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農地売却の進め方|転用できない農地を売る方法・許可・税金

農地は、必要な手続きを踏めば売れます。宅地や駐車場に変えられない農地でも、農地として使う人へ売る道は残っています。

混同しやすいのが、「転用できるか」と「売れるか」です。この二つは別の話です。用途を変える許可が下りなくても、耕作を続ける農家や新規就農者へ引き継ぐことはできます。

ただし、普通の土地のように、買い手と値段を決めて名義を移すだけでは済みません。誰が買うのか、買ったあと何に使うのか。この二点で、必要な許可の種類(農地法3条・4条・5条)が変わります。

だから、最初に決めるのは売出価格ではなく、どのルートで売るかです。許可を取らずに進めると、権利の移転そのものが無効になったり、土地を元へ戻すよう求められたりします。まずは、農地がある市区町村の農業委員会へ相談してください。

最初の結論
  • 農地のまま売る:農地法3条の許可を受ける。農地バンク(農地中間管理機構)が作る計画で権利を移す方法もある
  • 買い手が宅地などへ転用する:農地法5条の許可。市街化区域内なら原則として届出
  • 自分で転用してから売る:農地法4条の許可または届出を受け、実際に転用を終えてから売る
  • 転用が認められない農地:耕作を続ける買い手、農業委員会のあっせん、農地バンクを当たる
  • 造成、砂利敷き、駐車場化、資材置場化は、窓口の確認と必要な手続きが終わるまで始めない
目次

売却ルートを決める前に確認する4項目

「農地のまま売るか、転用するか」から考え始めると、いま誰がその土地を耕しているか、誰の権利が残っているかを見落としがちです。次の4点を順に押さえると、手続きの入口を間違えにくくなります。

STEP
いまの状態は農地か

登記の地目で決めず、現在どう使われているかを農業委員会へ伝えます。

STEP
ほかに権利を持つ人がいないか

借りている人、耕している人、利用権、共有者、抵当権を確認します。

STEP
売った後、何に使われるか

耕作を続けるのか、買い手が転用するのか、自分で転用してから売るのかを決めます。

STEP
どの手続きへ進むか

農地法3条・4条・5条か、農地バンクの計画による方法かを確認します。

「農地」と「登記地目が田・畑」は同じとは限らない

農地に当たるかどうかは、登記簿の地目だけでは決まりません。いま実際に耕作へ使われているか、という実態を踏まえて判断されます。

登記地目が「畑」でも、正式な転用手続きを済ませ、長年宅地として使っている土地があります。逆に、登記地目が「雑種地」でも、現況が耕作地なら農地として扱われることがあります。売主の判断で決めず、地番と現況写真を用意して農業委員会に確認するのが確実です。

誰かに貸している農地なら、売主の一存で明渡しを求めることはできません。口約束でも、親族間の貸し借りでも同じです。賃貸借の合意解除、解約、更新拒絶には、農地法18条にもとづく許可や通知が関わることがあります。

契約を残したまま売るのか、返してもらってから売るのか。利用の実態と契約書を示して、農業委員会に確認してください。条文は、農林水産省「農地法17条・18条を含む現行条文対照表」に掲載されています。

権利関係に引っかかりがあれば、買い手を探すより先にそこを片づけます。問題がなければ、ルートは売った後の使い道だけで決まります。

農地の売却ルートは3つ。売った後の使い道で決まる

売り方は、土地の呼び名ではなく、売った後に誰が何へ使うかで決まります。まず、次の3つのどれに当たるかを確かめてください。

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売った後の使い道必要な手続き主な買い手まず確認すること
農地のまま耕作を続ける農地法3条の許可。または農地バンクが作る「農用地利用集積等促進計画」近隣の農家、規模を広げたい農業者、要件を満たす新規就農者、農地所有適格法人買い手が取得の要件を満たせるか
買い手が宅地・店舗・駐車場などへ転用する農地法5条の許可。市街化区域内は原則として事前届出建築主、事業者、転用後にその土地を使う個人立地の基準と事業計画が認められるか
売主が転用してから売る農地法4条の許可。市街化区域内は原則として事前届出転用工事と地目変更などを終えた土地を買う個人・事業者転用計画に実現性があるか。買い手がすでに決まり、売買と転用が一体なら5条ではないか
売った後の使い道で分かれる3つのルート

