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違法建築でも売却できる?容積率・建ぺい率オーバーの確認方法と4つの売り方

違法建築でも、条件がそろえば売れます。建築基準法に、「違反建築物だから売買してはいけない」という規定はありません。

ただし、売れることと、ふつうの物件と同じ条件で売れることは別です。

違反の内容によっては、買い手(買主)が住宅ローンを使いにくくなります。違反を直す費用(是正費用)や、将来の使い方が制限されることも価格に反映されます。事実をぼかしたまま契約すれば、引き渡し後に費用を請求されたり、紛争になったりすることもあります。

だからこそ、価格査定を急ぐ前に、次の3段階で整理します。

STEP
物件の状態を分ける

本当に法令違反なのか、建てた当時は適法だった「既存不適格」なのか、それとも書類がなくて判断できないのか。この3つを分けます。

STEP
違反なら、直し方と費用を調べる

どこを直せばよいのか、費用と工期はどれくらいか、直したあと何の資料で完了を示せるのかを確認します。

STEP
4つの売り方を同じ条件で比べる

現況売却・是正後売却・直接買取・解体後の土地売却を、手取り、売れる見込み、期間、売却後に残る責任で比べます。

まず用意したい5種類の資料
  • 確認申請書・図面・確認済証
  • 検査済証
  • 土地・建物の登記事項証明書
  • 公図・測量図・境界資料
  • 増改築や行政対応の記録

見つからない資料は「未取得」と書き残し、どの不動産会社にも同じ情報を渡してください。

国土交通省は「既存建築物の現況調査ガイドライン」で、既存の建物を書類と現地の両面から調べ、「現行法に適合」「既存不適格」「その他の不適合」「不明」の4つに分ける手順を示しています。売却査定のための制度ではありませんが、手元の建物が法令に合っているのか、それとも書類不足で判断できないのかを整理するときの手掛かりになります。

逆にいえば、「検査済証が見つからない」「登記と実際の面積が違う」という一つの事情だけで、違法建築と決めつける必要はありません。

当てはまるときは、売却・解体をいったん止める
  • 行政から是正指導や命令を受けている
  • 建物の安全性に不安がある
  • 敷地の境界や、敷地が建築基準法上の道路に接しているか(接道)が分からない
  • 解体したあとに建て直せるか分からない

一つでも当てはまるなら、売り出しや解体を先に進めないでください。手元の資料はそのまま残し、建物がある自治体など建築を担当する行政機関と、既存建築物に詳しい建築士へ相談します。

この記事は、一戸建てや一棟の建物を敷地ごと売るケースを想定しています。区分マンションの共用部分に関わる違反、用途変更、大規模建築物は確認する範囲が変わるため、個別の専門調査が必要です。

目次

最初に分けるべきは「違反建築物・既存不適格・書類不足」

「違法建築」と一言で呼ばれる物件には、法的な扱いがまったく違う状態が混ざっています。売り方を考える前に、次のように分けます。

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状態典型的な状況売却前の対応
違反建築物建てた当時の基準を満たしていなかった。確認が必要な増築を手続きせずに行った。確認を受けた計画と違う建物になり、法令に合わなくなった違反箇所、根拠となる規定、超過の程度、直し方、行政対応を確認する
既存不適格建築物建てた当時は適法だったが、その後の法改正や都市計画の変更で現行基準に合わなくなった建築時期と、当時は適法だったことを資料で確認し、増改築・用途変更のときの制限を調べる
法令に合っているか不明検査済証や図面がない。調べられない部分がある。行政記録と現況が対応しているか分からない書類を補い、実測や現況図の作成を含む調査を行う。「違反なし」とは扱わない
登記と現況の不一致増築部分が未登記。登記面積と実際の面積が違う建築基準法の問題とは分け、登記面積を実際に合わせる手続きが必要かを土地家屋調査士へ確認する
違反建築物・既存不適格・書類不足などの違い

呼び名が同じままでは、売り方は決まりません。何が違反で、何が既存不適格で、どこがまだ不明なのか。ここを分けて初めて、是正が必要かどうかと、買主へ何を説明するかが決まります。

