3,000万円で売れた実家の取得費が、150万円として扱われる。購入時の契約書が見つからないと、こういう計算になります。売った金額の5パーセントを取得費とみなすルール(概算取得費)があるためです。
つまり残りの2,850万円は、ほぼ全額が利益として課税の対象になります。実際には親が2,000万円で買っていたとしても、証明できなければ関係ありません。40年前の契約書が一枚見つかるかどうかで、納める税金は274万円変わりました。
契約書が手元になくても、購入価格をたどる方法は残っています。この記事では、失われた購入価格の調べ方と、損をしないための正しい申告手順をまとめました。
- 売却代金の5%で計算する「概算取得費」の仕組みと注意点
- 契約書がなくても購入価格を証明できる代替資料と、その探し方
- 【シミュレーション】実額申告と概算取得費での「税額の違い」
- 土地と建物の内訳が分からないときに使える4つの計算方法
- 申告後にやり直しが難しい理由と、提出前の最終チェック項目
※本記事の税制に関する記載は、国税庁が公表する令和7年4月1日現在の法令等および令和7年分の申告の手引きに基づいています。情報は2026年8月時点のものです。個別の判断は所轄の税務署または税理士にご確認ください。
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※2025年9月19日-23日 「サイト評価に関する調査」より
取得費が分からない不動産でも譲渡所得は計算可能
売買契約書が手元にない。この状態でも、譲渡所得の申告はできます。国税庁は「売った土地建物が先祖伝来のものであるとか、買い入れた時期が古いなど、取得費が分からない場合には、売った金額の5パーセント相当額を取得費とすることができます」と示しています。申告そのものが不可能になるわけではありません。
売却額の5パーセントを取得費にできる
売却額の5パーセントを取得費とみなす方法を、概算取得費といいます。
国税庁が挙げている例は次のとおりです。土地建物を3,000万円で売却し、取得費が不明だった場合。売った金額の5パーセントにあたる150万円を取得費とすることができます。
根拠は租税特別措置法第31条の4です。条文はこう定めています。
個人が昭和二十七年十二月三十一日以前から引き続き所有していた土地等又は建物等を譲渡した場合における長期譲渡所得の金額の計算上収入金額から控除する取得費は、所得税法第三十八条及び第六十一条の規定にかかわらず、当該収入金額の百分の五に相当する金額とする。ただし、当該金額がそれぞれ次の各号に掲げる金額に満たないことが証明された場合には、当該各号に掲げる金額とする。
この条文は、原則とただし書きの2つに分かれています。原則は「収入金額の百分の五」、つまり売った金額の5パーセント。ただし書きにある「当該金額」が5パーセントの金額、「次の各号に掲げる金額」が実際の取得費です。5パーセントのほうが実額より少ないと証明された場合にだけ、実額に切り替わります。
ここは誤解されやすいところ。納税者が好きなほうを選べる制度ではありません。実額を証明できなければ、自動的に5パーセントが取得費になります。証明できたときだけ、実額に置き換わります。
この扱いの適用範囲を広げているのが、国税庁の通達である租税特別措置法関係通達31の4-1でした。
使える場面として国税庁が例示しているのは、先祖伝来の土地であるケース、買い入れた時期が古いケース。どちらも「購入時の資料が残っていなくても不自然ではない」状況を指しています。
税額が大きくなりやすい理由
概算取得費を選ぶと、売却額の95パーセントがそのまま課税対象の計算に残ります。
譲渡所得は、売った金額から取得費と譲渡費用を引いて計算する仕組み。取得費が小さければ小さいほど、差し引いた後に残る金額は大きくなります。3,000万円で売った物件の取得費が150万円なら、残る2,850万円から譲渡費用を引いた金額に税率がかかります。
ここに税率がかかります。所有期間が5年を超える長期譲渡所得なら、所得税15パーセントと住民税5パーセント。仮に譲渡費用を100万円とすると、課税長期譲渡所得金額は2,750万円になりました。所得税だけで412万5,000円です。
購入当時の価格が1,500万円だったと証明できていれば、課税対象は1,400万円まで下がります。所得税は210万円。差は200万円を超える計算になります。
まず実額を探すのが基本
概算取得費は、実額が分からないときに使う代替手段です。最初から選ぶ方法ではありません。
もっとも、実際の取得費が売った金額の5パーセントを下回るケースもあります。国税庁も「実際の取得費が売った金額の5パーセント相当額を下回る場合も、売った金額の5パーセント相当額を取得費とすることができます」と明記しています。バブル期以前に安く手に入れた土地が高値で売れた場合が、その典型。
つまり概算取得費は「不利な妥協」と決まっているわけではありません。実額がいくらになるかを先に見積もり、5パーセントと比べて有利なほうを選ぶ。この順序が正しい進め方です。
では、実額の取得費は税額をどこまで下げるのでしょうか。
まずは売却価格の目安を知ることから。無料の一括査定で、複数社の査定価格を比べられます。
\ 概算取得費は売却価格の5%。まず相場を知る /
取得費が税額を左右する仕組み
課税長期譲渡所得金額=譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額。この式のなかで、取得費は引き算される側に立っています。取得費が100万円増えれば課税対象は100万円減り、長期譲渡所得なら約20万円の税額が変わる計算です。
