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遠方の実家は現地に行かず売却できる?立ち会いなし査定から引き渡しまで

遠方の実家でも、条件がそろえば、売主が一度も現地へ行かずに売却できます。資料と周辺の取引事例から価格の目安を出す「机上査定」は、そもそも立ち会いが要りません。担当者が建物を見る「訪問査定」も、購入希望者の内覧も、安全に室内へ入る方法を用意できれば、売主がいない状態で進められます。

ただし、「売主が行かない」ことと「誰も現地を見ない」ことは別です。建物の状態確認、写真撮影、内覧、引き渡し前の確認は、現地でしかできません。売主が行かないなら、その一つずつを誰に任せるかを決めることになります。

そして、現地対応より先に決めることがあります。「誰が売主になるのか」です。登記の名義が亡くなった親のまま、共有者の同意が取れていない、親が契約内容を理解して判断できるか不安がある。こうした状態は、オンライン手続きや委任状では解決できません。

まず、次の5つを書き出してください。そのまま査定を依頼するときの材料になります。

  • 登記事項証明書に記録された所有者は誰か
  • その所有者本人が、売却の内容を理解して自分で決められるか
  • 実家は空き家か、誰か住んでいるか
  • 鍵は誰が持っていて、どう受け渡せるか
  • 貴重品、境界、建物の不具合を現地で確認できる人がいるか

名義と売却の意思に問題がなく、室内へ安全に入れるなら、机上査定から始めます。このとき聞くのは査定額だけではありません。訪問査定、契約、代金の受け取り、引き渡しまで、売主が行かずに進められるかを書面で答えてもらいます。

この記事が想定しているのは、日本国内にある親名義または相続した実家(戸建て・マンション)です。農地、借地権、賃貸中の物件、共有者の間で争いがある物件、売主が海外に住んでいる場合は、別の許可や税務・契約手続きが加わるため、ここでの手順だけでは足りません。

目次

遠方の実家を売る前に「行かない・1回だけ行く・いったん止める」を決める

現地へ行くかどうかは、家までの距離では決まりません。決めるのは、先に書き出した5つです。5つは、次の4つの条件にまとまります。売る権限があるか。室内へ安全に入れるか。現地の作業を任せる相手がいるか。本人確認と契約を非対面で進められるか。

この4つがどこまで埋まるかで、進め方は3つに分かれます。以下では、それぞれを「0回」「1回」「中断」と呼びます。

進め方当てはまる状況最初にすること
0回
(行かずに売る)
売主と売却の意思が決まっている。室内へ安全に入れて、現地の作業を任せる相手もいる。本人確認、契約、決済も非対面で進められそう机上査定と同時に、訪問査定から引き渡しまでの進め方を書面で確認する
1回
(一度だけ行く)
売る権限には問題がない。ただし、鍵、形見、重要書類、建物、境界を現地で判断できる人がいない一度で見る項目を書き出し、その後の現地作業を誰に任せるか決める
中断
(契約準備を止める)
登記名義や相続人が未確定、共有者の同意がない、所有者の判断能力に不安がある司法書士や弁護士へ相談し、名義・権限・同意を整えてから判定し直す
現地訪問の回数を判断する目安

判定は「中断→1回→0回」の順に確かめる

  1. 売る権限が欠けているなら止める
    鍵を預けられる状態でも、相続人が決まっていない、共有者の同意がないという段階では、契約の準備に進めません。
  2. 本人しか判断できない作業が残るなら、1回にまとめる
    形見や重要書類の仕分け、境界や建物の状態確認を、一度の訪問で終える段取りを組みます。
  3. 現地の作業まで任せられるなら、0回で組む
    鍵の管理、写真の報告、内覧、最終確認をそれぞれ誰が担うのか、記録をどう残すのかまで決めます。

0回にすること自体が目的ではありません。一度行って貴重品、鍵、境界、建物の状態をまとめて見ておけば、その後の価格調整や家財処分を判断しやすくなります。交通費を払っても、全体の負担はそちらが軽いこともあります。

