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借地権は売却できる?地主の承諾・4つの方法・価格・流れを解説

この記事を読むとわかること
  • 借地権付き建物を売却できる条件
  • 地上権と土地賃借権の違い
  • 4つの売却方法と手取りの比べ方
  • 地主が承諾しない場合の対処法

借地権付きの家や建物も売却できます。

ただし、売却を進めるには、契約と権利の内容、地主の承諾、買主がローンを利用する場合の融資条件という3つの関門を確認しなければなりません。どれかが曖昧だと、買主が見つかった後に手続きが止まる可能性があります。

まず借地契約書と土地・建物の登記事項証明書を確認し、借地権付き不動産の取引経験がある不動産会社へ相談しましょう。本記事では、権利の確認方法、4つの売却方法、価格・手取りの考え方、地主が承諾しない場合の対応を解説します。

土地賃借権は無断で譲渡しない

土地賃借権を第三者へ譲るには、原則として地主の承諾が必要です。承諾前に売買契約を結ぶ場合は、期限までに承諾を得られなかったときの解除条件を契約書へ記載してください。

本記事が主に扱うのは、一戸建てや一棟建物を借地権とともに売るケースです。借地権付き区分マンションは、管理規約や敷地利用権などの確認項目が異なります。

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目次

借地権売却の成否を決める3つの関門

借地権付き建物は、査定額という一つの数字だけでは売却できるか判断できません。次の3つを順番に確認すると、どこから手を付けるべきかがわかります。

STEP
契約と権利の内容を確かめる

借地権の種類、契約期間、地代、土地の用途、譲渡・建替え・増改築の条件、建物の名義を確認します。

先に整理したい事情:契約書が見当たらない、相続登記が済んでいない、建物が未登記、契約と異なる増改築・用途変更がある場合は、買主探しより先に権利・登記関係を確認します。

STEP
地主の承諾条件を確かめる

土地賃借権の場合は、譲渡の可否だけでなく、承諾料、買主に求める条件、地代、更新、用途、建替え、増改築、融資書類への協力まで確認します。

条件がまとまらないとき:地主への売却、底地との同時売却、買主条件を変えた再交渉、裁判所による承諾に代わる許可などを検討します。

STEP
買主がローンを使えるか確かめる

買主が住宅ローンを利用する場合は、借地権の種類、残存期間、担保条件、地主が所定の承諾書へ協力できるかを金融機関へ確認します。

融資が難しいとき:別の金融機関を検討する、現金購入できる買主を探す、専門会社の直接買取を比較する、売却価格や引渡し条件を見直す方法があります。

3つの関門は連動しています。地主が譲渡そのものを承諾しても、金融機関が求める形式の承諾書や担保設定へ協力してもらえなければ、買主の住宅ローンが進まない場合があります。

一方、地主が買主の支払能力、土地の利用目的、建替え予定を確認してから承諾を判断することもあります。契約確認、地主との調整、融資確認を別々に進めず、同じ条件で情報を共有しましょう。

借地権を売却できるかは権利の内容で変わる

借地権とは、建物を所有する目的で他人の土地を使う権利です。借地借家法上は「地上権」と「土地賃借権」が含まれますが、売却時の手続きは異なります。

地上権か土地賃借権か

土地賃借権は、地主との賃貸借契約に基づいて土地を使う権利です。第三者へ譲渡したり、土地を転貸したりするには、原則として地主の承諾が必要です。

売買契約の形式が「建物の売却」であっても、買主が建物を所有し続けるには、土地賃借権も引き継ぐ必要があります。「建物だけの売買なので地主の承諾は不要」とは判断しないでください。

地上権は、土地を直接使用できる物権です。一般に、地上権の譲渡には地主の承諾を要しません。

ただし、「地上権と聞いている」という認識だけでは不十分です。登記事項証明書で地上権の登記、存続期間、目的、範囲を確認し、設定契約に譲渡や利用に関する特別な条件がないかも確認しましょう。

旧法借地権・普通借地権・定期借地権

1992年8月1日より前に設定された借地権は、設定時期や契約経緯によって旧借地法が適用されます。その後に更新契約を結んでいても、直ちに現在の普通借地権へ切り替わるとは限りません。

