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差押えされた不動産は売却できる?解除して売る流れと期限別の対処法

この記事を読むとわかること
  • 差押え不動産を売却するための条件
  • 差押解除・競売取下げ・登記抹消の違い
  • 解除に回せる「配分可能額」の計算方法
  • 競売・公売の期限と相談先

差押えを受けた不動産でも、条件がそろえば売却できます。差押え後に結んだ売買契約が、それだけで無効になるわけではありません。

ただし、差押えを残したまま名義を移しても、買主はその取得を差押債権者や公売の買受人に対抗できません。競売・公売が進めば、不動産を失うおそれがあります。

売却するには、決済日に差押えの解除、競売申立ての取下げ、抵当権の抹消、所有権移転を連動して実行できる条件と書類をそろえる必要があります。まずは最新の登記、競売・公売の通知、決済予定日の精算額、売却見込額を確認してください。

競売・公売の期限が迫っているとき

入札や開札の日が近い場合は、通知書と登記の写しを用意し、差押えをした機関・債権者と弁護士へすぐに連絡してください。価格査定も並行して進めます。

売却代金と自己資金で必要額を用意できるなら通常売却、住宅ローンの完済額に届かないなら金融機関と条件を詰める任意売却を検討します。税の差押えがある場合は、税務署・自治体への解除条件の確認も必要です。

競売・公売が始まっていても、買受人の代金納付前であれば対応できる余地はあります。ただし、手続きが進むほど必要な同意や条件が増えるため、早めに動くことが重要です。

この記事は、2026年8月17日時点の法令・公的資料を基にした一般的な解説です。結論は、差押えの種類、債権の優先関係、手続きの段階、配分できる金額によって変わります。

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※2025年9月19日-23日 「サイト評価に関する調査」より

目次

差押え中の不動産は売買契約できても、決済・引き渡しで止まる

差押えは、お金を回収する側が「先に不動産を売られて取りはぐれる」のを防ぐための手続きです。回収する側には、税金を徴収する国や自治体と、貸したお金の返済を求める債権者があります。

民事執行法46条2項では、差押えの効力が生じた後に不動産を処分しても、その処分を差押債権者に対抗できないと定められています。国税庁の国税徴収法基本通達でも、差押え後に取得した所有権などは、公売の買受人に主張できないとされています。

差押えが付いたまま所有権移転登記が受理されることはあります。ただし、名義が変わっただけで差押えが消えるわけではなく、裁判所の競売や税の公売はそのまま進みます。買受人が代金を納付すれば、買受人が所有権を取得します。

売却は、次の3段階に分けて考えると整理しやすくなります。

  1. 売買契約を結ぶ
  2. 差押解除・競売取下げ・担保抹消の条件と必要書類をそろえる
  3. 決済日に支払い、権利の解除・抹消、所有権移転を連動して実行する

つまずきやすいのは2つ目と3つ目です。買主や住宅ローンを貸す金融機関は、購入後も競売・公売のおそれが残る不動産を通常は受け入れません。解除・抹消の条件や書類がそろわなければ、買主側の司法書士や金融機関が決済を止めるのが一般的です。

差押えの解除・競売の取下げ・差押登記の抹消・残債免除は別の手続き

どれも会話では「差押えを外す」の一言で済ませがちですが、中身も、手続きをする人も異なります。

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正式な処理何をするか主に手続きをする人
滞納処分による差押えの解除国税・地方税の回収手続きによる差押えの効力をなくす税務署・自治体など
競売申立ての取下げ対象となる競売申立てを取り下げる申立債権者が裁判所へ取下書を提出する
差押登記の抹消登記記録から差押えの記載を消す税務署長や裁判所書記官などが法務局へ手続きを依頼する
抵当権の抹消住宅ローンなどの担保登記を消す抵当権者の書類を使い、通常は司法書士が申請する
残債の免除売却後に残る借金を支払わなくてよい合意をする債権者との明確な合意が必要

たとえば、住宅ローンの債権者が競売を取り下げても、抵当権まで自動で消えるわけではありません。二重開始決定がある場合は、別の債権者による競売が続くこともあります。反対に、抵当権者との条件がまとまっても、自治体の差押えが残っていれば、まだ安全に決済できません。

