窮しているために登記に要する費用を負担する能力がない場合

3から5は、やむを得ない個人的事情という共通点があります。2の行政区画の変更は、市町村合併や住居表示の実施で表記が変わったケース。自分で引っ越したわけではないため、義務違反には問われません。

性質が違うのは1番目です。ここだけは、自分から手を打てる項目になっています。無料の申出さえ済ませておけば、法務局側の職権登記がまだ終わっていなくても正当な理由があると扱われる、という意味だからです。

ただし、これらは法律で定められた免除要件ではありません。法務省が運用上の基準として示しているものです。「これらに該当しない場合においても、個別の事案における具体的な事項に応じて『正当な理由』を判断することとしています」とも付け加えています。5つに当てはまらないからただちに認められない、というわけでもありません。

相続登記の過料10万円との違い

同じ不動産登記法の義務でも、相続登記の過料は上限10万円です。第164条第1項が定めており、住所変更登記の倍の額になります。

期限は逆になっています。相続登記は取得を知った日から3年以内、住所変更登記は変更があった日から2年以内。相続した不動産を売る前の相続登記については別の記事で詳しく整理しています。

2つの義務を混同すると、期限の計算を誤ってしまうでしょう。相続で取得した不動産に住んでいて、その後に引っ越したという方は、両方の義務を負っている可能性があります。

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スマート変更登記で申請を省くことができる?

検索用情報の申出を1回しておけば、その後の住所変更は法務局が職権で登記します。手数料はかかりません。

根拠は不動産登記法第76条の6です。登記官が職権で氏名・住所の変更登記をできるとしたうえで、ただし書きで「当該所有権の登記名義人が自然人であるときは、その申出があるときに限る」と定めています。個人の場合は本人の申出が前提になる、ということです。

法務省がこのサービスに付けた名前が「スマート変更登記」。特設ページでは「かんたん・無料の手続をしていただければ、その後は法務局で住所や氏名・名称の変更登記をします」と案内しています。

申出さえすれば登記の問題は片づく、と読めます。義務との関係ではそのとおり。ただ、登記簿の記載がいつ最新になるかは別の話です。

検索用情報の申出でできること

1回の申出が効くのは、今回の引っ越しだけではありません。

申出を済ませた人は、住所が変わるたびに自分で登記を申請する必要がなくなりました。法務省の表現では「住所等の変更があるたびにご自身で登記申請をしなくても、義務違反に問われることがなくなります」となります。

申出をしていれば、職権登記が終わっていなくても正当な理由があると扱われます。将来の引っ越しについても同じ。

費用面の差も小さくありません。自分で申請すれば登録免許税がかかりますが、スマート変更登記の利用自体は無料。法人向けの説明でも、職権による変更登記について「登録免許税等の費用はかからない」と明記されています。

個人が申出をするときの入力内容

登記に関わる手続きと聞けば、マイナンバーカードとカードリーダーが要りそうなものです。

個人の申出は、法務局の「かんたん登記・供託申請」のページから行えます。法務省の案内はこうです。

法務省による申出方法の案内

「検索用情報の申出」の手続を選択いただき、画面上の案内に従い、所有者の生年月日、メールアドレス、不動産の地番等の情報を入力いただくことなどにより、Webブラウザ上で申出ができます。なお、電子証明書は不要です。

電子証明書は不要。この一文が、手続きの負担を大きく減らしています。ブラウザから生年月日とメールアドレス、対象の不動産の地番などを入力すれば完了します。

書面での申出も可能。法務省のページには申出書の記載例と様式(WordとPDF)が用意されていて、不動産を管轄する法務局に提出する形になります。管轄が異なる複数の不動産を持っている場合は、そのうちいずれかの不動産を管轄する法務局にまとめて申し出られます。

実家の土地と自宅のマンションで管轄が違っても、窓口は1か所で済むということです。

これから不動産を買う方や相続で取得する方は、さらに簡単。登記の申請書に、新たに所有者となる方の氏名・住所に加えて、氏名の振り仮名、生年月日、メールアドレス等を併せて記載して申請すれば、それが申出になります。

