専任媒介契約を途中で解除しても、違約金を払うとは限りません。不動産会社が違約金や費用を請求できる場面は、国土交通省が定める約款で3つに決まっています。請求できるのは、売買が成立していたら払うはずだった仲介手数料の額までです。
費用を請求される場合も、対象は明細書と領収書等で裏づけられた実費に限られます。不動産会社の義務違反を理由に解除するときや、有効期間の満了で終えるときは、費用の償還を求められません。
内覧がほとんどなく、報告も途切れたまま3か月目に入っているなら、不動産会社が法律上の義務を守っていない可能性があります。
この記事では、費用を請求される3つのケース、不動産会社の義務違反を確かめる方法、解除と満了それぞれの進め方、解除後の売却の進め方を順に説明します。
- 解除で費用がかかる3つのケース
- 費用償還と違約金の上限
- 義務違反を確かめる方法
- 解除通知書の書き方と送り方
- 満了で契約を終える進め方
※本記事の情報は2026年10月時点の法令および国土交通省告示にもとづきます。実際の契約内容は個別の媒介契約書の記載が優先されますので、お手元の契約書もあわせてご確認ください。
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※2025年9月19日-23日 「サイト評価に関する調査」より
期間中の専任媒介契約の解除
契約書の有効期間欄には「3か月」と書かれています。この3か月は、売主が途中で動けない期間ではありません。売主が長く縛られないように、法律が定めた上限です。
媒介契約は、不動産会社に売却の仲介を任せる契約です。民法は、こうした委任の契約について「各当事者がいつでもその解除をすることができる」と定めています(第651条第1項)。期間の途中で終わらせること自体は、はじめから認められています。
ただし、解除できることと、お金がかからないことは別の話です。ここを混同すると、請求されるはずのない費用を払ってしまったり、逆に払うべき実費を拒んでトラブルになったりします。
なお、ここで扱うのは不動産会社との媒介契約の解除です。買主との間で結ぶ売買契約の解除や手付解除とは、根拠になる条文も費用の考え方もまったく別のものになります。
有効期間が3か月を超えられない理由
3か月という区切りは、会社が販売に集中するために設けられたものではありません。宅地建物取引業法は、専任媒介契約の有効期間について「三月を超えることができない」と定めています(第34条の2第3項)。専属専任媒介契約も同じ上限です。
この条文には続きがあります。「これより長い期間を定めたときは、その期間は、三月とする」。つまり契約書に6か月と書かれていても、法律上の有効期間は自動的に3か月に短縮されます。長い期間で縛られることは、制度上ありません。
さらに同条第10項は、この有効期間の規定に反する特約を無効としています。「6か月間は解除できない」といった条項が契約書にあったとしても、その部分は効力を持ちません。
費用を請求される解除とされない解除の分かれ目
分かれ目は1つです。不動産会社が自分の義務をきちんと果たしていたかどうかで決まります。
国土交通省が定める標準専任媒介契約約款には、会社に落ち度がない解除についての規定があります。売主の都合で契約が終わった場合、会社は契約のために実際に使った費用の返還を請求できます(第14条第1項)。これを費用償還といいます。反対に、会社の側に義務違反があったときの解除には、この費用償還の規定は適用されません。
請求されうる額には上限があります。同条第2項は「前項の費用の額は、約定報酬額を超えることはできません」と定めています。約定報酬額とは、売買が成立していれば支払うはずだった仲介手数料の額のことです。それを超える請求は、約款にもとづく契約では認められません。
一般媒介・専属専任媒介との解除の扱いの違い
解除できる条件と手続きの流れは、3種類とも同じ構造です。義務を果たさない相手に期限を決めて改善を求め、それでも直らなければ解除する。会社側に信義誠実義務違反などがあれば、期限を切らずに解除できる。この2段構えは、一般媒介契約約款の第17条・第18条にも、専任媒介契約約款の第16条・第17条にも同じ文言で置かれています。
違うのは、違反や解除のときに請求されうる金額です。
| 契約の種類 | 有効期間の上限 | レインズへの登録 | 販売活動の報告 | 自分で買主を見つけたとき | 期間中に他社へ頼んで成約したとき |
|---|---|---|---|---|---|
| 一般媒介契約 | 3か月(約款の定め) | 登録すると決めた場合のみ | 約款に定めなし | 制限なし(通知は必要) | 明示していない会社に頼んだ場合は費用償還 |