\ 決済までに間に合うか、価格から逆算する /

誰が差し押さえたかで外し方が変わる|国税・地方税・裁判所・仮差押え

同じ「差押え」でも、外してもらう相手は違います。税務署なのか、自治体なのか、裁判所を通して手続きをした債権者なのか。ここを取り違えると、交渉そのものが空振りになります。

通知書だけで判断せず、土地と建物それぞれの最新の全部事項証明書を用意してください。

法務局の案内に沿って取得すると、権利部の「甲区」から所有権・差押え・仮差押えを、「乙区」から抵当権などを読み取れます。マンションなどの区分建物では敷地権の表示も確認し、読み方に迷ったら司法書士に見てもらいます。

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登記・通知に出る状態主な原因最初の連絡先売却前に確認すること
国税の差押え所得税、相続税、消費税などの滞納所轄税務署の徴収担当完納額、解除条件、公売日程、登記抹消の手続き
地方税の差押え固定資産税、住民税などの滞納自治体の納税・徴収担当滞納額、解除条件、公売日程、登記抹消の手続き
裁判所の差押え判決などに基づく強制競売競売を申し立てた債権者、代理人弁護士返済条件、競売申立ての取下げ
担保不動産競売住宅ローンなどの抵当権を使った競売金融機関・保証会社・債権回収会社(サービサー)売却価格と配分の承認、競売取下げ、抵当権抹消
仮差押え将来の強制執行に備えて財産を保全する手続き申立債権者、弁護士取下げ、保全命令の取消し、仮差押解放金の供託など

抵当権が登記されているだけなら、それ自体は差押えではありません。売却代金や自己資金でローンを完済し、決済と同時に抵当権を抹消できるなら、通常の売却で進められることがあります。

仮差押えは、所有者の判断だけでは外せない

仮差押えは、判決などによる強制執行ができるようになるまでに財産状態が変わり、将来の回収が困難になることを防ぐための暫定的な手続きです。争いに決着がついた後に行う差押えとは、目的も手続きも異なります。

所有者の一方的な意思だけでは外せません。債権者による申立ての取下げ、保全命令の取消し、決定で定められた仮差押解放金の供託など、状況に応じた手続きが必要です。相手と争っている段階で売買を約束せず、登記・決定書・訴訟資料を弁護士へ見せてください。

差押えが複数あるときは、参加差押えと二重開始決定も確認する

やっかいなのは、押さえている相手が複数いる場合です。差押えが2つ以上あれば、片方を外してももう片方が残ります。すでに差し押さえられた財産から別の税金も回収するため、後から手続きに加わる「参加差押え」も同じです。

裁判所の競売でも、別の債権者が二重に競売を申し立てていれば(二重開始決定)、先に申し立てた側が取り下げた後も、後の申立てに基づいて手続きが続くことがあります。最初に連絡してきた相手だけを見ず、登記と事件記録に出てくる名前をすべて書き出してください。

\ 相手が誰でも、まず売却額の把握から /

差押え不動産の売却ルート|通常売却・任意売却・税の差押解除の分かれ目

差押えの金額が大きいか小さいかだけで、売れる・売れないは決まりません。住宅ローン、遅延損害金、滞納税と延滞税・延滞金、ほかの担保付き債権、売却費用まで、決済日に動くお金をすべて並べてはじめて判断できます。

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現在の状態検討する売却ルート判断のポイント
売却代金と自己資金で、抵当権・差押えなどを外すための金額を用意できる通常売却決済と同時に差押解除・抵当権抹消を実行できるか
抵当権を外すための返済額に足りない任意売却担保権者が売却価格、代金の配分、抵当権抹消に応じるか
税の完納額に足りない税務署・自治体へ解除条件を確認してから判断国税・地方税それぞれの法令と運用上、解除の対象になるか
競売・公売が始まったが、入札・開札前至急、任意売却と取下げ・解除を並行調整買主探しだけでなく、日程と必要な手続きを同時に確定する
競売で最高価買受申出人が決まった後、代金納付前法律上は取下げの余地があるが、難度が高い原則として買受人などの同意が必要
直ちに弁護士へ相談する
公売の売却決定後、代金納付前公売の基礎となる国税等を完納できるなら、取消しを至急確認完納の範囲、証明書類、代金納付期限を徴収担当へ確認する
競売・公売の買受人が代金を納付した後元の所有者は売却できない買受人が所有権を取得している

