MENU

底地売却の4つの方法|相場の見方・税金・手順をわかりやすく解説

先に結論

底地は、借地人が使っている状態のままでも第三者へ売れます。土地を売ること自体に、借地人の承諾は原則として要りません。ただし、契約書に事前通知や優先交渉の取り決めがある場合は、先にその内容を確かめてください。

ただ、売れるかどうかは実のところ大きな論点ではありません。手取りを左右するのは、誰に、どの条件で売るかです。借地人へ売る、借地権とまとめて売る、投資家へ仲介で売る、専門会社へ直接売る。同じ土地でも、この選び方で価格も売却までの期間も変わります。

最初に整理するのは、借地契約の内容、地代の手取り(税や管理費を引いた後の金額)、借地人の意向、売却の期限の4点です。更地価格に一律の割合を掛けて相場を出すより、この4点を先に確かめたほうが、自分に合う方法は早く絞れます。

情報確認日:2026年7月24日

現在の状況最初に検討する選択肢判断の理由
借地人が土地を買いたい借地人への売却借地人は土地と建物を完全所有にできる
借地人も建物・借地権を売りたい底地と借地権の同時売却権利を一本化して一般の買主へ提案しやすい
借地人は住み続けたいが、売却を急がない第三者への仲介売却地代収入を評価する投資家を探せる可能性がある
借地人の協力を得にくく、期限を優先したい専門会社の直接買取契約や管理の難しさを引き継げる買主を探しやすい
地代の手取りが安定し、管理も負担でない保有継続も比較安値で急いで手放す必要がない
状況別:最初に検討する売却方法

自分がどこに当てはまるか迷う場合は、次の順で確かめると絞りやすくなります。

最初に確認
借地人に土地を買う意向はありますか。あるなら、借地人への売却が第一候補です。

次に確認
借地人も建物と借地権を売りたいと考えていますか。あるなら、同時売却で完全所有権として出せます。

どちらでもない場合
価格を取るなら仲介、期限を取るなら直接買取です。売らずに持ち続ける案とも比べます。

ここで決まるのは、あくまで検討の出発点です。契約内容と税金を確認したうえで、最終的な方法を選びます。

なお、契約書が見つからない、登記名義が亡くなった人のまま、地代滞納や紛争がある、借地人が複数いる。こうした場合は、査定を集める前に権利関係を整理してください。

目次

底地を第三者へ売却しても、借地契約は原則として引き継がれる

底地とは、借地人が建物を建てて使っている土地の、地主側の所有権です。国土交通省の不動産鑑定評価基準も、借地権が付いた宅地の所有権を底地としています。売るのはこの所有権であって、借地人の建物や借地権ではありません。

借地権には、土地を借りる契約(土地賃貸借)によるものと、地上権を設定したものがあります。数が多いのは前者なので、この記事は土地賃貸借を前提に説明します。契約書に「地上権」と書かれている場合は扱いが変わるため、個別に確認してください。

「対抗要件」とは、地主が変わっても「この土地を借りる権利は自分にある」と新しい所有者へ主張できるための条件です。借地権そのものを登記していなくても、借地人の名義で土地上の建物を登記していれば、この条件を満たす場合があります(借地借家法10条)。

借地人が対抗要件を満たしている土地を売ると、地主の立場(地代を受け取る権利と、土地を貸す義務)は原則として買主へ移ります。買主が「自分が新しい地主だ」と借地人に主張するには、土地の所有権移転登記が必要です(民法605条の2)。

売買自体に借地人の承諾は要りません。ただし買主は、借地契約が続く前提で価格を決めます。借地人が対抗要件を備えているなら、新しい所有者は土地が売られたことだけを理由に、退去を求めたり契約条件を一方的に変えたりはできないからです。

逆に対抗要件がない場合は、借地人が買主へ借地権を主張できないことがあります。建物の登記がどうなっているかを、契約前に確認してください。契約書に事前通知、借地人との優先交渉、承諾などの条項がある場合も、その効力と手順を先に確かめます。

売却後に起きやすいのは、地代の払い先をめぐる混乱です。旧地主と新地主の連名で出す通知に、次の内容をそろえておきます。

  • 所有者が変わった日と、所有権移転登記が完了したこと
  • 新しい地代の支払先と、切り替わる日
  • 敷金・保証金、前受地代、未収地代の扱い
  • 更新、建替え、譲渡承諾などの連絡窓口
  • これまでの借地条件をそのまま引き継ぐこと

民法605条の2第4項は、地主の立場が買主へ移る場合、敷金を返す義務も新しい地主が引き継ぐと定めています。ただし「保証金」など別の名称で預かったお金は、契約上の意味によって扱いが変わることがあります。名称だけで判断せず、金額と精算方法を売買契約書に書き込んでください。