申出から登記が終わるまでの流れ

申出が終われば、あとは待つだけ。ただ、その待ち時間は年単位になる可能性があります。法務局が進める手順は次の3つです。

  1. 法務局が少なくとも2年に1回、住基ネットに問い合わせて住所等の変更の有無を確認する
  2. 住所等に変更があった方に対し、変更登記をしてよいかを確認するメールを送信または書面を送付する
  3. 変更登記をしてよい旨の回答があった方について、順次、変更登記を行う

段階1の頻度に注目してください。問い合わせは「少なくとも2年に1回」です。引っ越した翌週に登記簿が書き換わるわけではありません。確認の連絡を受けて回答し、そこから順次登記される流れになります。

さらに、この手続きを法務局がいつ始めるかは、2026年9月時点でまだ公表されていません。法務省のページには「法務局が上記(1)~(3)の手続を開始する時期については、改めてこのページでご案内します」という記載が残ったままです。ページの更新日は令和8年4月30日。

法人向けの説明では、所要時間についても触れられています。「スマート変更登記は、通常の登記申請と同様、住所等の変更登記が完了するまで一定の期間を要します」とのこと。

申出の効果は2つに分かれます。義務違反に問われなくなること。そして、いずれ登記簿が書き換わること。前者は申出をした時点で得られますが、後者には時間差があります。

スマート変更登記を使えない人

そもそも制度の対象から外れる人もいました。海外に居住している個人がその一つ。法務省は「法務局で住所等の変更を確認することができないため……変更登記の申請をしていただく必要があります」と案内しています。住基ネットで住所を確認できないことが理由です。

法人の場合、会社法人等番号を有していない法人が同じ理由で対象外になります。こちらも自分で変更登記を申請することになります。

なお、不動産を所有する法人がスマート変更登記を使うために必要なのが「会社法人等番号の登記」。すでに商業・法人登記上の住所等に変更があるケースを見てみます。令和8年5月15日より前に会社法人等番号の登記がされていれば、同日以降に順次スマート変更登記が行われます。

個人と違って申出は不要で、会社法人等番号の登記があれば職権で処理される仕組みです。

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売却前に住所変更登記が必要になる理由

登記簿の住所が現住所と違うままでは、売買による所有権移転登記の申請が却下されます。

登記簿の住所が古くても、買主と交わす売買契約には関係がないように思えます。契約は当事者の合意で成立するからです。

問題が起きるのは、その後の登記手続きです。不動産登記法第25条は、登記官が申請を却下しなければならない場合を列挙しています。その7号がこちらです。

不動産登記法 第25条第7号

申請情報の内容である登記義務者(第六十五条、第七十六条の五、第七十七条……の場合にあっては、登記名義人)の氏名若しくは名称又は住所が登記記録と合致しないとき。

売買の場面で登記義務者にあたるのは売主です。売主の住所が登記記録と一致していなければ、所有権移転登記の申請は通りません。住所変更登記は、売却に必要な「前提登記」という位置づけになります。

登記簿の住所が違うと移転登記が却下される

却下といっても、売買契約そのものが無効になるわけではありません。同条にはただし書きがあります。「当該申請の不備が補正することができるものである場合において、登記官が定めた相当の期間内に、申請人がこれを補正したときは、この限りでない」。住所変更登記を先に済ませれば補正できます。

とはいえ、決済当日にこれが判明したときの影響は小さくありません。不動産の売買では、代金の支払いと所有権移転登記の申請を同じ日に行うのが一般的です。その場で申請できないとなれば、買主側の住宅ローン実行にも関わってきます。

日本司法書士会連合会も、報酬に関する説明の中でこの実務に触れています。「売買を原因とする所有権移転登記の前提として、売主側に住所や氏名の変更登記……等が必要となることがあります」との記載です。売却の現場で日常的に発生している手続きだと分かります。

決済日から逆算した手続きの時期

無料で義務を果たせるスマート変更登記が、売却の場面では使いにくくなります。

理由は時間差です。住基ネットへの問い合わせは少なくとも2年に1回。個人向けの手続開始時期も公表されていません。決済日に間に合うかどうかを自分でコントロールできないため、待つという選択が取りにくくなります。

自分で申請する場合の日数はどうでしょうか。全国一律の標準処理期間というものはなく、法務局が庁ごとに「登記完了予定日」を公表しています。東京法務局本局の例では、令和8年8月24日(月)午前に申請した不動産(権利)登記の完了予定日は9月14日(月)午前でした。およそ3週間です。