建築基準法3条2項は、法令の施行や改正の時点ですでに建っていて、その時点では適法だった建築物などについて、一定の規定をすぐには適用しないと定めています。これが、一般にいう既存不適格の法的な土台です。

やや面倒なのは、一つの建物でも状態が混在する点です。「この規定については既存不適格」「あとから増築した部分は違反」「見えない構造部分は不明」が同時に起こります。

とくに、確認が必要な増築を手続きせずに行い、建ぺい率や容積率を超えた場合は、増築した時点から違反している可能性があります。既存不適格の建物には、増改築などのときに使える緩和措置があります。ただし緩和されるのは「既存不適格」と確認された規定だけで、違反している規定には使えません。

検査済証がないだけでは、違法建築と決まらない

検査済証は、完了検査を受け、その時点で建築基準法などの関係規定に合っていると認められたことを示す重要な書類です。ただ古い建物では、紛失していたり、そもそも完了検査を受けた記録が確認できなかったりすることが珍しくありません。

このとき分かるのは、「検査済証では、建物が法令に合っていたかを確認できない」ということまでです。建築計画概要書、台帳記載事項証明書、確認申請図書、契約書、登記・課税資料を集め、いまの建物と照らし合わせて判断します。

検査済証が見つかった場合も、それだけで安心はできません。交付後の無断増築や用途変更まで適法だと証明する書類ではないからです。検査を受けたときの建物と、いまの建物が同じかどうかを確認します。

なお、いまの建物を調べた「現況調査報告書」は、検査済証の代わりにはなりません。国土交通省の「既存建築物の現況調査ガイドラインQ&A」も、現況調査報告書を検査済証とみなすことはできないと明記しています。

未登記増築と法令違反も、別々に確認する

増築部分が登記簿に載っていない「未登記」と、建築基準法に適合しているかどうかは、同じ問題ではありません。確認申請を経て適法に増築したのに、登記だけが実際と合っていない場合もあります。逆に、必要な手続きを取らずに増築し、法令違反と未登記が重なっている場合もあります。

建物が法令に合っているかは建築士へ、登記の面積を実際の状態に合わせる手続き(表示変更登記)が必要かは土地家屋調査士へ。どちらか一方だけを調べても、問題の全体像はつかめません。

容積率オーバー・建ぺい率オーバーは、面積だけで即断しない

建ぺい率と容積率は、土地に対してどれくらいの規模の建物を建てられるかを制限する基準です。建築基準法52条・53条をもとに、ごく単純化すると次の式になります。

建ぺい率・容積率の基本式

建ぺい率(%)=建築面積÷敷地面積×100

容積率(%)=容積率の対象になる各階床面積の合計÷敷地面積×100

式は単純ですが、どの面積と上限を使うかは物件ごとに違います。そのため、登記簿の数字を当てはめただけでは、違反かどうかは確定しません。

たとえば、敷地100平方メートル、上限60%、建築面積68平方メートルなら、単純計算の建ぺい率は68%です。それでも、「8平方メートル分が違反」と断定はできません。

適用される上限や計算には、前面道路の幅、建てられる建物の用途や規模を定める用途地域、防火地域、角地などの緩和、床面積に含めない部分、土地を登記上分ける「分筆」や売却の履歴などが関わってくるからです。

分かりやすいのは、建築確認で一つの敷地として扱った土地の一部を、あとから切り離したケースです。別の建物の敷地としても同じ土地を重ねて使っていれば、建ぺい率・容積率・接道の基準を満たさなくなることがあります。建築確認を受けたときの敷地と、いまの敷地を必ず照らし合わせてください。

オーバーが生じる主な原因

  • 確認が必要な部屋・車庫・物置などの増築を、手続きせずに行った
  • 確認を受けた図面より広く施工し、法令に合わない建物になった
  • バルコニーや吹き抜け、地下部分などを床面積に含めるかどうかの扱いを誤った
  • 敷地の一部を売却したり、隣接地との利用関係が変わったりした
  • 法改正や用途地域・上限値の変更により、建築後に現行基準を超えた

