未登記建物でも、売買契約は結べます。ただし、「契約できる」ことと「一般の買主が住宅ローンを組んで買える」ことは別です。
土地付きの一戸建てを、不動産会社の仲介で一般の買主へ売るなら、先に登記と建物の状態をそろえてから売り出すのが第一候補です。建物全体が未登記なら、建物の所在・構造・床面積などを登録する「建物表題登記」と、最初の所有者を登録する「所有権保存登記」。増築部分だけが登記に反映されていないなら、登記上の床面積や構造を書き換える「建物表題部変更登記」が基本になります。
一方で、建物にほとんど価値がない場合や、現金で買う相手が決まっている場合は、未登記のまま売る道もあります。解体して土地として売ったほうが、手取りが増えることもあります。つまり「未登記だからこうする」とは決まりません。まず確かめるのは、自分の家がどの状態に当たるかです。
- 法務局で建物の登記記録が取れるか
- 登記された床面積・構造が、今の建物と合っているか
- 登記上の所有者と、売ろうとしている人が同じか
- 買主が住宅ローンを使う可能性があるか
- 建物を残して売るか、解体して土地として売るか
未登記建物でも売れる。ただし一般の買主へ売るなら登記を整える
売主と買主が合意すれば、その時点で所有権は買主へ移ります(民法176条)。だから、建物が未登記でも契約そのものは成立します。
問題になるのは契約のあとです。登記がなければ、買主は第三者に「この建物は自分のものだ」と主張できません(民法177条)。売主には、買主が所有権の登記をできる状態にする義務もあります(民法560条)。条文はe-Gov法令検索の「民法」で読めます。
つまり、代金を受け取って鍵を渡せば終わり、ではありません。所有者や建物の範囲が曖昧なままだと、売買代金の残額を受け取って引き渡したあとに、買主名義の登記ができない事態も起こり得ます。この「残額の受け取りと引き渡し」を、不動産取引では決済と呼びます。
買主が住宅ローンを使いにくくなる
住宅ローンでは、購入する土地と建物に金融機関の抵当権を設定するのが一般的です。抵当権とは、買主が返済できなくなったときに、その不動産を売った代金から金融機関が優先して返済を受ける権利です。たとえばみずほ銀行の住宅ローン商品概要にも、融資対象の土地・建物へ第一順位の抵当権を設定するのが原則と書かれています。
登記記録のない建物には、その抵当権を設定できません。増築部分が登記に反映されていない場合も、担保としてどこまで扱えるのか、建物が建築ルールに合っているのかを確かめるため、登記を直すよう求められることがあります。
とはいえ、「未登記なら、どの銀行でも必ず断られる」わけではありません。金融機関の商品条件、物件の評価、決済までに登記を終えられるかによって判断は変わります。売却価格を決める前に、不動産会社を通じて、買主が使う予定の金融機関へ確かめてください。
表題登記や増築後の変更登記には申請期限がある
見落とされがちなのが期限です。不動産登記法47条は、新築した建物や、表題登記のない建物を取得した人に、表題登記の申請を義務づけています。期限は原則として、所有権を取得した日から1か月以内。増築などで建物の種類・構造・床面積が変わった場合も、同法51条により原則として変更日から1か月以内です。
正当な理由なく怠ると、同法164条により10万円以下の過料の対象になり得ます。過料は行政上の金銭負担で、刑事罰である罰金とは違います。長く放置した人が全員科されるという話ではありませんが、売却を考えているなら、手続きが必要かどうかを早めに確かめたいところです。現行条文はe-Gov法令検索の「不動産登記法」で確認できます。
1か月の期限があるのは、建物表題登記と、増築などによる表題部変更登記です。所有権保存登記に同じ期限はありません。ただし、所有権の登記がないままでは、その先の所有権移転登記や抵当権設定登記へ進めません。一般の買主へ売るなら、決済までに整える必要があります。