| 専任媒介契約 | 3か月(法律) | 7日以内(休業日を除く) | 2週間に1回以上 | できる(費用償還の対象) | 違約金(約定報酬額に相当する額) |
| 専属専任媒介契約 | 3か月(法律) | 5日以内(休業日を除く) | 1週間に1回以上 | できない(違約金の対象) | 違約金(約定報酬額に相当する額) |
標準一般媒介契約約款には、反社会的勢力の排除に関する条項を除き、違約金を請求する条項がありません。売主が明示していない会社に依頼して成約させた場合でも、会社が請求できるのは費用の償還までです(第14条)。会社に落ち度がない解除について費用の償還を認める定めもありません。3種類のなかでは、一般媒介がもっとも金銭的な負担が軽い契約です。
もう1つ、一般媒介の3か月は法律ではなく約款による定めです。宅地建物取引業法が期間を規制しているのは、専任媒介と専属専任媒介だけです。一般媒介の3か月は、実際の取引の状況をふまえて、専任媒介契約などと同じ期間にそろえたものです(宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方)。
専属専任媒介契約は、逆にもっとも重い扱いです。自分で買主を見つけて直接契約した場合、専任媒介なら費用償還で済みます。専属専任では、約定報酬額に相当する違約金の対象です。契約の種類ごとの詳しい違いは、一般媒介契約と専任媒介契約の違いで整理しています。
自分の契約がどれに当たるかは、契約書の表題で確認できます。
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専任媒介契約の解除で費用を請求される3つのケース
約款が費用や違約金の請求を認めているのは3つの場面だけです。それ以外の解除で金銭を求められたら、根拠を確かめてください。
自分がどれに当たるかは、次の表で確かめてください。
| 解除や取引の状況 | 請求されうるもの |
|---|---|
| 不動産会社の義務違反を理由に解除した | なし(費用償還の対象外) |
| 期間中に他社の仲介で売買契約を成立させた | 違約金(約定報酬額に相当する額) |
| 自分で見つけた相手と直接契約した | 専任媒介は費用償還、専属専任媒介は違約金 |
| 上のいずれでもなく、売主の都合で解除した | 費用償還(約定報酬額が上限) |
売主の都合で理由なく解除した場合
会社の仕事に不満はないけれど転勤で売却をやめる。そんな場合がこれに当たります。標準専任媒介契約約款第14条第1項にもとづき、会社は契約の履行のために実際に使った費用の償還を請求できます。
解除を切り出すと、「これまでかけた広告費を精算してほしい」と金額を示されることがあります。
このとき請求できるのは、この媒介契約の履行のために実際に使い、領収書等で金額を示せる費用だけです。額は約定報酬額が上限です(同条第2項)。
履行に要した費用には、現地調査や権利関係の調査にかかった交通費・写真代・謄本代、新聞・雑誌等の広告費、通信費、現地案内の交通費、契約交渉の交通費が含まれます。請求するときは、不動産会社が明細書を作成し、領収書等で金額を立証することとされています(宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方)。金額だけを口頭で告げられたなら、明細書と領収書の提示を求めて構いません。
契約が続いている間や売買が成立したときは、扱いが違います。レインズへの登録や通常の広告、物件の調査にかかる費用は不動産会社の負担で、売主が別に払うのは、特別に依頼した広告の料金と遠隔地への出張旅費だけです(同約款第10条)。広告費の精算を求められるのは、会社に落ち度がないまま売主の都合で解除した場合などに限られます。
契約期間中に他社へ依頼して成約した場合
違約金の対象になるのは、他社に声をかけた時点ではありません。条文が定める要件は2つあり、片方だけでは足りません。
標準専任媒介契約約款第12条は、有効期間内に他の宅地建物取引業者へ媒介や代理を依頼することを禁じています。そのうえで違約金の対象としているのは、これに違反して売買契約を成立させたときです。会社が請求できるのは約定報酬額に相当する金額で、消費税および地方消費税に相当する額は除かれます。
そのため、いま結んでいる契約が終わる前に他社と媒介契約を結んでしまうのが、もっとも避けたい行動です。解除の話し合いが長引いている最中に別の会社と契約し、そちらで買主が決まってしまうと、条文の要件に当てはまります。解除が正式に成立してから次の契約に進んでください。
専属専任媒介契約で自分が見つけた相手と直接契約した場合