旧法借地権だから自由に売却できるわけではありません。契約日、建物の種類、更新、建替え、地主との覚書や承諾書の履歴を確認してください。

現在の普通借地権では、契約更新の可否、残存期間、建物の種類・用途、地代や更新料などが買主の判断材料になります。

定期借地権は、種類に応じて契約更新がなく、期間満了時の建物の取扱いも契約で定められています。残存期間が短いほど、利用できる期間や住宅ローンの期間が限られ、査定価格へ影響しやすくなります。

建物の登記名義と借りている土地の範囲

借地権そのものを登記していなくても、借地権者本人の名義で借地上の建物が登記されていれば、土地所有者が変わった場合に、借地権を新しい土地所有者へ主張できることがあります。この効力を対抗力といいます。

一方、建物が未登記、名義が亡くなった家族のまま、増築部分が登記へ反映されていない、契約図面と実際の借地範囲が異なるといった状態は、売却や融資が止まる原因になります。

建物の所有権や抵当権などの権利登記は司法書士、建物の床面積・構造や土地の境界などの表示登記は土地家屋調査士へ確認しましょう。

借地権付き区分マンションは確認方法が異なる

区分マンションでは、敷地を使う権利の種類、管理規約、地主との原契約、管理組合や管理会社による一括承諾の仕組み、借地期間満了時の建物の取扱いなどを確認します。

一戸建て向けの地主交渉や承諾書を、そのまま区分マンションへ当てはめないでください。

借地権を売却する4つの方法

売却方法は、税引前手取り、成立に必要な条件、売却までの期間、売却後に残る責任の4点を並べて比較します。最初の提示価格だけで決めるのは避けましょう。

地主が所有する、借地権の負担が付いた土地の所有権を「底地」といいます。底地と借地権を同じ買主へ売却できれば、買主は土地と建物を一体として所有できます。

スクロールできます
売却方法向いている状況価格・手取りの考え方主な壁
第三者へ仲介で売る地主の協力が見込め、契約・建物・融資に大きな問題がない市場で買主を探すため、借地権付き建物として成約可能な価格を探りやすい地主の承諾条件や買主の融資が固まらないと、契約後に止まることがある
地主へ売る地主が土地を自由に使える状態へ戻したい、または早く借地関係を解消したい第三者への譲渡ではないため、通常は譲渡承諾料を支払う必要がない地主に買取義務はなく、価格の比較対象も少なくなりやすい
底地と借地権を同時に売る地主も底地を売る意向があり、所有権物件として売るほうが有利と見込める買主が土地・建物を一体で取得でき、買主候補や融資の選択肢が広がる可能性がある売却価格の配分、費用負担、契約条件について地主との合意が必要
専門会社に買い取ってもらう期限が短い、権利関係が複雑、一般の買主では融資が難しい権利調整、保有、再販売にかかる費用とリスクが価格へ反映されるため、仲介の想定成約価格より低くなりやすい調査後の減額条件、売主負担費用、最終的な手取りを比較する必要がある
売却方法の絞り方
  • 地主も底地を売りたい底地との同時売却を先に比較する
  • 地主の承諾と買主の融資が見込める第三者への仲介売却を検討する
  • 地主が土地を取り戻したい地主への売却をほかの査定と比べる
  • 期限が短い、権利関係が複雑、融資が難しい専門会社の直接買取も比較する

どれか一つに決めてから相談する必要はありません。不動産会社が対応できる方法ごとに、想定価格、必要な費用、成立条件、売却期間を示してもらいましょう。

\ 売却方法ごとの手取りを、同じ条件で比べる /

借地権の売却価格は借地権割合だけでは決まらない

借地権割合は、借地権の価値を確認する一つの参考になります。ただし、借地権付き建物の売却相場を直接示す数字ではありません。

相続税・贈与税の財産評価では、土地を自分で使用する場合の評価額に、地域ごとに定められた借地権割合を掛けて借地権の価額を計算します。

実際の売却価格は、次のような契約・物件・市場の条件を反映して決まります。

  • 借地権の種類と残存期間
  • 地代、更新料、譲渡承諾料
  • 地主が認める買主の条件・用途
  • 建替え、増改築、用途変更の可否
  • 建物状態、接道、再建築の可否
  • 買主が利用できる住宅ローン
  • 地域の取引事例と需要
  • 滞納、無断増改築、境界、相続、共有の問題

