ガソリンスタンド跡地は、法令・条例上の調査義務が生じていなければ、土壌汚染調査をしていない状態でも売却できる場合があります。土地の売買そのものは、国の土壌汚染対策法が定める調査のきっかけではないためです。
ただし、「調べていない」と「汚染がない」は別です。過去の用途、漏えいの記録、以前の調査結果など、売主が把握している事実を伏せても、売却後の責任が確実になくなるわけではありません。
まず所在地の環境行政窓口で法令・条例上の手続きを確認し、タンクや配管の配置図、点検・補修記録、消防関係の届出などを集めます。そのうえで、売却価格ではなく、費用を引いたあとの手取りと売却後に残る責任を比べてください。
この記事では、調査義務の見分け方、調査前に売る3つの方法、集める資料、手取りの比べ方、契約で決める項目を順に説明します。
- 土壌汚染調査義務の見分け方
- 調査前に売る3つの方法
- 費用を引いた手取りの比べ方
- 売却前に集める資料と契約条項
調査義務の有無とは別に、いまの状況によって最初にすることが変わります。
| いまの状況 | 最初にすること |
|---|---|
| 行政から調査・報告を求められている | 指示の対象範囲と期限を確認し、指定調査機関へ相談する |
| 油膜・強い油臭・漏えいの疑いがある | 査定より安全確認を優先する。自己判断で土を掘ったり動かしたりしない |
| 価格を優先し、時間に余裕がある | 地歴調査から始め、必要な範囲に絞って土壌・地下水などを調べる |
| 早く売りたい、先に費用をかけにくい | 把握している資料と未調査の範囲を開示し、未調査で引き受ける買主の条件を比べる |
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ガソリンスタンド跡地は土壌汚染調査なしで売れる?
国の土壌汚染対策法は、「土地を売ること」を調査のきっかけにしていません。売買契約そのものが、調査義務を生じさせる仕組みではないからです。
法令・条例上の義務が生じておらず、買主も未調査であることを理解したうえで条件に合意するなら、調査前の売却は選択肢として残ります。
調査義務が生じる3つの場面
法律上の調査や届出が問題になるのは、主に次の3つの場面です。
有害物質を使う特定の施設をやめたとき、一定の広さ以上で土地の形を変えるとき(掘削・盛土・造成など)、そして土壌汚染による健康被害のおそれがあると都道府県知事等が認めたときです。
| 法定の場面 | 最初に起きること | 誤解しやすい点 |
|---|---|---|
| 法第3条:有害物質使用特定施設をやめたとき | 土地の所有者等が、指定調査機関による調査と行政への報告を求められる場合がある | この調査に「900平方メートル以上」という面積の条件はない 一般の給油所が一律に対象になるわけでもない |
| 法第4条:一定規模以上、土地の形を変えるとき | 原則として、工事に着手する日の30日前までに届出が必要 行政が汚染のおそれを認めた場合に、調査命令へ進む | 「原則3,000平方メートル以上」は届出の基準 面積だけで調査義務が自動的に決まるわけではない |
| 法第5条:健康被害のおそれ | 汚染またはそのおそれがあり、地下水を飲むなどの経路もある場合、行政が調査を命じることがある | 面積の条件はない 油膜、井戸、近隣への影響が疑われるときは、売却より安全確認が先 |
ガソリンスタンドは調査義務の対象?