同じ日に申請しても庁によって差が出ます。

スクロールできます
申請先申請日完了予定日
東京法務局 本局8月24日(月)AM9月14日(月)AM
八王子支局8月24日(月)AM9月11日(金)AM
府中支局8月24日(月)AM9月15日(火)AM

※1 東京法務局「登記完了予定日」令和8年8月24日〜9月1日申請分
※ 不動産(権利)登記の完了予定日です。申請の時期や庁によって変わるため、申請先の法務局のページで最新の予定日をご確認ください。

東京法務局は、完了予定日が翌日以降にずれる場合も示しています。「登記の申請に不備等がある場合」や、「不動産登記で登記済証等の添付がなく本人確認のための事前通知を要する場合」などです。

3週間という数字が読めるなら、逆算はできます。媒介契約を結んでから決済までは数か月かかることが多く、その間に住所変更登記を済ませておけば決済日に影響しません。売り出し価格の見直しをどの時期に行うかを検討する頃には、登記の準備も並行して進めておきたいところです。

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引っ越しを繰り返した場合の必要書類

必要な書類は住民票の写しが1通。多くの場合、それで足ります。

根拠は不動産登記令の別表23の項です。同項が求めるのは「当該登記名義人の……住所について変更……があったことを証する市町村長、登記官その他の公務員が職務上作成した情報」。住民票の写しがこれにあたります。

足りなくなるのは、購入後に何度も転居しているケースです。登記簿の住所が3回前の住所なら、現在の住民票だけでは登記簿の住所までさかのぼれません。

そこで使うのが住民票の除票や、戸籍の附票の写しです。戸籍の附票には、その戸籍にいる間の住所の移り変わりが記録されています。

保存期間も延びました。住民基本台帳法施行令第34条第1項の条文はこうです。「市町村長は、除票又は戸籍の附票の除票を……消除し、又は改製した日から百五十年間保存するものとする」。以前は5年でしたので、大幅な延長になります。

150年と聞けば、どれだけ古い引っ越しでも書類は残っていそうに思えます。ところが、延長される前に捨てられた分は戻りません。名古屋市は、保存期間が5年から150年に延長されたと説明したうえで注記を添えています。「名古屋市においては、平成26年3月31日以前に消除された戸籍の附票は、既に保存期間(5年間)を経過し、廃棄されているため交付できません」。

廃棄済みとなる基準日は自治体によって異なります。古い引っ越しで書類がそろわないときは、法務局や司法書士に相談したうえで対応を決めることになります。売却の直前に発覚すると調整の時間が取れないため、早めに登記事項証明書を取って現在の記載を確認しておくと安全です。

売却前に確認しておきたい項目を挙げておきます。

売却前に確認する5項目
  1. 登記簿に記載されている住所が現住所かどうか
  2. 購入してから何回引っ越したか
  3. 現在の住民票の写しで、登記簿の住所までさかのぼれるか
  4. さかのぼれない場合、戸籍の附票の写しが取得できるか
  5. 決済日までに何日残っているか

住宅ローンを完済した物件を売る場合は、抵当権抹消登記も必要になります。日本司法書士会連合会の報酬アンケートでは、土地1筆と建物1棟の抵当権抹消登記の代理業務について、有効回答数1,090・平均17,470円という結果でした。同じ機会にまとめて依頼すれば、書類のやり取りは1回で済みます。

では、住所変更登記そのものにはいくらかかるのでしょうか。

住所変更登記にかかる費用の内訳

自分で申請する場合、土地と建物の2つなら登録免許税は合計2,000円です。

不動産にかかる税金は、価格に応じて増えるものが少なくありません。所有権移転登記の登録免許税も、固定資産評価額に税率を掛けて計算します。

住所変更登記は違います。金額を決めているのは登録免許税法の別表第一。住所変更登記は第一号(十四)の「付記登記、抹消された登記の回復の登記又は登記事項の更正若しくは変更の登記」にあたります。課税標準は「不動産の個数」、税率は「一個につき千円」。

3,000万円のマンションでも5,000万円の戸建てでも、個数が同じなら税額は同じです。

登録免許税は不動産1個につき1,000円

数えるのは申請の件数ではなく、登記簿上の不動産の個数です。1件につき1,000円と読むと、金額を間違えます。

一戸建てなら土地1筆と建物1棟で2個、合計2,000円。土地が2筆に分かれていれば3個で3,000円になります。

分譲マンションの場合は、専有部分の建物と敷地権の対象になっている土地を数えます。敷地が複数の筆にまたがっていると個数が増えるため、登記事項証明書で確認しておくと計算を間違えません。