農地のまま所有権を移すときは、売主と買主が農業委員会へ申請し、農地法3条の許可を受けるのが原則です。許可を受けずにした権利移転は無効になります。農地バンクを通す場合は、農地バンクが作る「農用地利用集積等促進計画」で権利を移す方法もあります。

売却と同時に買い手が農地以外へ変えるなら、5条です。まぎらわしいのが4条で、これは売買のための手続きではありません。所有者が自分の土地を転用するための許可です。4条ルートでは、売主が許可または届出を受け、転用工事と必要な地目変更などを終えてから売ります。

買い手も用途もすでに決まっていて、売買と転用を一体で進めるなら、5条に当たる可能性があります。自己判断で4条を選ばないでください。

市街化区域なら、許可ではなく届出で足りるのが原則です。ただし、届出で済むのは農地法の話にすぎません。建築基準法、都市計画法、開発許可といった別の規制は残ります。

農地法上の区分は、農林水産省の「農地の売買・貸借・相続に関する制度について」と「農地転用許可制度について」にまとまっています。

転用できなくても、農地のまま売る道はある

転用のハードルが高い農地は、宅地用地や資材置場用地としては売りにくくなります。転用の条件だけを並べれば、「転用できないなら、もう売れない」という結論になりそうです。

ただ、その二つは別の話です。優良農地として転用が難しくても、耕作を続ける買い手への売却まで一律に禁じられるわけではありません。売り方を「宅地として高く売る」から「農地として引き継ぐ」へ切り替えると、相手の候補が見えてきます。

農地のまま買える人

農地法3条の許可では、買い手が取得後にその農地をきちんと使えるかが確認されます。主な判断要素は次の4つです。

  • 取得する農地を含め、所有・借受けしている農地を効率的に利用すること
  • 必要な農作業に継続して従事できること
  • 周辺の農地利用や地域の集積に支障を生じさせないこと
  • 法人が所有権を取得する場合は、原則として農地所有適格法人(農地を所有できる要件を満たした法人)であること

よく聞く「農家でなければ買えない」は、正確ではありません。2023年4月に、許可の要件だった下限面積が廃止されました。一定の面積に満たないという理由だけで取得できない、という扱いはなくなっています。制度変更の内容は、農林水産省「農地法の下限面積要件廃止に関する資料」が詳しく説明しています。

新規就農者でも、営農計画、働き手、機械や資金のめどを示し、ほかの要件を満たせば許可される余地があります。

ただし、名義だけ農家にする、実際には耕作しない、値上がりしたら転用する。こうした計画では認められません。候補者が見つかった段階で、買い手本人から農業委員会へ事前相談してもらうと、契約後の行き違いを減らせます。

分かれ目は、買い手が「もともと農家か」ではありません。取得後に耕作を続けられる計画と体制があるかです。

農地のまま売るとき、声をかける順番

買い手を「住宅用地を探している一般の人」だけに絞ると、候補は一気に狭まります。次の相手へ順に相談してください。

  1. 隣接地や近隣で耕作している農家
  2. 地域で規模拡大を希望する認定農業者など
  3. 具体的な営農計画を持つ新規就農者
  4. 農地所有適格法人
  5. 地域の農業委員会や農地利用最適化推進委員
  6. 都道府県の農地バンク

遠くの買い手より、すぐ近くで耕している人のほうが、その農地に価値を見いだすことがあります。隣の区画と一続きで使える、農機が入れやすい、用水と排水を一緒に管理できる。こうした条件は、近くにいる人にしか効きません。

転用できるかは、区域と農地区分を重ねて判断する

「青地だから無理」「白地なら転用できる」。農地の話でよく出る言い方ですが、これだけで結論は出せません。青地・白地は、農業のために守る区域の内か外かを指す通称にすぎないからです。

