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数次相続した不動産は売却できる?相続人が多い・全員の同意が取れないときの進め方

登記簿を取ってみると、名義は亡くなった祖父のままだった。売却の話を始めると、叔父もすでに亡くなっていて、その妻や子どもまで関係するらしい。

数次相続した不動産では、このように「登記簿に名前が載っている人」と「いま手続に参加すべき人」が一致しないことがあります。厄介なのは相続人の人数ではありません。最初の相続から現在まで、権利が誰へ移ってきたのかが見えなくなっていることです。

結論からいえば、数次相続した不動産も売却できます。ただし、不動産を丸ごと売るには、いまの相続人や権利者を確定し、売却に必要な人全員の同意をそろえるのが原則です。やり方は一つではありません。遺産分割で取得者を決めてから売る方法のほか、分割前に相続人全員で売る方法もあります。どちらを選んでも、買主へ名義を移すまでに、権利の移り方に沿った相続登記が必要です。

全員の同意が取れないときも、その時点で「売却できない」と決まるわけではありません。反対しているのか、返事がないのか、所在がわからないのか、判断能力に不安があるのか。止まっている理由によって、取るべき手続は変わります。

目次

数次相続した不動産を売却するための要点

細かい手続の前に、判断の軸を4つに絞ります。

売却前に押さえる4つの要点
  • 数次相続でも売却はできる。最初に確かめるのは同意ではなく、登記名義人から現在の相続人まで、権利がどう移ってきたか
  • 不動産全体を売るには、持分の過半数では足りない。遺産分割前なら現在の相続人全員、分割後に複数人で取得したなら共有者全員の関与が原則必要
  • 代表者を決めても、反対している人の同意まで代われるわけではない。委任状は、同意した人の手続を代理するためのもの
  • 同意が取れないときは、「反対」「無回答」「所在不明」「判断能力に不安」「未成年」など、止まっている理由ごとに手を打つ

最初に用意する資料は2つです。

  • 最新の登記事項証明書(法務局で取れる、その不動産の名義と権利の記録)
  • 登記名義人から現在まで、誰がいつ亡くなったかをたどれる戸籍

この2つがそろう前でも、査定を頼むだけなら進められます。ただし、売主になる人が固まらないうちに、売却期限や価格を縛る契約を結ぶのは避けてください。

数次相続とは|相続人が増える仕組み

数次相続とは、最初の相続について遺産分割や相続登記が終わらないうちに相続人の一人が亡くなり、次の相続が始まることです。

たとえば、祖父の土地を家族で分けないまま父が亡くなると、父が祖父の相続について持っていた立場は、父の相続人へ移ります。その後さらに相続が起きれば、集める戸籍も、話し合いに加わる人も、もう一段増えます。

増えるのは人数だけではありません。相続が一つ重なるたびに、確認すべき遺言、相続放棄、そして期限も増えていきます。

代襲相続との違い

数次相続と代襲相続は、戸籍を見ただけでは似ています。違うのは、亡くなった順番です。

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比較点数次相続代襲相続
亡くなる順番最初に亡くなった人(被相続人)の死亡後に、その相続人が亡くなる本来相続人になるはずの子などが、最初に亡くなった人より先に亡くなるなどする
立場を引き継ぐ人後から亡くなった相続人の相続人が、前の相続についての立場を引き継ぐ先に亡くなった人の子などが、代わって相続人になる
数次相続と代襲相続の違い

順番が違えば、作る協議書も登記の進め方も変わります。なお、相続放棄は代襲相続の原因ではありません。放棄した人の子が、当然に代わって相続人になるわけでもありません(民法887条・939条)。

血縁のない人が協議に加わることもある

次の例で考えてみましょう。話を単純にするため、遺言も相続放棄もなく、生前贈与などを考慮する「特別受益」や、介護・家業への貢献などを考慮する「寄与分」もないものとします。