現地に行かず売却する流れと、工程ごとの担当者

遠方売却は、次の順で進みます。

名義・意思の確認 → 机上査定 → 訪問査定 → 販売・内覧 → 売買契約 → 決済・登記 → 最終確認・鍵の引き渡し

売主が立ち会わなくても、現地の作業そのものは消えません。工程ごとに、誰が動くのか、売主は何を受け取るのか、どうなったら止めるのかを決めておきます。

工程現地で動く人売主が受け取る記録止める条件
1. 名義と資料の確認売主、不動産会社、司法書士登記事項証明書、固定資産税の課税明細、相続関係の資料所有者、相続人、共有関係が確定しない
2. 机上査定不動産会社(現地へは行かない)価格の目安と、現地を見ていないため反映できていない項目
3. 訪問査定・写真撮影不動産会社など確認した場所、見つかった不具合、写真、施錠後の状態鍵がない、居住者の同意がない、建物が危険
4. 販売・内覧不動産会社入退室の記録、施錠、室内の変化、購入希望者の反応
5. 売買契約売主(郵送・電子契約・代理人)署名した最終版、契約が成立した日、手付金の入金記録署名する最終版がどれか分からない
6. 決済・所有権移転登記司法書士、金融機関本人確認の方法、案件別の必要書類一覧、着金の記録売主の本人確認の方法が決まらない
7. 最終確認・鍵の引き渡し不動産会社または代理人室内の写真、鍵の本数、引き渡し記録家財が残っている
売主が現地へ行かない場合の担当と記録

この7つのうち、意味を取り違えやすいのが6の「決済」です。決済とは、売買代金を受け取り、同時に買主へ名義を移す手続きを進める日を指します。ここだけは不動産会社の判断で非対面にできません。金融機関と司法書士の条件が絡むからです。

7の引き渡し前の確認については、やむを得ない場合に不動産会社が売主に代わって立ち会うことがある、と全日本不動産協会の売主向け手引きにも書かれています。ただし、実際に代行できる範囲は会社と契約によって違います。査定を依頼する段階で確認してください。

立ち会いなしの査定は「机上査定」から始める

売主が立ち会わずに査定を進めるなら、まず机上査定で候補会社を絞り、そのあとに訪問査定を頼みます。机上査定は価格の目安を知るため、訪問査定は建物の状態を踏まえて売り出し価格を考えるための査定です。

机上査定は「次に何を調べるか」を知るために使う

机上査定は現地へ行かずに頼めます。裏を返せば、資料から読めないことは金額に入っていません。古い戸建てでは、雨漏り、傾き、擁壁(高低差のある土地を支える壁)、接道(敷地が道路にどう接しているか)、境界、残置物(家に残った家具や荷物)が価格と売り方を左右しますが、どれも現地を見ないと分かりません。

ですから、机上査定の金額だけで会社を決めたり、建物の解体を決めたりしないでください。査定書では次の点を確かめます。

  • 提示額は「机上査定額」「成約予想価格」「売り出し価格」のどれか
  • 参考にした取引事例の地域、時期、物件種別
  • 現地を見ていないため、査定額へ反映されていない項目
  • 訪問査定のあとに価格が変わりやすい条件
  • 仲介で想定する売却期間と、買取を提案する場合の条件

用意できるとよい資料は、固定資産税・都市計画税の納税通知書と課税明細、登記事項証明書や登記情報、間取り図、測量図、建築資料、修繕や不具合の記録です。相続した実家なら、相続人の整理や相続登記がどこまで進んでいるかも伝えます。資料が見つからなくても相談はできますが、確認できていない項目は「未確認」と書いてもらいましょう。

一つ注意したいのが、登記識別情報通知書の扱いです。この書面には、登記手続きの本人確認に使う重要な符号が記載されています。最初の査定のために、その符号や本人確認書類の全情報を何社にも送る必要はありません。候補会社と司法書士が決まったあとで、安全な方法で必要な範囲だけ渡します。