譲渡所得の計算式と取得費の位置づけ
譲渡所得は、売却代金そのものではなく「売却代金から取得費と譲渡費用を引いた残り」に課税されます。
取得費の定義は所得税法第38条に置かれていました。
譲渡所得の金額の計算上控除する資産の取得費は、別段の定めがあるものを除き、その資産の取得に要した金額並びに設備費及び改良費の額の合計額とする。
「取得に要した金額」だけでなく「設備費及び改良費の額」も足せる、と読めます。購入代金に加えて、後から施した増改築や設備の追加も取得費に含まれるということ。同条第2項は、家屋のように使用や期間の経過で減価する資産について、この合計額から減価の額を差し引くと定めています。建物の減価償却は、この第2項が根拠になっています。
税率は所有期間によって変わりました。譲渡した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えていれば長期譲渡所得。所得税15パーセント、住民税5パーセントです。5年以下なら短期譲渡所得となり、所得税30パーセント、住民税9パーセントに跳ね上がります。
令和7年中に売却した場合の具体的な境目は、国税庁が示しています。令和元年12月31日以前に取得した土地や建物なら長期譲渡所得。令和2年1月1日以後に取得したものは短期譲渡所得です。相続した実家のように何十年も前から家族が所有していた不動産は、まず長期に該当します。
これに復興特別所得税が加わります。平成25年から令和19年までは、基準所得税額の2.1パーセントを所得税と併せて申告・納付する決まり。所得税が400万円なら、8万4,000円が上乗せされます。
譲渡費用も忘れずに引けます。不動産を売却したときにかかる税金のうち、売るために直接かかった費用が対象で、仲介手数料、測量費、売買契約書の印紙代、借家人に支払った立退料、建物を取り壊して土地を売るときの取壊し費用などです。一方で修繕費や固定資産税は譲渡費用になりません。
購入価格と取得費は同じではない
購入時に支払った代金だけが取得費、と考えていると損をします。
取得費は、購入代金に取得のためにかかった費用を足し、建物については減価償却費相当額を差し引いて求めるもの。足す要素と引く要素の両方があります。
たとえば3,000万円で買った土地建物。仲介手数料や登録免許税、不動産取得税を合わせて150万円払っていたなら、その150万円も取得費に含められます。一方で建物部分は、住んでいた年数に応じて価値が目減りしたものとして扱われます。
足し忘れは税金の払いすぎに直結。引き忘れは申告漏れを招きます。足すほうも引くほうも、両方を確認してください。
含められる費用と含められない費用
購入時に納めた税金は、多くが取得費に入ります。
国税庁が取得費になるものとして挙げているのは、登録免許税(登記費用も含みます)、不動産取得税、特別土地保有税(取得分)、印紙税です。ただし業務の用に供される資産の場合、これらの税金は取得費に含まれません。自宅や相続した実家のように事業に使っていない不動産であれば、対象になります。
税金以外に含められる費用も並べておきましょう。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 立退料 | 借主がいる土地や建物を購入するときに、借主を立ち退かせるために支払った金額 |
| 造成費用 | 土地の埋立てや土盛り、地ならしをするために支払った費用 |
| 土地の測量費 | 土地の取得に際して支払った測量費 |
| 訴訟費用 | 所有権などを確保するために要した費用 |
| 建物の取壊し費用 | 建物付の土地を購入し、おおむね1年以内に取り壊した場合の建物の購入代金や取壊し費用 |
| 借入金の利子 | 購入資金の借入利子のうち、実際に使用開始する日までの期間に対応する部分 |
| 違約金 | 既に締結した購入契約を解除し、他の物件を取得することとした場合に支払った金額 |
訴訟費用には注意点があります。所有権を確保するための訴訟費用は取得費に入ります。しかし相続財産である土地を遺産分割するためにかかった訴訟費用等は、取得費になりません。同じ「裁判の費用」でも扱いが分かれるところ。
建物は減価償却で目減りする
土地はそのままの金額を使えます。建物は違いました。
自宅など事業に使っていない建物の場合、減価償却費相当額は次の式で求めてください。
建物の取得価額 × 0.9 × 償却率 × 経過年数 = 減価償却費相当額
償却率は建物の構造ごとに決まっています。事業に使っていない建物なら、耐用年数の1.5倍の年数に対応する旧定額法の償却率を使う決まり。
| 区分 | 木造 | 木骨モルタル | (鉄骨)鉄筋コンクリート | 金属造① | 金属造② |
|---|---|---|---|---|---|
| 償却率 | 0.031 | 0.034 | 0.015 | 0.036 | 0.025 |
金属造①は軽量鉄骨造のうち骨格材の肉厚が3ミリメートル以下の建物、金属造②は肉厚が3ミリメートル超4ミリメートル以下の建物を指しています。
経過年数には端数処理のルールがありました。6か月以上の端数は1年とし、6か月未満の端数は切り捨てます。築30年7か月なら31年、築30年5か月なら30年として計算する形です。
上限も設けられています。減価償却費相当額は、建物の取得価額の95パーセントが限度。どれだけ古い建物でも、取得価額の5パーセントは取得費として残ります。