同じ「容積率オーバー」でも、無断増築による違反と、当時は適法だった既存不適格では、是正の必要性も売却時の説明も変わります。現在の上限値だけで判断せず、建築時の資料、敷地の履歴、いまの建物・敷地の実測、現在の規制を突き合わせてください。

違法建築の売却前に集める資料

資料が欠けていても、調査は始められます。困るのは、「ない資料」をはっきりさせないまま査定だけを比べることです。各社の前提がばらばらになり、提示額の高い安いを比べる意味がなくなります。

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資料確認できること見つからない場合
確認申請書・設計図書・確認済証確認を受けた計画の用途、規模、配置、構造建物がある地域の建築担当窓口で、建築計画概要書や台帳記録を確認する
検査済証完了検査を受けたことと、その時点の適合確認記録が残っているかを調べ、現況調査で不足を補う
土地・建物の登記事項証明書所有者、地積、床面積、増築登記など法務局で取得し、現況との違いを整理する
公図・地積測量図・境界資料売却する敷地の範囲と面積境界や利用範囲が不明なら土地家屋調査士へ相談する
増改築の図面・契約書・写真・領収書いつ、どこを、どの程度変えたか家族、施工会社、前の所有者にも確認する
行政から届いた通知・相談記録指導、命令、使用制限、過去のやり取り担当部署に記録の有無と取得方法を確認する
違法建築の売却前に集める資料と、見つからない場合の対応

地積は登記上の土地面積、公図は土地のおおまかな位置や形を示す図です。自治体では、建築計画概要書や台帳記載事項証明書を閲覧・取得できることがあります。たとえば東京都も、この2つの閲覧・取得方法を案内しています。

ただし、保存状況、対象年代、名称、申請方法は自治体ごとに違います。しかも行政資料でたどれるのは、主に手続きの履歴です。いまの建物が図面どおりに建っているか、法令に適合しているかまでは証明できません。

通常のインスペクションだけでは、法令違反の有無を判定できない

中古住宅の「建物状況調査(インスペクション)」は、基礎や外壁などの劣化・不具合を調べる制度です。建物の傷み具合を知るには役立ちますが、建築基準法などに合っているかを判定する調査ではありません。

容積率オーバーや建ぺい率オーバーを調べたいときは、既存建築物が法令に合っているかを調査できる建築士か、行政の指定を受けた民間の確認・検査機関(指定確認検査機関)へ、次の内容を書面で依頼します。

  • 建築時と現在の法令・都市計画条件
  • 確認申請図書と現況の違い
  • 敷地、建築面積、各階の床面積を合計した延べ面積、前面道路の実測
  • 適法・既存不適格・違反・不明の区分と、その根拠
  • 見えない部分など、調査できなかった範囲
  • 是正する場合の方法と、完了を確認する手段

「問題ありません」という口頭の回答だけでは、買主や金融機関に判断の根拠を示せません。調査日、参照した資料、判断の前提、不明点まで書いた報告書を受け取りましょう。

迷ったときの相談先

確認したいこと主な相談先
建物が法令に合っているか、どう直せるか既存建築物の調査経験がある建築士、指定確認検査機関
行政の記録、指導・命令、現在の規制自治体などの建築を担当する行政機関
境界、敷地面積、登記上の建物面積土地家屋調査士
売却方法、査定、買主への説明問題のある物件の取引経験がある不動産会社
行政命令、すでに起きている紛争、契約条項不動産取引を扱う弁護士
確認したい内容ごとの主な相談先

相談先は一つに絞らなくてかまいません。建物の法令面は建築士、登記は土地家屋調査士、売却条件は不動産会社。役割を分けて情報をそろえます。

違法建築が通常どおり売りにくい4つの理由

売却でつまずく原因は、「違反」という呼び名そのものではありません。買主が購入後に負う費用と、先が読めないことです。

1. 買主が使える住宅ローンが限られやすい

金融機関は、担保になる物件が法令や技術基準に合っているか、確認・検査の資料がそろっているかを審査します。たとえばフラット35の中古住宅には、耐震性、接道、住宅の規模などについて所定の技術基準があります。

民間ローンでも、法令に合わない物件や、確認申請の内容と実際の建物が違う物件を対象外とする商品があります。住信SBIネット銀行は、建築確認申請の内容と現況が異なる物件や、法令に適合しない増築がある物件などを、取扱対象外の例として案内しています。