返す義務が移っても、旧地主が預かっている現金まで自動的に移るわけではありません。未払地代を敷金から差し引く必要がないかを確認し、残額を買主へ送るのか、売買代金の中で精算するのかを決めます。売却前に発生した未収地代も同じです。売主が回収するのか、請求する権利を買主へ移すのか、代金で精算するのかを決め、必要な通知とあわせて契約書へ明記します。

底地の売却価格に全国一律の相場はない

借地権割合が70%なら、底地は更地価格の30%。路線価図を見ると、そう考えたくなります。借地権割合とは、路線価図に記号で示された、借地権の価値の目安となる割合です。ただしこの割合は、相続税や贈与税の評価に使うものです。市場で底地が更地価格の30%で売れることを示す数字ではありません。

それなら、実際の取引データから相場をつかめないでしょうか。2026年7月24日時点の不動産情報ライブラリには、その取引が底地だけの売買かどうかを見分けられる項目が見当たりません。つまり公開データだけでは、底地単独取引の全国平均価格も、更地価格に対する平均割合も計算できません。税務評価の割合や事業者サイトの目安を、自分の土地の実売価格として当てはめないでください(国土交通省「不動産取引価格情報の検索・ダウンロード」)。

相続税評価と売却価格を分ける

国税庁は、普通借地権の目的となっている貸宅地について、相続税・贈与税の評価額を次の式で求めるとしています。

計算式

貸宅地の相続税評価額 = 自用地としての価額 ×(1-借地権割合)

借地権割合は路線価図のA~Gで示され、2026年分の説明では90%から30%まであります(国税庁「路線価図の説明」国税庁「貸宅地の評価」)。

たとえば、自用地としての相続税評価額が3,000万円、借地権割合が70%なら、貸宅地の相続税評価額は900万円です。

3,000万円 ×(1-70%)= 900万円

これは相続税・贈与税のための評価例です。周辺の更地が実際に3,000万円で売れるという意味でも、底地が900万円で売れるという意味でもありません。

図解:相続税評価と売却価格は別の数字

相続税評価額
税金を計算するための数字です。自用地の評価額と借地権割合から決まります。

売却価格
実際の取引で決まる数字です。土地の相場、地代収益、契約条件、売却先で動きます。

価格は「土地」「地代収益」「土地が戻る見通し」から考える

一律の割合が使えないなら、価格はどこから見ればよいのでしょうか。手がかりは3つあります。

  1. 土地そのものの参考価格
    国土交通省の不動産情報ライブラリで近隣の土地取引や地価公示を調べ、借地権が付いていない土地ならどの程度になるかを見ます。公表データは自分の底地と条件が同じとは限らないので、出発点にとどめます。
  2. 地代から生まれる収益
    年間地代から固定資産税・都市計画税、管理費、回収コストなどを引いた純収益を出します。買主は金額だけでなく、その収益がどれだけ続くか、地代の滞納や改定で崩れないかも見ています。
  3. 土地が自由に使えるようになる見通し
    契約の種類、経過期間と残存期間、更新条件、将来の一時金、借地人が底地を買う可能性や同時売却の可能性を確認します。定期借地なら返還時期と建物の処理条件、普通借地なら更新の見込みを分けて考えます。

この3つは、別々の価値を足し算するためのものではありません。土地の参考値で価格の位置を確かめ、地代で今の収益力を見て、契約条件から将来の可能性と不確実性を見積もる。3つを重ねたうえで、同じ価値を二重に数えていないかを点検します。

とくに注意したいのが、普通借地権の残存期間です。契約期間が終わっただけで、土地が当然に返ってくるわけではありません。更新の可能性や、更新を拒むために法律上求められる「正当事由」を検討しないまま「この年に更地として戻る」と仮定すると、価格を高く見積もりすぎます。

国土交通省の不動産鑑定評価基準でも、底地を一律の割合では評価しません。実際の地代から必要経費を引いた純収益、契約終了時に土地が戻ることによる価値(復帰価値)、将来受け取る一時金(更新料など)、類似する底地の取引などを検討し、取引慣行や契約内容も踏まえて判断します。借地人自身が買う場合は、完全所有権になって市場性が回復する分の価値増加も考慮します(国土交通省「不動産鑑定評価基準」)。