実際の見込みは、農業振興地域の指定、市街化区域か市街化調整区域か、農地区分、転用の目的、他の法律の許可を重ねて判断します。

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区分転用の基本的な扱い売主が取る行動
農用地区域内農地、いわゆる「青地」農業利用を確保する区域で、転用は原則として認められない。除外要件をすべて満たし、農業振興地域整備計画を変更できる場合に限り、その後に転用手続きへ進む農政担当課へ「農用地区域か」「除外の可能性があるか」を確認する
甲種農地・第1種農地良好な営農条件を備える農地として、転用は原則不許可。例外要件に当たる事業だけが検討対象になる農業委員会または転用担当課へ、農地区分と例外に当たるかを確認する
第2種農地周辺の他の土地では事業目的を達成できない場合などに許可され得る代替地の検討結果と具体的な事業計画を準備する
第3種農地市街地化が進んだ区域などで、原則として許可される他法令、接道、排水、資金計画を併せて確認する
市街化区域内の農地農業委員会への事前届出が原則届出だけで建築できると考えず、都市計画・建築・開発の部門にも確認する
区域・農地区分ごとの転用の基本的な扱い

「白地」は、農業振興地域の中にあるものの、農用地区域からは外れている土地を指すのが一般的です。青地より転用の余地はありますが、農地法の許可や届出は別に必要です。白地というだけで転用できると決まるわけではありません。

市街化調整区域、非線引き都市計画区域(市街化区域と市街化調整区域を分けていない区域)、都市計画区域外の農地には、市街化区域の届出特例は原則として使えません。市街化調整区域では、農地転用の許可に加えて、開発や建築の制限も別に確認します。

転用の許可は、土地の場所だけで決まるものでもありません。転用の目的が具体的か、資金を確保できるか、必要な許認可の見込みがあるか、周辺農地の営農や排水に悪影響を与えないかも審査されます。

買い手も用途も決まっていない状態で、「いずれ宅地にできるはず」と価格を付けるのは避けてください。

区域と農地区分の概要は、農林水産省の「農地転用許可制度について」と「農業振興地域制度について」で確認できます。地図上のおおよその状況は「eMAFF農地ナビ」でも見られますが、掲載情報だけを根拠に契約しないでください。最新の指定と手続きは、所在地の担当窓口で確かめます。

農地のまま売るときの相談先を比べる

広告の範囲を広げるより、農業に使う相手から順に当たるほうが早く進みます。

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方法向いている農地強み切り替えどき・注意点
隣接農家・近隣農家へ打診するいま使っている畑と一体で使いやすい農地地域の事情や用排水を分かっている地域に取得の希望がなければ、農業委員会・農地バンクへ相談先を広げる
農業委員会のあっせん・情報提供を相談する地域内の買い手を自分では探しにくい農地地域の農地利用を把握しており、買い手を引き合わせてもらえることがある農業委員会は査定機関ではない。あっせん制度の有無、対象、申込方法は自治体ごとに違う
農地バンクへ相談する地域計画や農地の集積と合い、担い手へつなげやすい農地公的な仕組みで貸借・集約を進められる主な機能は借受けと貸付け。買い取りは例外的で、売却を急ぐ場合や受け手がいない地域には向かないことがある
農地取引の実績がある不動産会社・取引支援事業者へ相談する自分だけでは買い手を探せない農地価格条件や契約を整理しながら買い手を探せる農地取引の実績、業務範囲、報酬、売却の見込みを書面で比べる
売却ではなく貸付けを検討する買いたい人はいないが、耕したい人はいる農地荒らさずに、将来の選択肢を残せる所有関係を完全に終わらせたい人には向かない。期間、更新、草刈り、用水費、返還条件を決めておく
農地のまま売るときの相談方法の比較

農地バンクは、農地中間管理機構が所有者から農地を借り受け、担い手(地域で中心になって農業を続ける農家や法人)へ貸し付ける仕組みが中心です。制度によっては買い入れと売り渡しもありますが、希望すれば必ず買い取ってもらえる制度ではありません。対象地域、地域計画、受け手の需要で扱いが変わるため、都道府県の農地バンクへ地番を伝えて確認します。役割の全体像は、農林水産省「農地中間管理機構(農地バンク)について」にまとまっています。