違反や資料不足があると、希望する商品が使えない、追加資料や是正を求められる、審査に時間がかかる、といったことが起こります。その結果、買主の候補は、現金で購入できる人や、物件を個別に審査できる相手へ偏りやすくなります。

とはいえ、「違法建築なら、どの銀行でも住宅ローンは絶対に使えない」とも言えません。扱いは、物件の状態と金融機関・商品によって変わります。売買契約を先に結ぶ場合は、融資を受けられなかったときに契約を解除できる特約(ローン特約)の対象と、審査に通らなかったときの扱いを決めておきます。融資承認の期限も、無理のない日程にしてください。

2. 増改築・用途変更・建て替えの選択肢が狭まる

既存不適格の建物には、一定の増改築などについて緩和措置があります。一方、違反部分がある物件は、そこを直さないと計画を進められないことがあります。

購入後にリフォームできるか、住宅を店舗に変えるような用途変更ができるか、同じ規模で建て替えられるか。買主にとっては、どれも大きな判断材料です。「いまのまま使えるから問題ない」で済ませず、法令の範囲で何ができるのか、将来売り直すときに何が制約になるのかまで確認します。

3. 是正費用と不確実性が価格に反映される

買主や買取会社は、減築・改修・解体・測量・登記といった直接の費用に加えて、売れるまでにかかるローン利息や管理費、再販売にかかる時間、融資の難しさ、行政対応、資料不足のリスクまで見込みます。

だから、超過の割合が同じでも評価は変わります。簡単な撤去で直せる物件と、構造や用途に関わる大規模な是正が必要な物件では、前提が違うからです。立地や土地の再利用価値も物件ごとに異なるため、「相場の何割安」という全国一律の値下がり率は使えません。

4. 行政への対応と、契約後の責任が残る

建築基準法9条は、違反建築物について、自治体などの建築を担当する行政機関(特定行政庁)が、工事の停止、取り壊し(除却)、移転、改築、修繕、使用禁止・制限などを命じられると定めています。行政の指導や命令を受けている場合は、その内容と対応状況を隠さず、売却より先に建築士や行政へ相談し、必要に応じて弁護士も交えて方針を決めます。

売却しても、違反状態そのものは消えません。新しい所有者も、同じ9条による是正命令などの対象になり得ます。すでに特定の人へ出された命令が売却後にどう扱われるかは、事情によって変わります。担当する行政機関と弁護士へ確認してください。

売却後の責任も、違反があるかどうかだけで決まるわけではありません。契約書でどんな品質・条件を約束したか、売主が何を知り、どう説明したか、買主が何を前提に買ったか。ここで変わります。

違法建築を売却する4つの方法

売り方を考える軸は二つです。「いまの状態(現況)のまま売るか、違反を直してから売るか」と、「市場で買主を探すか、買取会社へ直接売るか」。建物を残す利点が小さければ、解体後の土地売却も候補に入ります。

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売却方法向いている状況主な利点先に確認する条件
1. 現況のまま仲介売却法的な状態と不明点を資料にできて、期限に余裕がある市場の複数の買主へ提案でき、価格を比べやすい想定する買主の融資、ローン特約、説明資料、売却後の責任
2. 是正してから仲介売却是正できて、費用を上回る手取り増を見込める買主と融資の選択肢が広がる可能性がある是正方法、総費用、工期、行政とのやり取り、完了を示す資料
3. 現況のまま直接買取価格の最大化より、期限内に売れる見込みを重視する買主募集を省ける。難点を理解する事業者なら条件を組みやすい調査後の減額・撤回、売主負担、契約と違ったときの売主責任、実際の買主
4. 解体して土地として売却建物を使う価値より、是正・維持の負担が大きい建物に起因する違反を解消できる可能性があり、土地の需要へ切り替えられる解体後に建て直せるか、接道、解体・アスベスト・測量費、住宅ローン残高、税務
違法建築を売却する4つの方法の比較

1. 現況のまま仲介売却する

違反箇所や不明点を具体的に開示し、その条件で買う人を市場で探す方法です。買主候補を広く募れるため、現金で購入できる人や、法的・技術的な調査を前提に検討する事業者からも条件を聞けます。