同じ面積、同じ地域でも、次の条件で価格は動きます。

  • 売却先
    借地人、一般投資家、専門買取会社で、買う目的も期待する利回りも違います
  • 年間の地代純収益
    実際に回収できた地代等から税・通常の管理費等を引きます。未収地代を収入に含めず、回収できる見込みを別に見ます
  • 借地契約の種類
    旧法借地、普通借地、一般定期、事業用定期などで、期間も終了条件も違います
  • 契約の残存期間と更新の見込み
    土地が戻る時期の予想に直結します
  • 借地人の人数と関係
    複数いるほど契約管理も同時売却も難しくなります
  • 地代滞納・紛争
    回収費用、訴訟、管理にかかる期間を、買主は価格に織り込みます
  • 敷金・保証金・一時金
    引き継ぐ債務や精算額に影響します
  • 立地・接道・形状・境界
    将来、完全所有権になったときの使い道を左右します
  • 共有・相続・担保
    売主が確実に所有権を移せるかに関わります

契約が普通借地権か定期借地権かでも見通しは変わります。国土交通省の整理では、普通借地権は更新があり、更新を拒むには正当事由が必要です。一方、一般定期借地権や事業用定期借地権は、契約方法や期間、終了条件が異なります(国土交通省「定期借地権の解説」)。契約日が古い借地には経過措置もあるため、名称だけで残存期間を判断しないでください。

自分の底地価格をつかむ3段階

全国一律の相場がなくても、自分の底地の価格帯は次の順で絞れます。

  1. 近隣の土地取引、地価公示、路線価を集め、借地権がない場合の参考値を把握する
  2. 契約書、地代台帳、固定資産税、残存期間から、地代の純収益と権利条件を整理する
  3. 同じ資料を各社へ渡し、仲介の成約予想価格と直接買取の確定条件を複数比べる

ここで気をつけたいのは、査定額の読み方です。金額が高くても、その価格で買主が見つかるとは限りません。「査定額」「売出価格」「成約予想価格」「買取価格」を区別し、値下げの条件と価格が確定する日まで聞いておきます。

底地を売却する4つの方法

方法を分けるのは、借地人の協力がどこまで得られるかと、現金化までにどれだけ待てるかです。どれが高く売れるかは条件次第なので、まず実行できる方法だけを並べて比べます。

※表は横にスクロールできます。

方法向く状況価格の考え方時間の傾向主な注意点
借地人へ売却借地人に購入意向と資金がある完全所有になる価値を交渉材料にできる合意できれば進めやすい無理に購入を迫らない
底地と借地権を同時売却地主と借地人の双方が売りたい一般の買主へ完全所有権として提案しやすい調整に時間がかかる場合がある売却代金の配分と税金を先に決める
第三者へ仲介売却借地人は住み続け、売主は価格を重視地代の手取りや将来性を投資家が評価買主探しが必要売れない可能性と値下げ条件を確認
専門会社へ直接売却期限を優先し、権利調整も任せたい管理費や再販売リスクが価格に反映される比較的進めやすい契約後の減額条件と正式な買主を確認
保有を続ける地代の手取りが安定し、管理を続けられる地代収益と将来の売却価値を合わせて考えるすぐには現金化しない滞納、相続、管理負担も見込む
4つの売却方法と保有をまとめて比較

1.借地人へ底地を売却する

借地人が底地を買うと、土地と借地権が一つにまとまり、土地建物を完全所有にできます。今後の地代も、更新や承諾のたびの交渉もなくなるため、第三者より購入意欲が高くなることがあります。

ただし、借地人に資金や購入意向がなければ成立しません。「借地人なら必ず最も高く買う」とも限りません。借地人の側も、地代を払い続ける場合と買う場合を比べ、融資や購入諸費用まで計算しているからです。

価格交渉では、路線価の底地割合をそのまま提示せず、土地の参考価格、現在の地代、更新や地代改定を仮定した将来負担の現在価値、購入諸費用、完全所有になった後の使い道を、同じ資料の上で確認します。このとき、将来の地代を単純に足し上げた金額を売却価格と並べないでください。何十年も先に受け取る地代を、今の現金と同じ価値として数えることになります。

2.底地と借地権を同時に第三者へ売却する

借地人も建物と借地権を売りたいなら、地主と借地人が協力して、底地と借地権を同じ買主へ売る方法があります。買主は完全所有権を取得できるので、底地だけを売る場合より候補は広がりやすくなります。

難しいのは総額よりも配分です。地主と借地人の取り分は、路線価図の借地権割合で自動的に決まるものではありません。それぞれの権利価格、建物価格、売却費用、立退きや明渡しの条件、税負担を踏まえて合意します。

二つの売買を一体として成立させるのか、一方だけ成立した場合をどう扱うのかも、契約書でそろえる必要があります。底地・借地権・建物の価格配分は税額にも影響するため、契約前に不動産会社、弁護士、税理士で数字を合わせてください。

3.仲介で第三者・投資家へ売却する

借地人が土地を買わず、借地権も売らない場合は、地代収入を得る資産として第三者へ売る方法があります。仲介会社が投資家や資産保有会社を探すため、直接買取より高い価格を目指せる余地があります。その代わり、買主探しに時間がかかり、売れないまま終わる可能性も残ります。