住民票の写しなど書類の取得費

添付書類の手数料は、全国一律ではありません。戸籍と住民票で扱いが分かれます。

戸籍謄本は地方公共団体の手数料の標準に関する政令で全国共通の額が定められています。一方、住民票の写しと戸籍の附票の写しはこの標準事務に含まれていません。各市区町村が条例で額を決める仕組みです。

政令で全国共通なのは次の2つです。

  • 戸籍の謄本・抄本、戸籍証明書:1通につき450円
  • 除かれた戸籍の謄本・抄本、除籍証明書:1通につき750円

住民票の写しは自治体ごとの設定になります。たとえば大阪市の証明書交付手数料一覧では、住民票の写しが窓口交付・郵送請求で1通300円、戸籍の附票の写しも1通300円。除かれた戸籍の附票の写しも同じく300円と案内されています。

同じ自治体でも、取得方法によって差が出ます。大阪市の場合、住民票の写しと戸籍の附票の写しはコンビニ交付なら1通200円。マイナンバーカードかスマホ用電子証明書を持っていて、お住まいの市区町村がコンビニ交付サービスを提供していることが条件になります。

登記簿の現状を確認するための登記事項証明書も必要です。手数料は登記手数料令で決まっていて、書面請求が1通600円。オンラインで請求して窓口で受け取る場合は490円、郵送してもらう場合は520円です。

項目金額
登録免許税(土地1筆+建物1棟)2,000円
登記事項証明書(書面請求)1通600円
登記事項証明書(オンライン請求・窓口交付)1通490円
登記事項証明書(オンライン請求・送付)1通520円
住民票の写し市区町村の条例による(大阪市は300円)
戸籍謄本(必要な場合)1通450円
除籍謄本(必要な場合)1通750円

※1 登録免許税法(2026年7月23日施行)・登記手数料令(2026年4月1日施行)・地方公共団体の手数料の標準に関する政令(2025年4月1日施行)
※2 大阪市「証明書交付手数料一覧」2026年1月30日更新
※ 住民票の写しの手数料は市区町村ごとに条例で定められています。お住まいの自治体のページでご確認ください。

必要な通数は事案によって変わるため、総額を一律には出せません。自分で申請するなら数千円の範囲に収まるケースが多い、という見当はつきます。

司法書士に依頼したときの報酬

司法書士に頼む場合の金額はどうでしょうか。ここには決まった基準がありません。日本司法書士会連合会も「最終的には司法書士と依頼者との契約によることになっており、報酬に関する基準はありません」と説明しています。

代わりに参考になるのが、同会が公表している報酬に関するアンケートです。設問は「土地1筆及び建物1棟に登記されている所有者の住所変更登記手続の代理業務を受任し、住民票の写し1通の交付請求及び登記申請の代理をした場合」。有効回答数1,094・平均13,913円という結果でした(令和6年3月実施、消費税込み)。

アンケートには「一戸建ての場合でも、土地が数筆あるなど、事案によって報酬は異なります」という注記も付いています。あくまで特定の条件を想定した平均額です。

金額を事前に確認する権利もあります。司法書士法施行規則第22条は「司法書士は……あらかじめ、依頼をしようとする者に対し、報酬額の算定の方法その他の報酬の基準を示さなければならない」と定めています。見積もりを求めるのは当然の手順です。

売買の決済に合わせて依頼する場合は、所有権移転登記や抵当権抹消登記の報酬と合算されます。日本司法書士会連合会も「それぞれの基本的な報酬を合算することになるほか、取引における立会いの報酬、日当、交通費等が発生することもあります」としています。総額を知りたいときは、必要な登記をすべて伝えたうえで見積もりを取ってください。

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住所変更登記を自分で申請する手順

数千円で済むなら自分でやりたい。そう考える方も少なくないはずです。

まずは登記簿にどの住所が記載されているかを確認しましょう。

必要書類を先に用意したくなりますが、順番が逆になります。登記簿の住所が分からなければ、住民票の写し1通で足りるのか、戸籍の附票まで必要なのかも決まらないからです。