担保のない借金が残るだけなら、その全額返済が所有権移転の条件になるとは限りません。売却の可否を分けるのは「すべての借金をゼロにできるか」ではなく、「引き渡しを妨げる差押え・仮差押え・担保を、決済までに処理できるか」です。ただし、無担保の債権者でも差押えや仮差押えをしている場合は、その処理が必要です。

差押えがあるときの任意売却とは|担保権者の承認で抵当権を外す

任意売却は一般に、売却代金だけでは住宅ローンなどの担保付き債務を完済できないときに、担保権者の承諾を得て、競売によらず不動産を売る方法を指します。

担保権者には、売却価格、売却代金の配分、控除する費用、抵当権抹消の条件を承認してもらいます。税の差押えがある場合は、この承認とは別に、税務署や自治体による差押解除が必要です。

住宅金融支援機構の案内でも、任意売却には売出価格の確認や抵当権抹消の承諾が必要とされ、売却後に債務が残る場合は返済義務が続くことが示されています。

これは同機構の運用例ですが、「売却の承認」「担保の抹消」「売却後に残る借金の処理」を切り分ける考え方は、ほかの債権者との調整でも重要です。

\ どのルートを選べるかは、価格で決まります /

差押え不動産を売却するまでの流れ8ステップ|登記の確認から決済・解除まで

「解除してから売る」と聞くと、先に差押登記を消し、それから買主を探す順番に思えます。ところが、納付や返済に売却代金を充てるつもりなら、先に解除するお金は手元にありません。

そこで先に固めるのは、解除そのものではなく、いくらを、いつ、どの方法で支払えば解除・取下げ・抹消に進めるのかという条件です。条件が固まってから、決済日に支払いと各手続きを連動させます。

STEP
最新の登記と通知書から、関係者を一覧にする

土地・建物の全部事項証明書を取り、差押通知、競売開始決定、公売公告、住宅ローンの残高資料、管理費・修繕積立金の滞納資料を集めます。

購入時の売買契約書や、取得費・譲渡費用の領収書もまとめておくと、売却後の税金の計算で困りません。

登記事項証明書には、取得した日より後の変化は載りません。売り出し前だけでなく、契約前と決済前にも、司法書士が最新の内容を確認できる段取りにします。

STEP
競売・公売がいまどの段階かと、次の期限を押さえる

裁判所名と事件番号を手掛かりに、物件の調査(現況調査)、期間入札、開札、売却許可、代金納付のどこまで進んだかを確認します。税の公売なら、公告番号、入札期間、最高価申込者の決定、売却決定日、代金納付期限を予定表へ書き出します。

通知をなくした場合も放置せず、本人確認書類を用意して担当窓口へ連絡してください。

STEP
「決済予定日ならいくらか」を書面でもらう

残高証明書に書かれた元金だけでは、必要額を判断できません。住宅ローンや事業融資の元金・利息・遅延損害金、国税と地方税の本税・延滞税・延滞金、競売や滞納処分にかかった費用、管理費・修繕積立金を、決済予定日現在の金額で取り直します。

この金額には有効期限があります。売却時期が延びれば利息や延滞金が増え、前回の数字では足りなくなることがあります。

STEP
売却価格と、返済・納付に回せる額を計算する

不動産会社には、仲介と買取を分けて査定してもらいます。金額の高さだけでなく、その価格で買主が見つかる見込み、必要な期間、売主の負担、価格が確定する時点まで聞いてください。

そこから、関係者が控除を認める費用と、先に支払う必要がある債権を引き、各関係者へ配分できる見込額を出します。

STEP
関係者全員から、解除・取下げ・抹消の条件をもらう

査定書、購入申込書、費用明細、配分案、決済予定日を示し、売却価格、必要な支払額、控除できる費用、必要書類、準備日数、回答の有効期限、売却後に残る債務の扱いを確認します。