買主が見ているのは表面利回りだけではありません。固定資産税を引いた後の収益、契約の残存期間、地代改定の履歴、滞納の有無、借地人との連絡状況、そして将来の出口です。資料が整っている底地ほど、買主にとっての不確実性が減ります。

4.底地を扱う専門会社へ直接売却する

期限を優先する場合や、借地人の協力を得にくい場合は、底地を直接買う会社が候補になります。買主自身が契約管理や将来の権利調整を引き継ぐため、一般の投資家が避ける条件でも検討されることがあります。

その代わり、買取価格には買主の資金調達費、管理費、将来の交渉費用、再販売リスクが織り込まれます。仲介より低くなる可能性があるので、金額だけで決めないでください。契約不適合責任(契約内容と実際の状態が違った場合に売主が負う責任)、測量の要否、手元資料をどこまで渡すか、価格が確定する時点、契約後の減額条件まで並べて比べます。

もう一つ確認したいのが、契約相手です。「買い取る」と説明されていても、実際の契約相手が別会社だったり、紹介や仲介だったりすることがあります。正式な買主、媒介の有無、仲介手数料の有無を、申込前に書面で確かめてください。

補足:借地権を買い取り、完全所有権にしてから売る方法もある

地主が借地人から借地権と建物を買い取り、土地と建物の権利をまとめてから売る方法もあります。土地を分割できるなら、底地と借地権の一部を交換し、地主と借地人がそれぞれ完全所有権の土地を持つ形も検討できます。

完全所有権になれば一般の買主へ提案しやすくなります。ただし、借地人との合意、買取資金、分筆後の面積と接道、価格配分、登記、税金の検討が必要です。土地を分けたことで、かえって使いにくくなる場合もあります。実行する前に、価格・法務・測量・登記・税務のそれぞれの専門家へ確認してください。

売らずに保有する選択も比較から外さない

地代の純収益が安定し、相続人が管理を続けられ、急いで現金化する理由がないなら、持ち続けることにも価値があります。年間地代が固定資産税を上回るかどうかだけでなく、将来売れる資産を残せることも含めて比べます。

反対に、地代滞納、管理を引き継ぐ人がいない、共有者が増えていく、相続税の納税期限が近いといった事情があるなら、今の収益率だけで保有を決めると負担だけが残ります。

売却と保有を同じ期間で比べる「底地判断シート」

「800万円で売る」と「年30万円の地代が入る」は、そのままでは比べられません。売却は今まとまったお金が入り、保有は毎年の地代と、将来売れる底地が残ります。受け取る時期が違うものを並べるには、比べる期間と、税引前・税引後のどちらでそろえるかを先に決めます。

「現在価値」とは、将来受け取るお金を「今ならいくら分か」に直した金額です。その換算に使う割合を「割引率」といいます。割引率を高くすると、先に受け取る収入や売却代金は低く評価されます。

まず記入する数字

  • 年間地代収入
    月額地代×12+契約上確実な定期収入
  • 年間保有コスト
    固定資産税・都市計画税+管理費+回収費用等
  • 年間地代純収益
    年間地代収入-年間保有コスト
  • 現在売却の税引前手取り
    売買代金-売主負担の仲介・測量・登記・専門家費用等
  • 現在売却の税引後手取り
    税引前手取り-譲渡所得税・住民税等の概算
  • 保有期間
    5年、10年など、家族が現実に管理できる期間
  • 期末売却の税引前手取り
    保有終了時の想定売却代金-その時点の売却費用
  • 期末売却の税引後手取り
    期末売却の税引前手取り-その時点の譲渡所得税等の概算
  • 割引率
    将来のお金と不確実性を現在価値へ直すための仮定。置いた根拠を記録します

9項目を一度にそろえる必要はありません。年間地代純収益と、現在売却の税引前手取りの2つが出れば、比較は始められます。

保有し続ける場合の価値は、次の形で現在時点にそろえます。

計算式

保有価値 = 各年の地代純収益の現在価値の合計 + 保有終了時に売却した手取りの現在価値

以下では、毎年末に同じ純収益を受け取り、割引率も変わらないと仮定します。年ごとに収支が違う場合は、各年の純収益を個別に割り引いてください。税引前で比べるならすべて税引前、税引後で比べるなら保有中の所得税なども含めて、基準をそろえます。

数字を入れた計算例

以下は計算方法を示す仮想例です。底地の相場でも、実際の成約事例でもありません。売却金額も、4つの案を同じ土俵で比べるために置いた仮の数字で、特定の相場割合や査定結果から算出したものではありません。