訪問査定では、立ち会いより先に入室方法を決める

空き家で、所有者の許可があり、安全に入れて、不動産会社が対応できるなら、売主がいなくても訪問査定は行えます。売主本人の立ち会いを求めるかどうかは、会社の運用や建物の状態によって変わるため、鍵の受け渡し方とあわせて相談します。

  • 追跡できる方法で鍵を送り、不動産会社に受領記録を残してもらう
  • 近くに住む家族や管理者が開錠し、査定後の施錠まで確認する
  • 空き家管理を頼んでいる場合は、管理会社と売却担当会社で鍵の扱いを調整する

玄関周辺に鍵を隠す、誰でも開けられるキーボックスを無断で設置する、といった方法は避けます。鍵の番号、本数、受け渡した日、保管者、複製の可否、返却日を記録し、査定後は施錠した状態を写真で残してもらいます。

実家に親や家族が住んでいる場合は、入ってよい部屋、撮影してよい範囲、内覧できる時間を居住者と決めます。外観しか見られなかったときは、室内の未確認箇所を査定書に書いてもらいます。

訪問査定のあとに、もう一度3つを判定し直す

訪問査定と資料の確認が終わると、最初には見えなかった問題が出てきます。鍵、残置物、境界、不具合への対応を現地の担当者へ任せられるなら、0回のまま進められます。形見や重要書類のように、売主本人が判断したほうがよいことが残れば、1回の訪問にまとめます。名義、売却の意思、共有者の同意に問題が見つかったときは、契約の準備を中断してください。最初の判定は、ここで変わってかまいません。

売却前に「名義」と「売却意思」を確定する

現地対応をどれだけ整えても、売主になる人が決まっていなければ契約はできません。親名義のまま売るのか、相続してから売るのか、兄弟などで共有しているのか。この違いで、必要な手続きが変わります。

親名義の実家は、親本人が売主になる

親が所有者で、売却の内容を理解し、自分の意思を示せるなら、売主は親本人です。子は連絡や資料の整理を手伝えますが、所有者である親への意思確認を省くことはできません。

親が契約内容を理解して判断できるか不安があるときは、委任状だけで売却を進めてはいけません。契約や委任をした時点で、本人に意思能力(内容を理解して自分で判断する力)がなければ、その法律行為は無効になります。

成年後見人が本人に代わって居住用不動産を処分する場合、また家庭裁判所から不動産処分の代理権(本人に代わって手続きをする権限)を与えられた保佐人・補助人が処分する場合は、事前に家庭裁判所の許可が必要です。今は施設に入っていても、入所前に住んでいた家が居住用不動産に当たることがあります。

親が売却の内容を理解し、自分の意思で子へ任せられる場合は、子を代理人にする方法もあります。ただし不動産売却では、価格や契約解除といった大きな判断が出てきます。一般的なひな型に署名するだけで済ませず、任せる範囲を委任状で具体的に決めてください。

相続した実家は、相続登記を売却日程に入れる

相続した実家は、相続登記が終わる前でも査定の相談を始められます。ただし、亡くなった人の名義のままでは、買主へ名義を移す登記ができません。誰がその不動産を取得するのかを決め、相続登記にかかる期間も売却日程に入れます。

相続登記は2024年4月1日から義務化されました。原則として、自分が相続人になったことと、その不動産を相続したことの両方を知った日から3年以内に申請します。制度開始前から知っていた相続で未登記のものは、原則として2027年3月31日までが期限です。正当な理由なく申請しない場合は、10万円以下の過料(行政上の金銭的なペナルティ)の対象になることがあります。

「相続人申告登記」は、自分が相続人であることなどを法務局へ申し出て、ひとまず申請義務を果たす制度です。ただし、この申告だけでは売却に必要な名義変更は終わりません。申告後に遺産分割が成立した場合も、その成立日から3年以内に、内容を反映した登記が必要です。

共有している実家の全体を売るには、共有者全員の同意が必要です。一人を連絡窓口にしても、ほかの共有者の同意や署名まで自動的に任されたことにはなりません。

登記上の住所・氏名が今と違う場合も、査定のときに伝える

2026年4月1日から、不動産の所有者として登記されている人は、住所や氏名が変わった日から2年以内に変更登記を申請することが義務になりました。制度開始前から変更があり未登記の場合は、原則として2028年3月31日までが期限です。正当な理由なく申請しない場合は、5万円以下の過料の対象になることがあります。

