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任意売却とは?競売との違い・流れ・期限を住宅ローン滞納前後の行動順で解説

任意売却とは、家を売った代金と手持ちのお金を合わせても住宅ローンを返しきれないときに、貸し手の承諾を得て売る方法です。買主を探す流れは、普通の売却と変わりません。違うのは、売った代金を誰へいくら渡すか、家に付いた担保(抵当権)や差押えをどう外すかを、あらかじめ決めておく点です。

この記事では、返済を求めてくる相手をまとめて「金融機関など」と書きます。銀行や住宅金融支援機構のほか、代わりに返済した保証会社、債権を引き継いだ債権回収会社が含まれます。

「任意」という言葉が付いていても、所有者の一存では進みません。売り出す価格、売却代金から先に払える費用、金融機関などへ返す額、抵当権や差押えを外す条件、買主の資金、決済日。これらが期限内にそろって、はじめて家を引き渡せます。ここでいう「決済」とは、買主から代金を受け取り、名義を買主へ移す登記と抵当権を外す登記を、同じ日にまとめて進める手続きのことです。

任意売却は、借金を帳消しにする制度ではありません。売った後にローンが残れば、返済は原則として続きます。「競売より高く売れる」「引越費用が出る」「売却後も住み続けられる」も、どれも保証されたものではありません。

最初に確かめるのは、「いくらで売れそうか」ではありません。誰の承諾が必要で、いつまでに決済を終える必要があるかです。競売がすでに動いている場合は、入札結果を発表する「開札」の前か、いちばん高い値を付けた人が決まった後か、その人が代金を納めた後かで、取り下げられる条件が変わります。

この記事は、日本国内で住宅ローンの返済に行き詰まった個人の所有者に向けたものです。実際の期限や承諾の条件は、ローン契約の内容、金融機関などの方針、登記の状況、裁判所の進み具合によって変わります。

競売開始決定が届いた、差押えが複数ある、保証人や共有者ともめている、破産・個人再生を考えている。こうした場合は、不動産会社だけで進めず、弁護士にも早めに相談してください。

目次

届いた通知から「今日の行動」を決める早見表

任意売却には、「滞納から何か月まで」という全国共通の期限はありません。あなたの期限を決めるのは、手元に届いた書類です。差出人、日付、回答期限、事件番号を確認してください。書類が全部そろっていなくても、相談は先延ばしにしないでください。

通知に出てくる4つの言葉

  • 期限の利益を失う:分割で返す権利がなくなり、残っているローンを一括で返すよう求められる状態
  • 代位弁済:保証会社が借主に代わって金融機関へ返済すること。その後は、保証会社などが借主へ返済を求める
  • 差押え:税金の滞納などを理由に、国や自治体、裁判所が財産を勝手に処分できない状態にする手続き。登記にも記録される
  • 競売開始決定:金融機関などの申立てを受け、地方裁判所が不動産競売の手続きを始めたことを知らせる決定

※表が画面に収まらないときは、横にスクロールできます。

現在の状況最初の連絡先今日そろえるもの今日決めること
返済が苦しいが、まだ滞納していない返済中の金融機関返済予定表、ローン残高、家計の収支返済条件の変更で立て直せるか、売却も並行して調べるか
督促状・催告書が届いた書面の差出人である金融機関や回収窓口届いた書面一式、滞納額、次に入金できる日返済相談の期限と、売却したときに完済できる見込み
期限の利益喪失・一括請求の通知が届いた通知に書かれた金融機関・保証会社一括請求額、代位弁済の有無、最新の登記事項証明書(法務局で取れる権利関係の証明書)今どこが請求しているのか、抵当権を外す承諾を出すのはどこか
代位弁済・債権譲渡の通知が届いた保証会社や債権回収会社など、通知に書かれた窓口請求されている残額、担当部署、差押えや2番目以降の抵当権の有無査定、売却代金の使い道、承諾手続きに必要な資料と期限を聞く
競売開始決定が届いた競売を申し立てた金融機関など、弁護士、任意売却の実績がある不動産会社決定書、事件番号、対象物件が書かれた物件目録、最新の登記事項証明書競売の日程から、いつまでに決済を終える必要があるかを逆算する
期間入札・開札の通知が届いた競売を申し立てた金融機関などと弁護士を優先入札期間、開札日、いちばん高い値を付けた人が決まったかどうか任意売却だけに絞らず、退去と残ったローンへの備えも同時に進める
通知の段階別に、最初の連絡先と確認事項を整理した表

まだ返済を続けられそうなら、売る前に金融機関へ条件変更を相談してください。住宅金融支援機構にも、返済期間を延ばす、一定期間だけ返済額を減らすといった案内があります。ただし審査があり、変更後は総返済額が増えることもあります。

任意売却を考えたときに避けたい4つの行動

  • まだ返済できるのに、営業担当者に言われるまま、わざと滞納する
  • 金融機関や裁判所から届いた郵便物を開けず、連絡も無視する
  • 「競売は必ず止まる」「引越代が出る」といった口約束だけで契約する
  • 共有者の存在、2番目以降の抵当権、税金の差押え、管理費の滞納を伏せたまま売り出す