同じ「自分で買主を見つけた」でも、契約の種類によって負担がまったく変わります。
専任媒介契約では、標準専任媒介契約約款第14条第1項が適用され、会社が請求できるのは履行に要した費用の償還までです。上限は約定報酬額を超えられません。
専属専任媒介契約では扱いが変わります。標準専属専任媒介契約約款第12条第2項は、有効期間内に自ら発見した相手方と売買契約を締結することを禁じています。違反したときに会社が請求できるのは、約定報酬額に相当する金額の違約金です。実費の償還ではなく、仲介手数料の満額に相当する金額です。
| 自分で買主を見つけたとき | 会社が請求できるもの |
|---|---|
| 専任媒介契約 | 履行に要した費用の償還(約定報酬額が上限) |
| 専属専任媒介契約 | 約定報酬額に相当する金額の違約金 |
自分の契約がどちらかは、契約書の表題を見ればわかります。「専属」の2文字があるかどうかが分かれ目です。
もう1つ注意したいのが、契約が終わったあとの取引です。標準専任媒介契約約款第11条には、期間が過ぎたあとの規定があります。有効期間内または満了後2年以内に、会社の紹介で知った相手方と会社を排除して契約したとき。この場合、会社は契約の成立に寄与した割合に応じた相当額の報酬を請求できます。専属専任媒介契約約款第11条にも、満了後2年以内という同様の定めがあります。内覧に来た人の連絡先を控えておいて、契約終了後に直接交渉する、という進め方は避けてください。
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解除の理由になる不動産会社の義務違反
「報告が来ない」「囲い込みが怪しい」という不満も、日数と回数で確かめられます。
専任媒介契約を結んだ会社には、期限や頻度まで決められた義務があるからです。標準専任媒介契約約款第4条第1項は、会社の義務を4つ挙げています。契約の成立に向けて積極的に努力すること。業務の処理状況を報告すること。申込みがあったら遅滞なく報告すること。そしてレインズに登録することです。
これらが守られていなければ、解除の根拠になります。
レインズへの登録が期限までに行われていない
レインズは不動産会社向けのシステムですが、登録したかどうかは売主の手元に届く書面で確かめられます。
宅地建物取引業法施行規則第15条の10は、レインズへの登録期限を専任媒介契約は締結の日から7日、専属専任媒介契約は5日と定めています。同条第2項により、この期間に会社の休業日は算入されません。
起算日にも決まりがあります。国土交通省の「解釈・運用の考え方」は、契約を締結した当日そのものは民法上の原則である初日不算入により登録期間には含まれない、としています。また「媒介契約締結の日」は契約締結の意思が合致した日であり、後日交付される契約書面の交付日ではありません。
登録が済むと、会社から登録証明書が交付されます。これは同法第34条の2第6項にもとづく手続きです。手元に登録証明書がない場合、そもそも登録されていない可能性があります。まずは契約日を確認し、そこから7日(専属専任媒介は5日、いずれも休業日を除く)が経過しているかを数えてみてください。
販売活動の報告が規定の頻度で届いていない
報告の間隔は、担当者の忙しさで決まるものではありません。宅地建物取引業法第34条の2第9項が頻度を定めています。専任媒介契約は2週間に1回以上、専属専任媒介契約は1週間に1回以上。この規定に反する特約は、同条第10項により無効になります。
報告の中身にも基準があります。報告すべき事項は、不動産会社が買主を探すために行った措置(レインズへの登録、広告など)と、引き合いの状況などです(宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方)。「まだ動きがありません」の一言だけでは、この基準を満たしているとは言いにくくなります。
もう1つ、頻度とは別の報告義務も見てください。同法第34条の2第8項は、売買または交換の申込みがあったときは遅滞なく報告しなければならない、と定めています。購入申込書のように、買う意思が文書などではっきり示された申込みであれば、売主の希望条件を満たさない金額でも、その都度報告する必要があります(宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方)。「安すぎる申込みだったので伝えなかった」という説明は、この義務に照らすと成り立ちません。
囲い込みが疑われるときに確認できること