電話で「たぶん外せます」と言われても、それを頼りに契約へ進むのは危険です。金額、条件、期限、担当者名を、書面かメールに残してください。

STEP
解除できなかった場合の扱いを、契約書に書き込む

債権者の最終承認より前に売買契約を結ばざるをえないときは、承認や解除・抹消が得られることを条件とし、実行できなかった場合の契約終了、手付金の返還、期限を契約書に明記します。

住宅金融支援機構の任意売却パンフレットでも、同機構の承諾前に契約する場合は、承諾が得られたときにはじめて契約の効力が生じる「停止条件」とする扱いが案内されています。ただし、実際に使う条項は案件によって異なります。そのまま流用せず、宅地建物取引士、弁護士、司法書士に状況へ合わせてもらいます。

STEP
決済日に、支払いと解除・抹消・名義変更を同時に動かす

司法書士が本人確認、登記内容、必要書類を確かめ、競売を申し立てた債権者や税務署・自治体と実行の順番を合わせます。買主の代金から、合意した配分で金融機関、税務署・自治体などへ送金し、競売取下げ、差押解除、抵当権抹消、所有権移転を進めます。

取下げ・解除・登記申請が登記記録へ反映される時刻はそろいません。買主の支払いだけが先に進まないよう、必要書類の受渡し、送金、取下げ・解除、登記申請を一つの決済手順としてつなぎます。

STEP
決済後に、登記と残った借金を突き合わせる

新しい登記事項証明書を取り、差押え・仮差押え・抵当権が残っていないかを処理予定表と照らし合わせます。売却後に債務が残る場合は、返済額、支払日、振込先、免除の有無を、合意書や返済計画で確かめてください。

\ STEP4の査定は、ここから始められます /

差押え解除に回せる金額を先に出す「配分可能額」の計算

査定額が滞納額を上回っていても、それだけでは売れると判断できません。差押えより先に支払う債権や必要経費があれば、差押えをした相手へ回せる額はその分だけ減るからです。

売却代金から、関係者が控除を認める費用と先に支払う債権を引いた「返済・納付に回せるお金」を、この記事では便宜上、配分可能額と呼びます。法令上の用語ではなく、初期判断のための概算です。解除を求める相手ごとに、次の式で計算します。

配分可能額の計算式

その相手への配分可能額 = 売却見込額 − 関係者が控除を認める売却費用 − その相手より先に支払う債権

出した金額を、担当者から書面で示された解除・抹消の条件額と比べます。

計算項目記入する内容
売却見込額仲介で見込む成約価格、または買取の最終提示額
売却に必要な費用仲介手数料、登記費用、測量費など。関係者が控除を認める範囲も確認する
先に支払う債権この差押えより先に配分する住宅ローン、税金などの決済日現在額
解除・抹消の条件額各債権者・税務署・自治体が示した支払額
不足額自己資金で補う額、または関係者と再調整する額

差押えや担保が複数あると、同じお金を二重に数える事故が起きます。相手ごとに、次の欄を1枚ずつ作ってください。

関係者別の確認欄記入する内容
対象となる差押え・担保種類、債権者・徴収機関、登記受付年月日・番号
書面で示された条件額決済予定日現在の金額、有効期限
配分予定額配分表でその関係者へ支払う金額
差額自己資金で補う額、または再調整が必要な額
当日に行う手続き競売取下げ、差押解除、抹消書類の受渡しなど

なお、どの債権を先に支払うかという優先関係は、登記に並んだ順番だけでは決まりません。税の法定納期限等、担保を設定した時期、債権の種類などが関わります。最終的な配分は、各債権者・徴収機関と専門家を交えて確定してください。

架空例|仲介と買取で、差押えをした債権者へ回せる額が320万円変わる

次の数字は、計算の手順を示すための架空例です。実際の支払い順や、控除できる費用を示すものではありません。

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項目仲介で売却する案不動産会社が買い取る案
売却見込額3,000万円2,600万円
認められる売却費用120万円40万円
先に精算する債権2,400万円2,400万円
差押えをした債権者へ回せる見込額480万円160万円