相談は、滞納する前でもできます。むしろ返済を止める前のほうが、条件変更や通常売却も含めて、選べる道は多く残ります。

任意売却とは、ローンを完済できなくても抵当権を外して売る方法

抵当権とは、住宅ローンを返せなくなったときに、金融機関が家や土地の売却代金から優先して返済を受けられる権利です。家を買うためにローンを借りると、その家と土地に付けられます。分割で返す権利を失い、一括返済の期限が来ても払えなければ、金融機関は地方裁判所へ競売を申し立てられます。

抵当権が付いたままでも、法律上は売れます。ただ、買った側から見れば、購入後に競売にかけられるおそれが残ります。だから通常の買主へ引き渡すには、決済の日に抵当権を登記から消せる状態にしておかなければなりません。この手続きを「抵当権の抹消」といいます。

売却代金と手持ちのお金で完済できるなら、通常売却として抵当権を抹消できます。足りない場合に、売却代金を誰へいくら支払うかを示し、完済できなくても抵当権を外してもらうよう調整するのが任意売却です。

通常売却と任意売却を分けるのは、査定額ではなく決済日の不足額

査定額がローン残高を上回っていても、それだけで通常売却できると決まるわけではありません。決済日までの利息、遅延損害金、仲介手数料、登記費用まで含めて計算するからです。ここでいう遅延損害金とは、返済が遅れた期間にかかる損害金のことです。

逆に、売却代金だけでは少し足りなくても、手持ちのお金で不足分と費用を埋められるなら、通常売却として完済できます。最初の分かれ道は、次の式で確かめます。

完済に使える額 = 成約見込価格 − 売却費用 + 決済に充てられる自己資金

この金額が、決済日時点のローン元金・利息・遅延損害金などの合計に届かないなら、任意売却として承諾をもらう必要が出てきます。査定は1社だけで決めないでください。近隣の実際の成約事例と、その家の状態が価格に反映されているかを確かめます。

金融機関に確認するのは、売出価格・費用・返済額・抵当権を外す条件

「売ってよいですか」と一度聞くだけでは足りません。少なくとも、次の内容を担当窓口と書面で詰めます。

  • いくらで売り出すか。値下げには改めて承認が必要か
  • 売却代金から先に払ってよい費用と、その上限、必要な証明書類
  • 第1順位と第2順位以降の金融機関、差押えをした税務署・自治体などへ支払う金額
  • 抵当権や差押えを外すために必要な金額・書類・回答期限
  • 競売を申し立てている場合、取下げの条件と最終決済日
  • 売却後に残るローンの確認方法と返済窓口

住宅金融支援機構でも、査定後に売出価格を確認し、買主が決まってから抵当権を外すための審査をして、そのうえで契約・決済へ進みます。書式や期限は金融機関ごとに違いますが、共通するのは、査定書を出した時点ではまだ何も決まっていないという点です。

任意売却と競売の違いを比較

任意売却と競売は、どちらも不動産を売り、その代金をローンなどの返済に充てる方法です。違うのは、売り方と期限を誰が決めるかです。

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比較項目通常売却任意売却競売
売却の進め方所有者が不動産会社を通じて買主を探す所有者が買主を探し、金融機関などと抵当権を外す条件や売却代金の使い道を調整する金融機関などの申立てを受け、地方裁判所が手続きを進める
金融機関との調整売却代金などで完済できれば、完済と抵当権を外す手続きを確認するだけ完済できなくても抵当権を外してもらう承諾が必要所有者の同意がなくても進み、法律で定められた手続きで売却・代金の分配・登記を行う
価格市場で買主と合意する市場で買主を探すが、金融機関が認める価格と期限の制約がある裁判所が評価をもとに基準価格を定め、入札などで買主を決める
価格の見通し物件と販売条件次第競売より高値を期待できることはあるが、保証はない入札結果で決まり、市場価格に対する全国一律の割合はない
販売・公開広告、不動産会社間の情報共有、内覧など通常の販売広告や内覧を行うため、完全な秘密とは限らない裁判所の競売物件情報サイト「BIT」で、物件資料や写真などが公開される
期限売主と買主の合意が中心金融機関などの承諾期限と競売の日程にも左右される裁判所の事件日程で進む
引き渡し売買契約で定める金融機関・買主と調整しやすいが、希望日が保証されるわけではない代金納付後、買主が裁判所へ不動産の引渡しを命じる手続きを申し立てられる場合がある
費用原則として売主が負担承認された一部費用を売却代金から支払える場合がある競売を申し立てた金融機関などが手数料・裁判所へ納める費用などを先に払い、手続費用は売却代金から差し引かれる
売却後に残るローン通常はローンを完済して抵当権を外す返済しきれない額は原則として残る売却代金を分配しても返済しきれない額は原則として残る
通常売却・任意売却・競売の違い

競売は、開始決定と差押え、物件の状態を調べる現況調査・評価、期間入札・開札、売却許可、代金納付、売却代金の分配という順に進みます。買主が代金を納めれば所有権を取得し、条件を満たせば、裁判所へ不動産の引渡しを命じる手続きを申し立てることもできます。

「任意売却なら市場価格の8~9割、競売なら5~7割」という数字をよく見かけます。しかし、公的な資料に全国一律の割合は示されていません。競売で入札できる最低額を「買受可能価額」といい、これは裁判所の売却基準価額の80%ですが、市場価格の80%で落札されるという意味ではありません。