STEP
Aの相続が始まる

土地の名義人Aが亡くなり、妻B、子C、子Dが相続人になりました。

STEP
Aの遺産を分ける前にBが亡くなる

Bの相続人はCとDです。Bが持っていたAの遺産についての立場を、CとDが引き継ぎます。

STEP
それでも分けないうちにCも亡くなる

Cの相続人は妻Eと子Fです。今度は、Cが持っていた立場をEとFが引き継ぎます。

この仮定だと、Aの遺産についての立場は、単純に計算するとDが2分の1、Eが4分の1、Fが4分の1になります。EはAと血のつながりがありません。それでも、Cから立場を引き継いだ相続人として、Aの遺産分割に加わることになります。

ただし、この割合は、その土地を最終的に誰がどれだけ取得するかを決めるものではありません。実際には、各段階の遺言、相続放棄、過去の合意、認知した子、養子、前の結婚での子まで確認して、はじめて参加者と相続分が決まります。

誰の同意が必要かは、いまの権利状態で変わる

「親族全員に声をかければよい」と考えると、かえって失敗します。必要な人が抜けたり、関係のない人まで巻き込んだりするからです。まず、その不動産が次のどの状態にあるかを確認してください。

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現在の権利状態不動産全体を売るための基本最初に確認する資料話し合いが止まった場合
遺産分割前現在の相続人全員を確定し、誰が取得して売るか、または全員で売って代金を分けるかを決める登記事項証明書、亡くなった人ごとの戸籍、遺言書、相続放棄の有無遺産分割調停・審判を検討
遺産分割済み・未登記有効な遺産分割で取得した人を確認し、相続登記をしてから売却する。取得者がその後に亡くなっていれば、次の相続も整理する遺産分割協議書、印鑑証明書、戸籍、固定資産評価資料協議の有効性や、合意どおりに手続されないことをめぐる争いは弁護士へ
遺産分割後に複数人で共有取得不動産全体の売却には共有者全員の同意が原則必要。各自の共有持分だけを処分する場合とは区別する遺産分割協議書など取得の根拠となる資料、最新の登記事項証明書、住所・氏名の変更状況共有物分割の協議、民事調停・訴訟などを検討
遺言書・遺言執行者がいる遺言の内容と遺言執行者の権限を確認して進める。「相続人全員の同意が必要」「執行者だけで売れる」と一律には決められない遺言書、検認済みであることや保管先がわかる資料、遺言執行者の就任資料遺言の解釈や権限に争いがあれば弁護士へ
いまの権利状態ごとに見る、売却に必要な同意と確認資料

共有している物を丸ごと売る行為は、原則として共有者全員の同意が必要な「変更」に当たります。持分の大きい人が賛成していても、過半数だけで不動産全体を売ることはできません(民法251条)。

遺産分割前でも、相続人全員が同意して全員が売主になるか、代理人へ必要な権限を渡せば、不動産全体を共同で売却できる場合があります。できないのは、一人の相続人が単独で全体を売ること、そして亡くなった登記名義人から買主へ名義を直接移すことです。

同じ「共有」でも手続は違う

ここで区別したいのが、遺産分割前に相続人全員で遺産を持っている遺産共有と、遺産分割後に特定の不動産を複数人で持っている通常の共有です。

遺産分割前は、各相続人が遺産について相続上の持分を持つだけで、その土地を最終的に誰が取得するかは未確定です。遺産分割で特定の不動産を複数人が取得すると、はじめて各人がその不動産について通常の共有持分を持ちます。法定相続分どおりに共同相続登記をしても、それだけで遺産共有が通常の共有へ切り替わるわけではありません。

さらに、遺産全体に対する「相続分の譲渡」と、遺産分割前に特定の不動産の持分を処分することも別問題です。同じ「持分」という言葉でも、効果、登記、その後の遺産分割への影響が違います。話し合いが難しいときほど、いまどの状態なのかを先に確定させましょう。