「未登記」の種類によって、売却前の手続きは変わる
ひと口に未登記建物といっても、中身はいくつかに分かれます。建物全体が登記されていないのか、所有者の登記だけがないのか、増築部分だけが反映されていないのか。ここが違うと、必要な手続きも相談先も変わります。出発点は、登記事項証明書(一般に「登記簿謄本」と呼ばれる書類)を取ってみることです。
- 表題部:建物の所在、種類、構造、床面積など、「どんな建物か」を記録する欄
- 権利部:所有者や抵当権など、「誰がどんな権利を持つか」を記録する欄
建物表題登記は、表題部を初めて作る手続きです。所有権保存登記は、権利部に最初の所有者を載せる手続きです。
次の5つのうち、当てはまるものを見てください。複数に当てはまる場合は、手続きも重なります。
- 建物の登記事項証明書が取れない
-
考えられる状態:建物全体が未登記か、検索に使った地番・家屋番号が違っています。
次の行動:地番(土地につけられた番号)や家屋番号(登記上の建物番号)を確かめ直しても記録がなければ、建物表題登記と所有権保存登記が必要かを確認します。
最初の相談先:土地家屋調査士、建物所在地を管轄する法務局
- 表題部はあるが、権利部がない
-
考えられる状態:建物は登録済みですが、最初の所有者の登記がありません。
次の行動:売主名義で所有権保存登記ができるか、その後に所有権移転登記へ進めるかを確認します。
最初の相談先:司法書士
- 登記の床面積・構造が今と違う
-
考えられる状態:増築などの変更が、登記へ反映されていない可能性があります。
次の行動:現地を調査し、建物表題部変更登記の要否と、増築時の建築手続きを確認します。
最初の相談先:土地家屋調査士、必要に応じて建築士
- 母屋は登記済みだが、離れ・車庫などが載っていない
-
考えられる状態:離れや車庫を、母屋と一体の「附属建物」として扱うのか、別の建物として扱うのかが決まっていません。
次の行動:構造と使い方を調べ、表題登記と表題部変更登記のどちらが必要かを判断します。
最初の相談先:土地家屋調査士
- 所有者・住所・氏名が今と違う
-
考えられる状態:相続、売買、住所・氏名変更の登記が終わっていません。
次の行動:現在の売主まで名義をつなぐために必要な登記と、その順番を確認します。
最初の相談先:司法書士
特に間違えやすいのが、「表題部はあるが、所有権保存登記がない建物」です。会話では未登記と呼ばれますが、建物そのものはすでに登録されています。全体が未登記のケースとは、必要な手続きが違います。
固定資産税の課税明細書に家屋が載っていても、法務局で登記されているとは限りません。市区町村が税額を計算するための台帳と、法務局の登記記録は別の仕組みだからです。逆に、登記面積と課税面積が食い違っていても、床面積の数え方が違うだけということもあります。差があるだけで未登記増築と決めつけないでください。
亡くなった人の名義が残る家は、全体が未登記の家とは別
建物の登記記録はあり、所有者欄が亡くなった親や祖父母の名義。この場合に足りないのは、相続登記です。亡くなった人の名義から買主へ直接移すことはできません。相続人と遺産分割の内容を確定し、相続登記を済ませてから、売買による所有権移転登記へ進みます。
相続登記は2024年4月1日から義務化されました。原則として、不動産を相続したことを知った日から3年以内に申請します。2024年4月1日より前に相続を知っていた場合の期限は、原則として2027年3月31日です。正当な理由なく期限を過ぎると、10万円以下の過料の対象になり得ます。詳しくは法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」に載っています。
一方、建物の登記記録そのものがなく、建てた人も亡くなっている場合は、相続登記だけでは足りません。相続関係と建物の所有権を示す資料を集め、誰を最初の所有者として登録するかを、土地家屋調査士と司法書士に相談します。