実際の結果を左右するのは、物件の状態、誰が住んでいるか、権利関係、地域の需要、入札前に調べられる情報の量、そして入札者の数です。

競売開始後も余地はあるが、売買契約だけでは止まらない

競売開始決定が出た後でも、任意売却が成立することはあります。ただし、競売を申し立てた金融機関などに、裁判所で取下げの手続きをしてもらう必要があります。任意売却の相談をしても、売買契約を結んでも、それだけで競売が自動的に止まるわけではありません。

開札でいちばん高い値を付けた人(最高価買受申出人)が決まった後は、取下げに、その人または正式な買主と、次に高い値を付けて次順位買受けを申し出た人の同意も原則として必要になります。買主が代金を納付した後は、もう取り下げられません。

ここで注意したいのは、「いつまで取り下げられるか」と「いつまでに動き出せばよいか」は別だということです。取下げが可能な最後の日を目標にすると、まず間に合いません。その日までに、査定、販売、買主の住宅ローン審査、抵当権などを外す承諾、決済の準備をすべて終えている必要があるからです。

任意売却のメリットとデメリット

任意売却の強みと弱みは、同じ仕組みの裏表です。裁判所が進める競売とは違い、所有者・買主・金融機関などの間で、価格や引渡日を話し合える余地があります。その代わり、抵当権や差押えを外すために必要な承諾が一つでも欠ければ、買主がいても決済できません。

任意売却の主なメリット

  • 一般の売買市場で買主を探せる 住宅金融支援機構は、一般に競売より高い価格で売れることが期待でき、その分だけ売却後に残るローンを減らせる可能性があると案内しています。ただし、高値を保証するものではありません。
  • 価格や引渡条件を話し合える 金融機関などが認める範囲であれば、買主との条件交渉や引渡日の調整ができます。裁判所の日程だけで進む競売より、転居の計画を立てやすくなります。
  • 滞納していることを広告に載せる仕組みではない 通常の売却広告を出すので、売却活動そのものを隠せるとは限りません。ただし、「住宅ローンを滞納している」と広告に表示する制度ではありません。裁判所の競売物件情報サイト「BIT」で、物件資料や写真が公開される競売とは、この点が異なります。
  • 認められた費用を売却代金から払える場合がある 金融機関などが認めた仲介手数料や、抵当権を登記から外す費用は、売却代金から先に払えることがあります。

任意売却の主なデメリット

  • 関係者が一人でも同意しなければ、成立しないことがある 第1順位の金融機関だけでなく、2番目以降に抵当権を持つ金融機関、差押えをした税務署や自治体、共有者などの協力が必要になる場合があります。
  • 販売と権利の調整を、期限内に両方終える必要がある 買主が見つかっても、金融機関などの審査、買主の融資、登記から権利を外す書類の準備が間に合わなければ決済できません。
  • 売却価格や費用を所有者だけで決められない 値下げや、売却代金から先に払う費用には、金融機関などの再承認が必要になることがあります。希望価格にこだわれば販売期間を失い、下げすぎれば承諾を得られません。
  • 内覧・書類提出・連絡の負担がある 通常の販売活動に加えて、残高、登記、差押え、管理費などの確認と、複数の関係者への報告が必要です。
  • 売却しても、残ったローンや保証人の責任は消えない 任意売却をしただけでは、残ったローンの支払義務はなくなりません。売却後の返済や、借金を法的に整理する方法は、別に検討することになります。

任意売却は「3つの日程」と「6つの金額」で判断する

査定価格が出ただけでは、任意売却は進みません。成否を分けるのは、裁判所、金融機関、転居の予定を、一つの決済日に合わせられるかどうかです。まず、3つの日程を一枚に並べます。

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日程書き出す日付この日付が変える判断
裁判所の日程競売開始決定日、入札の開始・終了日、開札日、買受人が代金を納める見込み販売と承諾に使える時間、取下げに必要な同意
金融機関などの日程査定の提出期限、売出価格の承認日、購入申込みへの回答期限、抵当権を外す書類の準備期限、最終決済日値下げの時期、契約条件、決済できる最終ライン
生活の日程新居の審査、初期費用の準備、退去日、学校・仕事・福祉の手続き売買契約の引渡日、必要な手元資金、次に住む場所
任意売却でそろえる3つの日程

まだ競売を申し立てられていない場合も、裁判所の欄を空欄にしないでください。「申立て済みか」「予定があるか」を金融機関などへ確認して書き込みます。競売開始決定が複数あると、一つを取り下げても、別の申立てによって手続きが続くことがあります。

日付がそろっても、金額の基準日がばらばらでは収支を比べられません。次の6つを、決済予定日の時点でそろえます。

  1. 決済予定日に返す必要がある総額:ローン元金、利息、返済が遅れたことによる遅延損害金など
  2. 根拠のある成約見込価格:売出価格や希望額ではなく、期限内に売れると見込める額
  3. 承認済みの売却費用:仲介手数料、印紙、抵当権を外す費用など、売却代金から先に払うことを金融機関などが認めた額
  4. 抵当権・差押えを外すために支払う額:金融機関、税務署、自治体などへ支払う額
  5. 決済時に売主へ残すことを認められた額:引越費用などの使い道と条件も書き添える
  6. 売却後に残るローンの概算額:返済窓口と返済方法は、決済後に改めて確認する