数次相続した不動産を売却する7つの手順

相続人が多いケースでは、同意を集める前の準備で進み方が決まります。「誰が賛成か」を数える前に、「誰が決める人なのか」を確定させましょう。

STEP
亡くなった順番と期限を1枚にまとめる

最初に亡くなった人から現在までについて、次の情報を1枚にまとめます。

  • 氏名
  • 死亡日
  • 死亡を知った日
  • その時点の配偶者と子など
  • 遺言書の有無
  • 相続放棄の有無
  • 遺産分割の有無
  • 相続税と相続登記の期限・対応状況

数次相続では、相続の数だけ期限が並走します。後の遺産分割が終わるまで、前の相続税申告を待つことはできません。

STEP
対象の不動産を洗い出す

手元の権利証や固定資産税の課税明細だけで判断せず、最新の登記事項証明書を取り、土地と建物を分けて確認します。自治体の名寄帳(その自治体内の所有不動産をまとめた台帳)も手がかりになります。

2026年2月2日に始まった所有不動産記録証明制度を使うと、ある人が登記名義人として記録されている不動産の一覧を請求できます。古い相続で、どこに何があるか把握しきれていない場合に役立ちます。

ただし、この証明で全部が拾えるわけではありません。登記上の氏名・住所が検索条件と一致しないと漏れることがあり、所有権の登記がされていない不動産は検索対象外です。旧住所や旧姓があるなら検索条件を分けて請求し、未登記建物は現地や課税資料でも確認します。

STEP
亡くなった人ごとに戸籍と相続関係図をそろえる

登記名義人から順に、各被相続人の出生から死亡までの戸籍と、現在の相続人の戸籍を集めます。数次相続では、最初の被相続人だけでなく、途中で亡くなった相続人についても同じ確認が必要です。

法定相続情報証明制度を使うと、戸籍一式と相続関係を一覧にした図を法務局へ提出し、認証された写しを無料で受け取れます。金融機関や登記など複数の手続で、戸籍の束を何度も出す手間が減ります。数次相続では、原則として被相続人ごとに一覧図を作ります。

この一覧図でわかるのは、あくまで法定相続関係です。誰が不動産を取得したか、相続放棄が受理されたか、最終的な持分がどう決まったかまでは証明されません。

遺言書は、公正証書遺言か、法務局の自筆証書遺言書保管制度を使っているか、家庭裁判所で検認されているかを確認します。相続放棄があれば、家庭裁判所に受理されたかも確認してください。家族から「財産はいらないと聞いた」というだけでは、法律上の相続放棄をしたことになりません。

STEP
権利状態と「止まっている理由」を分類する

相続関係図ができたら、各人について次の点を確認します。

  • 遺産分割前か、分割済みか
  • 不動産は単独取得か、共有取得か
  • 売却に賛成か、条件付きで賛成か、反対か
  • 連絡先がわかるか、返事があるか
  • 未成年者か
  • 判断能力に不安がないか
  • 海外に住んでいるか
  • 代理人を立てる予定があるか

「同意がない」の一言でまとめないことが大事です。所在がわかっている反対者に、不在者財産管理人の制度は使えません。認知症の人の代わりに、家族が署名することもできません。理由を分けると、次に相談すべき相手が見えてきます。

STEP
売り方と代金の分け方を、売却前に書面で決める

全員が売却に前向きでも、「いくらで売るか」「費用を誰が負担するか」で止まることがあります。査定額をそのまま示すのではなく、仲介手数料、測量・解体費、登記費用などを差し引いた手取り額で示すと、話がまとまりやすくなります。