弱点は、住宅ローンの審査や契約条件が固まらず、購入申込みのあとで取引が止まることです。調査が終わっていない段階で「住宅ローン利用可」「増改築可」と広告せず、建築士の報告書で分かる範囲と、金融機関が判断する範囲を分けて説明します。

2. 是正してから仲介売却する

無断増築部分の撤去や減築で違反を直し、買主の不安を減らしてから売る方法です。見込める価格の上昇分が、調査・設計・工事・確認・売却までの維持にかかる総費用を上回るなら、有力な選択肢になります。

ただし、工事をすれば自動的に「法令に合う物件」になるわけではありません。着工前に、建築士の是正案、行政または指定確認検査機関との相談、複数の工事見積もり、是正後に完了を示す資料をそろえます。

3. 現況のまま買取会社へ直接売却する

容積率オーバーや建ぺい率オーバーの物件を扱う買取会社は、自社で是正・再販する費用とリスクを織り込んで価格を出します。一般の買主を探すより早く条件が固まることもあります。ただし、専門会社でも必ず買い取るわけではなく、最初の査定額がそのまま支払額になるとも限りません。

直接買取なら、仲介手数料が発生しない形もあります。一方、別の会社が買主を紹介する仲介(媒介)が入ると、手数料が生じることがあります。会社名ではなく、契約書上の買主と仲介会社の立場を確認してください。

4. 解体して土地として売却する

是正費用が大きく、法令の範囲で建物を使い続ける価値も低い場合は、解体後の土地売却を検討します。ただ、建物を壊せば普通の土地として売れる、とは限りません。

接道義務を満たしていない、いまの敷地では同じ規模の建物を建て直せない、境界が確定していない。こうした問題は、解体しても残ります。

税負担も変わることがあります。固定資産税・都市計画税は、毎年1月1日の状況をもとに課税されます。その日に住宅がない土地は、建て替え中などの例外を除き、住宅が建つ土地の税負担を軽くする特例(住宅用地の特例)が使えない場合があります。解体する時期と翌年度の税額は、市区町村の担当部署へ確認してください。

解体後に建て直せるか、解体費はいくらか、アスベスト調査が必要か、税負担や住宅ローンを完済できる見通しはあるか。ここが確認できるまで、解体契約は結ばないほうが安全です。

売却ルートは「手取り・売れる見込み・期間・残る責任」で決める

仲介か買取かは、その前に調査結果で選択肢を絞ってから決めます。

調査結果次の判断
行政命令や安全上の危険がある売り出しを止め、行政・建築士と対応する。法的な紛争があれば弁護士へ相談する
既存不適格で、違反部分が確認されない増改築・建て替えの制限と融資条件を資料にまとめ、通常の仲介も含めて査定する
違反だが、是正方法と完了確認が明確現況売却と是正後売却の手取りを比べる
違反があり、是正費用を回収しにくい現況仲介、直接買取、解体後売却を同じ資料で比べる
資料不足で、調べても判断できない部分が残る「不明」の範囲を報告書に残し、その不明点を織り込んだ条件で査定する
調査結果から売却方法を絞る見取り図

ここで大切なのは、各社へ同じ情報を渡すことです。一社には違反の疑いだけを伝え、別の会社には建築士の報告書まで渡す。これでは査定の前提がそろわず、金額を比べる意味がありません。

売却価格に全国一律の「何割減」はない

違法建築の価格は、次のように分けて考えると整理しやすくなります。公的な査定式ではなく、各社の査定の差を読み解くための考え方です。

現況での評価を読み解く考え方

適法な比較物件を基にした価値

− 是正・解体・測量・登記などの必要費用

− 再販売にかかる費用・売れるまでのローン利息や管理費

− 融資、行政対応、資料不足などの不確実性

± 立地、土地価値、法令上できる将来の使い方

国土交通省の不動産鑑定評価基準も、立地や建物の状態など価格を左右する多くの要素と、市場参加者の判断を物件ごとに分析する考え方を採っています。すべての違法建築に共通して使える全国一律の値下がり率は、この基準にも示されていません。