仮に木造の建物を2,000万円で取得し、35年間住んだ場合。2,000万円×0.9×0.031×35年=1,953万円。ただし限度額は取得価額の95パーセントにあたる1,900万円です。減価償却費相当額は1,900万円で止まります。建物部分の取得費は100万円まで下がる計算です。
ここまでは資料が揃っている前提の話。次は、その資料がないところから始めます。
\ 取得費が分かれば納める税金も見えてきます /
購入価格を調べる方法
売買契約書は、購入時の仲介会社や借入先の金融機関に控えが残っていることがあります。購入時に仲介した不動産会社、融資を受けた金融機関、親の遺品を保管している親族宅。契約書そのものがなくても、購入価格を裏づける資料は複数の経路に散らばっています。
契約書や領収書を探す場所
まず探すのは、金額と支払先が両方分かる書類です。
| 資料 | 探す場所・入手先 | 補足 |
|---|---|---|
| 売買契約書・重要事項説明書 | 自宅の書類保管場所、貸金庫、親族宅、購入時の仲介会社 | 最も強い裏づけになります |
| 領収書・振込控え | 同上 | 金額と支払先の両方が分かります |
| 住宅ローンの金銭消費貸借契約書 | 借入先の金融機関 | 借入額から購入価格を推測する手がかりです |
| 預金通帳の出金記録 | 取引金融機関 | 取引履歴の保存期間には限りがあります |
| 登記事項証明書 | 法務局、登記情報提供サービス | 抵当権設定額のほか、建築年月日と構造も確認できます |
| 購入時のパンフレット・価格表 | 自宅、分譲会社 | 補強資料として使えます |
| 固定資産税の課税明細書 | 市区町村 | 建物の構造や床面積の確認に役立ちます |
相続した実家の場合、被相続人が几帳面に書類を保管していれば見つかる可能性は高まります。長く空き家になっている実家を売るケースでは、書類の所在から確認していくことになります。仏壇の引き出し、権利証と一緒に束ねられた書類、古い金庫など。実際に「権利証の封筒に契約書が同封されていた」というケースもあるようです。
これらの資料があれば必ず認められる、とまでは言えません。最終的な判断は税務署が個別に行います。それでも資料が何もない状態よりは、税務署に説明できることが増えるので、あるに越したことはないでしょう。
住宅ローン契約書と預金通帳からたどる
融資を受けて購入したなら、金融機関側に記録が残っているかもしれません。
金銭消費貸借契約書には借入額が記載されています。当時の住宅ローンは物件価格の8割程度までという融資基準が一般的でした。当時の融資基準が8割なら、借入額を0.8で割った金額が購入価格の目安になります。
預金通帳の出金記録も手がかりです。売買代金の支払いは高額になります。同じ時期に大きな出金があれば、それが購入代金である可能性は高いでしょう。
ただし通帳の取引履歴には保存期間があります。数十年前の記録が残っているとは限りません。金融機関に照会する場合は、口座番号と時期をできるだけ絞ってから問い合わせるとスムーズです。
登記簿の抵当権設定額から推定する
登記事項証明書には、当時設定された抵当権の債権額が記録されています。
住宅ローンを組んだ際、金融機関は融資額に応じた抵当権を設定します。この設定額は借入額とほぼ一致するのが通例。借入額に当時の自己資金を足した金額が、購入価格の目安になります。
注意したいのは、抵当権設定額イコール購入価格ではないという点です。自己資金の割合は家庭ごとに違います。設定額はあくまで下限の手がかりと考えてください。
登記事項証明書は法務局で取得できます。手数料は書面請求で600円、オンライン請求で郵送を受け取る場合は520円、オンライン請求で窓口交付を受ける場合は490円です。
証明書として使うのではなく内容を確認するだけなら、登記情報提供サービスという選択肢もあります。不動産登記情報(全部事項)の利用料金は330円。所有者事項だけなら140円です。個人として登録する場合は登録手数料が300円かかります。
このサービスにはひとつ制約があります。対象になるのはコンピュータ化されている登記情報です。古い紙のままの閉鎖登記簿は含まれません。昭和期の情報を追う場合は、法務局の窓口で相談するほうが確実です。
登記事項証明書は、建築年月日と建物の構造を確かめる用途でも使えます。この2つは後で建物の取得費を計算するときに必要になる情報です。
相続した不動産は被相続人の取得費を引き継ぐ
相続で受け取った不動産の取得費は、相続したときの評価額ではありません。
国税庁は「相続や贈与によって取得した土地建物を売った場合の取得費は、被相続人や贈与者がその土地建物を買い入れたときの購入代金や購入手数料などを基に計算します」と示しています。親が買ったときの金額まで遡って考える仕組みです。
取得の時期も同じように引き継がれます。被相続人が30年前に購入した不動産なら、相続してすぐ売却しても長期譲渡所得として扱われます。相続した年から数え直すわけではありません。
相続した不動産を売却する場合、相続人自身が支払った費用も加算できます。業務に使われていない土地建物を相続や贈与により取得した際に、相続人や受贈者が支払った登記費用や不動産取得税の金額も取得費に含まれます。相続登記でかかった登録免許税は、この対象です。
ここで見落としやすい条件がひとつあります。国税庁は注記でこう書いていました。取得費が分からない場合などには、売った金額の5パーセント相当額を取得費とできます。ただしこの場合には、相続人などが支払った登記費用などを取得費に含めることはできない、と。
