親の家には、たんすも冷蔵庫も、衣類も食器も、仏壇まで、暮らしていた頃のまま残っています。これを全部片付けないと、家は売れないのでしょうか。
先に結論
家財が残ったままでも、家の査定と売却はできます。買主が中身を見て、引き取る物と売主が持ち出す物を分け、処分費用を誰が払うかまで決めておけば、家財を残して引き渡すこともできます。
ここでいう残置物とは、家具、家電、衣類、食器、物置の中身のように、住んでいた人の持ち物として家に残されている物です。土地と建物ではないので、売買の対象からいったん切り離して考えます。
ですから、「現況のまま売ります」と伝えるだけでは足りません。土地と建物の売買が決まっても、家具や遺品の扱いまで自動的に決まるわけではないからです。誰の物か、何を残すか、費用は誰が持つか。この3点を、写真と一覧表を添えて売買契約書や合意書に書き込みます。
しかも、家を空にしてから売るほうが得とは限りません。かけた片付け費用の分だけ高く売れる保証はなく、処分を先に契約すると、ほかの売り方へ切り替える余地も消えます。最初にやるのは全部処分ではなく、失ってはいけない物の救出です。
状況によって、最初の一手は変わります。
- 早く現金化したい:大切な物だけ確保して、残置物ごと買い取る場合の価格を聞く
- 時間をかけて高く売りたい:片付ける前の仲介査定と、片付け費用の見積もりを同時に取る
- 売れそうな家具や遺品がある:家財と不動産を別々に査定してもらい、買取額の二重計上を防ぐ
- 相続人同士で意見が割れている:売却も処分も進めず、誰の物で、誰が処分できるのかを先に確かめる
- 相続放棄を検討中、または借金の有無が不明:家や価値のある家財を動かす前に、弁護士などへ相談する
- 注射針、薬品、ガス容器、腐敗物などがある:触らずに、自治体や対応できる専門業者へ相談する
残置物があっても家は査定・売却できる
査定を受けられることと、そのまま引き渡せることは別の話です。査定から引き渡しまでを4つの段階に分けると、どこで買主の合意が必要になるかが見えてきます。
| 段階 | 進められるか | 注意点 |
|---|---|---|
| 査定 | 原則として可能 | 床や壁、設備が見えず、査定の精度が下がることがある |
| 販売活動 | 可能 | 内覧しにくく、個人の買主が家の状態を判断しにくいことがある |
| 売買契約 | 条件の合意があれば可能 | 残す物、撤去する物、費用、期限を明記する |
| 引き渡し | 契約どおりなら可能 | 最終確認を行い、合意していない物を残さない |
仲介で個人の買主へ売る場合は、売主が家財を運び出し、空にして引き渡す条件が一般的です。一方、不動産買取会社が相手なら、片付けと再販売を前提に、残置物ごと引き受ける会社もあります。ただし、どの会社でも引き受けるわけではなく、危険物やリース品は対象外になりがちです。
自治体の空き家案内でも、家具や家電を残したまま売る方法が紹介されています。そこでも前提になるのは、撤去するのが売主か買主か、費用は誰が負担するのかを先に決めておくことです。
「現況渡し」だけでは、家財の処分まで任せたことにならない
契約書に「現況渡し」「現状有姿」と書いても、室内の物すべてを買主に任せた意味にはなりません。この言葉が指すのは土地・建物の状態だけなのか、家財まで含むのかが読み取れないからです。
たとえば、古いエアコン。売主は設備として残すつもりでも、買主は処分費のかかる不要品と受け取るかもしれません。引き渡し後に現金や通帳が出てきた場合も、買主が自由に処分してよいとは限りません。
そこで、残す物は写真付きの一覧にします。エアコンや給湯器のように建物と一緒に引き渡す付帯設備と、家財を分けたうえで、誰の物になるのか、誰がいつから処分できるのかまで売買契約書や合意書に書きます。文言は、仲介を担当する不動産会社(宅地建物取引業者)や、必要に応じて弁護士へ確認してください。
査定前にやるのは「全部処分」ではなく、大切な物の救出
室内が散らかっていると、まず片付けたくなります。ところが急いで処分すると、権利書類や現金だけでなく、家族の合意を得てから扱うべき物まで一緒に消えてしまいます。最初にやるのは、失ってはいけない物を取り出し、残りを写真と一覧に記録することです。
最初に探す物
| 分類 | 主な物 | 対応 |
|---|---|---|
| 売却・相続に必要な物 | 登記関係書類、固定資産税の書類、ローン・保険の書類 | 中身を確かめ、鍵のかかる場所へ移す |