他社から問い合わせがあっても「商談中です」と断り、自社で買主を見つけようとする。いわゆる囲い込みは、売主からは見えにくい行為でした。2025年1月1日からは、売主が自分で確かめられる仕組みができています。
宅地建物取引業法施行規則第15条の11が改正され、レインズへの登録事項に「当該宅地又は建物の取引の申込みの受付に関する状況」が加わりました(第2号)。改正前の同条には、この項目はありません。
この登録には行政処分の裏づけがあります。専任媒介契約・専属専任媒介契約で登録した物件について、申込みの受付状況などの登録内容が事実と異なるときは、宅地建物取引業法第65条第1項の指示処分の対象です(宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方)。
売主は、レインズのステータス管理機能で、自分の物件の申込みの受付状況など最新の登録内容を確認できます。不動産会社は、登録証明書を渡すときに、この確認方法を売主にわかりやすく説明することが望ましいとされています(宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方)。説明を受けていなければ、確認の方法を担当者に尋ねてください。
登録証明書を手元に用意して、自分の物件のステータスがいまどうなっているかを確認してみてください。実際には何の申込みも受けていないのに「申込みあり」の状態で止まっていれば、それが根拠になります。
義務違反を裏づけるために残しておく記録
話し合いになると、記憶に頼った主張は通りにくくなります。次の項目を手元にまとめておいてください。
- 媒介契約書の締結日と契約の種類
- レインズの登録証明書と、そこに記載された登録日
- 直近2週間(専属専任なら1週間)に報告を受けた日付と、その内容
- 購入申込みがあった旨の連絡を受けた日付
- レインズのステータス管理機能で確認した登録内容と、確認した日付
- 担当者とのメールやメッセージのやり取り
日付が入った記録は、改善を求める書面や解除通知書に理由を書くとき、そのまま使えます。
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専任媒介契約を解除するための4ステップ
約款が定める解除の手順は2段構えです。まず期限を決めて改善を求め、それでも直らなければ解除します。改善を求めずにいきなり解除通知書を送ると、解除の根拠を争われたときに立場が弱くなってしまいます。
この順番を踏んだ記録は、あとで請求額を争うときに使えます。
【ステップ1】契約書と標準媒介契約約款を確認する
宅地建物取引業法第34条の2第1項第5号は、媒介契約書面の記載事項として「媒介契約の有効期間及び解除に関する事項」を挙げています。解除の条件は、どの契約書にも書かれています。
見るべきは3点です。契約の種類(専任か専属専任か)、契約締結日と有効期間、そして解除に関する条項です。多くの契約書は国土交通省の標準媒介契約約款にもとづいていますので、約款が添付されていればそちらも確認してください。
独自の特約が付いている場合は、その内容にも目を通してください。ただし標準専任媒介契約約款第19条第2項は、約款の各条項の定めに反する特約で売主に不利なものを無効としています。約定報酬額を超える違約金を請求する特約など、依頼者に不利な特約は、標準媒介契約約款による契約としては認められません(宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方)。不利な特約を見つけても、その場で受け入れる必要はありません。
【ステップ2】改善してほしい点を伝え、猶予期間を設ける
標準専任媒介契約約款第16条は、約款が求めるとおりに義務を果たしていない場合の対応を定めています。相当の期間を定めて履行を催告し、その期間内に履行がないときに解除できる、という規定です。この「期限を切って改善を求める」という段階が、原則として必要になります。
伝え方は具体的にします。「もっと頑張ってほしい」では伝わりません。「レインズのステータスを実態に合わせて更新してほしい」「2週間に1回の報告を、内容を含めて文書でほしい」のように、約款や法律が定める義務に対応させてください。期限も「2週間以内に」のように日付で区切ってください。
一方、催告を経ずに解除できる場合もあります。標準専任媒介契約約款第17条は、次の3つのいずれかに当たるときは売主が解除できると定めています。
- 会社が業務について信義を旨とし誠実に遂行する義務に違反したとき
- 会社が重要な事項について故意もしくは重過失により事実を告げず、または不実のことを告げる行為をしたとき
- 会社が宅地建物取引業に関して不正または著しく不当な行為をしたとき