  • 年間地代:60万円
  • 固定資産税・都市計画税:21万円
  • 管理・送金・回収費用:9万円
  • 年間地代純収益:30万円
  • 比較期間:10年
  • 仮の割引率:年3%
  • 10年後の税引前手取り(想定売却代金から売却費用を控除後):800万円

この条件なら、10年間の地代純収益の現在価値が約256万円、10年後の税引前手取りの現在価値が約595万円です。合わせて約851万円になります。

地代の現在価値 約256万円10年後の売却手取りの現在価値 約595万円約851万円

詳しい計算式を見る

30万円 ×{1-(1+3%)のマイナス10乗}÷3%
+ 800万円 ÷(1+3%)の10乗 = 約851万円

4つの売却案は、いずれも今すぐ決済できるものと仮定します。決済時期が大きく違う場合は、売却手取りも比較の基準日まで割り引いてください。

※表は横にスクロールできます。

選択肢今回の仮定基準日時点の税引前価値実行条件
10年間保有後に売却年30万円の純収益、10年後800万円、割引率3%現在価値 約851万円管理継続と将来売却額の仮定が必要
借地人へ売却売買代金1,200万円、費用35万円1,165万円借地人の購入合意と資金
同時売却地主の配分1,400万円、費用65万円1,335万円借地人との売却条件・配分合意
第三者へ仲介売却売買代金950万円、費用50万円900万円買主募集の期間と成約
専門会社へ直接売却売買代金800万円、費用20万円780万円買取条件の合意
仮想例:各選択肢の税引前価値

金額だけを見れば、この例では同時売却の1,335万円が最大です。ただし、借地人が売却を望まなければ選べません。売る意思があっても、価格配分で合意できなければ成立しません。この表からわかるのは「いちばん高い方法」ではなく、金額と成立条件を同じ表に並べないと選べないということです。

保有案の数字も、10年後の売却手取りと割引率の置き方で順位が入れ替わります。一つの予測に寄せず、低め・中間・高めの3条件で確かめてください。

仮の割引率10年後600万円10年後800万円10年後1,000万円
2%約762万円約926万円約1,090万円
3%約702万円約851万円約1,000万円
5%約600万円約723万円約846万円
仮想例:割引率と10年後の手取りによる保有価値

では、保有を続けたほうが有利になるのはどんな場合でしょうか。年30万円の純収益、10年、割引率3%という前提なら、10年後の税引前手取りが約1,222万円あって、ようやく借地人へ今売る1,165万円と釣り合います。仮定した800万円より約422万円多い金額です。10年後にそこまでの価格を見込めるかどうかが、保有と売却の分かれ目になります。

なお、この表には譲渡所得税と保有中の所得税を入れていません。取得費、所有期間、相続税の有無で税額が変わるためです。実際に決める段階では各案を税引後に直し、現金化の期限、確実性、家族の管理負担もあわせて採点します。

底地売却を進める6つの手順

1.売却の目的と期限を決める

「高く売りたい」だけでは、仲介と直接買取のどちらを選ぶかが決まりません。相続税の納税、共有の解消、管理の終了といった期限を確認し、価格・速さ・借地人との関係のどれを優先するかを家族で共有します。

2.名義、土地、借地契約を一つの資料にまとめる

最低限、次の資料を集めます。

  • 土地の登記事項証明書、公図、地積測量図、境界確認書
  • 借地契約書、更新契約書、覚書、承諾書
  • 地代の請求・入金履歴、滞納と督促の記録
  • 固定資産税・都市計画税の納税通知書
  • 敷金・保証金、前受地代、更新料などの授受記録
  • 借地上建物の登記事項、借地人の連絡先
  • 取得時の売買契約書、仲介手数料、登記費用の資料

当初の契約書が見つからなくても、振込履歴、領収書、更新書類、建物登記、過去のやり取りの手紙が手がかりになります。推測で空欄を埋めず、わからない点はわからないと書いて専門家へ渡してください。

登記上の所有者の住所や氏名が現在と違う場合は、売却の前提になる変更登記も確認します。住所・氏名の変更登記は2026年4月1日から義務化され、変更日から2年以内が原則です。施行前の変更は、原則として2028年3月31日までに申請します(法務省「住所等変更登記の義務化」)。

3.年間収支と契約条件を整理する

契約上の地代額と実際の入金額を分けて書き出し、固定資産税・都市計画税、管理費、通常の回収費用を引いた純収益を計算します。未収地代は通常経費と混ぜず、金額、発生時期、督促履歴、回収の見込みを別欄にします。契約の開始日、種類、残存期間、更新、建替え、譲渡、増改築、地代改定の条項も抜き出しておきます。