| 遺言書 | 自筆証書遺言、公正証書遺言の控えなど | 開封・廃棄せず保管する。封印がある場合は、家庭裁判所へ検認が必要か確認する |
| 財産になる物 | 現金、通帳、印鑑、証券、貴金属、美術品、収集品 | 写真と、持ち出した人を記録する |
| 個人情報を含む物 | 身分証、郵便物、パソコン、スマートフォン、記録媒体 | 初期化や裁断の前に、必要な情報が入っていないか確かめる |
| 家族で判断する物 | 写真、手紙、アルバム、形見 | 期限を決めて、保留用の箱へ入れる |
| 祭祀に関わる物 | 位牌、本尊、過去帳、遺骨、仏具 | 仏壇本体とは分け、引き継ぐ人や寺院へ相談する |
| 借り物 | リース家電、介護・医療機器、通信機器、警備機器 | 持ち主の会社へ返却方法を聞く |
| 危険物 | 注射針、薬品、消火器、ガス容器、灯油 | 自分で運ばず、自治体や専門業者へ相談する |
探す場所は、部屋の中だけではありません。押し入れ、天袋、屋根裏、床下収納、物置、車庫、金庫、仏壇の引き出しも開けます。片付けを始める前に、各部屋を入口から1枚、収納の中も撮っておくと、複数の会社へ同じ状態を見せられ、家族への説明にも使えます。
遺言書は扱いが特別です。封印のあるものを家庭裁判所以外で開けてはいけないと、法律で決まっています。ただし、遺言書の種類によっては、家庭裁判所で状態や内容を確認する「検認」がいりません。見つけた状態のまま保管し、手続きが必要かどうかを家庭裁判所へ確かめてください。
救い出した物を除いて、残りはひとまず4つに分けます。
- 必ず持ち出す
- 家財として別に査定する
- 買主へ引き継ぐ候補にする
- 判断を保留する
この時点で、細かなごみまで分別する必要はありません。量と種類がわかれば、査定は受けられます。
相続や持ち主に不安があるなら、いったん手を止める
相続人の意見がそろっていない、相続放棄を検討している、家財の持ち主がわからない。このどれかに当てはまるなら、売却も処分も止めてください。
亡くなった人が所有していた家や家財は、遺産分割が済むまで相続人の共有となるのが原則です。遺産分割には相続人全員が参加し、共有財産をどう管理して処分するかも相続人の間で決めます。
遺品を残したまま家を売る場合も同じです。代表者1人の判断で高価な家財を売ったり捨てたりせず、相続人が誰なのか、遺言があるのか、その家財は誰の物なのかを先に確かめます。決まったことを写真や一覧とともに残しておけば、後の行き違いを防ぎやすくなります。
相続放棄を検討しているなら、さらに慎重に進めます。家や価値のある家財を売却・処分すると、相続を承認したと扱われる可能性があるからです。家庭裁判所へ相続放棄を申し立てる期限は、原則として、自分が相続人になったと知ったときから3か月以内です。どこまで動かせるかは事情によって違うため、借金の有無がわからないうちは、作業前に弁護士などへ相談してください。
残置物がある家を売る3つの方法
選択肢は「全部片付ける」か「全部残す」の二択ではありません。片付ける範囲と売り先を組み合わせると、現実的な案は3つあります。この記事では、A案・B案・C案と呼んで比べていきます。
※画面が狭い場合は、表を横方向に移動して確認できます。
| 方法 | 向いている人 | 主な利点 | 主な注意点 |
|---|---|---|---|
| A案:全部片付けて仲介で売る | 時間をかけて広く買主を探したい人 | 個人の買主が検討しやすく、より高い成約価格を目指しやすい | 片付け・修繕・仲介・保有の費用が先にかかる |
| B案:大切な物だけ出し、残置物ごと買取会社へ売る | 早く手放したい人、遠方で管理が難しい人 | 内覧対応や細かな仕分けの負担を減らしやすい | 仲介で実際に売れると予想される価格より、低い提示になることがある |
| C案:売れる家財を別に査定し、残置物ごと買取会社へ売る | 家財の価値も確かめてから売りたい人 | 家財の買取代金を上乗せできる可能性がある | 査定・搬出・保管の手間が増え、売れない物もある |
個人の買主が「家具ごと欲しい」と言う場合は、仲介でも残す合意ができます。ただし、買主が使いたい家具と、処分費だけがかかる物は違います。「家具付き住宅」というまとめ方で判断せず、品目ごとに決めます。
A案:全部片付けて仲介で売る