どうしても買い手が見つからない場合

売却先が見つからなくても、放置は避けてください。雑草、害虫、不法投棄、隣の農地への影響が広がるほど、引き継ぎ手はさらに遠のきます。

まずは、農業委員会のあっせん、農地バンクへの貸付け、近隣農家への貸付けを検討し直します。相続や遺贈で取得した土地なら、最後の選択肢として「相続土地国庫帰属制度」があります。

ただし、建物がある、境界を争っている、担保権や使用権が付いている、通常より管理費用がかかる。こうした土地は対象外になることがあります。審査手数料と、10年分の管理費に相当する負担金も必要です。国が無条件で引き取る制度ではありません。要件は、法務省「相続土地国庫帰属制度について」で確認できます。

最初の電話で伝える内容

相談先が分からないときは、市区町村の代表番号から農業委員会へつないでもらいます。次の内容を手元に置いてから電話すると、確認が早く進みます。

相談用メモ

「○○市○○町、地番○番の農地を売却したいと考えています。登記地目は田(または畑)、現況は○○、面積は○平方メートルです。農地のまま売る場合の3条許可、農用地区域の内か外か、農地区分、市街化区域か市街化調整区域か、地域のあっせん制度や農地バンクの窓口を確認したいです。分からない項目は、担当課を教えてください」

その場で転用の可否を確約してもらうことは期待できません。目的は、どの部署へ何を聞けばよいかと、必要な資料を押さえることです。電話した日時、部署名、担当者名、回答内容も記録しておきましょう。

用件別の相談先

農地の売却は、1人の専門家では完結しません。用件ごとに窓口が違うので、依頼できる範囲と報酬を先に確認します。

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確認・依頼したいこと主な相談先
農地法上の農地に当たるか、地域の受け手、3条・4条・5条の区分農業委員会
農用地区域、農振除外(農用地区域から外すこと)、地域計画市区町村の農政担当課
市街化調整区域、開発・建築の可否市区町村の都市計画・開発担当課
農地バンクの貸借・売買等事業都道府県の農地バンク
買い手探し、価格条件、売買契約農地取引の実績がある不動産会社・取引支援事業者
農地法の申請書類行政書士など。依頼できる業務の範囲を確認する
所有権移転、相続、抵当権抹消の登記司法書士
境界確認、測量、登記面積の訂正(地積更正)、地目変更土地家屋調査士
譲渡所得、特別控除、納税猶予税理士または税務署
契約の紛争、賃貸借の解除をめぐる争い弁護士
用件別の主な相談先

農地の売却価格は「同じ条件の成約事例」から調べる

農地の価格に、全国一律の相場はありません。同じ市内でも、転用の見込み、買い手の数、農機の進入路、用排水、区画の形、耕作の状況、貸借の有無、土地改良区(用水路などを管理する組織)の負担で変わります。

いちばん危ないのは、近所の宅地の単価に面積を掛けて売値を考えることです。この計算では、転用許可、造成、上下水道、接道、開発にかかる費用と、それが本当に通るかどうかの不確実性が、まるごと抜け落ちます。

現実的な水準は、次の順に絞り込みます。

  1. 国土交通省の「不動産情報ライブラリ」で、取引の種類を農地にし、同じ市町村や近隣地域の事例を探す
  2. 面積、時期、「今後の利用目的」を確認し、農地利用か転用前提かをできるだけそろえて、1平方メートル当たり、または10アール(1,000平方メートル)当たりへ換算する
  3. 農業委員会、近隣農家、農地バンクから、地域内の需要と利用条件を聞く
  4. 仲介や手続き支援を使うなら、同じ条件で複数の査定・見積もりを取り、価格の根拠と売却費用を比べる