基本の計算は次のとおりです。

返済へ充てられる見込額 = 成約見込価格 − 金融機関などが承認した売却費用 − 売主のために残すことを金融機関などが書面で認めた額

売却後に残るローンの概算額 = 決済予定日に返す必要がある総額 − 返済へ充てる額

2,800万円で売れる想定でも、手元にお金が残るとは限らない

例として、第1順位の住宅ローンだけがあり、成約見込価格が2,800万円、決済日に返す必要がある総額が3,100万円だとします。金融機関が売却代金から先に払うことを認めた仲介手数料、印紙、抵当権を外す費用などの合計を110万円とした場合、金額はこう並びます。

項目仮の金額
成約見込価格2,800万円
承認済み売却費用110万円
第1順位の金融機関へ返す額2,690万円
決済日に返す必要がある総額3,100万円
売却後に残るローンの概算額410万円
売主のために残すことを認められた額0円
決済時の売主手元金0円
2,800万円で任意売却する仮定例

「2,800万円で売れた」ことと、「売主が2,800万円を受け取れる」ことは別です。売却代金は、承認された費用の支払いとローンの返済に消えていきます。この例では、売主の手元に残るお金はゼロで、なおかつ410万円のローンが残ります。

実際の数字は、決済日までの利息や遅延損害金、外す必要がある抵当権・差押え、承認される費用によって変わります。110万円も相場や保証額ではなく、計算の仕方を示すための仮の数字です。

2番目以降の抵当権や税金の差押えがあれば、誰へいくら払えば外してもらえるかを一つずつ確認します。売却代金が足りるかどうかだけでなく、抵当権や差押えを外すべき相手の全員が、同じ決済日に手続きを進められるかまで確かめて、はじめて実行できる計画になります。

任意売却の流れを10段階で確認

金融機関によって書式も審査期間も違います。それでも、どの段階でも見るべき点は同じです。必要な承諾と買主側の準備が、最終決済日に間に合うかどうか。この一点に尽きます。

任意売却の全体像

1.ほかの方法を先に確認(手順1)

返済条件の変更や通常売却で解決できないかを調べます。

2.期限と関係者を整理(手順2〜3)

通知の日付、登記、金融機関、差押え、共有者を確認します。

3.査定して売り出す(手順4〜6)

期限内に売れる価格を見極め、買主を探します。

4.申込みと承諾(手順7〜8)

購入申込みをもとに売却代金の使い道を決め、必要な承諾をそろえます。

5.決済と、その後の確認(手順9〜10)

送金と登記を同じ日に進め、残ったローン・転居・税金を確認します。

1.返済条件の変更と通常売却を先に調べる

返済が一時的に苦しいだけなら、返済期間の延長や、一定期間の返済額軽減で立て直せることがあります。家を売る場合も、売却代金と手持ちのお金で完済できれば、それは任意売却ではなく通常売却です。

まず金融機関に返済条件を変更できるかを聞き、決済予定日に返す必要がある総額と、売却できそうな価格を比べます。

住宅金融支援機構の利用者は、申出書に署名する前に団信への影響も確認する

相談することと、正式に任意売却を申し出ることは、まったく別の行為です。住宅金融支援機構では、残額を一度に返すよう求められる(全額繰上償還請求)前に所定の申出書を出すと、分割で返す権利を自分から手放したものとして扱われます。契約によっては、全額繰上償還請求の期限日に団体信用生命保険の保障も終わります。

団体信用生命保険は、借りた人が亡くなるなどしたときに、ローン残高が保険で返済される仕組みです。保障が終わる意味は小さくありません。申出書に署名する前に、返済条件変更の審査結果、団信への影響、申し出た後の扱いを担当窓口で確かめてください。ほかの金融機関の運用は、それぞれ個別に確認が必要です。

2.通知を日付順に並べ、決済の期限を逆算する

督促状、一括請求、代位弁済、債権譲渡、競売開始決定、期間入札の通知を日付順に並べます。差出人を確認できるよう、封筒も捨てずに残してください。

すでに競売が始まっているなら、事件番号、入札期間、開札日を確認し、競売を申し立てた金融機関などへ任意売却を検討している旨を伝えます。このとき「開札の前日まで」と一律に考えないでください。買主探し、承諾、契約、融資、決済、取下げにかかる日数を開札日から逆算し、そこに目標日を置きます。

3.所有者と、承諾が必要な相手を洗い出す

最新の登記事項証明書で、所有者、共有持分、抵当権、差押えを確認します。郵便物と照らし合わせて、今どこが返済を求めているのか、回収窓口はどこかも特定します。代位弁済の後は、もとの金融機関ではなく、保証会社や委託を受けた債権回収会社が窓口になっていることがあります。

マンションなら、管理費・修繕積立金などの滞納残高を、管理会社や管理組合から書面でもらいます。税金の差押登記があれば、税務署や自治体へ、差押えを外す条件を確認します。

4.任意売却に詳しい不動産会社へ査定を依頼する

不動産会社には、過去の成約事例、物件の状態、売り出し中の競合物件、販売期限を根拠にした査定を求めます。査定額、売出価格、期限内に売れそうな価格、金融機関などが承認する価格。この4つは、それぞれ別の数字です。

初回相談には、届いた通知、返済予定表、ローン残高、物件資料、固定資産税の通知、管理費の明細など、手元にある写しを持参します。権利証や登記識別情報の原本は、なぜ必要か、どう保管されるかがわからないまま預けないでください。