売却価格の差は400万円ですが、差押えをした債権者へ回せる額は320万円縮みます。仮に解除に必要な額が400万円なら、仲介案には届く余地があり、買取案はそのままでは成立しません。

ここが、期限に追われた売却で判断を誤りやすいところです。

早く売れることと、早く解除できることは同じではありません。急いで値を下げた結果、解除に必要なお金が足りなくなることがあります。見るべきなのは、期限内に、解除条件を満たす価格で決済できるかどうかです。

\ 仲介と買取で、解除に回せる額が変わります /

差押え解除の条件を債権者・税務署・自治体へ確認する8項目

「売却したいので差押えを外してほしい」だけでは、話が進みません。相手が具体的に検討できるのは、金額と日付が入った質問です。

そのまま使える確認文

所有する不動産の売却を検討しています。所在地は○○、決済希望日は○年○月○日です。次の点を、可能であれば書面またはメールで教えてください。

  1. 決済希望日時点の債務・滞納額と、その内訳
  2. 競売申立ての取下げ、差押解除、抵当権抹消に必要な支払額
  3. 売却価格の承認に必要な査定書・購入申込書などの資料
  4. 売却代金から控除を認める費用と上限
  5. 必要書類、準備日数、回答や精算額の有効期限
  6. 公売・競売の現在の段階と、次に来る期限
  7. 売却後に債務が残る場合の返済・免除条件
  8. 取下げ、解除、抹消登記の手続きを誰が、いつ行うか

税務署、自治体、抵当権者は別々の相手です。一つの窓口から得た了承は、ほかの差押えや担保には効きません。同じ物件について、誰の回答がまだ出ていないのかを一覧で管理します。

競売・公売が始まった後、いつまで任意売却できるか

「配当要求終期までなら売れる」「落札された瞬間に所有権を失う」。どちらもよく聞く説明ですが、別々の期限を混同しています。差押え不動産の売却では、価格と同じくらい日程の理解が結果を分けます。

裁判所の競売は、開札期日の前日までの取下げを目標にする

裁判所BIT「競売申立ての取下げ」によると、競売の申立ては、買受人が代金を納付するまで取り下げられます。ただし、最高価買受申出人が決まった後は、原則として最高価買受申出人または買受人と、次順位買受申出人の同意が必要です。

競売を申し立てた債権者の意思だけで確実に取り下げるには、入札結果を開ける日である開札期日の前日までに、取下書を裁判所へ提出する必要があります。

競売の段階任意売却への影響
開始決定後、期間入札前価格査定、債権者調整、買主探しを同時に進める
期間入札中〜開札前時間が短い
開札前日の取下書到達を逆算する
最高価買受申出人の決定後原則として買受人などの同意が必要となり、成立の確実性が下がる
売却許可決定の確定後、代金納付前所有権はまだ移っていないが、取下げ条件は厳しい
買受人の代金納付後買受人が所有権を取得し、元の所有者は売却できない

民事執行法76条・79条でも、買受けの申出後の取下げには同意が必要であり、買受人は代金を納付した時に不動産を取得すると定められています。

なお、裁判所が定める「配当要求の終期」は、配当を受けたい債権者が競売手続きへ参加するための締切です。任意売却の締切ではありません。売却日程は、開札、取下げに必要な同意、代金納付を軸に管理します。

税の公売は、公告・入札・売却決定・代金納付の日付を書き出す

税の公売は、公告、入札、最高価申込者の決定、売却決定、代金納付へ進みます。国税徴収法では、買受人は買受代金を納付した時に公売財産を取得します。

また、公売の基礎となっている国税等の完納が、買受人の代金納付前に証明された場合、税務署長は売却決定を取り消さなければなりません。ただし、これは「売却決定まで待ってよい」という意味ではありません。完納する範囲、証明書類、取消しの処理には確認が必要です。地方税の公売では窓口や取扱いが異なるため、公告を見つけたら徴収担当へ日程を確認してください。