概算取得費を選んだ瞬間、相続登記でかかった費用は加算できなくなります。「5パーセント+相続登記費用」という計算は認められません。相続した不動産で概算取得費を検討している方は、この点を必ず押さえておいてください。
被相続人の購入資料が見つかるかどうかで、使える計算方法は変わります。
\ 資料集めと並行して相場もチェック /
概算取得費の計算手順と税額シミュレーション
3,000万円で売却し、譲渡費用が100万円かかり、所有期間は30年。この条件で実額1,500万円と概算取得費150万円を並べると、税額の差は274万円になります。ひとつずつ数字を追っていきましょう。
計算式と使える条件
概算取得費は「売った金額 × 5パーセント」で求めます。
売却額が3,000万円なら150万円。5,000万円なら250万円です。譲渡費用や特別控除はこの計算に関係しません。売却額だけで決まる、単純な仕組みになっています。
長期譲渡所得と短期譲渡所得のどちらでも使えます。租税特別措置法第31条の4は条文上「長期譲渡所得の金額の計算上収入金額から控除する取得費」に関する規定です。国税庁は質疑応答事例で「短期譲渡所得の金額の計算についても適用して差し支えありません」と回答しています。譲渡価額5,000万円の事例では、5,000万円×5パーセント=250万円を取得費とできる、と示されました。
なお、この質疑応答事例には但し書きが付いています。照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり、具体的な取引では異なる課税関係が生じることがある、という趣旨です。自分のケースに当てはまるかどうかは、税務署で確認しておくと安心でしょう。
3,000万円で売却した場合の税額
実額と概算で、どれだけ違うのか。同じ条件で並べてみます。
| 項目 | 実額取得費で申告 | 概算取得費で申告 |
|---|---|---|
| 売却価格 | 3,000万円 | 3,000万円 |
| 取得費 | 1,500万円 | 150万円 |
| 譲渡費用 | 100万円 | 100万円 |
| 課税長期譲渡所得金額 | 1,400万円 | 2,750万円 |
| 所得税(15パーセント) | 210万円 | 412万5,000円 |
| 復興特別所得税(2.1パーセント) | 4万4,100円 | 8万6,625円 |
| 住民税(5パーセント) | 70万円 | 137万5,000円 |
| 税額合計 | 約284万4,100円 | 約558万6,625円 |
差額は約274万2,525円。この試算は所有期間が5年を超える長期譲渡所得を前提とし、居住用財産の3,000万円特別控除は適用していません。相続した実家に自分が住んでいなかった場合や、賃貸に出していた物件を売った場合が該当します。
自分がずっと住んでいた家を売るなら、3,000万円の特別控除を使えるかもしれません。特別控除を引いた後の金額に税率がかかります。税額は大きく下がります。前提条件によって税額が動く点にはご注意ください。
274万円の差が出るなら、契約書を探すために数日を使う価値はあるはずです。
売却価格が変われば概算取得費も税額も変わります。まずは無料で複数社の査定価格を比べてみてください。
土地と建物の内訳が不明なとき
一括で買った土地建物は、取得費の計算で土地と建物を分けなければなりません。建物だけ減価償却の対象になるからです。
契約書に内訳が書かれていない。このケースは決して珍しくありません。国税庁は区分の方法を段階的に示しています。
| 方法 | 使える条件 | 計算 |
|---|---|---|
| ①契約書の記載を確認する | 契約書等に建物と土地の価額が記載されている | 記載された価額で区分します |
| ②消費税額から逆算する | 建物に課税された消費税額が分かる | 建物の消費税額 ×(1+税率)÷ 税率 |
| ③標準的な建築価額表を使う | 契約で区分されていない | 建築単価 × 床面積(中古は償却費相当額を控除) |
| ④購入時の時価の割合で分ける | 契約で区分されていない | 建物と土地の購入時の時価の割合で区分します |
この4つには優先順位があります。国税庁は建築価額表について「契約書等により土地と建物の価額が区分して記載されている場合、建物に係る消費税額が判明しているためこれを消費税率で割り戻すことにより建物の価額が把握できる場合は、使用しません」と明記しました。①と②で分かるなら、③には進まないという整理です。
②を使う場合、購入した時期の消費税率が必要になります。
| 期間 | 1+消費税の税率 | 消費税の税率 |
|---|---|---|
| 平成元年4月1日〜平成9年3月31日 | 1.03 | 0.03 |
| 平成9年4月1日〜平成26年3月31日 | 1.05 | 0.05 |
| 平成26年4月1日〜令和元年9月30日 | 1.08 | 0.08 |
| 令和元年10月1日〜 | 1.10 | 0.10 |
経過措置により旧税率が適用されている場合もあります。契約日と引渡日がまたいでいるケースでは、契約書の記載を確認してください。
土地には消費税がかかりません。契約書に消費税額の記載があれば、それは建物にかかった分だけを意味します。この消費税額から建物価格を計算できます。
譲渡所得の内訳書への書き方
申告に使うのは「譲渡所得の内訳書」という書類です。取得費の欄に、計算した金額を記入します。
建物の標準的な建築価額表を使って建物の取得価額を計算した場合、追加の手続きがありました。国税庁は「建物の標準的な建築価額による建物の取得価額の計算をしたものは、『□標準』に□してください」と案内しています。チェック欄への記入を忘れないでください。