「更地価格×借地権割合」で出した金額は、税務上の評価や比較の出発点にはなりますが、売却価格や手取りとは一致しません。

借地権付き建物の取引事例、建物状態、契約制限、地主の承諾条件まで反映した査定を、複数社から取りましょう。

\ 割合の計算ではなく、実際の売却価格を知る /

手取りは2段階で計算する

借地権付き建物の手取りを確認するときは、売却後に手元へ残る金額と、税金の対象となる利益を分けて計算します。

特に混同しやすいのが住宅ローンです。ローン返済額は手元の現金を減らしますが、税金の計算上、そのまま取得費や譲渡費用になるわけではありません。

税引前の概算手取り

売却代金 − 譲渡承諾料等 − 仲介手数料 − 登記・印紙・測量・解体等の売却費用 − 返済する住宅ローン残高

税金計算のもとになる利益

収入金額 −(取得費+譲渡費用)− 特別控除額

取得費には、購入代金や購入時の手数料などを含めます。建物の取得費は、所有中の減価償却費相当額を差し引いて計算します。

譲渡費用は、仲介手数料、売主が負担した印紙税、借地権を売るために地主へ支払った名義書換料など、売却のために直接必要となった費用です。

次の数字は、計算手順を示すための仮の例です。実際の売却相場や承諾料を示すものではありません。

項目仮定額
売却代金3,000万円
地主と合意した譲渡承諾料300万円
仲介手数料105万6,000円
登記・印紙・その他の売却費用30万円
完済する住宅ローン500万円
税引前の概算手取り2,064万4,000円

計算式は、3,000万円−300万円−105万6,000円−30万円−500万円=2,064万4,000円です。

仲介手数料は、売買代金3,000万円の場合の通常の税込上限を、速算式で計算しています。実際の仲介手数料は、法定上限の範囲で、不動産会社と締結する媒介契約によって決まります。

税金は別に計算します。取得費を1,500万円とし、承諾料・仲介手数料・その他売却費用の全額が譲渡費用として認められ、特別控除を使わないと仮定すると、譲渡所得は1,064万4,000円です。

住宅ローン返済額500万円は、譲渡所得の計算からは差し引けません。

マイホームとともに借地権を売る場合も、一定の要件を満たせば、マイホームの3,000万円特別控除を利用できる可能性があります。契約前に税理士または税務署へ確認してください。

譲渡承諾料は法律で一律に決まっていない

土地賃借権を第三者へ譲渡するときは、地主の承諾を得る条件として、「譲渡承諾料」「名義書換料」などを支払う実務があります。

過去の裁判例や実務資料では、借地権価格の10%程度が参考とされた例があります。

ただし、10%は法律で定められた全国共通の料率ではありません。

契約書、地域の取引慣行、借地権の残存期間、地代、買主、利用目的、建替え条件、融資への協力内容などによって金額は変わります。

「借地権価格の10%」と「売買代金の10%」でも基準額は異なります。少なくとも次の5点を、承諾書や合意書へ明記しましょう。

  1. 何を基準に算出した金額か
  2. 譲渡だけでなく、更新、建替え、用途変更などの承諾を含むか
  3. 誰が、いつ、どの方法で支払うか
  4. 売買契約が解除された場合に返金されるか
  5. 特定の買主だけに対する承諾か、条件を満たす買主への承諾か

税務上、借地権を売るために地主へ支払った名義書換料などは、譲渡費用に含まれる場合があります。合意書、承諾書、領収書、振込記録を保管してください。

借地権を売却する流れは7段階

借地権売却では、先に契約内容と売却方法を整理し、その後に地主へ提示する条件を固めます。地主への連絡や買主探しを先行させると、後から条件を作り直すことになりかねません。