5.金融機関に売出価格と手順を確認する

査定資料を金融機関などへ提出し、売出価格、値下げの基準、販売報告の頻度、売却代金から先に払うことを申請できる費用、買主決定後の審査書類を確認します。この確認をしないまま低い価格で契約すると、抵当権を外す承諾を得られず、家を引き渡せなくなるおそれがあります。

住宅金融支援機構は、確認を受けていない価格で売却した場合、抵当権を外すことに応じられないことがあると明記しています。この運用をほかの金融機関へそのまま当てはめず、担当窓口の手順を聞いてください。

6.媒介契約を結び、販売と権利の調整を同時に進める

売出条件が固まったら、不動産会社に買主探しを依頼する「媒介契約」を結びます。不動産会社間の物件情報ネットワーク「レインズ」への登録、広告、内覧などで買主を探します。

販売と並行して進めたいのが、権利の調整です。2番目以降に抵当権を持つ金融機関や、差押えをした税務署・自治体などへ、権利を外す条件、必要書類、回答期限を確認しておきます。購入申込みが入ってから初めて連絡すると、期限に間に合わないことがあります。

値下げが必要になったときも、買主を急いで探す前に、金融機関などの再承認が必要かを先に確かめます。

7.購入申込みが入ったら、売却代金の使い道をまとめる

購入申込みが入ったら、売却価格、買主の資金計画、決済希望日、売却費用、金融機関・税務署・自治体などへ支払う額を、一つの表にまとめます。費用は見積書などで裏付けたうえで、売却代金から先に払うことの承認を申請します。

買主が見つかっただけでは、まだ足りません。抵当権や差押えを外すために承諾が必要な相手すべてについて、支払額と、条件への回答がいつ返ってくるかをそろえ、決済日に間に合う見通しを確かめます。

8.抵当権を外す承諾を確認して売買契約を結ぶ

原則は、抵当権を登記から外す承諾を確認してから売買契約を結ぶことです。承諾より先に契約するなら、承諾を得られなかった場合に契約が成立しない、または解除できる条件を契約書へ明記します。手付金の返還や違約金の扱いも、曖昧なままにしません。このように、一定の条件を満たさなければ契約の効力を生じさせない定めを「停止条件」といいます。住宅金融支援機構も、承諾前に契約する場合は停止条件を付けるよう求めています。

契約の文言は、案件によって効き方が変わります。不動産会社の説明だけで判断せず、必要に応じて弁護士に確認してください。

9.決済日に送金・登記・競売取下げを同時に進める

決済の前に、当日返す必要がある総額、承認済み費用、送金先、抵当権・差押えを外す書類、名義を買主へ移す登記の書類、競売取下げの段取り、鍵の引渡しを突き合わせます。買主の融資が実行されることも確認します。

決済日は、売買代金の入金、承認済み費用と各金融機関などへの送金、名義を買主へ移す登記、抵当権・差押えを外す登記の申請を、すべて連動させます。売買契約に署名した時点では、任意売却はまだ終わっていません。

競売は、売主が取り下げるものではありません。競売を申し立てた金融機関などが、その競売を扱う地方裁判所へ取下書を提出し、受理されたところまで確かめます。競売事件が複数ある場合は、すべての事件番号について停止・取下げの状態を確認してください。

10.売却後に残るローン・転居・税金を確認する

決済が終わったら、金融機関などから、売却後に残るローンの額と返済窓口を書面で確認します。家計から毎月返せる額を計算し、返済方法を話し合います。住宅ローン以外にも借金があり、返済の見通しが立たないなら、任意売却の前後を問わず、自己破産・個人再生などを含めて弁護士へ相談してください。

不動産を売って得た利益を「譲渡所得」といいます。その申告が必要かどうかは、ローン残高や決済時の手元金とは関係なく判定されます。購入時の売買契約書や、購入代金・改修費の領収書は捨てず、税務署や税理士に確認できるようにしておいてください。

任意売却の期限は「滞納何か月」では決まらない

「3か月滞納すると任意売却が始まり、6か月で競売になる」といった全国共通の法定スケジュールはありません。期限の利益を失う条件はローン契約・約款や金融機関の手続きに左右され、競売の進み方も裁判所と事件によって変わります。

書類は、督促、一括請求、代位弁済・債権譲渡、競売開始決定、期間入札の通知へと進むことがあります。ただし、すべての案件が同じ順番で進み、同じ書類が届くわけではありません。だからこそ、差出人、回答期限、事件番号、入札・開札の日付を、冒頭の早見表に書き写してください。

保証会社が代位弁済をしても、住宅ローンの負担が消えるわけではありません。保証会社などが債権や担保権を引き継ぎ、借主へ返済を求めるのが一般的です。通知に書かれた窓口を確認し、もとの金融機関だけへ連絡し続けないようにします。

任意売却の費用と手取りは4つに分けて考える

「売却代金から費用を払える」と「費用がかからない」は、同じではありません。お金の流れを4つに分けると、手元に残る額と、売却後に残る負担を混同せずに済みます。

1.売買そのものにかかる費用

主なものは、仲介手数料、紙の売買契約書にかかる印紙税、抵当権を登記から外すときの登録免許税と司法書士報酬です。物件によっては、土地の境界を確かめる測量、家具やごみなど残された物の処分、建物の補修も必要になります。