売却では、買主への名義変更より先に、売主の住所・氏名の変更登記が必要です。両方を続けて申請できる場合もありますが、法務局が自動で変更してくれるのを待てばよいとは限りません。登記上の住所・氏名と現在の本人確認書類が違うことは、査定の段階から司法書士へ伝えてください。

鍵・家財・境界・不具合の現地対応を決める

遠方から売る場合も、鍵の管理、家財の整理、境界や不具合の確認は現地で必要です。誰が、いつ、どこまで担当するのかを決めていないと、査定後や契約の直前で手続きが止まります。

鍵は、受け渡し方法と管理記録をセットで決める

空き家の鍵は、査定、撮影、内覧、建物調査、引き渡し前の確認で何度も使います。一度渡して終わりではありません。鍵を預けるときは、受領証、保管場所、持ち出しの記録、複製の可否、紛失したときの対応まで決めておきます。

鍵が見つからない場合は、所有者であることを確認できる資料を用意し、不動産会社と鍵業者の手配を相談します。所有者や居住者の承諾が曖昧なまま開錠してはいけません。

形見・重要書類と、処分してよい家財を分ける

通帳、権利関係の書類、アルバム、仏具などは、送られてきた写真だけでは処分してよいか判断しにくいものです。処分業者へ一括で任せる前に、写真付きの一覧を作り、次の3つに分けます。

  • 必ず保管する物
  • 家族へ確認してから決める物
  • 処分してよい物

最初の査定までに全部片付ける必要はありません。仲介と買取では、家財を残したまま引き渡せる範囲が違います。「誰が、いつまでに、いくらで、どこまで処分するか」も含めて査定を受けましょう。

家庭から出るごみの収集運搬は、市区町村の一般廃棄物処理業の許可または委託を受けた事業者へ依頼します。産業廃棄物処理業や古物商の許可だけでは、家庭ごみを回収できません。依頼先は、実家のある自治体の案内で確認してください。

境界や越境は、売主が不在でも消えない

境界標が見つからない、塀や樹木が隣地へはみ出している、登記の面積と実際の面積が違う。こうした場合は、土地家屋調査士などによる現地調査や、隣地の所有者との調整が必要になることがあります。

査定のときに、売主が境界を示す必要があるのか、確定測量まで行うのか、今の状態のまま引き渡せるのかを確認します。測量が必要なら、費用だけでなく、隣地との調整にかかる期間も売却日程に入れます。ここを後回しにすると、買主が決まってから日程が動きます。

分からない不具合を「問題なし」と書かない

長く住んでいない実家では、雨漏り、シロアリ、給排水、井戸、浄化槽、擁壁、増改築の状態を把握できていないことがあります。分からない項目を「なし」と推測で書かず、最後に確認した時期や、残っている修繕記録を不動産会社へ伝えてください。

実際の状態が契約内容と違っていた場合、契約内容や民法上の要件に応じて、買主から修理、代金の減額、損害賠償、契約解除などを求められる可能性があります。これを「契約不適合責任」といいます。「現地を確認していない」「今の状態のまま引き渡す」と書けば必ず責任を免れる、というものではありません。分かっている事実と未確認の事項を、物件状況報告書や契約書へ具体的に反映します。

売買契約は「郵送・電子契約・代理人」から選ぶ

現地へ行かずに売買契約を結ぶ方法は3つあります。どれを選んでも、契約内容の理解、本人確認、売却の意思確認は省けません。

方法向いている状況契約前の確認事項
郵送紙の契約書を使いたい。往復の時間を確保できる最終版、契約成立日、手付金、原本の保管方法
電子契約売主・買主・不動産会社などが電子手続きに対応できる電子化できる書面、署名方法、本人確認、決済までの対応範囲
代理人本人の意思が明確で、信頼できる人へ現地の手続きを任せられる委任する範囲、条件変更時の再承認、所有者本人の確認方法
現地へ行かずに売買契約を結ぶ主な方法