STEP
契約書と登記をそろえる

借地契約書、更新契約書、覚書、過去の承諾書、地代の支払記録、土地・建物の登記事項証明書を集めます。

契約書が見つからない場合は、地主へ条件交渉を始める前に、契約開始時期、当事者、借地範囲、地代、更新、建替えなどの経緯を時系列で整理します。

STEP
借地権の取引経験がある会社へ査定を依頼する

不動産会社が対応できる売却方法ごとに、想定成約価格、必要条件、概算手取り、想定買主、売却期間を示してもらいます。

税務上の借地権割合を掛けただけの査定ではなく、契約制限、承諾条件、建物状態、融資を反映した根拠を確認しましょう。

STEP
地主への相談方針を決める

第三者へ売りたいのか、地主への売却や底地との同時売却も検討するのかを整理します。

不動産会社や弁護士を窓口にすると、承諾料だけでなく、買主条件、建替え、地代、融資書類への協力までまとめて確認しやすくなります。

STEP
地主と条件を調整する

譲渡の可否、承諾料、買主の条件、地代、更新、建替え・増改築、用途、住宅ローンへの協力、承諾書の形式を話し合います。

地主が買取や同時売却を希望する場合は、第三者へ売る場合の手取りと比較します。

STEP
買主探しと融資確認を並行する

販売資料には、借地権の種類、契約残存期間、地代、更新、譲渡、建替えの条件を正確に記載します。

買主が住宅ローンを使う場合は、金融機関の取扱条件と、地主に求められる承諾書・担保関係書類を確認します。

STEP
承諾を得られなかった場合を定めて契約する

正式承諾より前に売買契約を結ぶ場合は、「期限までに所定の承諾を得られなければ解除できること」「承諾料が上限を超えた場合の扱い」を特約へ記載します。

買主がローンを使う場合は、地主承諾の期限と融資承認期限の前後関係もそろえます。

STEP
承諾・決済・登記を連動させる

契約で定めた条件に従い、地主承諾書、承諾料の支払い、売買代金の受領、建物の所有権移転登記、鍵・借地契約書類の引渡しを進めます。

当日の順序、必要書類、振込先、原本の確認方法は、仲介会社、地主、金融機関、司法書士の間で事前に共有してください。

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地主が売却を承諾しないときの対処法

地主から承諾を得られない場合でも、土地賃借権付き建物の売却方法が直ちになくなるとは限りません。

ただし、無断譲渡は避け、まず地主が承諾しない理由を確認します。

買主の支払能力、土地の利用目的、地代の滞納、無断増改築、用途変更などへの不安が理由であれば、問題を整理したうえで再交渉できる場合があります。

売買契約を急がず、必要に応じて借地問題を扱う弁護士へ相談してください。

裁判所へ地主の承諾に代わる許可を求める方法がある

土地賃借権を第三者へ譲渡しようとする場合、買主が借地権を取得しても地主に不利となるおそれがないにもかかわらず承諾を得られないときは、借地権者が裁判所へ「地主の承諾に代わる許可」を申し立てられる制度があります。

このような借地に関する裁判所の手続きを、一般に「借地非訟」と呼びます。

借地非訟で起こり得ること
  • 裁判所が許可へ条件を付ける
  • 地主への金銭の支払いを定める
  • 借地条件を変更する
  • 地主が建物と土地賃借権を自ら譲り受ける申立てを行う

地主が自ら譲り受ける仕組みは、実務上「介入権」と呼ばれます。

借地非訟は、承諾料を払わず、短期間で売るための制度ではありません。

申立書や証拠の提出、当事者から事情を聴く手続き、鑑定委員会からの意見聴取などが行われる場合があります。申立先は、原則として借地がある場所を管轄する地方裁判所です。

弁護士へ相談するときは、次の資料を用意すると事情を共有しやすくなります。

  • 借地契約書、更新契約書、承諾に関する書面
  • 土地・建物の登記事項証明書、公図、契約図面
  • 地代・更新料の支払記録
  • 地主とのメール、手紙、面談記録
  • 買主候補の支払能力や利用目的がわかる資料
  • 査定書、売買条件案、承諾料の提示内容