納税の猶予・換価の猶予が認められても、差押登記が当然に消えるわけではない

国税には、災害、病気、事業の休廃止など一定の事情がある場合の納税の猶予と、一括で納めると事業継続や生活維持が難しくなる場合などに、公売などを待ってもらう換価の猶予があります。要件は国税庁の猶予制度案内で確認できます。

猶予によって公売までの時間を確保できることはありますが、猶予が認められただけで差押登記が当然に消えるわけではありません。一方、担保の提供や生活・事業への影響などにより、申請に基づいて差押えが解除される場合もあります。売却へ進むなら、猶予の可否だけでなく、対象不動産の差押解除と抹消手続きを別途確認してください。

国税は完納で差押解除。一部納付での解除は現行制度でも条件次第

国税徴収法79条関係基本通達によると、納付などで差押えに係る国税の全額が消滅したとき、徴収職員は差押えを解除しなければなりません。

解除の後は、同80条関係基本通達に沿って、税務署長が法務局へ差押登記の抹消を依頼します。正式には「抹消を嘱託する」といいます。納付した瞬間に、登記記録の表示まで自動で消えるわけではありません。

全額を納付できない場合にも、現行制度上、差押解除の余地が生じることがあります。たとえば、差押財産の価額が差押国税とそれに先立つ債権の合計額を著しく上回る場合や、徴収に適した別の財産を提供した場合です。ただし、不動産が不可分であると、差押超過だけでは解除されないことがあります。

国税庁の通達には、公売で入札がなかった場合などについて、任意売却に伴う解除の対象になり得る取扱いもあります。主な条件は、時価以上での売却、公売時の配当見込額以上の納付、国税の回収に支障がないことなどです。

ただし、任意売却を申し出れば一部納付で解除される、という一般的な制度ではありません。必要額と資料は所轄税務署が個別に判断します。地方税の差押えには国税の通達をそのまま当てはめず、自治体の担当部署へ別に確認してください。

\ 開札前に動けるかは、価格の把握しだい /

2027年4月1日から、国税の差押不動産に売却代金の納付による解除手続きが始まる

2026年度税制改正により、国税の差押えを受けた不動産を売却し、一定額を納付することで差押解除を申し出る手続きが新設されました。

2026年8月17日現在は施行前です

この新しい手続きは、いま進めている売却には使えません。施行日は2027年4月1日で、対象は国税の差押えを受けた不動産です。地方税の差押え、裁判所の競売、仮差押え、抵当権の抹消には適用されません。

財務省の改正解説によると、所得税法等の一部を改正する法律(令和8年法律第12号)により国税徴収法が改正され、関係政省令も公布されています。解除の申出が認められるには、次の条件がそろう必要があります。

  • 差押不動産が売却され、滞納者から解除の申出がある
  • 売却価額から、差押国税より先に支払う国税・地方税などの債権を引いた残額に相当する国税が納付される
  • 売却価額が所定の時価相当額を下回るときは、その時価相当額を基に納付額を計算する
  • 国税の回収に支障がないと認められる
  • 売却を証明する書類、評価資料、登記事項証明書などを添える

施行日は2027年4月1日です。財務省の政令一覧には、国税徴収法施行令の改正も掲載されています。実際に使う場面が来たら、その時点の法令、申出書の様式、必要書類、所轄税務署の案内を確認してください。

差押え不動産の売買契約・決済で外せない7つの確認

次のうち一つでも空欄が残るなら、条件を付けない売買契約や手付金の受領を急がないでください。

  • 差押え、参加差押え、仮差押え、抵当権の関係者をすべて特定した
  • 競売・公売の段階と、次の期限を確認した
  • 決済予定日時点のローン、税金、延滞金などの精算額がわかる
  • 配分可能額と自己資金で解除・抹消の条件額を賄えるか、不足額の扱いが決まっている
  • 関係者全員から、解除・取下げ・抹消の条件を確認した
  • 契約書に承認条件、解除条件、手付金の扱い、期限が反映されている
  • 決済日の送金、書類受渡し、取下げ・解除、登記申請を司法書士が確認できる