室内が空になると、床や壁の状態を確認しやすく、内覧に来た人も暮らしを想像しやすくなります。地域や物件の条件によっては、時間をかけて個人の買主を探す価値があります。
ただし、比べるときに使う数字は、広告に載る「売出価格」ではありません。実際に売れると予想される「成約予想価格」です。そこから仲介手数料、片付け、清掃・修繕、売れるまでの固定費を引きます。しかも片付けを先に契約してしまうと、B案やC案へ切り替える余地が小さくなります。
B案:大切な物だけ出し、残置物ごと買取会社へ売る
買取会社が片付けや再販売まで対応できる場合は、家具や家電を残したまま引き渡せることがあります。仕分けと内覧対応の負担を減らしやすいのが利点です。契約前に分けて確かめたいのは、残置物をどこまで引き受けるのかと、建物の不具合について誰がどこまで責任を負うのかです。
気をつけたいのは「残置物処分は無料」という説明です。これだけでは条件の良し悪しを判断できません。処分にかかると見込まれる金額が、すでに買取価格から差し引かれている場合もあります。処分費を別に請求しないのか、価格から引いた結果なのか、あとで追加費用が出るのかを聞いてください。
C案:売れる家財を別に査定し、残置物ごと買取会社へ売る
写真や位牌、重要書類を先に救い出したうえで、骨董品、ブランド家具、新しめの家電を家財の買取業者に見てもらう方法です。売る物と手元に残す物を運び出し、残りは不動産会社が引き受ける条件で査定を受けます。
家財に値が付くとは限りません。査定先が増えれば、日程調整や搬出の手間も増えます。「あとで家族が確認する箱」を作るなら、箱数、保管期限、置き場所、保管費まで決めておきます。
比べるのは「片付け費0円」ではなく、3案の手取り
売却価格だけを並べると仲介が有利に見え、「処分費無料」だけを見ると買取が有利に見えます。同じものさしで比べるために使うのが、次の計算です。
税引前概算手取り(税金を引く前に手元へ残るおおよその金額)
= 不動産の売却価格
+ 家財の買取代金
+ 売買代金以外に決済時に受け取る精算金
− 売却手続費用
− 残置物関連費
− 搬出・保管費
− 修繕・清掃費
− 売れるまでの保有費
− ローン返済額
これは3案を並べるための式で、譲渡所得税の計算式ではありません。税務上の「譲渡費用」は、土地や建物を売るために直接かかった費用を指し、通常の修繕費などは含みません。残置物の片付け費を税金の計算で差し引けるかどうかも一律ではないため、申告時は税理士や税務署へ確認してください。
同じ家を3案で比べる計算例
数字を入れてみると、不動産価格の順位と手取りの順位は一致しません。同じ家を3案で試算した例が次の表です。数値は架空で、実際の相場や費用を示すものではありません。単位は万円です。
※画面が狭い場合は、表を横方向に移動して確認できます。
| 項目 | A案 片付けて仲介 | B案 大切な物だけ出して買取 | C案 家財を別査定して買取 |
|---|---|---|---|
| 不動産価格 | 2,300 | 1,900 | 2,070 |
| 家財の買取代金 | 10 | 0 | 15 |
| 決済時の受取精算金 | 0 | 0 | 0 |
| 売却手続費用 | −80 | −12 | −12 |
| 残置物関連費 | −90 | 0 | 0 |
| 搬出・保管費 | −20 | −5 | −25 |
| 修繕・清掃費 | −60 | 0 | 0 |
| 売れるまでの保有費 | −25 | −4 | −8 |
| ローン返済額 | −600 | −600 | −600 |
| 税引前概算手取り | 1,435 | 1,279 | 1,440 |
表の「残置物関連費0」は、売主が処分費を別に支払わないという意味です。処分の負担そのものが消えるわけではなく、買取価格に織り込まれている可能性があります。
不動産価格だけを見れば、A案の2,300万円が最も高くなります。ところが手取りではC案が1,440万円で、A案を5万円上回ります。この程度の差なら、入金までの期間、現地へ通う回数、追加費用の上限のほうが決め手になります。
仲介の成約予想価格には幅があります。低め・標準・高めの3通りで試算し、低いほうで売れても納得できるか確かめてください。
複数社へ同じ条件で聞くための依頼文
会社ごとに伝える内容が違うと、出てきた金額を並べても比べられません。次の文面を共通で送れば、条件をそろえられます。