このチェックを入れると、どの方法で建物の取得価額を計算したかが税務署に伝わります。どうやってその金額を導いたかが伝われば、確認の連絡も減らせるでしょう。
\ 売却価格が変われば納める税金も変わります /
取得費を推定する3つの方法と限界
書類が何も出てこなかった。この段階で選択肢は2つに分かれます。素直に5パーセントを使うか、統計データから当時の価格を推定するか。後者には有効なケースと、認められない可能性の両方があります。
市街地価格指数から土地を計算する
市街地価格指数は、一般財団法人日本不動産研究所が公表している地価の指数です。
全国198都市内の調査地点の地価を、年2回調査しています。3月末時点と9月末時点。最新の発表は2026年3月末現在のものです。あわせて全国木造建築費指数も公表されており、こちらは県庁所在都市(那覇市を除く)の木造建築費を年2回調査したものになります。
取得費の推定では、売却時点の指数に対する取得時点の指数の割合を、売却価格に掛ける方法が使われます。売却価格を当時の地価の水準に置き換えて考える方法です。
国税不服審判所の裁決に、この方法が登場した事例があります。土地建物を一括譲渡し、いずれの取得価額も不明だった事案です。原処分庁は建物の取得価額を着工建築物構造別単価から算定し、土地については市街地価格指数を基に算定しました。譲渡価額31,500,000円から建物の取得費6,279,624円を控除した25,220,376円に、譲渡時である平成9年9月の六大都市を除く市街地価格指数(住宅地)6,826に対する、取得時である昭和59年3月の当該価格指数5,241の割合を乗じて19,364,194円と計算しています。審判所は「いずれも合理性があり、当審判所においても、これを不相当とする理由は認められない」と判断しました。
ここで区別しておきたいことがあります。この裁決は、税務署側が用いた推計方法を審判所が合理的と認めたものです。納税者が市街地価格指数を使って認められた事例ではありません。 同じ手法でも、誰がどの場面で使うかによって位置づけは変わります。
指数そのものの入手方法も押さえておきましょう。3月末時点の調査は5月下旬、9月末時点の調査は11月下旬にホームページ上で公表されます。冊子は3月末時点調査が6月中旬、9月末時点調査が12月中旬に発売され、価格は1冊あたり本体600円と税です。全国官報販売協同組合の販売サイト、全国の官報販売所、最寄りの書店での取り寄せで入手できます。
費用をかけずに確認する方法もありました。WEB会員(無料)サイトでは、過去10回分の全国(平均)指数、六大都市を除いた全国(平均)指数、六大都市(平均)指数のPDFを閲覧できます。なおEXCEL等データでのダウンロード販売は行われていません。
路線価や公示地価からたどる
相続税の路線価も、当時の地価水準を知る材料になります。ただし大きな制約があります。
国税庁の「路線価図・評価倍率表」で閲覧できるのは、令和8年分から平成30年分までの9年分だけです。それより古い年分はウェブ上に公開されていません。昭和や平成初期に購入した不動産の場合、この方法はインターネットだけでは完結しないことになります。
紙の冊子であれば、過去分にたどり着ける可能性が残っています。路線価図は各国税局または大蔵財務協会が冊子として刊行してきました。公共図書館が所蔵している例もあります。たとえば広島市立中央図書館は「財産評価基準書路線価図 平成19年分〔島根県〕」(広島国税局編・発行)を参考閲覧室書庫に所蔵しており、館内で閲覧できます。
図書館で探す際に知っておきたいのが、書名の変更です。国立国会図書館の書誌情報には「平成3年分までの書名:相続税財産評価基準路線価図」と記録されています。平成3年分以前を「路線価図」という名前で検索しても見つかりません。 旧書名で調べ直してみてください。
さらに古い時代の資料も、まったく存在しないわけではありません。「昭和37年分相続税財産評価基準書:宅地の路線価設定地域図を除く」(仙台国税局)のような刊行物が確認できます。ただし地域と年分の網羅性は保証されません。お住まいの地域の分が見つかるとは限らない点は、あらかじめご承知おきください。
図書館の所蔵は、その館が属する国税局の管内分に限られる例が目立ちます。全国どこの分でも見られるわけではありません。国立国会図書館サーチを使えば、どの図書館が何を所蔵しているかを調べられます。
もうひとつの手がかりが、国土交通省が公表している公示地価です。国土交通省は標準地の価格を毎年公表しています。路線価と同じく、当時の地価水準を知る材料になりました。ただし、こちらもさかのぼれる年分には限りがありました。購入時期の分が公開されているかどうかを、先に確認してください。
どちらの指標を使うにしても、地価の水準を当時に換算した金額は推定値です。実額を示す資料が出せるなら、そちらを優先してください。
建物は標準的建築価額表から計算する
建物については、国税庁自身が計算方法を用意しています。
「建物の標準的な建築価額表」は、建築着工統計(国土交通省)の構造別の建築物の数、床面積の合計、工事費予定額を基に、1平方メートル当たりの工事費予定額を算出したものです。国税庁は、建物と土地を一括で購入していて購入時の契約に区分の記載がない場合などに、建物と土地の価額の区分の一方法として使えると案内しています。
計算式は購入形態によって分かれました。
- 新築を購入した場合:建築年に対応する建築単価 × その建物の床面積(延床面積)