差押え不動産の売却で避けたい7つの行動

  • 差押えを買主に伏せたまま契約する
  • 親族や知人へ名義だけ移し、差押えから逃れようとする
  • 査定額だけを見て「これなら税金は払える」と決める
  • 一人の債権者の了承だけで、すべての登記を外せると思い込む
  • 解除条件を書面で確認する前に、高額な前払費用や広い委任状を渡す
  • 公売・競売の日程が動いているのに、買主探しだけを続ける
  • 「すぐ買える」という安い買取価格を、配分可能額を計算し直さずに受ける

親族の間で、実際に代金をやりとりする正当な売買そのものが禁じられているわけではありません。

ただし、名義を移しても差押えの効力は避けられません。適正な代金が支払われず、債権者を害する取引と判断されれば、取引の効力を争われるおそれもあります。価格、資金の流れ、解除条件、税務上の扱いは、通常の取引以上に明確にしておく必要があります。

\ 契約を急ぐ前に、価格の根拠を持つ /

差押え不動産を売却した後も残るお金|残債と譲渡所得

不動産を手放せば、借金と税金がすべて消えるとは限りません。決済が終わった後にも、二つの問題が残ります。

任意売却後に残った住宅ローン(残債)の返済と免除

売却代金が住宅ローンなどに届かず、債権者が抵当権抹消に応じても、残った借金が当然に免除されるわけではありません。免除するのか、分割でいくら払うのか、支払いが遅れたらどうなるのか。これらは売却の承認とは別の書面に残します。

引越費用も、必ず確保できるものではありません。売却代金から何を控除できるかは、債権者や徴収機関の承認によって変わります。

差押え不動産の売却でも譲渡所得の課税が生じることがある

売却代金をローンや滞納税の返済に使っても、それだけで譲渡所得がゼロになるわけではありません。国税庁の計算方法では、譲渡収入金額から取得費と譲渡費用を引き、適用できる特別控除があれば、さらに差し引いて譲渡所得を求めます。

購入時の売買契約書、購入代金や購入時の仲介手数料・登記費用の資料、売却時の仲介手数料、測量費、印紙代などの領収書は捨てずに残し、税理士または税務署へ尋ねてください。すべての支出が取得費や譲渡費用になるわけではないため、項目ごとの確認が必要です。

国税庁「譲渡所得の対象となる資産と課税方法」には、強制換価手続による譲渡所得が非課税となる場合も示されています。ただし、資力を失い、債務の返済が著しく難しいこと、強制換価手続による譲渡またはその執行が避けられないと認められる譲渡であること、譲渡代金の全部が債務の返済に充てられることなど、要件は限定的です。「差押え物件を売れば非課税」とは考えず、個別に判定します。

差押え不動産の売却相談先|税務署・弁護士・司法書士・不動産会社の使い分け

どこで詰まっているかによって、最初に連絡すべき相手は変わります。

確認したいこと主な相談先
国税の滞納額、猶予、差押解除、公売所轄税務署の徴収担当
住民税・固定資産税など、地方税の差押え自治体の納税・徴収担当
住宅ローン残高、任意売却条件、抵当権抹消金融機関、保証会社、債権回収会社(サービサー)
競売の取下げ交渉、複数債権者、仮差押え、法的な争い弁護士
差押え・抵当権の登記、決済手順司法書士
価格査定、買主探し、売却条件の整理差押え・任意売却の実務を扱う宅地建物取引業者
譲渡所得、税務書類、税務代理税理士

裁判所や法務局は手続きの案内をしますが、どの債権者へいくら配分すべきか、どの契約条項を使うべきかといった個別の法律判断まで代わってはくれません。

不動産会社は、「任意売却に強い」という広告だけで決めず、次を聞いてください。

  • 登記と通知書を誰が確認するか
  • 競売・公売の日程をどのように管理するか
  • 各債権者へ提出する査定書と配分案を作れるか
  • 連携する弁護士・司法書士の役割と費用
  • 仲介と買取それぞれの価格、期間、差押えをした債権者へ回せる金額
  • 解除できなかった場合の契約と手付金の扱い

説明があいまいなまま、媒介契約、売買契約、委任状を急がせる相手は避けてください。

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差押え不動産の売却に関するよくある質問

相談の場でよく出る質問を6つ挙げます。当てはまるものから読んでください。

差押えに関係する税金や債務を全額払えなくても売却できますか?