家財が残る住宅の売却を検討しています。添付した写真と家財一覧(いずれも同じ日に撮影・作成)を前提に、現地を見たあとの価格を書面でご提示ください。その際、不動産の価格、家財の買取額、残置物処分の扱い、売主が負担する費用、追加料金が出る条件、依頼から入金までの目安を、それぞれ分けて記載してください。残す物と持ち出す物の線引き、引き渡し後に貴重品や書類が見つかったときの対応もあわせて教えてください。
最初の問い合わせで伝えるのは、市区町村、物件の種類、だいたいの間取り、残置物の量、希望時期まででかまいません。身分証、室内の重要書類、詳しい住所は、会社名と担当者を確かめ、何のために必要かを聞いてから渡すほうが安全です。
遺品・仏壇・家具を、ひとまとめに「残置物」と呼ばない
片付け業者や不動産会社から見れば、室内に残った物はどれも残置物です。しかし、家族にとっての意味も、法律上の扱いも同じではありません。遺品、仏壇や位牌、売れる家具、ただの廃棄物は、分けて考えます。
遺品を残したまま家を売るとき
遺品があっても査定は受けられます。ただし、家を売る権限と、家財を売る・捨てる権限は、別に確かめる必要があります。
法務局で家の名義を買主へ移す「所有権移転登記」をするには、その前に家の名義を相続人へ移す「相続登記」が必要です。名義だけでなく、遺言の有無と内容、遺産分割、相続人の範囲も早めに確かめておきます。
決めておきたいのは、片付け中に出てきた現金や貴金属を誰が預かるか、引き渡し後に重要書類が見つかったら誰へ連絡するかです。金額の大小より、持ち出した人と日付を記録しておくことが、後の行き違いを減らします。
仏壇を残したまま家を売れるか
仏壇があっても、査定も販売活動もできます。最後まで残して引き渡すなら、買主の合意が必要です。
ここで分けるのは、仏壇という入れ物と、位牌、本尊、過去帳、遺骨です。位牌や本尊、過去帳は通常の家財と一緒にせず、誰が引き継ぐのかを、仏壇や位牌などを引き継ぐ人(祭祀承継者)や家族と決めます。遺骨も残置物と同じ扱いにはせず、家族や寺院へ相談してください。
閉眼供養は、法律で一律に義務づけられたものではありません。ただし、宗派や家族の考えで対応が変わるため、菩提寺や同じ宗派の寺院、葬祭事業者に聞くのが確実です。
買主や買取会社が仏壇本体の処分を引き受ける場合も、位牌などは先に取り出します。供養や運搬が費用に含まれるかどうかは、書面で確かめてください。
「家具ごと買取」には3つの意味がある
「家具ごと買取」と言われたとき、実際に起きていることは3通りあり、どれなのかで手取りが変わります。
- 買主が家具を無償で引き継ぐ
- 再販売できる家具を、家とは別に買い取る
- 処分費を見込んだ不動産価格で、残置物ごと引き受ける
そこで査定書では、不動産の買取価格、家具の買取価格、処分する物、処分費、追加料金を分けてもらいます。「家具買取15万円」が不動産の提示価格に含まれているのか、別に支払われるのか。ここを確かめないと、二重に足して手取りを多く見積もってしまいます。
中古品を買い取って販売する会社には、原則として古物商の許可が必要です。ウェブサイトで古物取引をする事業者なら、公安委員会名、許可番号、氏名または名称が表示されているか見ておきます。ただし、古物商の許可は、不用品を廃棄物として運ぶための許可ではありません。
自宅へ来てもらって家財を買い取ってもらう取引(訪問購入)では、事業者から書面を受け取ります。物品の種類や特徴、買取価格、支払方法、引き渡し方法、事業者情報、契約解除に関する事項が書かれているか確かめてください。この仕組みが当てはまらない取引もあるため、条件は個別に確認します。
売買契約書で決めたい残置物の9項目
口頭で「全部置いていってよい」と言われても、その一言では引き渡せません。少なくとも次の9つを、写真や一覧とひも付けて書面にします。
- 残す物と撤去する物:室内だけでなく、庭、物置、車庫、屋根裏、床下収納も対象に入れる
- 付帯設備と残置物の区分:エアコン、照明、給湯器などを、設備として引き継ぐのか処分するのかを決める
- 家財の持ち主と、譲り渡せる人:相続人以外の物、借り物、リース品が混ざっていないか確かめる
- 持ち主と処分できる人が変わる時期:契約時、代金決済時、引き渡し時のどこかに決める
- 処分費用と売却価格の関係:買主負担なのか、売却価格から差し引かれているのか、別に請求されるのかを書く
- 追加費用が出る条件:見積もりにない危険物、大型の物、量の増加など、増額の条件と連絡方法を決める