仲介手数料は定価ではなく、上限です。売買代金のうち消費税等相当額を含まない物件価格が400万円を超える場合、通常の上限は「物件価格×3%+6万円」に消費税を加えた額です。税率10%なら「物件価格×3.3%+6万6,000円」と計算できます。

物件価格が800万円以下の宅地・建物(制度上の名称は「低廉な空家等」)には、事前説明と合意を条件に、別の上限特例があります。なお、実際に不動産会社へ支払う額と、金融機関などが売却代金から先に払うことを認める額は、分けて確認してください。

2.抵当権・差押えを外すために支払う金額

2番目以降に抵当権を持つ金融機関、差押えをした税務署や自治体、マンションの滞納管理費への支払いは、単なる売買費用とは性質が違います。決済のときに抵当権や差押えを外し、買主へ引き渡せる状態にするためのお金だからです。

税金の差押えがあれば、税務署・自治体などへ売却予定を伝え、差押えを外すために必要な納付額、書類、入金確認の順序を聞きます。「少額でも必ず外してもらえる」とも、「全額払わなければ絶対に外してもらえない」とも、一律には決められません。国税と地方税で取扱いが異なる場合があるため、地方税は各自治体へ確認してください。

3.売却後に残るローン

決済日に返す必要がある総額から、実際に返済へ充てた額を引いたものが、売却後に残るローンの目安です。任意売却をしただけでは、支払義務はなくなりません。返済額、分割できるかどうか、遅延損害金の扱いは、金融機関などとの個別の話し合いで決まります。

連帯保証人も、家を売っただけで責任を免れるわけではありません。連帯保証人が所有者でなければ、売買契約上の売主になるとは限りませんが、売却後に残るローンの返済については、早めに事情を共有する必要があります。

4.売却後に確認する税金

不動産を売って得た利益のうち、税金の計算対象になる金額を「課税譲渡所得」といいます。原則として「収入金額-(購入代金などの取得費+仲介手数料などの譲渡費用)-特別控除額」で計算します。ローン残高が多い、売却代金がすべて返済に回った、決済時の手元金がゼロ。こうした事情だけでは、税金がかからないとは判断できません。

自宅の売却では、要件を満たせば最高3,000万円の特別控除を使える場合があります。適用要件と申告手続きを確認し、購入時の契約書、仲介手数料、改修費などの資料を保管してください。

引越費用は必ず受け取れるわけではない

引越費用を売却代金から残せるかどうかは、金融機関などの個別判断です。法令で全員に支給されるお金でも、任意売却を選んだ人の当然の権利でもありません。

金額、支払時期、条件、誰が承認するのかを、決済前に書面で確認します。そのうえで、承認されなかった場合に備え、新居の敷金・礼金、保証料、運搬費、当面の生活費を別に見積もってください。「引越代30万円」「自己資金は一切不要」という説明だけで資金計画を組むのは危険です。

任意売却後に残るローン・信用情報・住まい

家を引き渡した日は、生活再建の終わりではありません。売却後に残るローン、新しい住まい、信用情報を、それぞれ別に確認していきます。

売却後に残るローンの返済方法は、売却前から見通しを聞く

売却後に残るローンの返済額や分割方法は、収入、資産、ほかの借金、金融機関などの方針によって変わります。「任意売却後は毎月1万円程度」と一律にはいえません。

借金全体を返せる見通しが立たない場合、任意売却で不動産を売って返済に充てても、問題そのものは解決しません。自己破産や個人再生は、任意売却とはまったく別の法的手続きです。

自己破産で支払義務の免除が認められても、税金など一部の債務は免除の対象になりません。複数の借金や、保証人への請求も含めて、弁護士に全体像を見せてください。

信用情報に影響するのは「任意売却」という名称だけではない

全国銀行個人信用情報センターが公表する登録項目に、「任意売却」という取引名は挙げられていません。一方、ローンの延滞、代位弁済、法的な回収手続きなどは登録の対象になり得ます。

同センターは、ローンの返済状況に関する情報を、契約期間中と、契約終了日または完済日から5年を超えない期間、登録すると案内しています。実際の登録内容は、契約先や、加盟している信用情報機関によって異なります。必要なら本人開示で確認してください。

住み続けたいなら、リースバックを別取引として比べる

リースバックは、自宅を売った相手と賃貸借契約を結び、家賃を払って住み続ける仕組みです。任意売却をすれば自動的に使えるものではありません。任意売却の成立には「完済できなくても抵当権を外す」という金融機関などの承諾が、売却後も住み続けるには買主との賃貸借契約が、それぞれ別に必要です。

売却価格が低くなる、家賃が上がる、契約を更新できない、買戻し条件が合わない。こうしたリスクもあります。

検討するときは、売却後に退去する案とリースバックを、同じ条件で並べて比べます。売却価格、家賃、契約期間、更新・退去条件、買戻価格、数年間の総支払額。家賃を払い続けられない計画では、いったん住み続けられても、いずれまた転居することになります。