ガソリンスタンドの跡地だからといって、「必ず調査義務がある」とも、「調査義務はない」とも言えません。
ガソリンを貯蔵して販売していたというだけで、法第3条の「有害物質使用特定施設」に当たるとは限らないためです。有害物質を貯蔵する施設(水質汚濁防止法の「有害物質貯蔵指定施設」)は、法第3条の有害物質使用特定施設に当たりません。
ただし、こうした施設があった土地で土地の形質を変更する場合は、法第4条の調査命令の対象になり得ます。
結論を分けるのは、同じ敷地に別の特定施設があったか、過去に有害物質を使っていたか、これから一定規模以上の掘削・造成を予定しているか、という条件です。法第4条の届出対象となる形質変更は、原則3,000平方メートル以上、有害物質使用特定施設が現にある工場・事業場の敷地や、施設の使用を廃止したあと調査結果の報告も調査猶予の確認も済んでいない敷地では900平方メートル以上です。
届出のあと、土壌汚染のおそれがあると判断されれば、調査を命じられる場合があります。なお、法第3条の施設廃止時の調査そのものには、この900平方メートルという面積要件はありません。
さらに、自治体の条例が国の法律より広く調査のきっかけを定めていることもあります。たとえば横浜市の条例では、ガソリンに特定有害物質のベンゼンが含まれるため、タンクでガソリンを貯蔵・保管するガソリンスタンドは「特定有害物質使用等事業所」に当たります。東京都の環境確保条例にも、有害物質取扱事業者の廃止や主要部分の除却など、独自のきっかけがあります。
同じような跡地でも、所在地が違えば適用される条例も窓口も別です。環境省の窓口検索で、管轄部署を確認してください。
売ってしまえば義務も一緒に消える、というわけでもありません。法第3条ただし書によって調査を猶予されている土地では、新しい所有者等がその地位を引き継ぎ、遅滞なく承継届を出す必要があります。
施設の廃止後に所有者が変わる場合は、誰が調査を行うかによって行政からの通知先も変わり得ます。契約の前に、所管の行政へ確認してください。
判断の軸は、ガソリンスタンドだったかどうかだけではありません。敷地内にどんな施設があったか、これからどれくらいの規模の工事をするか、その自治体の条例はどうなっているか。この3つをあわせて確認します。
区域に指定された土地は売れる?
要措置区域や形質変更時要届出区域に指定されても、指定そのものが売買を禁じるわけではありません。調査で指定基準を超えた土地は、健康被害のおそれに応じて「要措置区域」か「形質変更時要届出区域」に指定されます。要措置区域では、必要な措置が求められます。
一方の形質変更時要届出区域は、汚染が人の体に入る経路(摂取経路)がなく、健康被害のおそれがないため、汚染の除去等の措置は不要とされる区域です。ただし後者でも、土地を掘削・造成するときや、汚染土壌を運び出すときには手続きが必要です。
つまり、基準超過が出たからといって、常に全量を掘削して除去しなければ売れないわけではありません。買主の利用目的、行政上必要な措置、工事計画、融資条件を踏まえて売り方を決めます。
\ 調査前でも、査定は受けられます /
ガソリンスタンド跡地の査定額が下がる理由
買主が価格から差し引くのは、判明している撤去費や対策費だけではありません。どこまで費用が広がるか読めないと、その不確かさも価格に織り込まれます。
買取価格から引かれる撤去費・調査費・対策費
買主が見込む負担は、撤去、調査、対策、処分、時間、そして売却後の責任という6つの方向に分かれます。
- 地下タンク、配管、計量機、油水分離槽、基礎などの撤去費
- 地歴調査、土壌ガス・土壌・地下水の調査費
- 汚染が見つかった場合の範囲確定、対策、その後の監視にかかる費用
- 汚染土壌や残存物の運搬・処理費
- 行政協議や工期延長にともなう保有費・資金調達費
- 売却後に責任を負う可能性を見込んだリスク分
最終提示価格 = 汚染や地下設備がないと仮定した土地の価値 − 判明している費用 − 未確定リスクの見込額
この式のうち、資料を集めて減らせるのは最後の項目です。「ガソリンスタンド跡地は更地価格の何割」という全国一律の公的な相場はありません。
価格を動かす要素は、面積だけではありません。タンクの数と位置、営業していた期間、扱っていた油種、漏えいの記録、地質、地下水、次の用途、買主が負う責任まで関わります。
油臭・油膜は法の基準と別に確認する