- 引き渡さない物:現金、通帳、印鑑、身分証、デジタル機器、位牌、危険物、借用品を明記する
- 引き渡し後に貴重品や書類が見つかったとき:保管期間、連絡先、返し方、送料の負担を決める
- 最終確認の方法と期限:決済前の立ち会い、写真の記録、鍵の受け渡しまで定める
付帯設備の一覧と物件の状態確認は、建物の不具合を買主へ伝えるためにも必要です。残置物を買主が引き受ける合意をしたからといって、雨漏りやシロアリ被害など、売主が知っている建物の状態まで説明しなくてよいことにはなりません。
空にして引き渡す約束をしたのに物を残せば、契約上の問題になり得ます。反対に、残置物があるだけで直ちに売主の責任になるわけでもありません。どんな責任が生じるかは契約内容と実際の状況で変わるため、定型文をそのまま使わず、残す物に合わせて条項を整えます。
片付け業者は、許可・見積範囲・家電4品目で選ぶ
片付けを頼むときに見るのは、料金と作業内容だけではありません。家から出した物を、誰が、どの許可で、どこへ運ぶのかまで確かめます。
家庭から出る廃棄物を回収できるのは、市区町村の「一般廃棄物収集運搬業」の許可を受けた事業者と、市区町村から委託を受けた事業者です。産業廃棄物処理業や古物商の許可では、家庭ごみを回収できません。
ややこしいのは、屋内で仕分けや搬出をする会社と、廃棄物を家の外へ運ぶ会社が別のことがある点です。片付け会社自身が許可を持っているかだけで判断せず、実際に運ぶ事業者、対象市区町村の許可番号、処理先、委託関係まで聞きます。民間の認定資格は、法律上の許可の代わりにはなりません。
見積書で分けてもらう費用
- 仕分け
- 梱包・搬出
- 車両・人員
- 一般廃棄物の収集運搬・処分
- 家電リサイクル
- 清掃や消臭
- 売れる家財の買取
- 階段作業、駐車距離、追加車両などの追加料金
- キャンセル料
遺品整理では、見積額を超える請求を受けた例や、残すはずだった書類やアルバムを処分された例があります。複数社から見積もりを取り、作業日、作業内容、料金、キャンセル料を先に確かめてください。
エアコンなど4品目は、粗大ごみとは別扱いになる
家庭用の次の4品目は、粗大ごみとは別に家電リサイクル法の対象です。
- エアコン
- テレビ(ブラウン管式、液晶・有機EL・プラズマ式)
- 冷蔵庫・冷凍庫
- 洗濯機・衣類乾燥機
買主がそのまま使うなら、その時点では廃棄になりません。処分するなら、購入した販売店、買い替え先の販売店、または物件がある自治体が案内する方法を確かめ、リサイクル料金と収集運搬料金を見積もりに入れます。
粗大ごみの大きさの基準、料金、予約方法、持ち込みの可否は、自治体ごとに違います。「全国どこでも1点いくら」と考えず、物件所在地の最新の案内を確認してください。
空き家の家財処分費に補助を出す自治体もあります。作業前の申請、空き家バンクへの登録、市内の許可業者の利用などが条件になる例があるため、処分を契約する前に問い合わせます。
残置物がある家を売却する7つの手順
残置物が多いときは、物を減らす順ではなく、権利と安全を確かめる順に進めます。
- 権利と安全を確かめる:相続人の意見が割れている、相続放棄を検討している、持ち主が不明、危険物がある場合は、売却や処分を止めて専門家へ相談する
- 写真と一覧を作る:基準日を決めて各部屋、収納、屋外を撮り、大型家具・家電、危険物、立ち入りにくい場所を記録する
- 大切な物を救出する:書類、財産、個人情報、思い出の品、位牌などを分け、持ち出した人と保管先を残す
- 同じ資料で3案を見積もる:A案(片付けて仲介)、B案(大切な物だけ出して買取)、C案(家財を別査定して買取)の条件をそれぞれ示す。買取は現地を見たあとの価格、仲介は売出価格ではなく成約予想価格で出してもらう
- 手取り・時間・作業量を比べる:依頼から入金までの期間、現地へ行く回数、保管場所も並べ、家財の買取代金や処分費を重複して計上していないか確かめる
- 契約条件を書面にする:写真付き一覧、費用、追加料金、持ち主と処分できる人が変わる時期、発見物の扱いを記載する。不動産会社の免許情報は「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」で確認できる
- 決済前に最終確認する:残す物、持ち出す物、追加された物を買主側と照らし合わせ、鍵、物置、郵便受け、リモコンなども一覧で引き渡す
残置物をそのまま売却するときのよくある質問
査定前に掃除や片付けをする必要はありますか?