査定書では、上限を超えている床面積を通常どおり価値のある面積として扱っていないか、是正費用を二重に引いていないか、建て直せる土地の価値を低く見積もりすぎていないかを確認します。

4つの方法を税金・ローン返済前の概算手取りで比べる例

次の数字は、比べ方を示すために置いた架空の値です。実在する地域の相場や、違法建築の値引率・買取率を示すものではありません。

想定するのは、土地付きの中古戸建てで、あとから増築した部分によって容積率オーバーと判定されたケースです。行政命令や差し迫った安全上の問題はなく、増築部分を撤去して違反を直すことも、解体して建て直すこともできると仮定します。

仮想例の比較条件
  • 売却代金・買取額:現況仲介3,000万円、是正後仲介3,300万円、直接買取2,800万円、解体後の土地仲介3,200万円
  • 調査・工事等:現況仲介40万円、是正後仲介260万円(調査等40万円+是正220万円)、直接買取30万円、解体後300万円(調査等50万円+解体250万円)
  • 売れるまでの費用:ローン利息、管理費、光熱費などの合計を月5万円と仮定
  • 売却までの期間:現況仲介6か月、是正後仲介8か月、直接買取1か月、解体後の土地仲介4か月
  • 仲介・契約等:仲介3案では、仲介手数料の通常の上限額「(売却代金×3%+6万円)×1.1」に、印紙などの仮額を加えて110万円・120万円・115万円とする
  • 直接買取の契約費:仲介会社が入らない前提で5万円とする
  • 含めない費用:売却時に返す住宅ローン元金、固定資産税等の精算、譲渡所得税、引っ越し・残置物処分など

計算式は「売却代金−調査・工事等−仲介・契約等−月5万円×売却までの月数」です。

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売却方法売却代金調査・工事等仲介・契約等売却までの費用概算手取り
現況のまま仲介3,000万円40万円110万円30万円2,820万円
是正してから仲介3,300万円260万円120万円40万円2,880万円
現況のまま直接買取2,800万円30万円5万円5万円2,760万円
解体後に土地を仲介売却3,200万円300万円115万円20万円2,765万円
4つの売却方法を同じ条件で比べる仮想例。金額はすべて架空です。

この例では是正後の仲介がいちばん高いものの、現況仲介との差は60万円しかありません。工事の追加費用や販売期間の延長が60万円を超えれば、順番は入れ替わります。

自分の物件で比べるときは、表の各項目を万円単位で各社の見積額に置き換えます。見積もりを取れていない費用は0円にせず「未取得」とし、判断に影響する費用がそろうまで最終決定を保留してください。

最終的な手取りは、この概算手取りから、返済する住宅ローン残高、固定資産税等の精算、譲渡所得税などを引いて確認します。税額は、取得費(購入代金や購入時の費用など)、所有期間、居住用財産の特例などで変わるため、売買契約の前に税理士または税務署へ確認してください。

建ぺい率オーバー物件の買取は、査定額だけでなく条件をそろえて比べる

買取査定の最高額が、そのまま最高の手取りになるとは限りません。少なくとも次の8項目を書面でそろえ、複数社を比べます。

買取査定でそろえる8つの条件
  1. 契約書上の買主は誰か。査定した会社自身か、別の会社か
  2. 不動産会社が買主を探す仲介(媒介)か、会社自身が買う直接買取か。仲介手数料は発生するか
  3. 建築士調査、測量、登記、残置物、是正、解体を誰が負担するか
  4. 契約後の調査を理由に減額・撤回できる条件と期限
  5. 契約で約束した状態と違ったときの売主責任(契約不適合責任)をどこまで負うか。知っている事実をどう記録するか
  6. 行政とのやり取り、近隣対応、境界確認を誰が行うか
  7. 代金の支払いと引き渡しを行う日(決済日)、代金の支払方法、資金の裏付け
  8. 買主側の転売先が見つからない場合でも、契約どおり代金を支払うか

どの会社にも、同じ版の建築士報告書、行政資料、図面、登記、是正見積もりを渡します。「今日だけの価格」「あとで詳しく調べるが、まず契約」と急がせる提案では、調査後の減額条項をとくに慎重に確認してください。