ガソリンに含まれるベンゼンと、ガソリンへの鉛の添加が完全に廃止された1986年より前から営業していた跡地で調査対象の候補になる鉛は、土壌汚染対策法の特定有害物質です。
一方、ガソリン、灯油、軽油などの鉱油類は、濃度の数字だけで油臭や油膜の程度を一律に判断できません。油臭・油膜への対応は、土地利用の目的や方法、周辺への影響に応じて、土地所有者等が調査・対策を検討します。
法の指定基準を超えていなくても、売却後の使い方によっては油臭・油膜が問題になることがあります。反対に、油分が見つかっただけで、ただちに法律上の要措置区域になるわけでもありません。だからこそ調査会社には、法定の特定有害物質と、油臭・油膜の評価を分けて見積もってもらいます。
- 安全と行政の確認
油膜、漏えい、井戸への影響、行政の指示があれば、査定より先に対応します。 - 地歴と資料の整理
タンク・配管の位置、点検、事故、廃止・撤去、過去の調査記録を集めます。 - 調べる人と範囲を決める
売主が段階的に調べるか、買主の用途に合わせて調べるか、未調査のまま買主へ渡すかを決めます。 - 手取りと責任で比べる
売却価格だけでなく、調査・対策費、解除条件、引渡し後の負担上限を並べます。
\ 不確かさが減れば、提示価格は変わります /
ガソリンスタンド跡地を調査前に売る3つの方法
調査をするかしないかで決まるわけではありません。誰が、いつ、どこまで調べるかです。組み合わせは大きく3通りになります。
| 売り方 | 向いている状況 | 利点と注意点 |
|---|---|---|
| 売主が段階的に調べて売る | 時間に余裕があり、買主の候補を広げたい | 【利点】分からない部分が減り、価格の根拠を説明しやすい 【注意】調査費を先に負担する。買主の用途と調査の仕様が合わないこともある |
| 買主の調査を条件に売る | 買主候補と利用目的が決まっている | 【利点】調査範囲を買主の計画に合わせやすい 【注意】減額・解除・費用負担を先に決めないと、交渉が止まる |
| 未調査のまま現況で売る | 期限が短い、先に費用をかけにくい | 【利点】調査・対策を買主側で進められる 【注意】買主が限られ、不確定リスクを見込んだ価格になりやすい |
売主が地歴調査から段階的に調べる
価格を優先するなら、いきなりボーリング調査を発注する必要はありません。まず地歴調査を行います。地歴調査とは、過去の土地利用、施設の配置、扱っていた物質、事故・補修の記録などから、汚染のおそれがある場所と物質を絞り込む調査です。
土地取引の土壌汚染リスクは、まず履歴調査で絞り込み、その結果に応じて次の調査へ進む段階的な方法で確認します。すべての土地を際限なく調べるわけではありません。各段階の結果を見て、次の調査が必要かどうかを判断します。
地歴調査で分からない点が残れば、指定調査機関と相談し、土壌ガス、表層土壌、必要に応じて地下水や深い部分を調べます。法に基づく土壌汚染状況調査は、環境大臣または都道府県知事等の指定を受けた指定調査機関が実施します。
気をつけたいのは、売主の調査が買主の予定用途まで満たすとは限らない点です。住宅、店舗、倉庫では、掘る範囲も、求められる確認の水準も違います。買主が決まっているなら、試料を採る前に、調査の仕様と「どこまでで完了とするか」を共有します。
買主の調査を条件に契約する
買主候補と利用計画が決まっているなら、買主側の詳しい調査(デュー・デリジェンス)を受け入れ、その結果を売買条件に反映する方法があります。売主は先に全面調査する費用を抑えられ、買主は自社の利用計画に合う地点・深さ・物質を確認できます。
この方法の成否は、条件を決める順番で決まります。契約前または基本合意の段階で、少なくとも次を固めます。
- 調査できる場所、期間、方法と、掘ったあとの復旧
- 調査会社を誰が選び、誰が費用を負担するか
- 調査報告書と試料データを誰が保有し、誰に開示できるか
- どの結果で価格を変更し、どの結果で契約を解除できるか
- 追加調査と対策費の見積もり方法
- 独占交渉の期間中、売主が他の買主を探せるか
- 決済・所有権移転を、調査や対策の前後どちらに置くか
結果が出てから条件を話し合うと、同じ数値でも売主は「軽微」、買主は「開発が難しい」と評価が割れます。そのため、買主が調査する場合は、その結果を売買契約へどう反映するかを調査の前に決めておきます。