3つ目は、不正または著しく不当な行為の相手方が売主本人でなくても、解除が認められます(宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方)。ほかの顧客に対する行為でも、解除の理由になり得ます。
【ステップ3】解除通知書を作成して送る
改善を求めても状況が変わらなければ、書面で解除の意思を伝えます。標準媒介契約約款に解除通知書の様式は定められていませんので、決まったひな形はありません。次の項目を入れておけば足ります。
- 宛先(不動産会社名と代表者名)
- 差出人(住所と氏名)
- 作成日
- 対象となる物件の表示
- 媒介契約の締結日と契約の種類
- 契約を解除する旨の意思表示
- 解除の理由と、根拠にする条項
- レインズ登録の抹消依頼
- 預けている資料の返却依頼
送り方は内容証明郵便が確実です。内容証明は、いつ、どんな内容の文書を誰から誰あてに差し出したかを、差出人が作成した謄本によって日本郵便が証明する制度です。一般書留で差し出す必要があり、簡易書留にはできません。差出人は、差し出した日から5年以内に限り、郵便局に保存されている謄本の閲覧を請求できます。
ただし、内容証明で証明されるのは文書を差し出した事実とその内容で、書かれたことが真実かどうかまでは証明されません。理由には、日付と事実を具体的に書いてください。
【ステップ4】レインズの登録抹消と資料の返却を確認する
通知を送ったあとも、確認しておくことがあります。契約が終わっても前の会社の登録が残っていると、ほかの不動産会社には、まだその会社が売却を任されている物件に見えてしまいます。
契約が終了したら、レインズの登録が抹消されたかを確認してください。登録証明書に記載された内容と、ステータス管理機能で見える状態を照らし合わせると確かめられます。
あわせて、預けているものを返してもらいます。鍵、間取り図、登記識別情報通知や権利証、マンションであれば管理規約や修繕積立金の資料などです。次の会社に依頼するときに同じ書類が必要になりますので、この段階で回収しておくと動き出しが早くなります。
\ 解除の前に、次の候補を探しておく /
期間満了で専任媒介契約を終えるための進め方
会社に落ち度がないまま売主の都合で解除すると、費用償還を請求される可能性があります。有効期間の満了を待って終える場合は、費用償還の対象になりません。
3か月の有効期間が過ぎれば、売主が更新を申し出ない限り、契約はそこで終わります。
媒介契約が自動更新されない理由
媒介契約は、放っておいても自動では更新されません。宅地建物取引業法第34条の2第4項は、有効期間について「依頼者の申出により、更新することができる」と定めています。更新の起点は売主の側にあり、会社が勝手に延長することはできません。
更新の申出は有効期間が満了するたびに行うもので、あらかじめ更新を約束しておくことは許されません(宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方)。契約時に「自動更新とする」と取り決めること自体が認められていません。
反対に、売主が更新を申し出ても、不動産会社が同意しなければ契約は更新されません。更新は双方の合意が要る手続きです。なお、更新後の期間も3か月を超えられません(同項ただし書き)。
更新しないと伝えるタイミングと言い方
満了で終えるために、断りの言葉を用意する必要はありません。
標準専任媒介契約約款第15条第2項は、更新の申し出方を定めています。有効期間の更新をしようとするときは、満了に際して売主から会社に対し文書等でその旨を申し出る、という規定です。つまり何も申し出なければ、契約は満了で終わります。
黙って満了を迎えると、担当者から更新の確認の連絡が来ることがあります。行き違いを避けるには、満了の2週間ほど前に、更新しない意思を伝えておくと確実です。
伝え方は事務的で構いません。「今回の契約は満了で終了とさせていただきます」と伝え、レインズの登録抹消と預けた資料の返却をあわせて依頼します。理由を細かく説明する義務はありません。
満了を待つほうが有利になるケース
満了で終える最大の利点は、費用償還の話が起きにくいことです。標準専任媒介契約約款第14条第1項が費用の償還を認めている場面は2つです。自ら発見した相手方と契約を締結したとき。もう1つが、会社の責めに帰すことができない事由によって契約が「解除された」ときです。満了による終了は、この解除に当たりません。
残りの期間が2週間や3週間であれば、待つ判断も現実的です。反対に、まだ2か月以上残っていて、その間ずっと売却が止まるのであれば、催告を経て解除に進むほうが早く動けます。