違反や不明点は、契約書へ具体的に落とし込む

「現況有姿(いまの状態のまま引き渡す)」「契約不適合責任を負わない」と書いても、知っている事実を黙っていてよいことにはなりません。契約不適合責任とは、引き渡した物件が契約で約束した状態と違ったときに、売主が負う責任です。

逆に、違反や不明点があるだけで、自動的に契約不適合になるわけでもありません。契約で合意した品質・用途、説明の内容、違反の程度、直せるかどうかから、個別に判断されます。

民法562条から564条は、引き渡された物件が契約の内容に合わない場合に、修理などを求める追完請求、代金の減額、損害賠償、契約解除ができると定めています。さらに同法572条では、責任を負わない特約をしても、売主が知りながら伝えなかった事実については責任を免れないとされています。

宅地建物取引業者にも、買主の判断に大きく影響する事実を故意に伝えないことや、事実と違う説明をすることを禁じる規定があります。国土交通省も、違反物件の取引では、違反の事実を重要事項説明で隠さないよう指導しています。

そのため、宅地建物取引業者が関与する取引では、「違法建築である」と一行書くだけでは足りません。重要事項説明書、物件状況報告書、売買契約書、添付資料の内容を一致させます。個人間で直接売買する場合も、知っている事実と合意した条件を書面に残し、契約責任は専門家へ確認します。

契約書と説明資料に具体的に残すこと
  • どの部分が、どの規定に、どの時点で適合しないと判断されたか
  • 容積率・建ぺい率の計算に使った敷地面積と床面積
  • 既存不適格、違反、不明を分けた調査結果
  • 行政への相談、指導、命令、使用制限の有無
  • 是正案・見積もりの内容と、実施していない事項
  • 調査できなかった部分と、買主へ渡した資料
  • 融資、増改築、用途変更、建て替えについて確認済みの範囲

契約不適合責任をどこまで調整できるかは、売主・買主が個人か事業者か、どんな契約を結ぶかで変わります。行政命令、すでに起きている紛争、責任を負わないとする特約の有効性に不安がある場合は、契約前に不動産取引を扱う弁護士へ確認してください。

違法建築を売却する手順

順番を間違えると、やり直せない判断が先に来ます。まず現況を変えずに行政記録と現地を調べ、そのあとで売却方法と契約条件を固めます。

STEP
現況を変えず、資料を残す

違反の疑いが分かっても、すぐに増築部分を壊したり、図面のない改修を始めたりしないでください。建物の写真を撮り、確認・検査の関係書類、増改築の記録、行政からの通知を集めます。

STEP
行政記録と敷地の履歴を確認する

建物がある地域の建築担当窓口で、建築計画概要書や台帳記録を調べます。土地・建物の登記、公図、測量図も確認し、敷地の分筆・売却や増築の時期を時系列に並べます。窓口で確認した部署、日付、質問、回答の範囲も記録しておきます。

STEP
建築士に、法令に合っているかの調査を依頼する

書類と現地を照らし合わせ、適法・既存不適格・違反・不明を分けてもらいます。違反なら、是正案、概算工事費、工期、是正後の確認方法まで依頼します。境界や登記面積に問題があれば、土地家屋調査士にも相談します。

STEP
是正・解体・売却までの維持費を見積もる

是正と解体は、できれば複数の見積もりを取ります。設計、申請、施工、廃材処分、アスベスト調査などのうち、どこまで工事見積もりに含まれるのかを明記してもらいます。

さらに、測量・登記、仮住まい、残置物処分、工事・販売中のローン利息、税、管理費を足します。工事見積もりと売主の総費用を分けて書くと、見落としと二重計上を防げます。

STEP
同じ資料で4つの売却方法を査定する

現況仲介、是正後仲介、直接買取、解体後の土地売却について、想定価格だけでなく、概算手取り、期間、成立条件、契約後に残る責任の範囲まで示してもらいます。査定の根拠が「違法建築だから一律に何割減」だけなら、計算の内訳を求めます。

STEP
融資と契約条件をそろえてから売り出す

買主が使うと想定する住宅ローンに必要な資料と、ローン特約の条件を整理します。広告、重要事項説明書、物件状況報告書、売買契約書で、違反・不明点・是正の扱いをそろえます。

STEP
引き渡す資料を一覧にして残す

建築士報告書、行政資料、図面、見積書、契約書の特約、買主に説明した記録を一覧にし、受領確認を取ります。口頭説明だけで済ませず、売主・買主・仲介会社が同じ事実関係をたどれる状態にしておきます。

違法建築の売却でよくある質問

検査済証を紛失したら、どこで確認できますか?