売却の予定がなく、書類がそろう状況なら、自分で申請しても大きな負担にはなりません。特別な資格も不要です。

登記事項証明書で現在の記載を確認

証明書を取るために、物件を管轄する法務局まで出向く必要はありません。登記事項証明書は全国どこの法務局でも請求でき、窓口・郵送・オンラインのいずれにも対応しています。

見るのは甲区の所有者欄。ここに記載された住所と、いまの住民票の住所を突き合わせます。市町村合併や住居表示の実施で表記だけが変わっているケースもあるため、番地まで確認してください。

そもそも自分がどの不動産を持っているか分からない、という方もいます。

所有不動産記録証明制度
  • 始まった時期
    令和8年2月2日に施行されました。国土交通省の令和8年版土地白書も、相続登記の義務化・所有不動産記録証明制度・住所等変更登記の義務化を並べて記載しています。
  • 手数料
    書面請求で1通1,600円、オンライン請求なら1,470円(送付を求める場合は1,500円)です。
  • 使いどころ
    相続で取得した遠方の土地がある方は、この証明書で一覧を確認できます。

住民票の写しと申請書の準備

添付するのは、住所が変わったことを証明する公的な書類です。不動産登記令の別表23の項では「市町村長、登記官その他の公務員が職務上作成した情報」と定められています。1回の引っ越しであれば、前住所が記載された住民票の写しで足ります。

申請情報として記載するのは、変更後の住所と氏名です。別表23の項は、法人の場合の法人識別事項や、変更後の住所が国内にない場合の国内連絡先事項についても定めました。個人が国内で引っ越したケースなら、変更後の住所を書けば足りるということです。

申請書の様式と記載例は、法務局のホームページで公開されています。自己流で作ると、記載漏れが補正の対象になりかねません。公開されている様式に沿って作成してください。

登録免許税の納付方法

税額は、不動産の個数に1,000円を掛けて計算します。土地1筆と建物1棟なら2,000円。

納付は収入印紙で行うのが一般的です。日本司法書士会連合会のアンケートにも「登録免許税(登記を申請する際に納める税金。通常は収入印紙で納めます。)」という説明があります。金額分の収入印紙を購入し、申請書に貼り付けて提出する形。

オンライン申請と窓口・郵送の違い

検索用情報の申出は電子証明書なしで完結しました。登記の申請そのものは、要件が異なります。

方法を定めているのは不動産登記法第18条です。電子情報処理組織を使用する方法か、申請情報を記載した書面を提出する方法のいずれかになります。

費用面ではオンラインに分があります。登記事項証明書の手数料は、書面請求600円に対してオンライン請求490円。1通あたり110円の差になります。

手続きに不安があるなら、法務局の手続案内を予約して相談するという手もあるでしょう。法務省もQ&Aの中で「お近くの法務局(予約制の手続案内を実施中)や、登記の専門家である司法書士・司法書士会等にご相談ください」と案内しています。

完了までの日数は、法務局ごとに公表されている登記完了予定日で確認できました。申請先の法務局のページを見れば、いつ手続きが終わるかの見通しが立つはずです。

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相続登記の義務化との使い分け

相続で取得した不動産をお持ちの方には、もう一つ確認しておきたい制度があります。

住所等変更登記と相続登記は、同じ改正から生まれた2つの義務ですが、起算点も期限も過料の額も別々に定められています。

どちらも所有者不明土地を減らすための制度です。名前も似ているため、まとめて理解してしまいがちなところ。並べてみると、共通しているのは目的だけだと分かります。

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比較軸住所等変更登記相続登記
根拠条文不動産登記法76条の5不動産登記法76条の2
申請期限変更があった日から2年以内取得を知った日から3年以内
過料の上限5万円以下10万円以下
施行日令和8年4月1日令和6年4月1日
施行前の変更・相続令和10年3月31日まで別途定めあり

※ 不動産登記法(2026年6月24日施行)および民法等の一部を改正する法律(令和3年法律第24号)にもとづきます。

施行日については、国土交通省の令和8年版土地白書にも記載がありました。相続登記の義務化が令和6年4月1日、住所等変更登記の義務化が令和8年4月1日です。

期限と過料の金額の違い

どちらが厳しいかは項目によって入れ替わります。期限は住所変更登記のほうが1年短く、過料の上限は相続登記のほうが5万円高いためです。

数え始める日の考え方も逆です。相続登記は「自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日」から数えます。本人が知ったかどうかが基準になる書き方です。住所変更登記は「変更があった日」から数えるため、認識の有無は関係しません。