登記上の所有者が存命でも、住所や氏名が古いままなら、これは別の手続きです。住所・氏名等の変更登記は2026年4月1日から義務化されています。期限は法務省「住所等変更登記の義務化」で確認してください。
売却前に集めたい資料は「登記・税・建築・所有」の4系統
最初からすべてそろえる必要はありません。手元にあるものを集めて、足りない資料を専門家に特定してもらうほうが早く進みます。
- 登記の資料
土地・建物の登記事項証明書、公図(土地の位置や形を示す図面)、建物図面、各階平面図です。建物の証明書が見つからないときは、住所ではなく地番や家屋番号から探すことになるため、土地家屋調査士または建物所在地を管轄する法務局に相談します。 - 固定資産税の資料
納税通知書、課税明細書、固定資産評価証明書、名寄帳(同じ所有者の固定資産をまとめた一覧)などです。未登記家屋が、市区町村で誰の建物として、どの床面積で管理されているかが分かります。 - 建築の資料
新築時・増築時の確認済証(工事前の計画が建築関係のルールに合っていると確認された書類)、検査済証(完成時の検査に合格したことを示す書類)、確認申請図書、工事請負契約書、見積書、領収書、工事完了引渡証明書、設計図面、施工会社が分かる資料を探します。 - 所有関係の資料
売買契約書、建築代金の領収書、住民票、相続関係書類、遺産分割協議書などです。建築主と今の売主が違うなら、所有権が移った経緯をたどれる資料が重要になります。
書類が足りない家でも、登記できることはあります。残った資料と現地調査で所有権を証明できるかを、土地家屋調査士が判断します。その見通しが立つ前に売買契約を結ぶのは避けてください。
未登記建物を売却する3つの方法
売り方は大きく3つです。比べるのは売却価格だけではありません。登記・調査費、買主が使える融資、売却までにかかる期間まで含めた最終的な手取りで決めます。
向くケース
建物を残し、住宅ローンを使う一般の買主にも広く売りたい。
利点
買主候補を広げやすく、所有者や建物の範囲も説明しやすい。
注意点
売り出す前に、登記費用と準備期間がかかる。
向くケース
現金で買う相手がいる、または価格の大半を土地が占める。
利点
売却前の登記費用や準備期間を抑えられることがある。
注意点
買主と融資の選択肢が狭まりやすく、契約前の専門家確認が欠かせない。
向くケース
老朽化が進み、建物を残しても売却価格が上がりにくい。
利点
建物の管理負担がなくなり、土地として売り出せる。
注意点
再建築の可否、税負担、解体費を確かめ、手取りで比べる必要がある。
1.登記を整えてから、通常の仲介で売る
建物にまだ使い道があり、住宅ローンを使う一般の買主も対象にしたいなら、これが第一候補です。
建物全体が未登記なら、土地家屋調査士が現地を調査・測量して建物表題登記を行い、司法書士が所有権保存登記を行います。そのうえで、決済のときに買主への所有権移転登記と、必要に応じて金融機関の抵当権設定登記を申請します。
増築未登記なら、土地家屋調査士が増築部分を測って建物表題部変更登記をするのが基本です。ただし、離れや車庫を母屋の附属建物として扱うか、別の建物として表題登記するかは、構造と使い方を見て判断します。
売主側に費用と準備期間はかかります。その代わり買主候補を広げやすく、住宅ローンの選択肢も残せます。所有者、床面積、担保になる範囲を説明しやすいのも利点です。
2.未登記であることを伝えて、現状のまま売る
現金で購入する買主がいる、価格の大半を土地が占める、登記費用をかけても売却額の上乗せが見込みにくい。こうした場合は、未登記のまま売る選択もあります。買い手は専門の買取会社に限らず、事情を理解した個人という可能性もあります。
ただし、買主候補と使える融資は狭まりやすくなります。所有権を示す資料が少ないほど、買主は「買ったあとも登記できないかもしれない」というリスクを価格に織り込みます。しかも「未登記なら一律に何割下がる」という公的な相場はありません。未登記のまま売る場合と、登記を整えた場合について、同じ条件で査定や買取価格を取り、手取りで比べてください。