主な売り方は次の3つです。

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方法仕組み向いている場面主な注意点
共同で売却する遺産分割前の相続人全員、または分割後の共有者全員が売主になる持分割合が明確で、全員が手続に協力できる契約・本人確認・決済の調整が増える。買主へ名義を移す前に相続登記が必要
換価分割(売って代金を分ける)手続をしやすくするため一人名義で相続登記し、その人が売却後、遺産分割で定めた割合どおりに代金を分ける売って分ける目的・配分・期限が書面で明確で、窓口を一本化したい一人が取得した後の任意の送金と区別できるよう、売却目的、配分、費用、税務、売却期限を協議書に明記する
代償分割(一人が取得する)一人が不動産を取得し、ほかの相続人へ代償金を支払う取得者に資金があり、売却を急がない、または取得後の判断を任せる評価額と資金調達、税金を事前に確認する
数次相続した不動産の主な売り方

手続上、一人の口座へ売却代金を入れたとしても、その全額をその人だけの売却益として申告するとは限りません。税務では、実際に誰へどの割合で所得が帰属するかを見ます。反対に、目的を定めないまま一人へ名義を移し、後から親族へ送金すると、遺産分割による配分なのか、単独取得後の贈与なのかが曖昧になります。

国税庁は、遺産分割調停で換価分割を定め、売却の便宜のために一人へ相続登記したうえで、調停どおり代金を分けた事例について、贈与税の課税は問題にならないと示しています。ただし、これはその事例の条件を前提とした回答です。当事者だけの協議にも同じ扱いが一律に及ぶとは限らないため、売却前に協議書案を司法書士と税理士へ見せて確認してください(国税庁「遺産の換価分割のための相続登記と贈与税」)。

STEP
相続登記を済ませ、売れる名義へ整える

遺産分割または共同売却の内容から取得者・売主が決まったら、死亡の順番と権利の移り方に沿って相続登記を組み立てます。

数次相続の登記は、原則として相続ごとに順番に行います。例外は、最後の相続を除く途中の相続がすべて単独相続だった場合、つまり権利を取得した人が毎回一人だけだった場合です。このときは複数の相続の日付と原因を記載して、最終相続人への登記を1件にまとめられることがあります。途中で複数人が権利を取得していれば、まとめられません。法務局の数次相続を含む申請書例と戸籍を、司法書士または法務局へ示し、登記申請を何件に分けるか確認しましょう。

相続登記が済んでいないからといって、相続人と買主が結ぶ売買契約が常に無効になるわけではありません。それでも、亡くなった登記名義人から買主へ名義を飛ばすことはできません。買主への所有権移転登記には、その前提となる相続登記が必要です。通常は、遅くとも決済までに相続登記を整えます。

なお、相続人申告登記は、期限内の相続登記が難しいときに申告義務を簡易に果たすための制度です。権利の取得割合を登記するものではないため、これだけでは売却できる名義になりません(法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」)。

STEP
査定・物件調査・契約・決済・申告へ進む

名義を整える見通しが立ったら、複数社へ同じ条件で査定を依頼します。比べるのは価格の高さだけではありません。想定する買主、売却にかかる期間、必要な測量・解体、引渡し後に不具合が見つかったときの売主責任(契約不適合責任)、価格を変更する条件も並べて確認します。

買付けが入ったら、合意書で決めた最低価格や期限に照らして、承諾できるかを確認します。売買契約書、決済、代金分配の記録、領収書類はまとめて保管してください。税務上は売却益が帰属する人ごとに計算し、納税額が生じる場合や特例を使う場合は確定申告をします。

相続人が多い土地を売る前に、合意書で決めておくこと

「売却することに賛成」という一文だけでは、実務は動きません。少なくとも次の項目を書面にします。

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決める項目書面にする内容の例
売却方式共同売却、換価分割、代償分割のどれか
不動産の取得者・売主誰の名義に登記し、誰が契約するか
代金配分割合、支払日、振込先、端数の扱い
売却条件最低価格、販売期限、値下げできる幅、改めて全員の同意が必要になる条件
費用負担仲介、登記、測量、残置物、解体、修繕、管理、固定資産税の清算など
税金・申告誰の売却益として申告するか、取得費・売却費用をどう分けるか、使う特例、各自の申告方法
代表者の権限査定依頼、不動産会社へ仲介を依頼する契約(媒介契約)、価格交渉、売買契約、代金の受領、支払いのどこまで委任するか
想定外の事態買主の融資不成立、契約解除、追加費用、相続人の死亡、期限超過時の対応
相続人が多い土地を売る前に、合意書へ記載する項目