会社側に義務違反がはっきりしている場合も、満了を待つ理由は薄くなります。催告して解除すれば、費用償還の規定は適用されないためです。そもそも売り急ぐ必要があるのかどうかという観点は、家を売るタイミングの見極め方で解説しています。
\ 満了までに次の一手を決めておく /
解除を引き止められたときの対応
引き止めの場面で費用や違約金の金額を示されても、その場で合意する必要はありません。
根拠になる条項と明細を確かめてから答えて構いません。
「あと1か月待ってほしい」と言われたときの判断
引き止め自体が悪いわけではありません。判断材料になるのは、これまでの活動が義務の水準を満たしていたかどうかです。
過去1か月を振り返って、報告が2週間に1回以上(専属専任なら1週間に1回以上)届いていたか。その報告に、レインズへの登録状況や広告の内容、問い合わせの状況が書かれていたか。この2つが満たされているなら、追加の1か月に意味が出てきます。
満たされていない場合は、期限と具体的な行動を約束してもらってください。「1か月後までに、週1回の文書報告と、ポータルサイトへの掲載写真の差し替えを行う」のように、確認できる形にします。曖昧な約束のまま延長すると、同じ1か月の繰り返しです。
売れない原因が会社ではなく価格にある可能性もあります。他社の査定額と見比べると、どちらの問題かを切り分けやすくなります。査定額の妥当性については不動産査定が高すぎると感じたときの見方でも触れています。
\ 1社の査定額だけでは判断できません /
請求された違約金の額をその場で認めない
金額を示されたら、次の3点を確認してください。
まず、その金額の根拠になる条項はどれか。約款にもとづく契約であれば、費用償還(第14条)なのか違約金(第12条)なのかで性質が変わります。
次に、費用償還であれば明細書と領収書等があるか。費用償還は、明細書を作成し、領収書等で金額を立証して請求するものとされています。明細のない一括の金額なら、内訳を示してもらってください。
そして、上限を超えていないか。標準専任媒介契約約款第14条第2項は、費用の額が約定報酬額を超えられないと定めています。違約金も約定報酬額に相当する額が上限で、他の顧客からも報酬を受け取れる見込みがあったとしても、その分を含めて請求することはできません(宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方)。
| 確認する点 | 見るところ |
|---|---|
| 根拠になる条項 | 費用償還(第14条)か違約金(第12条)か |
| 明細書の有無 | 領収書等で金額が立証されているか |
| 金額の上限 | 約定報酬額を超えていないか |
| 費用の中身 | この契約の履行のために実際に使った費用か |
費用の中身も見てください。会社に落ち度がない解除の費用償還なら、この物件の販売のために使った広告費や交通費は対象になり得ます。一方、会社の義務違反を理由に解除した場合や、有効期間の満了で終えた場合は、費用償還の対象外です。特別に依頼した広告料金と遠隔地への出張旅費(標準専任媒介契約約款第10条)は、これとは別に、成約や解除にかかわらず請求されることがあります。
話し合いがつかないときの相談先
当事者だけで折り合わないときは、第三者の窓口を使えます。
各都道府県の宅地建物取引業協会には、不動産無料相談所があります。相談は、一般相談と苦情相談の2種類に分かれます。
| 相談の種類 | 内容 |
|---|---|
| 一般相談 | 不動産取引についての助言。相談員が相手の会社との仲裁やあっせんをすることはない |
| 苦情相談 | 全国宅地建物取引業保証協会の会員が相手の取引が対象。保証協会が事情を調べ、相手の会社に苦情の内容を伝えて早期の解決を求める(宅地建物取引業法第64条の5) |
相談するときは、まず近くの都道府県宅建協会の不動産無料相談所に問い合わせます。苦情相談は、東京都や大阪府のように来所での受付に限っている地域があります(2026年10月時点)。相手の会社がどの保証協会に加入しているかは、その会社に確認できます。
公益財団法人不動産流通推進センターも、不動産取引に関する電話相談を無料で受け付けています(2026年10月時点)。窓口ごとの違いや選び方は、不動産売却の相談先の選び方にまとめました。
行政に相談することもできます。宅地建物取引業者を監督しているのは、免許を出した都道府県知事または国土交通大臣です。免許番号は契約書に記載されています。囲い込みのように行政処分の対象になり得る行為であれば、免許行政庁への情報提供も選択肢になります。
専任媒介契約の解除後に売却を再開する進め方