4.借地人への打診順序を決める

関係が安定しているなら、第三者へ広く情報を出す前に、借地人へ購入や同時売却の意向を尋ねる余地があります。ただし、紛争中、滞納の交渉中、本人の意思確認に不安がある、代理人が立っているといった場合は、直接働きかけず弁護士を通します。

5.同じ資料で複数の条件を比較する

仲介会社には成約予想価格と想定期間を、直接買取会社には確定価格と減額条件を出してもらいます。会社ごとに違う情報を渡すと、そもそも比較になりません。査定の前提、買主、手数料、測量・境界対応、借地人への連絡役、契約不適合責任まで、同じ表に入れます。

6.契約から借地人への引継ぎまでを一続きで決める

売買契約では、所有権の移転だけでなく、借地契約、地代債権、未収金、敷金等、固定資産税などの精算、書類の引渡し、借地人への通知まで定めます。決済日に所有権移転登記を申請し、地代の二重払いが起きないよう、支払先の切替日をそろえます。

借地人へ話す前に決めておくこと

法的に売れることと、借地人へ黙って進めていいことは別です。知らない買主から突然連絡が来れば、借地人は立退きや地代の値上げを疑います。その時点で、同時売却や底地購入の話は進めにくくなります。

最初の打診は、購入を迫る場ではなく、選択肢を確認する場にします。

土地の今後について整理を始めています。現在の借地契約を一方的に変える話ではありません。土地の購入に関心があるか、将来建物を売る予定があるか、現時点でのお考えだけ伺えますか。条件の提示は、資料をそろえてから改めて行います。

この台本を使う前に、次の点を決めてください。

  • 誰が連絡するか。家族、不動産会社、弁護士のどれか
  • 購入意向だけを聞くのか、同時売却まで聞くのか
  • 価格を提示するなら、何を根拠にするか
  • 回答期限を置く必要があるか。その期限に合理的な理由があるか
  • 借地人が断った場合、第三者への売却へどう進むか

地代の一方的な値上げ、退去をほのめかす説明、低い価格を受け入れさせるための圧力は避けます。買主候補へ借地人の契約書や個人情報を渡すときも、初期段階では必要な箇所を伏せ、候補が絞れた後で秘密保持と開示範囲を確認します。

底地売却にかかる費用と税金

売却代金が同じでも、仲介か直接買取か、測量が必要か、取得費を証明できるかで手取りは変わります。価格を比べる前に、誰へいくら支払うのかを見積もっておきます。

主な売却費用

費用発生する主な場面確認点
仲介手数料不動産会社の媒介で成約上限額、消費税、支払時期
印紙税紙の不動産売買契約書を作成契約金額と軽減措置
測量・境界確認費面積や境界を確定して売る借地人・隣地の協力、納期
登記関連費抵当権抹消、住所・氏名変更等売主側で必要な登記
弁護士・税理士等の報酬紛争、契約設計、税額試算担当範囲と見積もり
固定資産税等の精算金引渡日を基準に日割り精算する精算金は譲渡所得の収入に含める
譲渡所得税・住民税売却益が生じる取得費、所有期間、特例
底地売却で確認する主な費用

仲介手数料の上限は、消費税等相当額を含まない物件価格から計算します。底地の代金は土地なので、そもそも消費税がかかりません。建物を含む取引では、建物価格に含まれる消費税等相当額を計算の基礎から除きます。物件価格が400万円を超え、仲介会社が課税事業者(消費税を納める事業者)である場合の簡便式は (物件価格×3%+6万円)×1.1 です。

価格が低い土地には別の上限があります。2024年7月1日以降、価格800万円以下の宅地・建物には、国の告示で「低廉な空家等」と呼ばれる報酬特例が使えます。名称に「空家」とありますが、実際に空き家かどうかは問いません。依頼者一方から受けられる報酬の上限は税込33万円で、媒介契約の前に説明と合意が必要です(国土交通省「不動産取引に関するお知らせ」)。

買取会社が自ら買主になり、別の仲介会社が入らない直接取引なら、通常は仲介手数料がかかりません。ただし「直接買取」と表示されていても仲介会社が入る場合があるため、その会社が買主なのか仲介なのかを確認してください。

紙の不動産売買契約書には印紙税がかかります。記載金額10万円超の不動産譲渡契約書について、現在の軽減措置は2027年3月31日作成分までです。たとえば500万円超1,000万円以下は5,000円、1,000万円超5,000万円以下は1万円です(国税庁「不動産売買契約書の印紙税の軽減措置」)。電子データだけで契約し、課税文書となる紙を作成しない場合は、通常、印紙税がかかりません(国税庁「取引先にメール送信した電磁的記録に関する印紙税の取扱い」)。どちらの方式にするかは、取引先と確認します。