買主が未登記の建物をそのまま取得すると、今度は買主が表題登記の申請義務を負います。取得の経緯と所有権を示す資料がそろえば、買主を最初の所有者として登録し、所有権保存登記まで進められる場合もあります。
ただし、必ず認められるとは限りません。法務局から追加資料を求められることもあり、住宅ローンを使う決済には組み込みにくい方法です。契約前に、どの登記をどの順番で申請するのかを、土地家屋調査士と司法書士に確かめてください。
3.建物を解体して、土地として売る
老朽化が進み、建物を残しても売却価格にほとんど上乗せされないなら、解体してから土地として売る手もあります。ただし、未登記だから解体が最善、とは限りません。
- 接道条件などを確認し、解体後も新しい建物を建てられる土地か
- 1月1日時点で住宅がなくなることで、土地の固定資産税・都市計画税の住宅用地特例に影響しないか
- 解体費を引いた土地売却の手取りが、建物を残して売る場合より多いか
解体工事では、建材に石綿(アスベスト)が含まれていないかを事前に調べます。解体する部分の床面積が80㎡以上なら、調査結果を行政へ報告する必要もあります。調査や除去の費用と工期まで、解体見積もりに含めてもらってください。詳しくは環境省「建築物等の解体等工事における石綿の飛散防止対策」で確認できます。
解体後の届出も、未登記だと変わります。未登記建物には、法務局で閉じる登記記録がありません。そのため、登記記録を閉じる「建物滅失登記」ではなく、市区町村へ「未登記家屋の滅失届」などを出すのが一般的です。届出の名称や必要書類は自治体ごとに違います。手続きの例は唐津市「家屋を解体した場合の手続き」で見られます。
登記を整えて売るまでの6つの手順
未登記の家では、買主を探す前に「決済(売買代金の残額の受け取りと引き渡し)まで進められる状態か」を確かめます。順序を入れ替えると、契約したのに登記や融資が間に合わない事態になりかねません。
登記事項証明書に記載された所在、種類、構造、各階の床面積を、今の建物と固定資産税の課税明細書と並べます。図面と今の建物が違う、離れが載っていない、課税面積だけが大きい。こうした差を一覧にします。原因の判断は、測量のあとに回します。
登記を直しても、建築基準法上の問題は残ることがあります。逆に、未登記だからといって違反建築とも決まりません。登記は土地家屋調査士、建物が建築ルールに合っているかは建築士や自治体の建築指導窓口。窓口が分かれます。
伝えるのは、売却予定と希望時期、未登記なのは建物全体か増築部分か、確認済証・工事完了引渡証明書・固定資産税資料・相続書類の有無です。そのうえで、必要資料、見積額、追加費用が生じる条件、完了の見込み時期を確認します。
建てた人が亡くなっている、表題部に載る所有者と売主が違う、土地と建物で所有者が違う。どれかに当てはまるなら、土地家屋調査士と司法書士へ同時に相談します。誰の名義で、どの登記を先に行うかが決まるまで、契約を急がないでください。
「未登記のまま売る場合」と「必要な登記・建築確認を終えて売る場合」を分けて査定してもらいます。想定する買主、使える住宅ローン、売主負担の費用、売却までの期間を同じ条件にそろえたうえで、最終的な手取りを比べます。
売主が登記を終えてから契約するのが、いちばん分かりやすい形です。契約後・決済前に登記するなら、完了期限、費用負担、必要書類、間に合わなかったときの延期・解除・費用精算、住宅ローンが承認されなかったときの扱いを、契約書に書き込みます。
未登記建物の登記費用は「全国の目安」だけで決めない
登記するかどうかは、費用の高安ではなく、登記後に売る場合と未登記のまま売る場合の手取り差で決めます。