申立書の書式例は裁判所から公開されていますが、記入すれば許可されるものではありません。許可の見込み、地主が介入権を行使した場合の価格、売却期限への影響を弁護士と検討してください。

売却前に集める書類

借地権付き建物の売却では、契約内容、建物の状態、地代やローンなど、確認する資料が多岐にわたります。

一度にすべてを集めようとせず、「契約と権利」「建物と土地」「お金と名義」の3つに分けて確認しましょう。見つからない資料があっても、未確認であることを不動産会社や専門家へ伝えれば、相談を始められます。

1.契約と権利に関する書類
  • 借地契約書、更新契約書
  • 覚書、譲渡・建替え・増改築などの承諾書
  • 土地・建物の登記事項証明書
  • 公図、借地範囲がわかる契約図面

主な確認先:地主、管理会社、法務局、司法書士、弁護士

まず、土地を借りている範囲、契約期間、地代、用途、譲渡や建替えの条件を確認します。契約書と登記の名義が一致しない場合や、契約書自体が見つからない場合は、買主探しや地主との交渉より先に専門家へ相談しましょう。

2.建物と土地の状態がわかる書類
  • 建築確認済証、検査済証、建物図面
  • 増改築、修繕、設備交換の記録
  • 境界、越境、接道状況がわかる資料
  • 固定資産税の課税明細書、固定資産評価証明書

主な確認先:市区町村、建築士、土地家屋調査士、不動産会社

建物の未登記、増築部分の登記漏れ、借地範囲と現況のずれは、査定や買主の融資へ影響します。資料がない場合は、どの状態まで現地調査や役所調査で確認できるかを不動産会社へ聞いてください。

3.お金と名義に関する書類
  • 地代、更新料、承諾料の領収書・振込記録
  • 住宅ローンの残高証明書、抵当権の資料
  • 相続関係や共有名義の状況がわかる書類
  • 借地権や建物を取得したときの契約書、領収書、通帳

主な確認先:金融機関、市区町村、司法書士、税理士

地代の滞納、相続登記の未了、住宅ローンや抵当権が残っている場合は、売却条件や決済日へ影響します。購入時の資料は、売却後の譲渡所得を計算する際にも使うため、できるだけ探しておきましょう。

資料は原本をすぐに渡さず、査定や相談の段階ではコピーや画像データを使用すると管理しやすくなります。原本が必要になる時期と提出先は、不動産会社や司法書士へ確認してください。

引き渡した建物や権利が売買契約の内容に適合しない場合に、売主が負う責任を契約不適合責任といいます。

増改築、雨漏り、設備故障、境界や越境の問題、地代・更新料の滞納、地主との争いなどは、不動産会社へ正確に伝え、買主への告知方法を決めておきましょう。

地主への事前相談メモ

買主も条件も決まっていない段階で正式な承諾書への押印を求めても、地主は判断できません。まずは次の内容を1枚にまとめ、相談から始めましょう。

借地権付き建物の売却に関する事前相談
  1. 対象
    土地の所在地、建物の表示、契約日、現在の地代
  2. 売却理由
    必要な範囲で簡潔に記載
  3. 売却の希望
    第三者への売却を検討していること
  4. 相談したい条件
    譲渡の可否、買主条件、承諾料の基準・金額・支払時期、地代、更新、用途、建替え、融資書類への協力、地主による買取・同時売却の意向
  5. 今後の進め方
    買主候補と売買条件が固まった段階で正式な承諾書案を提示したいこと

このメモは法的な承諾書ではありません。面談後に、合意済みの内容と未合意の内容を分けて記録し、正式な承諾書と売買契約書の条件を一致させましょう。

借地権売却でかかる費用と税金

借地権付き建物の売却では、一般的な不動産売却の費用に加えて、地主との条件調整に必要な費用が発生することがあります。

  • 譲渡承諾料・名義書換料
  • 仲介手数料
  • 紙の売買契約書にかかる印紙税
  • 抵当権抹消、住所・氏名変更、相続、建物表示変更などの登記費用
  • 司法書士、土地家屋調査士、弁護士、不動産鑑定士などへの報酬
  • 測量、越境解消、残置物処分、解体など、売却条件に応じた費用
  • 売却益に対する所得税・復興特別所得税・住民税