任意売却ができない・成立しにくいケース

相談を断られたからといって、すぐに競売しかないと決まるわけではありません。何が欠けているのかを切り分けると、別の打ち手が見えてきます。

  • 金融機関などが価格や売却代金の使い道に同意しない
    回収できる額が基準に届かない、査定の根拠が弱い、といった理由が考えられます。過去の成約事例、販売期限、費用、価格変更案を出し直せるか確認します。
  • 2番目以降の抵当権や差押えを外せない
    一つでも権利が残ると、買主へ引き渡せないことがあります。承諾が必要な相手、支払う額、回答期限、必要書類を一覧にします。
  • 共有者の協力を得られない
    不動産全体を売るために必要な署名や本人確認がそろいません。持分、連絡がつくかどうか、代理人にどこまで任せられるか、成年後見制度の利用が必要かを、弁護士などへ確認します。
  • 売出価格が高く、買主が見つからない
    金融機関などが求める価格と、市場で売れる価格が合っていない可能性があります。値下げの承認、買取を含む買主候補、競売に進んだ場合の回収見込みを確認します。
  • 買主の融資が通らない
    物件の状態、買主の収入・借入状況、残された期間が、融資審査に合わないことがあります。現金で購入できる人も含めた販売方法や、物件の法律上・建物上の問題を確認します。
  • 税金や管理費などの残高が確定しない
    誰へいくら払えば差押えなどを外せるのか決められません。税務署、自治体、管理組合から、決済予定日時点の残高を取得します。
  • 競売の日程に間に合わない
    販売、承諾、契約、融資、決済、競売取下げを終えられません。競売を申し立てた金融機関などの判断を確認しつつ、競売後の退去や、残ったローンへの対応も並行して準備します。
  • 破産手続きで、物件を本人が処分できない
    裁判所が破産管財人を選び、その人が財産を管理・処分する「管財事件」では、本人だけで物件を売れないことがあります。破産管財人と、申立てを担当する弁護士へ確認します。

成立しない可能性を伏せたまま、買主との無条件の契約だけを急がせる。これがいちばん危険な進め方です。承諾を得られなかった場合の解除、手付金の返還、違約金の扱いを、契約前に確認してください。

任意売却を相談する不動産会社の選び方

任意売却で頼りになるのは、高い査定額を出す会社ではありません。期限と、抵当権・差押えなどの関係を、一枚の予定表にまとめられる会社です。不動産の売買を仲介するには「宅地建物取引業免許」が必要ですが、免許があるだけで任意売却の実務能力までわかるわけではありません。無免許業者を避けるための、最低限の確認と考えてください。

相談内容に合う窓口を選ぶ

※表が画面に収まらないときは、横にスクロールできます。

確認したいこと主な相談先相談時に伝えること
返済条件の変更・任意売却の承諾現在の金融機関、保証会社、債権回収会社通知の日付、滞納状況、売却を検討していること
査定・販売・買主探し任意売却に詳しく、宅地建物取引業免許がある不動産会社期限、ローン残高、登記、物件の状態
複数の借金・競売・契約上の争い弁護士住宅ローン以外の借金、保証人、裁判所の書類
名義を変える登記・抵当権を外す登記司法書士登記事項証明書、金融機関から受け取る予定の書類
税金の差押え税務署・自治体売却予定、決済予定日、差押えを外すために必要な金額
売却後の税金税務署・税理士購入時と売却時の契約書、取得費・売却費用の資料
任意売却の相談内容と主な窓口

相談先には、次の質問をそのまま使えます。

  1. 契約する会社の宅地建物取引業免許番号と、担当者の役割は何か
  2. その会社は仲介会社、買主、紹介窓口のどれか。関連会社や紹介料はあるか
  3. 査定額と、期限内の成約見込価格を、分けて説明できるか
  4. 現在の金融機関、2番目以降の抵当権、差押えを、何の資料で確認したか
  5. 競売の日程から逆算した最終決済日はいつか。間に合わない場合の別の方法は何か
  6. 売却代金の使い道、先に払う費用、引越費用は、誰が承認し、どの書面で確認できるか
  7. 金融機関などの承諾前に契約するなら、承諾を得られない場合の契約・手付金・違約金をどう扱うか
  8. リースバックを提案するなら、売却価格、家賃、契約期間、買戻条件を通常売却と比べられるか
  9. 弁護士、司法書士、税理士へ引き継ぐ境界はどこか。それぞれの費用はいくらか
  10. 仲介手数料以外に、相談料、調査料、広告料、紹介料、解約費用はあるか

免許情報は、国土交通省の「宅地建物取引業者検索」で確認できます。過去の行政処分は「ネガティブ情報等検索サイト」で調べられますが、検索対象の期間や、自治体データの掲載範囲には限りがあります。処分歴が見つからないことは、品質の保証にはなりません。

契約を止めて、別の相談先も検討したいサイン

  • 「必ず高く売れる」「競売は確実に止まる」と、結果を保証する
  • まだ返済できるのに、金融機関へ相談せず、わざと滞納するよう勧める
  • 売却代金の使い道や費用の承認を書面で示さないまま、承諾を得られなかった場合の定めがない売買契約を急がせる
  • 仲介をしながら自社で安く買い取るなど、会社の利益と売主の利益がぶつかる可能性や、紹介料を説明しない
  • 中身が空欄の委任状、必要以上に広い手続きを任せる委任状、権利証の原本を急いで求める
  • 借金の整理や法律上の争いまで、不動産会社だけで本人の代わりに対応できるかのように説明する

訪問や電話で売却を急かされても、その場で決める必要はありません。契約の種類、契約を取りやめられる条件、報酬、個人情報の提供先は、いったん持ち帰って確認してください。