未調査のまま買取事業者へ売る
土壌汚染や地下設備の調査・対策を自社で行う事業者へ、調査しないまま直接売却する方法です。閉鎖後すぐに売りたい、先に費用を出しにくい、一般の買主では検討が進みにくい場合の選択肢になります。
ただし、「何も説明せず、すべて買主負担」で済むわけではありません。手元にある資料、知っている事故・漏えい、油臭・油膜の有無、過去の調査結果、そして確認できていない範囲を一覧にして渡します。買主には、提示額から何をいくら見込んだのかを、項目別に聞きます。
比べるのは査定額だけではありません。次の項目を同じ表に並べてください。
- 現地確認後の最終買取価格
- 地下タンク・建物・残存物の扱い
- 調査・撤去・対策費を誰が負担するか
- 契約後に減額・解除できる条件
- 売主に残る契約不適合責任の範囲、期間、上限
- 売買契約上の買主となる法人
- 決済日と、代金が確定する時点
\ 3つの売り方、同じ条件で比べられます /
売却前に集める資料7分類
資料がそろうほど、買主は費用を具体的に見積もれます。分からない部分をまとめて値引きされるリスクも抑えられます。手元にない資料は、存在しないと決めつけず、元の運営会社、消防署、施工会社、行政窓口などへ保管状況を確認してください。
| 分類 | 集める資料 | 何が分かるか |
|---|---|---|
| 土地 | 登記事項証明書、公図、地積測量図、境界資料、固定資産税の課税明細 | 売却する範囲、所有者、面積、境界 |
| 過去の利用 | 住宅地図、航空写真、旧図面、過去の事業者・営業期間、扱っていた油種 | 汚染のおそれがある時期と範囲 |
| 地下設備 | タンク・配管・計量機・注入口・油水分離槽の配置図、容量、材質、設置・更新年 | 撤去の対象と、重点的に確認すべき地点 |
| 点検・事故 | 気密検査、在庫差、漏えい検知、補修、事故、苦情の記録 | 漏えいの可能性と、その時期 |
| 廃止・撤去 | 危険物施設の廃止届、タンク洗浄・残油処理・撤去の記録、工事写真、産業廃棄物関係書類 | 廃止手続きの状況と、残っている設備 |
| 環境 | 過去の地歴・土壌・地下水調査、行政との協議記録、区域指定・解除の記録 | すでに分かっている汚染と、未調査の範囲 |
| 契約 | 土地賃貸借、事業用定期借地、特約店・運営契約、設備譲渡、原状回復の合意 | 誰が設備を所有し、誰が撤去・調査を負担するか |
給油取扱所の廃止届と地下タンク撤去の記録
ガソリンスタンドを閉鎖したときは、消防法上の廃止届も確認が必要です。
給油取扱所の用途を廃止した場合、所有者・管理者・占有者は、遅滞なく市町村長等へ届け出なければなりません(消防法第12条の6)。すでに廃止済みなら、元の運営者へ届出の写しと、タンクの洗浄・撤去・封鎖の記録を求めてください。
地下タンクの所有権と原状回復義務
土地の所有者と運営者が別なら、設備の所有権と原状回復義務を先に確認します。借地契約が終わったからといって、地下タンクが自動的に土地所有者の物になるとは限りません。
反対に、運営会社が撤去する約束になっていても、土壌調査や汚染対策まで同じ約束に含まれるとは限りません。
\ 跡地の土地も、査定を依頼できます /
ガソリンスタンド跡地は手取りで3案を比べる
提示価格がいちばん高い案が、手元にいちばん多く残る案とは限りません。査定を比べるときは、すべての案から同じ費用項目を差し引きます。
税引前のおおよその手取り = 最終的な売買代金 − 売主が負担する調査費 − 撤去・対策費 − 仲介手数料や契約・測量などの費用 − 決済までの保有費
条件付きの価格は、最初の提示額を使いません。現地調査のあとに確定する金額を入れます。
ローン残高は土地の価値を下げる費用ではないため、この式には入れず、決済時の入金額を確認する欄で別に差し引きます。譲渡所得税等も、取得費、所有期間、法人か個人かで変わるため、この表には含めません。税理士に確認してください。
【仮想例】700平方メートルの跡地で3案を比べる
- 土地は700平方メートル。旧ガソリンスタンドで、地下タンクは撤去済み
- 配置図と撤去時の写真は残っている
- 売主は6か月以内の決済を希望し、売主負担の総額を600万円以内に抑えたい
- 税金とローン返済は、この比較表に含めない
以下の金額と期間は、比べ方を示すための仮定であり、相場ではありません。