郵送による持ち回り契約

不動産会社が売主と買主の間で契約書を送り、同じ場所へ集まらずに署名・押印する方法です。特別な機器は要りません。その代わり往復に時間がかかり、修正前と修正後の契約書が混ざるおそれがあります。

  • 売主と買主が署名する最終版はどれか
  • いつ契約が成立するのか
  • 手付金は、いつ、誰から、どの口座へ支払われるのか
  • 契約書の原本を誰が何通保管するのか
  • 郵送中に紛失や遅延が起きたら、誰へ連絡するのか

特に大事なのは、上の2つです。契約が成立した時点と手付金の動きが曖昧なままだと、撤回や日程変更が起きたときに、売主と買主の認識が食い違います。

電子書面・電子契約

2021年3月30日から、オンラインで行う重要事項説明「IT重説」が売買取引でも本格運用されています。2022年5月18日からは、媒介契約書(不動産会社へ売却を依頼する契約の書面)、重要事項説明書、契約成立時の書面などを電子データで提供できるようになりました。電子で渡すには、受け取る側の承諾など所定の対応が必要です。

ここで混ざりやすいのが、2つの別の話です。宅地建物取引業法で定められた書面を電子データで渡せることと、売買契約そのものを電子署名で結べることは、別の話です。IT重説も、主に不動産会社が買主へ行う説明であり、売主の契約手続きそのものではありません。

そのため「電子契約に対応していますか」とだけ聞いても足りません。媒介契約、売買契約、本人確認、決済のうち、どこまでが電子で完結するのかを確認してください。

代理人による契約

親族などを代理人にして、本人のために売買契約を結ぶ方法です。現地での署名や鍵の引き渡しを任せられます。一方で、代理人が価格や契約解除の条件まで判断するなら、その人が負う責任も重くなります。

委任状には、売却する物件、代理人へ任せる手続き、価格などの条件、条件を変えるときに本人の再承認が必要な事項を、具体的に書きます。何でも任せる白紙委任や、必要以上に広い権限は避けてください。

なお、代理人を立てても、所有者本人への意思確認がなくなるとは限りません。登記を担当する司法書士や金融機関が、本人との面談や通話を求めることがあります。委任状を作る前に不動産会社と司法書士へ確認し、代理権の法的な判断が必要なら弁護士へ相談します。

決済と引き渡しを非対面にできるかは契約前に確認する

契約を郵送や電子で結べたからといって、決済と所有権移転登記も同じようにできるとは限りません。決済の日には、売買代金の受け取りと買主への名義変更を連動させ、住宅ローンの返済、抵当権(住宅ローンの担保として不動産に付けられた権利)の抹消、鍵の引き渡しまで、契約どおりの日程で動かす必要があるからです。

非対面で進められるかは、不動産会社、買主、金融機関、登記を担当する司法書士の条件で決まります。司法書士は、売主本人、対象の不動産、買主へ名義を移す意思を確認し、案件に応じて対面、ビデオ通話、本人確認書類の送付といった方法を指定します。

司法書士が決まったら、売買契約を結ぶ前に次の2点を確定させてください。

  1. 売主の本人確認と売却の意思確認を、いつ、どの方法で行うか
  2. 登記識別情報、印鑑証明書、委任状などの原本を、いつまでに、どこへ届けるか

必要書類は、本人確認書類、登記済証または登記識別情報、印鑑証明書、実印、固定資産評価に関する書類、住宅ローンの抵当権を消すための書類などです。物件と登記の内容で変わるため、司法書士から案件別の一覧を受け取ってください。

登記済証や登記識別情報は、紛失しても再発行されません。とはいえ、紛失しただけで売却できなくなるわけではありません。法務局から本人へ通知する方法や、司法書士などが本人確認情報を作成する方法を使える場合があります。面談の要否、費用、日数、買主や金融機関が受け入れる条件は案件ごとに違うため、紛失に気づいたら売買契約の前に司法書士へ伝えましょう。