費用の中身は、土地家屋調査士の調査・測量・図面作成・申請の報酬、司法書士報酬、登録免許税(登記手続きの際に納める税金)、証明書代などです。増築部分の安全性や、建物が建築ルールに合っているかを調べるなら、建築士などの調査費も加わります。
誤解が多いのは登録免許税です。建物表題登記と表題部変更登記には、この税金がかかりません。0.4%という税率が出てくるのは所有権保存登記です。
日本土地家屋調査士会連合会の2025年度アンケートによる報酬ガイドでは、条件をそろえたモデル事例について、次の全国値が示されています。いずれも消費税は含まれず、証明書代などの実費も別です。
中央値は、回答を金額の低い順に並べたときに真ん中にくる金額です。平均値は、回答額の合計を回答数で割った金額です。
| モデル事例 | 中央値 | 平均値 |
|---|---|---|
| 木造2階建て居宅の建物表題登記 | 89,200円 | 91,740円 |
| 木造2階建て居宅の増築による建物表題部変更登記 | 98,330円 | 103,657円 |
これは、資料や現場条件を決めたモデル事例の集計です。古い家で所有権の資料が少ない、増築が複数回ある、離れがある、相続人が多い、建物の形が複雑といったケースでは、調査量が増えて費用も上がります。
所有権保存登記の登録免許税は、原則として、税額計算のもとになる不動産価額の0.4%です。売却価格に0.4%を掛けるのではありません。固定資産税評価額がない場合の価額は、法務局で登記を審査する登記官が認定します。
住宅用家屋の軽減税率には、期限、床面積、居住、取得後の登記時期といった要件があります。古い未登記建物を売主名義で登記する場面に使えるとは限りません。税率と要件は、決済時点の制度を司法書士に確認してください。税率表は国税庁「登録免許税の税額表」にあります。
登記後と未登記のまま売る場合で、手取りを比べる
登記を整えた場合の手取り増加見込み = 登記後の想定手取り − 未登記のまま売る場合の想定手取り − 登記・調査費 − 追加の保有費
この手取りに、売却益にかかる税金は含めません。仲介手数料など、それぞれの売り方でかかる費用を引いた金額で比べます。登記の完了を待つ間の固定資産税、保険料、管理費も忘れずに引いてください。
たとえば、次の条件を仮定します。計算の考え方を示す例であり、未登記建物の相場を示すものではありません。
| 項目 | 仮の金額 |
|---|---|
| 未登記のまま売る場合の税引前手取り(A) | 900万円 |
| 登記と建築状況の確認後に見込める税引前手取り(登記・調査費控除前)(B) | 1,080万円 |
| 登記・建築調査の見積額 | 25万円 |
| 完了待ちの固定資産税・保険料・管理費など | 5万円 |
| 登記を整えた場合の手取り増加見込み(B−A−25万円−5万円) | 150万円 |
この例では、登記を整えたほうが手取りが150万円多い計算になります。ただし、1,080万円で成約する保証はありません。仲介手数料、残された荷物の処分、土地の境界確認、契約で説明した状態と実際が違った場合の売主責任まで、査定に含まれる費用と条件をそろえて比べてください。売却までの期間と、その間に値下がりする可能性も見込んでおきます。
期間も一律ではありません。資料集め、現地調査、図面作成、法務局の審査、申請内容の修正と工程が続き、古い家ほど所有権の資料をたどるのに時間がかかります。土地家屋調査士の見積書では、報酬だけでなく、不足資料、追加費用が発生する条件、申請予定日、完了見込みも見ておきましょう。
増築未登記の売却では「登記・建築・税」を分けて確認する
増築未登記は、床面積を測って登記を直せば片づく、という話ではありません。同じ増築部分でも、法務局、市区町村の建築担当、市区町村の税担当が見ている中身はそれぞれ違います。
何を確認する?
床面積・構造をどう記録するか
相談先
土地家屋調査士
何を確認する?
増築時の手続きと、今の建物が建築ルールに合っているか
相談先
建築士、自治体の建築指導窓口
何を確認する?