まず、建物がある地域の建築担当窓口で、検査済証の交付記録と、台帳記載事項証明書などの取得方法を確認します。交付記録があって原本だけを紛失した場合と、交付記録そのものを確認できない場合では、調査の前提が変わります。

なお、台帳記載事項証明書や建築計画概要書は、再発行された検査済証ではありません。現況調査報告書も検査済証とはみなされません。確認申請図書、登記、増改築の履歴を建築士へ渡し、いまの建物との違いを調べます。買主の融資や将来の増改築で何が必要になるかは、利用予定の金融機関、行政、指定確認検査機関へ個別に確認してください。

容積率オーバーを現況売却するとき、買主へ何を渡しますか?

建築士の現況調査報告書、確認申請図書、確認済証・検査済証の有無が分かる資料、登記・測量資料、増改築の履歴、行政との相談記録、是正案・見積もりを渡します。手元にない資料や、調査できなかった箇所も明記してください。

そのうえで、現況のどの部分が契約条件になり、どの不明点を買主が引き受けるのかを、重要事項説明書、物件状況報告書、売買契約書で一致させます。買主が住宅ローンを使う場合は、利用予定の商品に必要な資料を契約前に確認します。

建ぺい率オーバーは買取会社なら必ず買い取れますか?

必ず買い取れるわけではありません。超過の程度、是正・解体費、解体後に建て直せるか、土地の需要、行政対応、権利関係によっては、買取会社も見送ります。

一社の査定額だけで決めず、同じ調査資料を複数社へ渡し、調査後の減額条件、売主負担、契約で約束した状態と違ったときの売主責任(契約不適合責任)、代金を受け取る期限まで比べます。

違法状態は、時間がたてば問題にならなくなりますか?

築年数や経過年数だけを見て、「違反が消えた」「行政対応も契約責任もなくなった」とは判断できません。いまの法的な状態、過去の行政措置、契約時に説明すべき事実は、別々に確認する必要があります。

時効、行政命令の効力、当事者間の責任が争点になる案件は、一般論だけで判断せず、資料を持って行政と弁護士へ相談してください。

解体してから査定を頼むほうが高く売れますか?

行政命令や差し迫った安全上の問題への対応を除き、査定と「解体後に建て直せるか」の確認が済むまでは、自己判断で解体しないでください。建物付きで検討する買主を失いますし、解体後に建て直せないと分かっても元に戻せません。

建物付きの現況査定、是正後査定、土地査定、直接買取を同時に取り、解体後に建て直せるかと解体の総額を確認してから決めます。

まとめ|査定より先に、物件の状態を分ける

違反建築物だからといって、売買が一律に禁止されるわけではありません。ただし、最初の判断を「仲介か買取か」にすると、必要以上の値引きや、是正費用のかけすぎを招きます。

まず、確認申請図書、確認済証・検査済証、登記・測量資料、増改築の履歴、行政からの通知を集めます。そのうえで、既存建築物に詳しい建築士へ、適法・既存不適格・違反・不明を分けた報告書を依頼してください。

調査が終わったら、現況仲介・是正後仲介・直接買取・解体後の土地売却を、同じ資料と同じ費用範囲で比べます。見るべき数字は最高査定額ではなく、手取り、売れる見込み、期間、売却後に残る責任です。

そして、行政命令、安全上の問題、接道や「解体後に建て直せるか」に不明点があるなら、売り出しや解体をいったん止めること。知っている違反をぼかしたまま契約しないこと。この二つが、違法建築の売却で損失と紛争を抑える土台になります。

参考にした主な一次資料

情報確認日:2026年7月24日

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