代表者を決めれば、連絡は確かに楽になります。それでも、代表者という肩書だけで、他の人の持分を売ったり、反対者に代わって同意したりはできません。必要な行為と権限を委任状に具体的に書き、司法書士や不動産会社による本人確認にも応じられる状態にしておきます。

全員が契約や決済の場へ同時に集まる必要もありません。適切な委任状と本人確認書類があれば、代理で手続を組める場合があります。遠方や海外に住む相続人がいるだけで、売却をあきらめなくてよいということです。

全員の同意が取れないときは、理由別に対応する

同じ「同意が取れない」でも、打つ手はまったく違います。まず自分のケースがどれに当たるかを見てください。

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同意が取れない理由してはいけないこと主な次の一手
価格・分配・感情面で反対多数決で押し切る、代表者だけで契約する条件を数字で見えるようにする、第三者の査定を取る、遺産分割調停または共有物分割を検討する
住所はわかるが返事がない「所在不明」として扱う連絡記録を残し、期限と選択肢を示す。必要なら調停を検討する
調査しても所在がわからない形だけ連絡して勝手に売る不在者財産管理人、所在等不明共有者の制度を弁護士と検討する
判断能力に不安がある家族が代筆する、過去の白紙委任状を使う成年後見制度などを検討する。居住用不動産なら家庭裁判所の許可にも注意する
未成年者がいる利害が対立する親が未成年者も代理する特別代理人の選任を検討する
海外に住んでいる人がいる帰国できないことを「反対」とみなす現地の署名・住所証明、委任状、本人確認方法を早めに確認する
全員の同意が取れない理由別の対応

価格や分け方に反対している人がいる

反対の中身を、価格、費用、税金、思い入れ、売却時期に分けます。「もっと高く売りたい」という意見には、査定書を増やすだけでなく、想定売却期間と手取り額を並べて見せると、話が具体的になります。

次の3案を同じ土俵で比べると、単純な賛成・反対から抜け出しやすくなります。

  • 第三者へ不動産全体を売り、手取りを分ける
  • 希望する相続人が不動産を取得し、他の人へ代償金を払う
  • 一定期間は売らず、管理費の負担と再協議の日を決める

それでも合意できない場合、遺産分割前なら家庭裁判所の遺産分割調停を検討します。調停が成立しなければ、原則として審判へ移ります。裁判所の案内では、相続人の一人または複数人が、ほかの相続人全員を相手方として申し立てる手続が示されています。

遺産分割によって複数人が不動産を共有取得し、通常の共有になっている場合は、共有物分割の協議や民事手続の問題になります。裁判所の判断で、一人が代償金を払って取得する形や競売になる可能性もあり、希望した時期・価格で一般市場へ売れるとは限りません。なお、法定相続分どおりに共同相続登記をしただけで遺産分割が終わっていない場合は、通常の共有としては扱われません。

住所はわかるが、連絡しても返事がない

返事がないだけでは、同意したとも、所在不明になったとも扱えません。連絡した日時と方法を記録に残し、次の情報を簡潔に伝えます。

  • 対象の不動産と、いまかかっている管理の負担
  • 査定額ではなく、費用を差し引いた後の概算手取り
  • 売却、相続人の一人が代償金を払って取得、当面保留という選択肢
  • 回答期限と、回答がない場合に調停を検討すること

感情的な催促を重ねるより、条件と次の手続を一度整理して示す方が動きます。それでも反応がなければ、遺産分割調停など手続の中で、連絡と意向確認を進めます。

調査しても所在がわからない

戸籍の附票や住民票を調べても所在がわからず、連絡も取れない場合は、家庭裁判所へ不在者財産管理人の選任を申し立てる方法があります。管理人が遺産分割や不動産売却など、通常の管理を超える行為をするには、別に家庭裁判所の許可が必要です(裁判所「家事事件Q&A」)。