土地・建物や借地権の譲渡所得は、給与所得などと分けて計算します。売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えるかどうかによって、長期譲渡所得と短期譲渡所得に分かれます。

相続や贈与で取得した場合は、原則として、被相続人や贈与者の取得時期・取得費を引き継ぎます。「自分が相続してから5年」で判断するわけではありません。

取得時の資料が見つからない場合は概算取得費を使えることがありますが、実際の取得費より低くなり、税負担が増える可能性があります。

購入時の契約書、領収書、通帳、借地権設定時の資料、建築資料、相続資料を探し、必要に応じて税理士へ確認してください。

売買契約を急がないほうがよい7つのサイン

次のいずれかに該当する場合は、地主への条件提示や買主との売買契約を急がず、問題の確認を先に進めましょう。

契約前の停止サイン
  1. 借地契約書がなく、借地範囲、期間、地代、用途を説明できない
  2. 地代・更新料の滞納や、地主との争いがある
  3. 建物が未登記、亡くなった人の名義、または売主以外との共有になっている
  4. 地主へ知らせていない増改築、用途変更、転貸がある可能性がある
  5. 地主の了解が口頭だけで、承諾料や買主条件が決まっていない
  6. 買主の融資を確認しないまま、解除条件のない契約を求められている
  7. 「今日だけの価格」など、他社との比較を妨げる即決を求められている

該当項目があっても、必ず売却できないわけではありません。登記の整理、契約違反の解消、地主との再協議、売却方法の変更などで進められる場合があります。

避けたいのは、問題を伏せたまま買主探しや契約へ進むことです。

不動産会社と専門家の選び方

会社の規模だけでなく、その地域の借地権付き建物について、何を調べ、地主・買主・金融機関の間をどう調整できるかを確認しましょう。

複数の相談先へ同じ資料を渡し、次の質問への回答を比較してください。

  • 査定額は、借地権割合以外のどの条件を反映したか
  • 第三者売却、地主への売却、同時売却、直接買取のうち、どれに対応できるか
  • 地主へ誰が、どの順序で、どの資料を示すか
  • 承諾書へ何を記載し、融資にどの地主書類が必要か
  • どの条件で査定額が変わり、何を売主が負担するか
  • 相続、未登記、契約違反、借地非訟が関係するとき、どの専門家と連携するか

「借地権の取扱実績がある」と説明された場合は、件数だけでなく、扱った借地権の種類、売却方法、地主承諾、買主の融資、建替え条件まで担当した事例があるかを確認しましょう。

相談先主に確認すること
不動産会社・宅地建物取引士価格査定、買主探し、地主・金融機関との調整、売買契約
司法書士相続、所有権移転、抵当権抹消などの権利登記
土地家屋調査士建物の表示登記、土地の境界、借地範囲
弁護士契約上の争い、地主との交渉、借地非訟
税理士取得費、譲渡所得、特別控除などの税務

一つの資格だけですべての問題を解決できるとは限りません。必要な専門家と連携できる体制も、相談先を選ぶ基準になります。

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借地権売却でよくある質問

査定を受ける順番、相続した借地権、譲渡承諾料、古い建物の扱いなど、借地権売却で判断に迷いやすい点をまとめました。

地主に知らせず査定を受けてもよいですか?

手元の資料をもとに概算査定を受けることと、広告を出して買主を募集したり、売買契約を締結したりすることは別です。

まず査定を受けて売却方法を整理し、その後に地主へ相談する順序でも構いません。

ただし、土地への立入り、現地調査、広告掲載、買主との契約へ進む前には、契約内容を確認し、地主の承諾や事前協議が必要かを不動産会社・弁護士へ確認してください。

相続した借地権でも地主の承諾が必要ですか?