固定資産税・都市計画税は、原則としてその年の1月1日現在、固定資産課税台帳に所有者として登録されている人へ課税されます。年の途中で売っても、その年度の納税義務者が買主へ変わるわけではありません。引渡日を基準に日割りで精算するのは、あくまで当事者間の取引慣行です。

個人の売主が、引渡し後の期間分として買主から受け取る固定資産税等の精算金(未経過固定資産税等)は、譲渡所得の収入金額に含めます(東京都主税局「不動産売買と固定資産税」国税庁「土地建物を売ったときの収入金額に含める金額」)。

土地の売買による所有権移転登記の登録免許税は、2029年3月31日まで固定資産税評価額の1.5%です。法令上の納税義務者と、売主・買主のどちらが実際に負担するかは別なので、契約で確認します。売主側では抵当権抹消や住所・氏名変更登記が必要になることがあり、登録免許税のほかに司法書士報酬もかかります(財務省「登録免許税に関する資料」)。

譲渡所得税は売却代金ではなく利益にかかる

個人が底地を売って利益が出た場合、課税譲渡所得は原則として次の式で計算します。

計算式

課税譲渡所得 = 譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-適用できる特別控除

譲渡価額は売却代金など、取得費は購入代金や購入時の費用、譲渡費用は売るために直接かかった費用です。

仲介手数料、売主負担の印紙税、売却のために直接かかった測量費などは、譲渡費用に当たり得ます。一方、固定資産税や通常の管理費は、原則として譲渡費用になりません(国税庁「譲渡費用となるもの」)。

2026年に個人が売却する一般的なケースでは、売却年の1月1日時点で所有期間が5年を超える土地が長期譲渡所得、5年以下が短期譲渡所得です。2020年12月31日以前に取得していれば長期、2021年1月1日以後の取得なら短期になります。税率は次のとおりです。

区分所得税住民税復興特別所得税を含む概算合計
長期譲渡所得15%5%20.315%
短期譲渡所得30%9%39.63%
土地の所有期間による税率

復興特別所得税は、基準所得税額の2.1%です。特例を使う場合や、売主が法人の場合は計算が異なります(国税庁「土地や建物を売ったとき」)。

土地の譲渡そのものは、消費税の非課税取引です。ただし、仲介手数料や専門家報酬などのサービスには消費税が含まれることがあります(国税庁「非課税となる取引」)。

相続した底地は取得費資料を先に探す

相続した土地の取得費と取得時期は、原則として被相続人のものを引き継ぎます。相続時の評価額を、そのまま譲渡所得の取得費にはできません。取得費がわからない場合は売却額の5%を概算取得費とする方法もありますが、実額より小さくなれば税負担が増えます。昔の売買契約書、領収書、通帳、登記関係の資料を先に探してください(国税庁「相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期」)。

相続税を納めた人が一定期間内に相続財産を売る場合は、相続税の一部を取得費へ加算できる特例があります。期限は「相続開始日の翌日から、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日まで」です。要件と計算は個別に確認してください(国税庁「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」)。

底地は地主本人の居住用財産でないことが多く、マイホームの3,000万円特別控除を使えるとは限りません。売買契約の前に税理士へ、取得費、所有期間、相続税の取得費加算、使える特例をまとめて確認します。

借地人・親族・関係会社へ安く売るときは時価の根拠を残す

個人から個人へ著しく低い価格で売ると、買主側で時価と代金の差額が贈与とみなされることがあります。個人間の低額譲渡は「時価の2分の1未満かどうか」だけで機械的に決まるものではありません。また、個人が法人へ時価の2分の1未満で売った場合は、売主側の譲渡所得を時価で計算する扱いがあります(国税庁「個人から著しく低い価額で財産を譲り受けたとき」国税庁「時価より低い価額で売ったとき」)。

相手が親族や関係会社である場合に限りません。相場より安い価格で売るなら、売買契約の前に査定書や鑑定評価など時価の根拠を残し、税理士へ確認してください。

確定申告の時期と売却損の扱い

個人が底地を売って譲渡益が出た場合は、原則として売却した年の翌年2月16日から3月15日までに確定申告します。特例を使う場合も、申告そのものが要件になることがあります。一方、土地の譲渡損失は、通常、給与所得や事業所得などとは損益通算できません。マイホームの譲渡損失には例外がありますが、通常の底地に当然に使える制度ではありません(国税庁「譲渡所得の申告期限」)。

売却を急がず専門家に相談すべきケース

次のケースでは、査定価格を比べる前に、権利関係と事実の確認が先になります。

契約書がない、または古い契約を更新していない

契約開始日がわからないと、旧借地法と現在の借地借家法のどちらが適用されるのか、契約期間と更新をどう見るのかが判断できません。地代の入金記録、建物登記、過去の更新・承諾書、当事者間の手紙を集めて弁護士へ相談します。