不動産情報ライブラリの価格は、取引した当事者へのアンケートなどをもとに匿名化した未補正のデータで、統計調査ではありません。「今後の利用目的」が空欄の事例や、面積・時期・用途をそろえられない事例は、単純に平均せず、幅を見るために使います。1件の単価だけで売出価格を決めないでください。

価格に影響しやすい確認項目

  • 農用地区域、農地区分、市街化区域などの指定
  • 農地のまま使うのか、具体的な転用計画があるのか
  • 隣接する担い手が規模拡大を希望しているか
  • 公道から農機が入れるか、接道に問題がないか
  • 用水・排水・土地改良施設を利用できるか
  • 区画がまとまっているか、傾斜や不整形が強くないか
  • 耕作放棄、雑木、残置物、土壌、盛土などの問題がないか
  • 賃借権、利用権、抵当権、共有持分などが残っていないか
  • 土地改良区の賦課金や決済金など、引継ぎ時の負担があるか

先に草を刈り、残置物を片づければ高く売れる、とは限りません。買い手が使わない整備に費用をかけても、その分は回収できません。現況写真を見せ、どこまでやれば足りるかを候補者や仲介者に確かめてから発注します。

農地売却の流れ

順番を間違えると、許可が下りないまま契約費用や整備費用だけが出ていきます。使える制度と許可の見通しを先に確かめ、買い手と条件を詰めるのはその後です。

STEP
所有関係と現況をそろえる

登記事項証明書、公図、地積測量図、固定資産税の課税明細、現況写真を用意します。相続した農地なら、いまの登記名義、遺産分割、共有者も確認します。貸している農地なら、契約書も探してください。

STEP
農業委員会と関係部署へ事前相談する

地番を伝え、農地法上の農地に当たるか、農用地区域か、農地区分は何か、市街化区域と市街化調整区域のどちらか、3条・4条・5条のどれが必要かを確認します。申請の締切、標準処理期間(申請から結果が出るまでの目安)、必要書類、あっせんの有無も聞いておきます。

STEP
農地のまま売るか、転用を伴うかを決める

転用の見込みが低いなら、早い段階で、耕作を続ける買い手へ軸足を移します。転用を検討できる場合も、用途、資金、接道、排水、他の法律の許可まで具体化しないうちに、転用後の価格を上乗せしないでください。

STEP
買い手を探し、取得・利用の要件を確認する

近隣農家、農業委員会、農地バンク、農地取引に詳しい事業者へ順に相談します。農地のまま売るなら、買い手が3条許可の要件を満たせそうか、本人から農業委員会へ確認してもらいます。

契約前に税制の経路を確認

売主と買主が直接進める通常の取引を終えてから、公的なあっせんを受けた形へ後づけで変更することはできません。農地売却の特別控除を使う可能性があるなら、契約前に農業委員会・農地バンクへ対象の手続きを確認し、税務署または税理士に適用の可否と必要書類を確認してください。

相続税の納税猶予を受けている農地は、売却や転用によって猶予が打ち切られ、税額と利子税を納めることになる場合があります。該当するなら申告書の控えを用意し、農林水産省「農地に関する税制特例」も見たうえで、契約前に税務署または税理士へ相談してください。

STEP
許可を前提に契約条件を決める

売買契約を先に結ぶなら、「必要な許可が下りたときだけ契約の効力が生じる」という停止条件を付けます。不許可だったときの白紙解除(契約をなかったことにする扱い)、手付金の返還、申請への協力、費用の負担、引渡しの条件も書き込んでください。

契約書は、農地取引に詳しい不動産会社や弁護士などに確認してもらいます。許可が下りる前に、代金全額の支払いや引渡しを終えてはいけません。

STEP
許可申請または届出を行う

農地のまま売るなら3条、買い手が転用するなら5条、自分で転用するなら4条の手続きを進めます。オンライン申請は、提出先の農業委員会がeMAFFに対応している場合に使えます。転用の案件では、都市計画法など他の法律の手続きも並行して確認します。