住宅ローンが残っている場合は、返済先の金融機関にも、遠方から完済と抵当権の抹消を進められるか確認します。不動産会社や司法書士が手配を助けても、金融機関独自の書類や来店条件まで変えられるわけではありません。

遠方売却を任せる不動産会社の選び方

遠方の実家では、査定額の高さより、現地の業務を実際に回せるかどうかで差がつきます。「オンライン対応」「全国対応」という案内だけでは、鍵の管理、訪問査定、境界、家財、決済まで任せられるかは分かりません。

選ぶ基準は、自宅の近さではありません。実家の地域で売却実績があり、現地調査、内覧、近隣対応を任せられる会社を優先します。全国展開する会社で、契約する店舗と現地を担当する店舗が違う場合は、両方の責任者と連絡先を確認してください。

候補会社へ同じ質問を送り、回答を比べる

  • 対応できる範囲:売主が現地へ行かない場合、どの工程まで対応できるか
  • 訪問査定:誰が鍵を受け取り、外観と室内のどこまで確認するか
  • 鍵の管理:鍵預かり証、入退室記録、施錠後の写真を出せるか
  • 現地報告:写真・動画、不具合、残置物の一覧を共有できるか
  • 販売中の報告:内覧、施錠、室内の変化、購入希望者の反応を、いつ報告するか
  • 契約方法:媒介契約、売買契約、本人確認を、それぞれ郵送・電子・面談のどれで行うか
  • 決済:売主の出席が必要か、司法書士はいつ決まるか
  • 外部業者:境界、家財処分、清掃、補修が必要なとき、誰が見積もりを取り、誰が契約するか
  • 仲介と買取:家財、測量、不具合に関する売主の責任がどう変わるか
  • 追加費用:鍵、現地対応、郵送、外部業者などに別料金がかかるか
  • 訪問が必要になる条件:何が起きたら、何日前までに売主へ知らせるか

「すべて対応できます」という短い返事より、担当者、方法、記録、追加費用まで説明できるかを見てください。口頭で聞いた内容も、売却を依頼する契約を結ぶ前に、メールなどで文字にしてもらいます。

査定依頼時にそのまま使える確認文

送る前に、物件の所在地、売主、登記名義、空き家か居住中か、鍵の保管者を入れてください。

○○県○○市にある実家の売却を検討しています。売主は○○、登記名義は○○です。物件は空き家(または居住中)で、鍵は○○が保管しています。売主本人が現地へ行かずに進めたいため、次の7点について、対応できる範囲と方法を教えてください。①机上査定、②売主不在の訪問査定と鍵の管理、③現地写真・不具合の報告、④媒介契約と売買契約の方法、⑤司法書士による本人確認、⑥決済と鍵の引き渡し、⑦遠隔対応でかかる追加費用。あわせて、売主の現地訪問が必要になる条件も教えてください。

遠方売却の費用は「減る費用」と「任せる費用」を分ける

現地へ行かなければ、交通費、宿泊費、移動時間は減ります。その代わり、鍵の送付、空き家管理、家財処分、清掃、現地写真、建物調査、測量、代理人、司法書士など、現地と専門手続きを任せる費用が出てきます。行かない分がそのまま浮くわけではありません。

遠方だからいくら、という一律の追加料金はありません。通常の仲介業務に含まれる作業と、外部業者へ別料金で頼む作業の線引きが、会社ごとに違うためです。

売却前に概算の手取りを計算する

税金を引く前の概算手取り
= 成約予想価格
- 住宅ローンの返済額
- 仲介手数料、契約費用、登記費用など
- 売主が負担する家財処分、測量、補修など

この式とは別に、売却が終わるまでの固定資産税、保険、光熱費、空き家管理費、鍵の送付費、必要な帰省費も見積もります。固定資産税などの精算方法は売買契約によって変わり、売却益にかかる税金も上の式には入っていません。

不動産会社には、追加費用の項目、発注先、見積もりを取る時期を一覧で出してもらいます。0回と1回で費用が変わるなら、交通費だけで比べないでください。売却までの期間や売却価格への影響まで並べると、判断が変わることがあります。