査定のために家を空にする必要はありません。大切な物を分け、危険物の場所と、家財で見えない床や壁を伝えれば、残置物がある状態で査定を頼めます。掃除に時間をかけるより、複数社が同じ状態を見られる写真と一覧を用意するほうが、比較に役立ちます。
残置物の撤去費用はいくらかかりますか?
全国共通の料金はありません。物の量と種類、作業人数、車両、階段や駐車場所、家電リサイクル品、危険物、清掃の有無で変わります。総額だけを聞かず、仕分け、搬出、運搬、処分、家電リサイクル、清掃、追加料金の条件に分けた見積書をもらい、同じ作業範囲で比べてください。
ごみ屋敷の状態でも売れますか?
売却できる可能性はあります。ただし、害虫、腐敗物、悪臭、火災のおそれなどがある場合は、通常の残置物と同じには進みません。無理に中へ入らず、危険物や特殊清掃に対応できる事業者へ現状を伝えてください。建物の状態を確認しにくい分、査定価格の幅は大きくなります。
買主から「家具を残してよい」と言われたら、そのままで大丈夫ですか?
口頭だけでは足りません。対象の家具を写真で特定し、無償で譲るのか買い取ってもらうのか、壊れていたときの責任、搬出・処分費、持ち主が変わる時期を書面にします。引き渡し前の最終確認も行ってください。
相続登記の前でも査定できますか?
査定や売却相談はできます。ただし、法務局で家の名義を買主へ移すには、その前に相続登記が必要です。遺産分割や相続人の確認には時間がかかることがあるため、売却相談と相続登記の準備は並行して進めます。
買取査定の後で、残置物を理由に減額されることはありますか?
最初の簡易査定は、現地を見たあとで変わることがあります。写真になかった物が大量にあった、危険物や処理しにくい物が見つかった、建物の状態を確認できなかった、といった場合です。契約前に、現地確認後の価格、価格の有効期限、再査定になる条件、減額や追加請求があり得る条件とその上限を、書面で確かめます。
まとめ:片付ける前に、大切な物の救出と3案比較をする
たんすも冷蔵庫も仏壇も残ったまま。それでも家は売れます。家具や家電、遺品が残っていても、買主と中身や費用を合意すれば、そのまま引き渡せる場合があります。
ただし、最初の仕事は家を空にすることではありません。まず権利関係と安全を確かめ、失ってはいけない物だけを取り出します。そのうえで、A案(片付けて仲介)、B案(大切な物だけ出して買取)、C案(家財を別査定して買取)を、同じ基準日の写真と一覧で比べます。
比べる数字は、表面の売却価格でも「処分費0円」でもありません。手元に残る金額、入金までの時間、家族が動く手間です。方法を決めたら、残す物、費用、持ち主と処分できる人が変わる時期まで書面に残します。そこまで決めてはじめて、「そのまま売却」が安全な選択肢になります。
参考資料
公的機関などの情報は、2026年7月24日時点で確認しています。
- e-Gov法令検索「民法」
- 法務省「相続登記・遺産分割を進めましょう」
- 法務省「相続した不動産を売却するためには、相続登記が必要です」
- 裁判所「相続の放棄の申述」
- 裁判所「遺言書の検認」
- 橋本市「空家等の残置物の処分について」
- 不動産適正取引推進機構「不動産売買の手引」
- 環境省「無許可の回収業者を利用しないでください」
- 経済産業省「家電4品目の正しい処分」
- 国民生活センター「遺品整理サービスのトラブル」
- 消費者庁「訪問購入」
- 警視庁「ホームページ利用取引を行う古物商」
- 国土交通省「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」
- 国税庁「譲渡費用となるもの」
- 富岡市「空き家家財道具等片付け補助金」
- 坂井市「空家家財処分支援事業補助金」