地代滞納、無断増改築、明渡しなどで争っている

売却のために解除や退去を急ぐと、かえって紛争が長引くことがあります。督促、解除、地代改定はいずれも個別の事情が絡むため、借地人へ強い通知を出す前に弁護士へ相談してください。

相続登記が終わっていない

相続した底地を売るには、売主へ名義を移す相続登記が必要です。相続登記は2024年4月1日から義務化され、施行前の相続で未登記のものも対象になります。原則として取得を知った日から3年以内、施行前から知っていたものは2027年3月31日までが期限です(法務省「相続登記の申請義務化について」)。相続人申告登記は、期限内に相続の発生を簡易に申告する制度です。売却に必要な名義変更そのものではないため、これだけでは売却できません。

底地が共有、または借地人が複数いる

共有の底地を全体として売るには、原則として共有者全員の同意が必要です。自分の共有持分だけなら単独で売れますが、持分だけの売却は買主が限られ、他の共有者との管理や処分をめぐる問題も残りやすくなります。全体売却と持分売却は、条件を分けて比べてください。

借地人が複数いるなら、契約、地代、滞納、一時金、建物、利用範囲を借地人ごとに分けて整理します。土地の一部だけを売ると、残る契約の管理や土地の使い方が難しくなるため、全体と部分の両方を査定します。

境界・面積・接道が不明

底地は借地人が現に使っているため、測量の立入りや境界確認にも調整が必要です。売主の判断だけで現地へ入らず、土地家屋調査士と連絡の順序を決めてから動きます。

売主が海外居住者または外国法人

売主が非居住者(日本に住所がない人など、税法上の区分)または外国法人の場合、買主は原則として売買代金の10.21%を源泉徴収します。源泉徴収とは、買主が代金の一部を預かって国へ納める仕組みです。個人が自分または親族の住まいとして購入し、代金が1億円以下である場合などには例外があります。当てはまる可能性があれば、決済前に税理士へ確認してください(国税庁「非居住者等から土地等を購入したとき」)。

底地に強い不動産会社を見分ける質問

見るべきは会社名や「高価買取」という言葉ではありません。誰が買主になり、どの条件で価格が確定するかです。最初の相談で、次の質問に具体的に答えられるか確かめてください。

  1. 御社は買主、仲介会社、紹介窓口のどれですか
  2. 査定額は、売出価格、成約予想価格、買取価格のどれですか
  3. 価格はいつ確定し、契約後に下がる条件はありますか
  4. 借地人へは誰が、いつ、何を説明しますか
  5. 地代滞納、契約書なし、旧法借地を扱う場合の確認手順は何ですか
  6. 仲介手数料、測量、登記、弁護士等を含む売主負担の一覧を出せますか
  7. 敷金・保証金、未収地代、更新料は売買契約でどう引き継ぎますか
  8. 現況のまま買う範囲と、売主が負う契約不適合責任の範囲はどこですか
  9. 買取なら資金の準備、仲介なら想定買主と販売期間を示せますか
  10. 個人情報を誰へ開示し、成約しなかった場合はどう処分しますか

複数社の査定を比べるときは、最高価格だけを丸で囲まないでください。税引前手取り、価格の確定時期、減額条件、借地人対応、契約解除条件まで表に入れ、条件が具体的な提案を選びます。

また、すべてを不動産会社だけで判断する必要はありません。困っている内容に応じて、相談先を分けます。

弁護士
地代滞納、契約解除、明渡し、借地人との紛争

司法書士
相続登記、住所・氏名変更、所有権移転登記

土地家屋調査士
境界、面積、分筆、測量

税理士
譲渡所得税、相続税、売却代金の配分

不動産鑑定士
底地・借地権など、権利ごとの価格を厳密に評価

まとめ

底地売却で先に決めるべきなのは、「売れるか」ではなく「どの条件を優先して、誰に売るか」です。借地権割合だけで売値を置かず、借地人への売却、同時売却、第三者への仲介、専門会社の直接買取、そして保有継続を、同じ期間と同じ手取り基準で比べてください。

比較の材料になるのは、冒頭であげた4点、つまり借地契約の内容、地代の手取り、借地人の意向、売却の期限です。これを登記事項、地代履歴、固定資産税、一時金や滞納の記録で裏づけ、同じ資料を各社へ渡します。並べるのは金額だけではありません。価格の確定日、減額条件、借地人への対応まで一覧にします。

契約内容が不明、相続登記が未了、地代滞納や紛争がある場合は、借地人への打診を急がないでください。先に権利関係を整えるほど、安売りと関係悪化の両方を避けやすくなります。

参考資料

目次