解除が正式に決まるまで何も動かずにいると、売却が止まる期間はそのまま延びてしまいます。他社に査定を頼むことと、他社と媒介契約を結ぶことは別です。
査定の依頼は、いまの契約が続いていてもできます。不動産会社を切り替えるときの流れは、売却を依頼している不動産会社を変えるときの手順でも説明しています。
解除を申し出る前に他社へ相談しておく
査定を依頼して話を聞く段階では、媒介契約は成立していません。標準専任媒介契約約款第12条が違約金の対象としているのは、他の宅地建物取引業者に媒介または代理を依頼し、これによって売買契約を成立させたときです。複数社に査定を出してもらい、担当者の説明を聞いて比較する行為は、この要件に当たりません。
一方、媒介契約を結ぶのはいまの契約が終わってからにしてください。解除の話し合いが続いている最中に別の会社と契約し、そこで買主が決まると、第12条の要件に該当します。査定は先に、契約はあとに、という順番を守れば問題は起きません。
念のため、契約書に他社への相談を制限する記載がないかも確認しておきましょう。もしそうした記載があっても、標準専任媒介契約約款第19条第2項により、約款の定めに反して売主に不利な特約は無効です。
もう1点、契約が終わったあとにも残る制約があります。標準専任媒介契約約款第11条が置いているのは、満了後2年以内という期間の定めです。会社の紹介で知った相手方と会社を排除して契約したとき、会社は寄与割合に応じた相当額の報酬を請求できます。いまの会社が連れてきた内覧者と、あとから直接取引するのは避けてください。
複数の会社の査定額と販売方針を比べておくと、解除を申し出るときの判断にも迷いがなくなります。
\ 査定の依頼は契約中でもできます /
一般媒介に切り替えるか専任で再契約するかの選び方
1社に任せて動かなかったなら、次は複数社に任せる方法もあります。ただし一般媒介に切り替えると、いま解除の理由にしている定期報告の義務はなくなります。
| 比べる点 | 一般媒介契約 | 専任媒介契約 |
|---|---|---|
| レインズへの登録義務 | 登録すると決めた場合のみ | 7日以内(休業日を除く) |
| 販売活動の報告義務 | 約款に定めなし | 2週間に1回以上 |
| 解除時に請求されうるもの | 原則なし(明示していない会社の仲介で成約した場合は費用償還) | 費用償還(約定報酬額が上限) |
| 向いている状況 | 人気エリアで問い合わせが見込める物件 | 販売状況を確かめながら進めたい場合 |
標準一般媒介契約約款第5条第1項が定める会社の義務は2つだけです。契約の成立に向けて積極的に努力することと、申込みがあったときに遅滞なく報告することです。業務の処理状況を定期的に報告する義務も、レインズへの登録義務も、条文には置かれていません。レインズについては同約款第9条が「登録することとした場合にあっては」登録しなければならない、という書き方をしています。
定期的な報告は、専任媒介だから義務になっていたものです。一般媒介では複数社に依頼できる代わりに、販売の進み具合が見えにくくなります。
一般媒介を選ぶ場合は、自分から各社に状況を聞く手間が増えることを織り込んでください。なお同約款第15条は、自分で買主を見つけたときや他社の仲介で成約したときに、遅滞なく通知する義務を売主に課しています。通知を怠って会社が費用を支出した場合、その償還を求められることがあります。
契約形態ごとの向き不向きは、一般媒介契約と専任媒介契約の違いで詳しく整理しています。
次の契約では解約条件を特約に入れておく
同じ思いを繰り返さないために、次の契約では条件を先に決めておく手があります。
特約として入れられるのは、たとえば報告の頻度と方法です。法律上の下限は2週間に1回ですが、「毎週金曜日にメールで、レインズのステータスと反響件数を含めて報告する」と決めておけば、守られているかどうかが明確になります。売り出し価格を見直す時期をあらかじめ書いておく方法もあります。
反対に、入れても効力を持たない特約があります。標準専任媒介契約約款第19条第2項により、約款の定めに反して売主に不利な特約は無効です。有効期間を3か月より長くする特約や、報告頻度を法定より下げる特約も同じです。宅地建物取引業法第34条の2第10項により無効になります。
契約前に「この条件を特約に入れてほしい」と伝えたとき、担当者がどう答えるかも見ておきましょう。
まとめ
専任媒介契約は、有効期間の3か月を待たずに解除できます。費用を請求されるのは、会社に落ち度がない状態で売主の都合により解除した場合などに限られ、その額も約定報酬額を超えられません。請求には明細書と領収書等の裏づけが必要で、会社の義務違反を理由に解除する場合は費用償還の対象外です。