- 中古を購入した場合:(建築年に対応する建築単価 × 床面積)- 建築時から取得時までの経過年数に応じた償却費相当額
マンションの場合、床面積は専有部分の床面積によっても差し支えないとされています。
主な年の建築単価は次のとおりです(単位は千円/平方メートル)。
| 建築年 | 木造・木骨モルタル造 | 鉄骨鉄筋コンクリート造 | 鉄筋コンクリート造 | 鉄骨造 |
|---|---|---|---|---|
| 昭和40年 | 16.8 | 45.0 | 30.3 | 17.9 |
| 昭和45年 | 28.0 | 54.3 | 42.9 | 26.1 |
| 昭和50年 | 67.7 | 126.4 | 97.4 | 60.5 |
| 昭和55年 | 92.5 | 149.4 | 129.7 | 84.1 |
| 昭和60年 | 104.2 | 172.2 | 144.5 | 96.9 |
| 平成元年 | 123.1 | 237.3 | 193.3 | 128.4 |
| 平成5年 | 150.9 | 300.3 | 227.5 | 159.2 |
| 平成10年 | 158.6 | 225.6 | 203.8 | 138.7 |
| 平成15年 | 152.7 | 187.3 | 179.5 | 131.4 |
| 平成20年 | 156.0 | 229.1 | 206.1 | 158.3 |
| 平成25年 | 159.9 | 258.5 | 203.8 | 164.3 |
| 令和元年 | 170.1 | 363.3 | 285.6 | 228.8 |
| 令和5年 | 204.1 | 366.7 | 314.3 | 281.1 |
令和7年分の「譲渡所得の申告のしかた」に掲載されているのは昭和54年分以降です。ただし国税庁のホームページには昭和34年分まで遡った表が公開されています。手引きだけを見て「古すぎて載っていない」と諦める必要はありません。
建築年月日と建物の構造は、売却した建物の登記事項証明書で確認できます。
国税庁が公表している実例を見ておきましょう。鉄筋コンクリート造・床面積80平方メートルのマンションを、昭和61年3月に4,200万円で購入したケースです。契約では土地と建物の価額が区分されていませんでした。昭和61年の鉄筋コンクリート造の建築単価は149,500円。149,500円×80.00平方メートル=11,960,000円が建物の取得価額になります。この物件を令和7年に6,900万円で売却した場合、取得費は35,703,060円、譲渡費用は2,373,000円(仲介手数料2,343,000円と収入印紙代30,000円)。3,000万円の特別控除を適用した結果、長期譲渡所得金額は923,940円、納める所得税及び復興特別所得税は122,000円と計算されています。
推定が認められないこともある
推定は、あくまで実額が分からない場合の代替手段です。
先ほどの裁決で審判所はこう述べています。取得時期は判明しているが取得価額を直接証する契約書等の資料の提出がなく、その額が不明なものについては、その費用を実額により算定することができないから、その部分については推計の方法によって算定せざるをえない、と。実額を示す資料が出せるなら、推計を使う場面ではないということです。
3つの方法の税務上の位置づけには、はっきりした差があります。
| 比較軸 | 市街地価格指数 | 路線価・公示地価 | 標準的な建築価額表 |
|---|---|---|---|
| 対象 | 土地 | 土地 | 建物 |
| 公表主体 | 日本不動産研究所 | 国税庁・国土交通省 | 国税庁 |
| 遡れる範囲 | 冊子・WEB会員で過去分を確認 | ウェブは平成30年分まで、それ以前は図書館の冊子 | 昭和34年〜令和5年 |
| 入手費用 | 冊子は本体600円と税、WEB会員は無料 | ウェブは無料 | 無料 |
| 税務上の位置づけ | 国税庁が示した手法ではありません | 国税庁が示した手法ではありません | 国税庁が区分の一方法として掲載 |
建築価額表は国税庁自身が用途を明記して公開しているもの。市街地価格指数と路線価による推定は、国税庁が手法として示したものではありません。推定した金額が受け入れられるかどうかは、資料の説得力とともに個別に判断されます。
推定計算を検討するなら、次の注意点も押さえておきたいところです。
\ 推定の前に、いまの相場を確かめる /
申告前に確認したい注意点
申告書を提出した後で契約書が出てきた。この順序になると、取り返すのは難しくなります。取得費の判断は、提出前に済ませておきたいところ。
申告後の更正の請求は難しい
納めすぎた税金を取り戻す手続きが、更正の請求です。
期間は決まっています。国税庁は「更正の請求ができる期間は、原則として法定申告期限から5年以内です」と示しています。期限内であれば、手続き自体は可能です。
ただし請求すれば必ず通るわけではありません。概算取得費は、納税者が自ら選んで申告した方法です。後から「やはり実額で計算したい」と申し出ても、当初の申告が誤りだったと言えるかどうかが問われます。
逆に、実額で申告した後に計算誤りが見つかり、追加で納税が必要になるケースもあります。この場合は修正申告です。過少申告加算税がかかることもあるでしょう。
| 状況 | 割合 |
|---|---|
| 調査の事前通知前に自主的に修正申告した場合 | かかりません |
| 事前通知後(更正を予知する前)の修正申告 | 5パーセント(新たに納める税金が「当初の申告納税額」と「50万円」のいずれか多い金額を超える部分は10パーセント) |