実家売却で確認したい税の特例と期限

遠方の実家であること自体を理由に使える税の特例はありません。確認する制度が分かれるのは、親が生前に自宅を売る場合と、子が相続した空き家を売る場合です。

親が以前住んでいた家を、親自身が売る場合

一定の要件を満たせば、売却益に当たる譲渡所得から最高3,000万円を差し引ける特例があります。すでに住まなくなった家では、原則として、住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ることが期限の一つです。

相続した空き家を売る場合

相続した一定の空き家には、譲渡所得から一定額を差し引ける特例があります。売却の期限は、次の2つのうち早い日です。

  • 2027年12月31日
  • 相続開始日(一般には亡くなった日)から3年を経過する日の属する年の12月31日

物件と売り方に関する主な要件は、次のとおりです。

  • 1981年5月31日以前に建築された、マンションなどの区分所有建物ではない家屋である
  • 原則として、相続の直前に、亡くなった人以外は住んでいなかった
  • 売却代金が原則1億円以下である

一体として使っていた土地と建物を分けて売る場合や、ほかの相続人も売る場合は、一定期間内の売却代金を合計して判定します。2024年1月1日以後の売却では、家屋と敷地などを相続または遺言で取得した相続人が3人以上なら、控除の上限は1人当たり2,000万円です。それ以外は最高3,000万円です。

判定は、ほかにも動きます。相続後に事業、賃貸、居住へ使ったか、耐震基準を満たすか、誰に売るかによって変わります。親が施設へ入所していた家も一定の条件で対象になり得ますが、施設に入所していたという事実だけで特例を使えるわけではありません。

2024年1月1日以後の売却では、売却後に買主が家屋を解体するか、耐震基準を満たす改修を行う方法も対象になり得ます。ただし、その工事は売却した年の翌年2月15日までに完了する必要があります。つまり、買主の協力が特例の適用を左右します。契約前に不動産会社と税理士へ相談し、期限と証明書類の扱いを契約条件へ反映してください。

相続税を納めた場合は「取得費加算」も確認する

相続税を納めた人は、相続税額の一部を取得費(購入代金など、売却益を計算するときに差し引く費用)へ加えられる特例も確認します。対象期間は、相続開始日の翌日から、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までです。

この特例と、相続した空き家の特別控除は、同じ不動産の売却について併用できません。どちらが有利かは、契約前に税理士へ確認してください。

また、マイホームの特別控除と相続空き家の特別控除は、控除後の税額がゼロになる場合でも、必要書類を添えた確定申告が必要です。親が住まなくなった日または相続開始日、建築年月日、相続後の利用状況、売却予定日を一覧にして、適用できるかを税務署または税理士へ確認しましょう。

まとめ|売主が行かなくても、現地の作業はなくならない

遠方の実家は、名義と売却の意思が決まっていて、室内へ安全に入れて、買主を含む関係者が非対面の手続きに対応できれば、売主本人が現地へ行かずに売却できます。逆に言えば、行かずに売れるかどうかは、現地の作業を誰に任せられるかで決まります。

  • 名義、同意、入室方法、現地の担当者、本人確認の方法がそろうなら、0回で進められる
  • 売る権限はあるが、鍵、形見、重要書類、建物、境界を現地で判断できる人がいないなら、必要な確認を1回の訪問にまとめる
  • 相続人や名義が未確定、親の判断能力に不安がある、共有者の同意がないなら、契約の準備を中断する

最初の一歩は、記事の冒頭に挙げた5つ、つまり登記名義人、居住者、鍵の場所、共有者・相続人、所有者本人の意思を書き出すことです。その情報を添えて机上査定を依頼し、訪問査定から決済・引き渡しまで、誰が現地を担当するのかを工程ごとに決めてください。

出典・参考資料

※法令、税制、登記、契約、本人確認の取り扱いは、当事者、物件、契約内容、金融機関などによって変わります。個別の売却では、不動産会社、司法書士、税理士、土地家屋調査士、必要に応じて弁護士へ確認してください。情報確認日:2026年7月24日。

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