制度を補助する仕組みにも違いがあります。相続登記には相続人申告登記(不動産登記法76条の3)があり、期限内に申し出れば申請義務を履行したものとみなされます。住所変更登記の側にあるのが検索用情報の申出。名前が似ていますが別の制度で、対象になる義務も異なります。

どちらか一方をしたからといって、もう一方の義務が消えるわけではありません。

相続と住所変更が両方未了のときの順番

親から相続した不動産の相続登記をしないまま、自分も引っ越した。このケースでは2つの義務が重なります。

順番の判断は事案によって変わります。相続登記で新たに所有者として登記されるときの住所をどう記載するか、遺産分割が済んでいるかどうかなど、確認すべき点が複数あるためです。自己判断で進めるより、法務局の手続案内か司法書士に相談してから着手するほうが確実です。

売却も視野に入れているなら、不動産会社に査定を依頼する段階で登記の状況を伝えておくと、必要な手続きを早めに洗い出せます。登記が整っていない物件は、売り出しの準備が進んでから調整に入るケースが少なくありません。

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まとめ

住所変更登記の義務化は2026年4月1日に始まり、住所や氏名が変わった日から2年以内の申請が義務になりました。過去の引っ越し分の期限は2028年3月31日です。正当な理由なく怠ると5万円以下の過料の対象になりますが、期限を過ぎた時点で決まるわけではありません。法務局からの催告を受けてもなお登記も申出もしなかったときに、裁判所へ通知されます。

当面の対応として最も負担が軽いのは、検索用情報の申出です。電子証明書なしでブラウザから申し出られて、費用もかかりません。

ただし売却の予定があるなら、この申出だけでは足りません。登記簿の住所が現住所と違えば所有権移転登記が却下されるため、決済日までに自分で申請しておく必要があります。まずは登記事項証明書を1通取って、甲区の住所を確かめるところから始めてみてください。

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よくある質問

住所変更登記について、法務局や司法書士に寄せられやすい疑問をまとめました。

住所変更登記をしないまま何年も経っていますが、すぐ過料になりますか。

いきなり過料が科されることはありません。法務省は、登記官が義務違反を把握しても直ちに裁判所へ通知することとはしておらず、まず催告書を送ると説明しています。催告書に記載された期限内に登記か申出をすれば、裁判所への通知には進みません。施行日前の引っ越し分は2028年3月31日が期限ですので、それまでに手続きを済ませれば過料の対象にはなりません。

住民票を移していない場合も義務の対象になりますか。

条文が起算点としているのは「変更があった日」です。住民票を移していない状態では、住所が変わったことを証明する書類も取得できません。住民票の異動を先に済ませたうえで、登記の手続きに進むことになります。住民基本台帳法上の届出義務とは別の制度ですので、それぞれの手続きが必要です。

賃貸に出している不動産も住所変更登記が必要ですか。

必要です。義務を負うのは所有権の登記名義人であり、その不動産に住んでいるかどうかは関係ありません。賃貸に出している物件も、別荘も、更地の土地も同じ扱いになります。入居者側には義務がありません。

スマート変更登記の申出をすれば、売却時も何もしなくて大丈夫ですか。

売却の場面では別の対応が必要です。申出をしていれば過料の対象にはなりませんが、登記簿の住所が書き換わるまでには時間がかかります。法務局が住基ネットに問い合わせるのは少なくとも2年に1回で、個人向けの手続開始時期も2026年9月時点では公表されていません。登記簿の住所が現住所と違うままでは所有権移転登記が却下されますので、決済日までに自分で住所変更登記を申請してください。

住所変更登記と抵当権抹消登記は同時に申請できますか。

住宅ローンを完済した物件を売る場合、住所変更登記と抵当権抹消登記の両方が必要になります。司法書士に依頼する場合は、必要な登記をまとめて伝えたうえで見積もりを取ってください。日本司法書士会連合会も、複数の登記が必要な場合はそれぞれの基本的な報酬を合算することになると説明しています。手続きの順序や進め方については、法務局または司法書士にご相談ください。

出典

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