STEP
決済・所有権移転登記・確定申告を行う

許可書などを確認したうえで、代金の決済、引渡し、所有権移転登記を進めます。売却益が出たら、原則として売った年の翌年に譲渡所得を申告します。特別控除を使う可能性があるなら、売る前の段階で、必要なあっせん・計画・証明書を確認しておきます。

農地売却で準備する書類

必要な書類は、自治体、売却ルート、土地の状態で変わります。次の表を準備の土台にして、提出先の最新の様式と必ず照合してください。

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段階主な書類・情報確認する目的
所有・境界の確認登記事項証明書、公図、地積測量図、固定資産税課税明細、本人確認書類所有者、地番、面積、抵当権、境界資料を把握する
現況・利用状況の確認現況写真、作付けの状況、進入路、用排水、賃貸借契約、利用権の資料農地法上の農地に当たるか、引渡しの条件、いま使っている人を確認する
相続関係の確認遺言書、遺産分割協議書、戸籍関係書類、相続登記の資料売主になれる人と、共有者の同意を確認する
区域・規制の確認農用地区域、農地区分、都市計画、地域計画、他法令の調査結果3条売買か、転用を検討できるかを判断する
農地のまま売る3条許可申請書、位置図、土地の登記事項、買い手の営農計画や機械・労働力の資料など買い手が農地を適正に使えるか審査を受ける
転用を伴う4条または5条の申請・届出書、事業計画、配置図、資金証明、排水計画、他法令の資料など立地と、事業を実現できるかについて審査を受ける
契約・決済売買契約書、許可書・届出受理書、印鑑証明書、登記識別情報、固定資産評価証明書など許可などの条件が満たされたかを確認し、決済と登記を行う
農地売却で準備する書類

境界があいまいでも、どの売却でも確定測量が要るわけではありません。ただし、買い手が境界の確定を条件にする、転用する面積を正確に出す必要がある、隣地と争いがある。こうした場合は、土地家屋調査士への依頼が必要になります。見積もりを取る前に、どこまでの精度が求められるかを確かめましょう。

農地売却にかかる費用と税金

売却代金が、そのまま手元に残るわけではありません。手取りは、売買価格から税金と、売却に直接かかった費用を引いた額です。価格の低い農地ほど、相続登記や測量、残置物の撤去といった、金額のほぼ決まった費用が手取りを削ります。

譲渡所得税

個人が土地を売ったときの課税譲渡所得は、原則として次の式で計算します。

課税譲渡所得 = 売却代金 −(取得費 + 譲渡費用)− 適用できる特別控除

取得費には、買ったときの代金と、購入時の一定の費用が入ります。いくらで買ったか分からない場合は、売却代金の5%を取得費とみなせますが、実際の金額より小さくなれば、その分だけ課税される所得が増えます。古い売買契約書、領収書、通帳、相続時の資料を先に探してください。詳しくは、国税庁「取得費が分からないとき」が説明しています。

譲渡費用には、仲介手数料、売主が負担した売買契約書の印紙代、売却のために直接必要だった測量費などを入れられる場合があります。毎年の固定資産税、通常の維持管理費、修繕費は、原則として入りません。範囲は、国税庁「譲渡費用となるもの」で確認できます。

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所有期間の判定所得税等住民税合計税率
売却年の1月1日時点で5年超(長期譲渡所得)15.315%5%20.315%
売却年の1月1日時点で5年以下(短期譲渡所得)30.63%9%39.63%
所有期間別の譲渡所得の税率

所得税等には復興特別所得税を含みます。相続した土地は、原則として被相続人の取得日と取得費を引き継ぎます。

計算例

売却代金600万円、取得費200万円、譲渡費用60万円、特別控除なし、長期譲渡所得と仮定します。

  • 課税譲渡所得:600万円 − 200万円 − 60万円 = 340万円
  • 所得税等:340万円 × 15.315% = 52万710円
  • 住民税:340万円 × 5% = 17万円
  • 合計:69万710円

これは計算方法を示す例で、実際の税額ではありません。取得費、共有持分、ほかの譲渡損益、特別控除によって変わります。税率と計算方法は、国税庁「土地や建物を売ったとき」で確認できます。