配分可能額と自己資金で解除・抹消の条件額を用意できるなら、各手続きを決済に連動させて売却できる場合があります。

足りないときの扱いは、抵当権者、競売を申し立てた債権者、税務署・自治体で異なります。それぞれの解除・取下げ条件を確認してください。

差押えを解除する前に売買契約を結べますか?

契約自体が常に無効になるわけではありません。ただし、解除・取下げ・抹消を実行できなければ、買主へ安全に引き渡せません。

承認前に契約する場合は、債権者の承認を条件にすること、承認されなかった場合の契約終了と手付金返還、期限を契約書で定めます。

差押えの解除には何日かかりますか?

全国共通の所要日数はありません。差押えの種類、完納か一部納付か、関係者の数、評価資料、公売・競売の段階によって変わります。

「納付した日」と「抹消が登記記録に反映された日」も同じとは限りません。担当者に必要書類と所要日数を聞き、余裕を持った決済日にします。

競売開始決定が届いた後でも任意売却できますか?

買受人の代金納付前なら、法律上は競売申立てを取り下げる余地があります。ただし、最高価買受申出人が決まった後は、原則として買受人などの同意が必要です。

確実性は大きく下がるため、開札期日の前日までに取下書が裁判所へ提出されるよう逆算します。

家族や知人に売れば差押えを避けられますか?

名義を移すだけでは、差押債権者や国に対して買主の取得を主張できず、競売・公売の効力を妨げられません。

実際に売買する場合も、適正価格、代金の支払い、関係者全員の解除条件、税務上の扱いを確認する必要があります。差押え逃れを目的とした形式だけの取引は行わないでください。

差押登記が消えれば、すぐ売却できますか?

差押登記のほかに、抵当権、仮差押え、別の差押え、参加差押えが残っていないか、最新の登記と精算表を照合します。

差押解除と抵当権抹消は別の手続きです。残った借金と譲渡所得も、売却後の課題として分けて扱います。

差押え不動産の売却は登記・期限・配分可能額の順で確認する

最初に急ぐのは、買主探しだけではありません。登記、期限、配分可能額の3つです。

  1. 最新の登記と通知書から、差押えの種類、手続きに関わる全員、競売・公売の期限を特定する
  2. 売却見込額から費用と先に支払う債権を引き、解除・抹消に回せる金額を出す
  3. 取下げ・解除・抹消に関わる全員の条件を書面で固め、決済日の支払いと所有権移転に連動させる

「先に解除してから売る」とは限りません。売却代金を使うなら、先に固めるのは解除の条件です。実際の納付・返済、取下げ・解除、抹消登記の申請、所有権移転は、決済日に一つの手順として組み合わせます。

今日できるのは、土地・建物の全部事項証明書、競売・公売の通知、ローンと税の残高資料を一つにまとめることです。その資料があれば、どこへ連絡し、いくら足りず、いつまでに何を終えるべきかを具体化できます。

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出典

e-Gov法令検索「民事執行法」
e-Gov法令検索「国税徴収法」
国税庁「国税徴収法第47条関係 差押えの要件」
国税庁「国税徴収法第79条関係 差押えの解除の要件」
国税庁「国税徴収法第80条関係 差押えの解除の手続」
国税庁「国税徴収法第89条関係 換価する財産の範囲等」
国税庁公売情報「国税徴収法 第五章第二節及び第三節」
裁判所BIT「競売申立ての取下げ」
裁判所BIT「買受人の所有権取得」
裁判所「民事保全」
東京地方裁判所「執行取消し(取下げ等)」
法務局「登記事項証明書(土地・建物)、地図・図面証明書を取得したい方」
住宅金融支援機構「融資住宅等の任意売却」
住宅金融支援機構「任意売却の手続について」
国税庁「国税の猶予制度」
国税庁「譲渡所得の計算のしかた(分離課税)」
国税庁「譲渡所得の対象となる資産と課税方法」
財務省「令和8年度税制改正の解説 国税通則法等の改正」
財務省「令和8年度税制改正の大綱(7/9)」
財務省「令和8年度税制改正 政令」

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