| 調査後の修正申告・更正を受けた場合 | 10パーセント(同じ超過部分は15パーセント) |
気づいた時点ですぐ動けば、負担は軽くなります。放置して調査を受けてからでは遅いのです。
実額と概算は併用できない
「土地は実額、建物は概算」という組み合わせを考える方がいます。この計算は認められません。
相続した不動産の場合、影響がはっきり出ました。国税庁は、概算取得費を使う場合には相続人などが支払った登記費用などを取得費に含めることはできないと明記しています。相続登記で登録免許税を10万円支払っていたとしても、概算取得費を選べばその10万円は消えてしまうのです。
実額で申告するなら、被相続人の購入代金に相続人が支払った登記費用や不動産取得税を足せます。概算取得費を選ぶなら、売却額の5パーセントだけ。どちらか一方です。
この選択は、土地と建物をまとめた全体について行うものと理解しておいてください。なお相続した不動産には、相続から3年以内の売却で使える特例も別に用意されています。
どちらが有利かを先に確かめる
概算取得費が不利とは限りません。
国税庁は、実際の取得費が売った金額の5パーセント相当額を下回る場合も5パーセント相当額を取得費とできる、と示しました。5パーセントが下限として働くわけです。
条文のただし書きは、5パーセントより実額が大きいと証明されたときに実額へ切り替える仕組みでした。実額が5パーセントを下回るなら、切り替わりません。証明できなければ、5パーセントがそのまま取得費になります。
判断の基準はシンプルです。実額の取得費が売却額の5パーセントを上回るなら実額を証明する価値があります。下回るなら証明しても税額は変わりません。3,000万円で売るなら、境目は150万円になります。
先祖代々の土地のように取得価額がごく小さいケースでは、概算取得費のほうが大きくなることがあります。仮に明治期から所有していた土地を2,000万円で売却したとしましょう。当時の取得価額を証明できたとしても、その金額は概算取得費の100万円を下回る可能性が高いはずです。この場合は概算取得費を選ぶほうが税額は下がります。
まず実額を見積もる。次に売却額の5パーセントと比べる。そのうえで大きいほうを選ぶ。この3ステップを申告前に踏んでください。
迷ったら税務署や税理士に確認する
取得費の判断には、個別の事情が絡みます。
資料が部分的にしか残っていない。土地と建物で状況が違う。相続人が複数いて費用の負担者が分かれている。こうしたケースでは、一般的な説明だけで結論を出すのは難しくなります。
税務署では、確定申告の時期に相談窓口が設けられていました。手元の資料を持参して相談すれば、どの資料が取得費の裏づけになるかを職員に確認できます。利用は無料。
税額の差が数百万円規模になりそうなら、税理士に依頼する選択も現実的です。推定計算の資料作成まで含めて任せられます。
いずれにしても、申告期限の直前に資料集めを始めるのは避けたいところ。資料の取り寄せには時間がかかります。売却した年の年末までに資料集めを始めておくと、申告期限まで3か月以上の余裕ができます。
\ 申告前に売却価格を把握しておく /
売る前にできること
まだ売却していない段階なら、資料を探す時間も相場を調べる時間も確保できるはずです。概算取得費は売却価格に連動する仕組みです。いくらで売れそうかを先に知っておけば、税額の見通しも立てられます。
売却価格が分かると税額の見通しが立つ
概算取得費は「売った金額の5パーセント」。売却価格が決まらないと、取得費も決まりません。
3,000万円で売れれば概算取得費は150万円。4,000万円なら200万円です。売却価格が上がれば概算取得費も増えます。ただし課税対象になる金額は、それ以上の幅で増えました。売却価格が1,000万円増えると、課税対象は950万円増える計算です。
だからこそ、売却前に相場を知る意味があります。想定価格が分かれば、実額を探す労力をどこまでかけるべきかも判断できます。売却額が1,000万円程度なら概算取得費は50万円。実額との差が小さければ、探す手間に見合わないかもしれません。
査定額はあくまで目安であり、税額を確定させるものではありません。それでも、実額を探す労力をどこまでかけるかを決める材料にはなります。
複数社の査定で価格の幅を把握する
査定価格は会社によって差が出ます。得意なエリアや物件種別が違うからです。
1社だけの査定では、その金額が高いのか安いのか判断できません。不動産査定サイトの選び方を押さえておくと、依頼先を絞りやすくなります。複数社の査定を並べると、上限と下限の差がどのくらいあるか分かります。上限と下限が分かれば、税額のシミュレーションにも幅を持たせられるはずです。
一括査定の仕組みを使えば、一度の入力で複数社に依頼できます。訪問査定まで進む前に、机上査定の段階で比較してみるだけでも判断材料は増えるでしょう。
取得費の資料探しと並行して進めるのが効率的です。査定の結果を待つ間に、契約書や通帳を探す。この順序なら時間を無駄にしません。
まずは無料査定で、あなたの不動産の相場を確かめてみてください。
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よくある質問
必ず売却額の5パーセントで計算するのですか
必ずではありません。概算取得費は、実額が分からない場合に使える選択肢のひとつです。