農地売却で検討できる特別控除

決まった公的手続きを経て農地を譲渡した場合、譲渡所得から800万円、1,500万円、2,000万円を差し引ける制度があります。

ただし、金額の大きさほど使いやすい制度ではありません。適用されるのは、要件を満たす公的な手続きを踏んだ場合だけです。同じ売却で複数の制度を選び直したり、足し合わせたりすることもできません。差し引ける上限は譲渡益までで、控除額がそのまま現金で戻るわけでもありません。

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控除額の上限対象になり得る代表例売却前に確認すること
800万円農業委員会のあっせん、農地バンクへの譲渡、一定の農用地利用集積等促進計画による譲渡対象区域、譲渡先、あっせん・計画の要件、必要な証明書
1,500万円農業経営基盤強化促進法にもとづく買入協議を経て、農地バンクへ譲渡する一定の場合買入協議の通知、対象農地、手続きの順番
2,000万円地域計画の特例にもとづき、所有者の申出などを経て農地バンクへ譲渡する一定の場合地域計画、対象区域、申出、譲渡の時期、証明書
農地売却で検討できる特別控除

制度の概要は、農林水産省「農地の譲渡に係る税制特例」にまとまっています。

印紙税とその他の費用

紙で作る不動産売買契約書には、記載した金額に応じて印紙税がかかります。2027年3月31日までに作成する一定の契約書は、軽減措置の対象です。

契約金額軽減後の印紙税
10万円超50万円以下200円
50万円超100万円以下500円
100万円超500万円以下1,000円
500万円超1,000万円以下5,000円
1,000万円超5,000万円以下1万円
5,000万円超1億円以下3万円
不動産売買契約書の軽減後の印紙税

最新の金額は、国税庁「不動産の譲渡に関する契約書に係る印紙税の軽減措置」で確認してください。このほか、案件に応じて次の費用が発生します。

  • 仲介を依頼する場合の仲介手数料
  • 行政書士、司法書士、土地家屋調査士、税理士などへの報酬
  • 相続登記、住所・氏名変更、抵当権抹消など、売主側の登記費用
  • 境界確認や測量の費用
  • 草刈り、残置物撤去、建物解体など、合意した引渡し整備の費用
  • 土地改良区の賦課金、決済金、名義変更に伴う費用

依頼先は、提示された農地の価格だけで決めないでください。「売れたときに売主が負担する総額」「売れなかったときにかかる費用」「許可が下りなかった場合の費用」を、書面で確認します。

相続税を払った農地を売る場合

相続税を納めた人が、一定の要件を満たして相続財産を売った場合、相続税額の一部を取得費に加算できることがあります。期限は、相続開始日の翌日から、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までです。

要件と期限は、国税庁「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」で確認できます。

相続した農地を売る前に確認すること

相続した農地では、性質の違う二つの手続きが同時に走ります。農業委員会への届出と、法務局への相続登記です。

相続で農地を取得すること自体に、農地法3条の許可は要りません。ただし、農業委員会への届出は必要です。期限は「遅滞なく」とされ、運用上は、相続を知った時からおおむね10か月以内が目安になります。根拠は、農林水産省「農地法関係事務に係る処理基準」に示されています。

相続登記は、不動産を相続したと知った日から3年以内の申請が、原則として義務です。2024年4月1日より前に起きた相続で登記がまだの場合も、原則として2027年3月31日までが期限になります。

ただし、事情によって起算点が変わります。法務省「相続登記の申請義務化」を見たうえで、法務局や司法書士へ確認してください。

売却前には、次の順で整理します。

  1. 農業委員会への相続届出が済んでいるか確認する
  2. 遺産分割を終え、相続登記を行う
  3. 共有なら、農地全体を売ることについて、共有者全員の意思を確認する
  4. 借りている人、耕作している人、利用権、納税猶予、土地改良区の負担を確認する
  5. 3条売買、農地バンク、転用を伴う売却のどれを選ぶか決める