「報告が来ない」「囲い込みが怪しい」という不満は、レインズの登録期限7日、報告の頻度2週間に1回という基準に照らせば、確かめられる事実になります。まずは契約書と登録証明書を手元に用意して、日付を数えるところから始めてみてください。
更新は自動では行われません。急いで動く必要がない状況なら、満了を待つ選択肢もあります。
\ 次に任せる会社は、比べてから決める /
よくある質問
専任媒介契約を途中でやめたいときは、まず何をすればよいですか
契約書の確認から始めます。宅地建物取引業法第34条の2第1項第5号により、媒介契約書面には有効期間と解除に関する事項が記載されています。契約の種類と締結日、解除条項を確かめたうえで、改善してほしい点を期限つきで伝えるのが次の一歩です。標準専任媒介契約約款第16条は、相当の期間を定めて履行を催告し、その期間内に履行がないときに解除できると定めています。
専任媒介契約の期間中に売れなかった場合、契約はどうなりますか
有効期間の満了で終了します。宅地建物取引業法第34条の2第4項は、更新は依頼者の申出によるものと定めており、会社が勝手に延長することはできません。あらかじめ更新を約束しておくことも許されません(宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方)。何も申し出なければ、そのまま契約は終わります。
専属専任媒介契約も専任媒介契約と同じ手順で解除できますか
手順は同じです。催告のうえ解除する流れも、催告なしで解除できる3つの事由も、専属専任媒介契約約款に同様の定めがあります。違うのは自分で買主を見つけたときの扱いです。専任媒介では費用償還にとどまりますが、専属専任媒介では約定報酬額に相当する違約金の対象になります(専属専任媒介契約約款第12条第2項)。
解除の意思を口頭で伝えるだけでも有効ですか
意思表示そのものは口頭でもできますが、記録が残りません。あとから「聞いていない」と言われると、いつ解除したかが争いになります。日本郵便の内容証明を使えば、いつ、どんな内容の文書を誰から誰あてに差し出したかを証明でき、差出人は5年以内に謄本の閲覧を請求できます。理由を書いて書面で送るほうが確実です。
解除を申し出たら「広告費を払え」と言われました。応じる必要がありますか
内訳の確認が先です。会社に落ち度がないまま売主の都合で解除した場合は、この物件の販売のために実際に使った広告費などの償還を求められることがあります(標準専任媒介契約約款第14条)。ただし、請求は明細書を作成し領収書等で金額を立証して行うものとされ、額は約定報酬額が上限です。会社の義務違反を理由に解除した場合は、費用償還の対象になりません。明細書と領収書の提示を求めてください。
専任媒介契約はクーリングオフできますか
できません。宅地建物取引業法第37条の2が定めるクーリングオフは、対象が限られています。宅地建物取引業者が自ら売主となる売買契約について、事務所等以外の場所で申込みや契約をした買主です。売主が不動産会社と結ぶ媒介契約は、この対象に含まれません。ただし約款にもとづく解除は、有効期間中いつでも申し出られます。
一般媒介契約を解除するときも違約金はかかりますか
標準一般媒介契約約款には、反社会的勢力の排除に関する条項を除き、違約金を請求する条項がありません。明示していない会社に依頼して成約させた場合でも、会社が請求できるのは契約の履行のために要した費用の償還までで、その額は約定報酬額を超えられません(第14条)。会社に落ち度がない解除について、費用の償還を認める定めもありません。解除の手続きは専任媒介と同じで、催告のうえ解除する規定(第17条)と、催告なしで解除できる3つの事由(第18条)が置かれています。
出典
- e-Gov法令検索・宅地建物取引業法(2026年4月1日施行)
- e-Gov法令検索・宅地建物取引業法施行規則(2026年4月1日施行)
- e-Gov法令検索・民法(2026年6月24日施行)
- 国土交通省・宅地建物取引業法施行規則の規定による標準媒介契約約款(令和6年国土交通省告示第314号による改正・2024年4月1日施行)
- 国土交通省・宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方(2026年4月1日施行版)
- 全国宅地建物取引業協会連合会・相談窓口のご案内
- 全国宅地建物取引業保証協会・苦情の解決業務
- 東京都宅地建物取引業協会・不動産相談所
- 大阪府宅地建物取引業協会・不動産無料相談のご案内
- 公益財団法人不動産流通推進センター・不動産相談
- 日本郵便・内容証明