増築部分の課税面積と所有者情報
相談先
市区町村の資産税担当
登記:増えた部分を、どの建物として記録するか
母屋と一体になった部屋なら、床面積や構造を直す建物表題部変更登記が一般的です。敷地内の離れ・車庫・物置は、母屋の附属建物になることもあれば、独立した建物として表題登記が必要になることもあります。日本土地家屋調査士会連合会の相談Q&Aも、2階への増築、離れの建築、用途変更などでは表示変更登記を行うと案内しています。
建築:増築時の手続きと、今の建物がルールに合っているか
見るのは、確認済証や検査済証の有無、建ぺい率・容積率、接道、構造、防火上の制限です。建ぺい率・容積率は、敷地に対してどのくらいの大きさまで建てられるかを決める基準、接道は敷地が道路にどう接しているかという条件です。
書類がないことと、違反であることは別です。ただし、建築ルールに合っているか分からないまま「問題なし」と広告するわけにもいきません。
建てた当時は適法だったのに、その後の法改正で今の基準に合わなくなった建物を「既存不適格建築物」といいます。工事をした時点から手続きや基準に反していた違反建築物とは、分けて考えます。
2025年4月には、木造建築物を含む建築確認の対象範囲が見直されました。確認申請が必要だったかどうかは、増築した時期、地域、規模、構造で判断します。「10㎡以下なら、どこでも確認申請は不要」とは限りません。
検査済証などが見つからない既存建物では、国土交通省の「既存建築物の現況調査ガイドライン」に沿って、建築士や指定確認検査機関に現状を調べてもらう方法があります。指定確認検査機関とは、自治体の指定を受けて建築確認や検査を行う民間機関です。調査で確認できたことと、確認できなかったことを分けて買主へ伝えます。詳しくは国土交通省「既存建築物の活用の促進について」で確認できます。
税:登記面積と課税面積は別に確認する
未登記でも、市区町村が家屋を把握していれば固定資産税はかかります。「登記していないから固定資産税もかからない」とは限りません。反対に、増築が課税台帳へ反映されていなければ、現地調査のあとで課税内容が変わることもあります。
課税の扱いは、物件がある市区町村の資産税担当に確認します。未登記のまま売った場合は、自治体所定の「未登記家屋所有者変更届」などが必要になるのが一般的です。たとえばつくば市は、未登記家屋を管理する「家屋補充課税台帳」を使い、売買などの際に所有者変更届を求めています。届出の名称や必要書類は自治体ごとに違います。
未登記のまま売るなら、契約書で建物の範囲と責任を明確にする
避けたいのは、広告では家として紹介しているのに、契約書では建物の範囲、所有者、登記の担当が曖昧なまま、という状態です。
重要事項説明書と売買契約書では、登記上の面積と現在の面積を分け、未登記部分の位置、用途、おおよその面積、増築時期、根拠資料を示します。不動産流通推進センターの相談事例でも、増築未登記部分を具体的に書き、売主が登記するなら期限と費用負担を特約(個別に追加する契約条件)で決める、という考え方が示されています。
建物全体が未登記の場合は、そもそも「売主から買主への所有権移転登記」を申請するための記録がありません。売主が建物表題登記と所有権保存登記を済ませ、そのあとに移転登記をするのが安全です。土地家屋調査士と司法書士が可能と判断した場合に限り、現金決済のあとで買主側が表題登記と所有権保存登記を進める方法も検討します。
- 売主が所有者であることを示す資料一式
- 売主・相続人・施工会社などから追加書類が必要になった場合の協力
- 土地家屋調査士と司法書士を誰が選び、費用を誰が払うか
- 所有権が移る時点と、建物を引き渡す時点
- 表題登記または所有権保存登記ができなかった場合の解除と代金返還
- 市区町村の家屋補充課税台帳を、いつ買主名義へ変えるか
契約書に「現状有姿(今ある状態のまま引き渡す)」や「契約不適合責任を負わない」と書いても、説明を省けるわけではありません。契約不適合責任とは、契約で説明した内容と実際の物件が違ったときに売主が負う責任です。
しかも、売主が知りながら買主へ伝えなかった事実については、責任を免除する特約(免責特約)を付けても責任を免れないと、民法572条が定めています。分かっている未登記部分や建築上の問題は、具体的に開示してください。
買主が親族や知人でも、この整理は省けません。数年後の相続や再売却のときに、事情を知る人が亡くなっていると、資料集めと所有権の証明はさらに難しくなります。
未登記建物の売却で相談する専門家
未登記の売却は、一人の専門家で完結しません。何を確かめたいかで、相談先を分けます。
- 土地家屋調査士
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建物が登記されているか、今の建物と登記が合うかを調べ、建物表題登記や増築後の変更登記を担当します。