| 比較項目 | A:調査後に仲介 | B:買主調査を条件に売却 | C:未調査で直接売却 |
|---|---|---|---|
| 売却価格・想定価格 | 7,800万円 | 7,200万円 | 6,100万円 |
| 確定している売主費用 | 450万円 | 120万円 | 80万円 |
| 条件付きの追加負担 | 上限が未定 | 400万円が上限 | 0円 |
| 決済までの保有費 | 60万円 | 40万円 | 10万円 |
| 最低手取り(税引前) | 計算できない | 6,640万円 | 6,010万円 |
| 決済時期の仮定 | 6か月以上 | 4か月 | 1か月 |
最低手取りが計算できるかどうかは、減額・解除の条件と、引渡し後の負担の決め方で変わります。
| 売り方 | 減額・解除の条件 | 引渡し後に売主が負う負担 |
|---|---|---|
| A:調査後に仲介 | 買主が決まるまで未定 | 上限が未定 |
| B:買主調査を条件に売却 | 対策見積もりが1,000万円を超えた場合のみ解除 見積もりは2社から取得 | 追加負担は上記400万円までとする案を法務確認 |
| C:未調査で直接売却 | 開示済みの土壌・油・埋設物を理由とする後日の減額はしない | 開示済みの事項は買主負担とする案を法務確認 |
この例では、Aの売却価格がいちばん高く見えます。ただし、Aは追加負担の上限が決まっていないため、最低でいくら残るかを計算できません。売主の希望に照らすと、負担の上限と解除条件を決められるBが第一候補、早さを優先するならCが予備案になります。
実際の比較でも、「対策費が見積もりを超えたら誰が負担するのか」「買主が解除できる期限はいつか」「売却後に近隣への影響が判明した場合はどうするか」まで一行に書き込みます。分からない金額を0円にしないでください。「要見積もり」「上限未定」と記入します。空欄が残っている案は、手取りがまだ確定していません。
\ 手取りの計算は、査定額から始まります /
ガソリンスタンド跡地の売買契約で決める項目
土壌汚染の可能性がある土地では、契約書に「現況有姿(今ある状態のまま引き渡すこと)」「売主は契約不適合責任(引き渡したものが契約の内容と違ったときに売主が負う責任)を負わない」と書くだけでは足りません。
民法第572条は、担保責任を負わないという特約があっても、売主が知りながら告げなかった事実については責任を免れられないと定めています。
この規定は、売主の知らない汚染まで必ず調査するよう一律に求めるものではありません。だからこそ、知っている事実と、調べていない範囲を分けて書面に残しておく必要があります。
契約で個別に定める8項目
包括的な免責文言では足りません。事実と範囲を書き分けた個別の条項が必要です。
- 土地の予定用途
買主が住宅、店舗、倉庫など、何に使うのかを明らかにします。 - 開示した事実と資料
営業期間、設備、事故、調査結果、行政協議を、資料名と日付を付けて記録します。 - 調べていない範囲
未調査の地点、対象外の物質、深さ、地下水などを「未確認」と明記します。 - 調査と対策の完了条件
誰のどの報告書をもって完了とするかを、買主の用途に照らして決めます。 - 価格変更・解除の条件
どの結果で、いくら調整し、いつまで解除できるかを具体的にします。 - 設備・土壌・地下水への対応
タンク、配管、残油、汚染土壌、地下水、搬出土の負担を分けます。 - 売却後の責任
対象、期間、上限、通知の方法、第三者や近隣から請求があった場合の対応を定めます。 - 決済と所有権移転の時期
調査・対策・行政手続きとの前後関係がずれないようにします。
売主が買主に伝える情報には、土地の利用履歴、区域指定、調査結果に加えて、調べていない範囲も含めます。指定区域内の土地では、土地の形質変更に関する法令上の制限が重要事項説明の対象です。
契約条項は、宅地建物取引業者と、土壌汚染・不動産取引を扱う弁護士に確認してもらいます。売主が宅地建物取引業者で、買主が宅地建物取引業者ではない場合など、当事者の属性によって免責特約の制限も変わります。
ガソリンスタンド跡地の売却相談先
一社ですべてを担う必要はありません。土地価格、地下設備、土壌、契約では、確認を依頼する相手が異なります。
- 所在地の環境行政窓口
法令・条例上の調査のきっかけ、届出、区域指定を確認します。 - 管轄の消防署