初回相談に持参する資料

資料は「期限」「借入れ」「物件・権利」「生活」の4つに分けます。全部そろうまで待たず、手元にあるものから持参してください。

期限がわかる資料

  • 督促状、催告書、一括請求や期限の利益喪失に関する通知
  • 代位弁済、債権譲渡、債権回収会社からの通知
  • 競売開始決定、期間入札など裁判所から届いた書類と封筒

借入れと権利がわかる資料

  • 住宅ローン契約書、返済予定表、直近の残高・滞納額
  • 最新の登記事項証明書
  • 第2順位以降のローン、複数人が一緒に返済義務を負う連帯債務、連帯保証に関する書類
  • 税金、社会保険料、管理費・修繕積立金などの督促・差押通知

物件と所有者がわかる資料

  • 購入時の売買契約書・重要事項説明書
  • 間取図、測量図、建築資料、修繕履歴、固定資産税の通知書
  • 共有者、自分の不動産を担保に入れた人、物件を借りている人との関係がわかる契約書
  • マンションの管理規約と、管理費等の残高

生活再建に必要な資料

  • 直近の収入と、家賃・食費・医療費など必ずかかる支出
  • 住宅ローン以外の借金
  • 転居希望日、新居の初期費用、通勤・通学などの条件

家計やほかの借金の情報は、売却後に残るローンの返済相談や法律相談で必要になります。一方で、査定に必要のない、取扱いに注意が必要な個人情報まで不動産会社へ渡す必要はありません。最初は写しを使ってください。権利証に代わる重要な情報である「登記識別情報」の番号や、本人確認書類の画像を、送信先と目的がわからないままメールで送らないようにします。

任意売却についてよくある質問

住宅ローンを滞納する前でも任意売却の相談はできますか?

できます。まだ返済を続けられるなら、金融機関に返済条件の変更を相談し、通常売却で完済できるかも同時に調べてください。任意売却をするために、わざと滞納する必要はありません。

競売開始決定が届いてからでも任意売却できますか?

成立する余地はあります。ただし、売買契約を結んだだけでは競売は止まりません。決定書が届いた時点で、抵当権・差押えを外すために必要なすべての承諾、決済、競売の取下げまで終えられる日程かどうかを確認してください。

任意売却には何か月かかりますか?

全国共通の期間はありません。金融機関などの審査、承諾が必要な相手の数、販売状況、買主の融資、競売の日程で変わります。「平均3~6か月」と決めつけず、最終決済日から逆算した予定表で判断してください。

任意売却なら引越費用をもらえますか?

必ずもらえるわけではありません。売却代金から引越費用を残せるか、いくら残せるかは、金融機関などによって異なります。決済前に書面で確認してください。

任意売却後に残るローンは分割で返せますか?

分割の相談ができる場合はありますが、保証はありません。まず残るローンの額と返済窓口を確かめ、返済が難しければ、弁護士へ借金全体の整理を相談してください。

任意売却をするとブラックリストに載りますか?

「任意売却」という名称そのものより、返済の延滞、代位弁済、法的な回収手続きなどが登録の対象になります。実際に何が登録されているかは、信用情報機関への本人開示で確認できます。

親族に買ってもらう、またはリースバックで住み続けることはできますか?

買主、売却価格、資金調達に問題がなく、金融機関などが条件を承諾すれば、検討の余地はあります。ただし親族間売買は、買主の住宅ローン審査が通りにくいことがあり、低すぎる価格では金融機関などの承諾も得にくくなります。

また、親子や夫婦など特別の関係がある人への売却は、居住用財産の3,000万円特別控除の対象外です。リースバックは売買と賃貸借の別契約なので、価格、家賃、契約期間、更新、退去、買戻しを、通常の任意売却と比べてください。

連帯保証人に知らせず進められますか?

連帯保証人が所有者でなければ、売買契約上の売主とは限りません。しかし、売却後にローンが残れば請求を受ける可能性があります。返済の話し合いや法的手続きにも関わってくるため、問題が深くなる前に、弁護士を交えて共有するのが安全です。

任意売却で最初にそろえるのは「買主」より「期限と承諾」

任意売却は、家を一般の市場で売る手続きであると同時に、承諾が必要な複数の相手を、一つの決済日に合わせる作業です。高い査定額が出ても、金融機関などの承諾、買主の資金、抵当権や差押えを外す手続き、競売の取下げが同じ日に動かなければ、家は引き渡せません。

まず、届いた通知を日付順に並べ、ローン残高、最新の登記、税金・管理費の滞納、共有者と保証人を確認します。滞納前なら返済中の金融機関へ、競売開始後なら競売を申し立てた金融機関などと弁護士へ連絡し、任意売却の経験がある不動産会社から、根拠のある査定を取ります。

そのうえで、最終決済日、期限内に売れそうな価格、承認済み費用、金融機関・税務署・自治体などへ支払う額、売却後に残るローンを一枚にまとめます。任意売却だけでは期限内に整わない項目があるなら、競売後の退去や借金の整理も並行して準備してください。

早く相談する意味は、任意売却を無理に選ぶことではありません。通常売却、返済条件の変更、法的整理も含めて、選べる時間を手元に残すことです。

出典・参考資料

制度・数値は2026年7月24日時点で確認しています。個別のケースでは、各金融機関などの運用、ローン契約、登記、裁判所の事件日程が異なります。

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