- 司法書士
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所有権保存登記、相続登記、売買による所有権移転登記、抵当権設定登記を担当します。
- 建築士・指定確認検査機関・自治体の建築指導窓口
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増築時に必要だった建築確認や、今の建物が建築ルールに合っているか、安全上の問題がないかを確認します。
- 不動産会社・宅地建物取引士
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売却方法と価格を検討し、査定、広告、重要事項説明、契約条件の調整を行います。
- 弁護士
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所有権争い、契約解除、相続人同士の対立など、法的な紛争を扱います。
- 税理士・税務署
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不動産を売って得た利益(譲渡所得)にかかる税金や、使える税の特例を個別に確認します。
- 市区町村の資産税担当
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固定資産税の課税面積や、未登記家屋の所有者変更手続きを確認します。
建物の登記記録が取れない、または今の建物と登記が食い違うなら、土地家屋調査士と不動産会社へ同時に相談すると、登記の見込みと売却価格を同じ前提で比べられます。増築の資料がない、建ぺい率・容積率が気になる、検査済証がない場合は、建築士にも早めに声をかけましょう。
この5つが分からないうちは、売り出しも契約も止める
次のどれかが分からない間は、売り出しや契約をいったん止めて、先に確認を済ませます。
- 登記記録、所有者、相続人のいずれかが不明:土地家屋調査士・司法書士に、必要な登記と順番を確認する
- 必要資料、費用、期間が不明:資料一覧、見積書、完了見込みを受け取る
- 増築時の手続きや、今の建物が建築ルールに合っているかが不明:建築士または建築指導窓口に確認し、確認できない点を特定する
- 買主の融資条件が不明:使う予定の金融機関へ確認し、融資が通らない場合の契約条件を決める
- 解体後の再建築、税負担、石綿を含む総費用が不明:建物を残す場合と解体後を、同じ条件の手取りで比べる
未登記建物の売却に関するよくある質問
まとめ
未登記建物でも、売買契約は結べます。ただ、住宅ローンを使う一般の買主へ売るなら、登記を整えてから売り出すのが基本です。必要な手続きは、建物全体が未登記なのか、表題部だけがあるのか、増築部分だけが未登記なのかで変わります。
最初にすることは、登記記録、固定資産税資料、建築資料、所有関係の資料を並べて突き合わせることです。登記記録が取れない、または今の建物と登記が違うなら土地家屋調査士へ。権利部がない、亡くなった人の名義が残っているなら司法書士へ。そのうえで不動産会社に「未登記のまま売る場合」と「登記を整えて売る場合」の2条件で査定を依頼し、最終的な手取りを比べます。
増築部分が建築ルールに合っているか分からない。所有者や相続人が確定していない。登記できる見込みが立っていない。このどれかが残っているうちは、買主募集や契約を急がないでください。
参考資料
- e-Gov法令検索「民法」(176条、177条、560条、572条)
- e-Gov法令検索「不動産登記法」(47条、51条、74条、164条)
- 法務省「不動産登記のABC」
- 法務局「不動産登記申請手続」
- 日本土地家屋調査士会連合会「土地家屋調査士報酬ガイド(2025年度アンケート)」
- 日本土地家屋調査士会連合会「相談Q&A」
- 国土交通省「既存建築物の活用の促進について」
- 国税庁「登録免許税の税額表」
- 法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」
- 法務省「住所等変更登記の義務化」
- みずほ銀行「みずほネット住宅ローン商品概要」
- つくば市「未登記家屋所有者変更届」
- 唐津市「家屋を解体した場合の手続き」
- 環境省「建築物等の解体等工事における石綿の飛散防止対策」
- 公益財団法人不動産流通推進センター「増築未登記のある土地建物売買における留意事項」
※法令・制度・公表資料は2026年7月24日に確認しました。登記できるか、建物が建築ルールに合っているか、融資を受けられるか、どの税や契約条件が適用されるかは、物件所在地と事実関係によって異なります。