給油取扱所の廃止、地下タンク等の手続きと記録を確認します。 - 指定調査機関
地歴調査、法定調査、試料採取、対策を技術面から検討します。 - ガソリンスタンド跡地の取引経験がある不動産会社
想定される買主、土地価格、仲介・買取の条件を整理します。 - 弁護士
調査条件、価格調整、解除、契約不適合責任、近隣対応を確認します。 - 税理士
譲渡所得、調査・対策費の税務上の扱い、税引後の手取りを確認します。
指定調査機関に確認する3点
見積書の総額だけでは、どこまで調べて終わりなのかが分かりません。次の3点を、見積書に書いてもらいます。
- 法令・条例のどの調査のきっかけに当たるのか。行政へ確認した内容
- 調べる物質・地点・深さと、省く範囲。その理由
- 追加のボーリングや地下水調査へ進む条件、追加単価、事前承認の方法
不動産会社・買取事業者に確認する5点
- 行政窓口へ何を確認し、どの回答を査定条件に反映しましたか。
- 地下タンク、配管、土壌、地下水について、提示価格に含めた費用を分けて示してください。
- 現地確認後に価格が変わる条件と、契約後に解除できる条件は何ですか。
- 売却後に売主へ残る責任を、対象・期間・金額の上限で示してください。
- 売買契約上の買主はどの法人で、調査・対策を実施する法人と同じですか。
「土壌汚染はすべて免責」「調査なしでも必ず高く買う」といった説明だけで契約を急がせる会社は避けます。最終価格、売主の負担、解除条件、契約の主体が書面でそろってから比べてください。
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ガソリンスタンド跡地の売却でよくある質問
ガソリンスタンド跡地の売却前に確認しておきたい5つの質問に答えます。
【まとめ】掘る前に義務・履歴・負担をそろえる
最初にやるのは、掘ることではありません。義務・履歴・負担を先にそろえることです。法令・条例上の調査義務がなければ、調査前でも売却できる場合があります。
ただし、調べていない範囲や、すでに分かっている漏えいを開示し、誰が調査・対策費を負担するかを契約で決める必要があります。
「調べていない」という状態は、価格からも責任からも消えません。かならずどちらかに残ります。
集めた資料をもとに、売主が段階的に調査する案、買主の調査を条件に売る案、未調査のまま引き受ける買主へ売る案を、手取り・期間・売却後の責任で比べてください。油臭、漏えい、地下水や近隣への影響、行政からの指示がある場合は、売却より安全確認が先です。
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参考資料
- e-Gov法令検索「土壌汚染対策法」
- 環境省「土壌汚染対策法」
- 環境省「土壌汚染対策法に関するQ&A」(更新日:2025年12月22日)
- 環境省「土壌汚染対策法に基づく届出・相談窓口」
- 横浜市「土壌汚染対策法及び横浜市生活環境の保全等に関する条例の土壌汚染対策に関するQ&A」(更新日:2026年10月)
- 東京都環境局「環境確保条例(土壌・地下水汚染対策関連)の概要」(更新日:2024年3月22日)
- e-Gov法令検索「土壌汚染対策法施行規則」
- 環境省「土壌汚染対策法の概要」
- e-Gov法令検索「土壌汚染対策法施行令」
- 環境省「自動車の燃料の性状に関する許容限度及び自動車の燃料に含まれる物質の量の許容限度」
- 東京都環境局「環境影響評価書(南多摩尾根幹線)8.3 土壌汚染」
- 環境省「油汚染対策ガイドライン」(公表日:2006年3月)
- 国土交通省「土地取引における土壌汚染問題への対応のあり方に関する報告書」(公表日:2003年6月30日)
- 環境省「土壌汚染対策法に基づく指定調査機関」
- 一般社団法人土壌環境センター「土壌汚染地の取扱い(土地取引と活用、土地評価について)」
- e-Gov法令検索「消防法」
- 総務省消防庁「火災予防・危険物規制事務に係る届出等様式について」
- e-Gov法令検索「民法」
- e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」
- 国土交通省「重要事項説明における各法令に基づく制限等についての概要一覧」
※日付を記載していない資料は、公表日・更新日の表示がない資料、または現行の法令データです。