国税庁は、実際の取得費が売った金額の5パーセント相当額を下回る場合も5パーセント相当額を取得費とできると示しました。5パーセントは下限として保証されているのです。租税特別措置法第31条の4のただし書きは、5パーセントより実額が大きいと証明されたときにだけ実額へ切り替える構造になっています。まず実額の取得費がいくらになるかを見積もってください。売却額の5パーセントを上回るなら、資料を集めて実額を証明する価値があります。
領収書がなくても実額を認めてもらえますか
領収書以外の資料でも、購入価格を説明できる場合があります。
売買契約書、住宅ローンの金銭消費貸借契約書、預金通帳の出金記録、登記事項証明書の抵当権設定額。これらは購入価格を裏づける材料になります。ただし、これらがあれば必ず認められると言い切ることはできません。最終的な判断は税務署が個別に行います。資料が部分的にしか残っていない場合は、申告前に税務署へ相談しておくと安心でしょう。
土地の取得費だけ分からないときは
土地と建物を分けて考えてください。
契約書に建物の価額が記載されていれば、その金額が建物の取得価額です。記載がなくても建物にかかった消費税額が分かる場合は、建物の消費税額×(1+消費税の税率)÷消費税の税率で建物の取得価額を計算できます。土地には消費税がかかりません。全体の購入価格から建物部分を引けば、土地部分が求められるという流れ。どちらも分からない場合は、建物の標準的な建築価額表を使う方法や、購入時の時価の割合で区分する方法があります。
建物の取得価額が不明なときの減価償却は
建物の取得価額を先に求めます。そのうえで減価償却の計算に進んでください。
国税庁の「建物の標準的な建築価額表」を使えば、建築年と構造から1平方メートル当たりの建築単価が分かります。この単価に床面積を掛けた金額が、新築購入の場合の建物の取得価額です。そのうえで、建物の取得価額×0.9×償却率×経過年数の式で減価償却費相当額を計算します。償却率は木造0.031、木骨モルタル0.034、(鉄骨)鉄筋コンクリート0.015、金属造①0.036、金属造②0.025です。建築年月日と構造は登記事項証明書で確認できます。
申告後に売買契約書が見つかったら
更正の請求という手続きがあります。ただし認められるとは限りません。
更正の請求ができる期間は、原則として法定申告期限から5年以内です。期間内であれば手続き自体は可能です。しかし概算取得費は納税者が自ら選んで申告した方法にあたります。当初の申告が誤りだったと言えるかどうかが問われる点は理解しておいてください。契約書が出てくる可能性が残っているなら、申告前に探し尽くしておくほうが確実です。
相続した不動産はいつの金額を使いますか
被相続人が購入したときの金額です。
国税庁は、相続や贈与によって取得した土地建物を売った場合の取得費は、被相続人や贈与者がその土地建物を買い入れたときの購入代金や購入手数料などを基に計算すると示しています。相続時の評価額ではありません。取得の時期も被相続人から引き継がれました。被相続人が30年前に購入した不動産なら、相続してすぐ売っても長期譲渡所得として扱われます。
昭和27年以前の取得でも使えますか
使えます。むしろ昭和27年12月31日以前から所有していた不動産が、条文上の本来の対象です。
租税特別措置法関係通達31の4-1は次のように定めています。措置法第31条の4第1項の規定は昭和27年12月31日以前から引き続き所有していた土地建物等の譲渡所得の金額の計算につき適用されるのであるが、昭和28年1月1日以後に取得した土地建物等の取得費についても、同項の規定に準じて計算して差し支えないものとする、と。つまり昭和28年以降に取得した不動産については、通達によって同じ扱いが認められているという構造です。取得時期にかかわらず使えると考えて差し支えありません。
出典
- 国税庁・No.3258 取得費が分からないとき(令和7年4月1日現在法令等)
- 国税庁・No.3252 取得費となるもの(令和7年4月1日現在法令等)
- 国税庁・No.3261 建物の取得費の計算(令和7年4月1日現在法令等)
- 国税庁・No.3208 長期譲渡所得の税額の計算(令和7年4月1日現在法令等)
- 国税庁・No.3211 短期譲渡所得の税額の計算(令和7年4月1日現在法令等)
- 国税庁・No.3270 相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期(令和7年4月1日現在法令等)
- 国税庁・No.2026 確定申告を間違えたとき(令和7年4月1日現在法令等)
- 国税庁・質疑応答事例 短期譲渡所得の計算上控除する取得費と概算取得費控除(令和7年8月1日現在の法令・通達等)
- 国税庁・租税特別措置法関係通達 措置法第31条の4関係(昭和46年8月26日付)
- e-Gov法令検索・租税特別措置法 第31条の4(令和8年8月12日施行)
- e-Gov法令検索・所得税法 第38条(令和8年8月12日施行)
- 国税庁・令和7年分 譲渡所得の申告のしかた(令和7年分)
- 国税庁・建物の標準的な建築価額表(昭和34年〜令和5年分)
- 国税庁・路線価図・評価倍率表(令和8年分)
- 法務省・登記手数料について(令和7年4月1日改定)
- 一般財団法人民事法務協会・登記情報提供サービス(登記手数料令第12条による料金)
- 一般財団法人日本不動産研究所・市街地価格指数(2026年3月末現在)
- 一般財団法人日本不動産研究所・市街地価格指数へのよくあるご質問について(2026年3月末現在調査分)
- 国税不服審判所・裁決事例集No.60 208頁(平成12年11月16日裁決)
- 国立国会図書館サーチ・財産評価基準書路線価図 平成19年分〔島根県〕(2007年 広島国税局発行)