手続きの全体像は、農林水産省「農地を相続したときの手続」が参考になります。

農地売却で避けたい失敗

許可の前に、造成・駐車・資材置場の利用を始める

砂利を敷く、土を入れる、車を置く、資材置場にする。どれも農地転用に当たることがあります。無許可の転用には、工事の停止や原状回復の命令、罰則が設けられています。売るための見栄えを整えるつもりでも、窓口に確認するまで土地の使い方を変えないでください。違反した場合の扱いは、農林水産省「違反転用について」にまとめられています。

転用許可を前提にした高値だけで募集する

転用の審査では、場所だけでなく、何に使うのか、その事業が本当に実現するのかまで見られます。「宅地にできる」という未確認の説明は、後で買い手との争いになります。農地としての価格と、転用が認められた場合の価格を混ぜず、前提条件を書き添えてください。

許可条件を入れずに売買契約を結ぶ

許可が必要な取引で、不許可だったときの扱いを決めていないと、手付金や費用の負担でもめます。許可が下りることを停止条件にし、白紙解除、返金、申請への協力、期限を契約書へ入れてください。

登記簿やインターネット地図だけで判断する

登記地目、現況、農用地区域、農地区分、都市計画は、それぞれ別の情報です。同じ土地でも一致するとは限りません。地図は調べ始めの入口にとどめ、地番を示して農業委員会と関係課へ最新の情報を確認します。

耕作者・共有者・土地改良区を後回しにする

貸している農地、共有の農地、土地改良区の区域内にある農地は、売主一人の判断では決済まで進めない場合があります。誰の同意が要るのか、いくら負担が生じるのかを、最初に洗い出してください。

「1円なら手放せる」と無償・低額の譲渡を急ぐ

買い手が見つからないからといって、費用と税務を整理しないまま1円売買や贈与へ走るのは危険です。相手が個人か法人か、時価とどれだけ差があるかによって、贈与税や、時価で売ったとみなして課税されるみなし譲渡課税が問題になることがあります。

登記費用、賦課金、これからの管理責任も書面で決め、契約前に税務署または税理士へ確認してください。

農地売却に関するよくある質問

農業委員会は農地を買い取ったり、買い手を必ず紹介したりしますか?

農業委員会は、農地を買い取る機関でも、買い手の紹介を保証する機関でもありません。ただし、地域によってはあっせんや情報提供を行い、地域の担い手や農地バンクへつないでもらえる場合があります。所在地の制度と申込条件を確認してください。

草が伸びた耕作放棄地なら、農地法の手続きは不要ですか?

草が伸び、しばらく耕していないだけでは、自動的に農地でなくなるわけではありません。現況や、農地として再生できるかどうかを踏まえて農業委員会が判断します。自己判断で造成、伐採、資材置場としての利用を始めないでください。

売却まで何か月かかりますか?

買い手探し、農業委員会の申請締切、農用地区域からの除外、転用許可、他の法律の手続きによって大きく変わり、全国一律の期間はありません。最初の相談のときに、該当するルートの受付締切、標準処理期間、追加で必要な手続きの有無を確認してください。

まず農業委員会で「売るルート」を確定する

農地の売却で最初に決めるのは、いくらで売るかではありません。農地のまま引き継ぐのか、買い手が転用するのか、自分で転用してから売るのか。この三択を確定させることです。

転用が認められない農地でも、要件を満たす買い手が見つかり、必要な手続きを踏めば、農地のまま売れる可能性があります。

地番、登記情報、面積、現況写真をそろえ、農業委員会で3条許可の条件と、地域の受け手を確認してください。転用も視野に入れるなら、農用地区域、農地区分、都市計画、他の法律の順に調べます。

許可や届出の見通しが立つ前に、造成や用途の変更、条件を付けない契約、代金全額の受取りを進めないこと。この順序さえ守れば、いま売却を止めているのが何なのか、次に何をすればよいのかを切り分けられます。

参考資料

以下は2026年7月24日に確認した公的資料です。制度や様式は改正されることがあるため、実際の申請前に、所在地の農業委員会、自治体、税務署などで最新情報をご確認ください。

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