法定相続や遺産分割によって借地権を引き継ぐことは、一般に、地主の承諾が必要な第三者への譲渡とは区別されます。

ただし、遺言による第三者への特定遺贈などは、相続と同じ扱いにならない場合があります。遺言書や相続関係を弁護士へ確認してください。

相続後に第三者へ売る段階では、土地賃借権の譲渡について地主の承諾が必要です。建物の相続登記、地主への通知、契約上の届出も確認しましょう。

地主から高い承諾料を求められたら、どうすればよいですか?

その場で合意せず、何を基準に計算した金額か、どの承諾が含まれるか、過去の契約や地域の事例と比べて妥当かを確認します。

「借地権価格の何%」という説明であれば、基準となる借地権価格の算出方法も確認してください。

弁護士や不動産鑑定士を交えた交渉、調停、借地非訟を検討できる場合もあります。売却期限と手続きにかかる時間を比べ、裁判所を使わない合意も含めて判断しましょう。

古い建物は解体してから売ったほうがよいですか?

地主、不動産会社、司法書士、弁護士などへ確認する前に解体しないでください。

建物を取り壊すと、建物登記による借地権の対抗力、再築の可否、地主の承諾条件、土地返還義務、買主の選択肢に影響します。

登記された建物が滅失した場合でも、滅失した建物を特定する事項、滅失日、新しい建物を築造する旨を土地の見やすい場所へ掲示すると、要件を満たす範囲で滅失後2年間は対抗力を維持できる制度があります。

ただし、2年以内に建物を再築・登記できなければ保護が続かないため、解体前に具体的な手順を確認してください。

建物を残して売る、建替え承諾を付ける、地主へ返還する、底地と同時売却する場合の手取りを比較してから判断しましょう。

借地権付き区分マンションも同じ手順ですか?

同じではありません。

区分マンションでは、敷地利用権の種類、地主との原契約、管理規約、譲渡承諾の仕組み、借地権の残存期間、解体積立金・保証金、管理組合の資料などを確認します。

同じマンション、または同様の借地権付き区分マンションの取引実績がある不動産会社へ相談してください。

まとめ|価格査定の前に3つの関門を整理する

借地権付き建物は売却できます。ただし、契約と権利の内容、地主の承諾、買主がローンを利用する場合の融資条件がつながらなければ、取引は成立しません。

まず、借地契約書、更新・承諾の書面、土地・建物の登記事項証明書、地代の支払記録、建築関係資料を集めます。

同じ資料を複数の不動産会社へ渡し、対応できる売却方法ごとに、成立条件、想定売却期間、税引前の概算手取りを示してもらいましょう。

契約書がない、滞納や無断増改築がある、地主が強く反対している、建物の名義が異なるといった場合は、買主探しを急がず、弁護士、司法書士、土地家屋調査士などへ先に相談します。

借地権の売却を左右するのは、借地権割合という一つの数字ではなく、3つの関門をどの順序で通すかです。

一括査定サイトで紹介されるすべての会社が、借地権付き建物の仲介・直接買取に対応するとは限りません。申込時または最初の連絡時に、借地権の種類、地主承諾の状況、希望する売却方法を伝え、対応可否を確認してください。

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本記事は2026年8月10日時点の法令・公的情報をもとに作成しています。個別の契約内容、権利関係、法改正によって結論が変わるため、必要に応じて専門家へ確認してください。

出典

e-Gov法令検索「民法」
e-Gov法令検索「借地借家法」
東京地方裁判所「借地非訟とは」
東京地方裁判所「借地非訟事件(書式例)」
国土交通省「定期借地権の解説」
国土交通省「CRE戦略を実践するための手引き(資料集)」
国税庁「No.4611 借地権の評価」
国税庁「No.3255 譲渡費用となるもの」
国税庁「No.3270 相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期」
国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」
国税庁「不動産売買契約書の印紙税の軽減措置」
国土交通省「不動産取引に関するお知らせ」
住宅金融支援機構「参考書式集」
三井住友銀行「借地権付物件の住宅ローン」(公開日:2025年1月17日)
リビンマッチ「不動産一括査定・売却」

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