必要な調査をしても一部の共有者を特定できない、または所在を確認できない共有不動産には、地方裁判所を通じて使える制度が2つあります。

  • 判明している共有者が、不明共有者の持分を取得する
  • 不明共有者の持分を、特定の第三者へ譲渡する権限を得る

2つ目の制度で不動産全体を売るには、不明共有者以外の共有者全員が、同じ買主へ自分の全持分を譲渡しなければなりません。さらに、必要な金銭を法務局へ預ける「供託」を行い、裁判の効力が生じてから原則2か月以内に譲渡を成立させる必要があります。

この制度は、所在がわかっている反対者や、単に返事をしない人を外すためのものではありません。また、不明共有者の持分が未分割の相続財産に含まれる場合は、その持分に関する相続開始から原則10年が経過している必要があります(民法262条の2・262条の3、東京地方裁判所の手続案内)。

どの制度が使えるかは、遺産分割前か、分割後の通常共有か、所在調査をどこまで行ったかで変わります。自己判断で一人を外さず、集めた資料を弁護士へ見せてください。

判断能力に不安がある人がいる

認知症などで売却の意味や結果を理解できない人がいる場合、署名できるかどうかだけで判断してはいけません。家族が代筆しても、本人の有効な意思表示や代理権がなければ、売却は進められません。

成年後見人などの選任が必要になることがあります。さらに、成年被後見人の居住用不動産を処分する場合は、家庭裁判所の許可が必要です。許可を得ない処分は無効とされています(裁判所「居住用不動産処分許可」)。

成年後見人、保佐人または補助人と本人が、同じ遺産を相続する場合は、利益相反の問題も生じます。監督人などがいなければ、特別代理人、臨時保佐人または臨時補助人の選任が必要になるのが原則です(裁判所「成年被後見人等の特別代理人」)。

未成年者がいる

親権者と未成年者が同じ遺産を相続する場合、遺産分割では原則として、家庭裁判所が選任する特別代理人が未成年者を代理します。親権者自身が相続人でなくても、同じ親権者が複数の未成年者を代理するときは、子ども同士の利益が対立するため、それぞれに特別代理人が必要になることがあります。

「法定相続分どおりに分けるのだから不要だろう」と決めつけず、協議書へ署名する前に司法書士や弁護士へ確認してください(裁判所「未成年者の特別代理人」)。

海外に住む相続人がいる

海外に住む人がいても、全員が日本へ集まらなければ売却できない、ということはありません。居住国と国籍に応じて、署名証明、在留証明、宣誓供述書など、印鑑証明書や住民票に代わる書類を用意し、委任状と本人確認の方法を整えます(外務省「在留証明・署名証明」)。

気をつけたいのは税金です。売主が、日本に住所がないなど税法上の「非居住者」に当たると、日本の不動産の売却代金について、買主が原則10.21%を源泉徴収する場面があります。売買代金が1億円以下で、個人の買主が自分または親族の居住用に取得する場合などは例外です(国税庁「非居住者等から土地等を購入したとき」)。国や地域によって必要書類と税務が変わるため、相続人調査の段階で司法書士と税理士へ相談しましょう。

自分の「持分だけ」を売れば解決するのか

全員の同意がそろわないとき、「自分の分だけ売ってしまいたい」と考える人もいます。ここでも、遺産分割の前か後かで話が変わります。

遺産分割前の相続分を第三者へ譲る場合

民法905条の相続分譲渡で譲るのは、特定の土地についての確定した持分ではなく、遺産全体に対する相続上の地位・相続分です。第三者が入れば、遺産分割の当事者関係はその分だけ複雑になります。

ほかの相続人には、譲渡代金と費用を支払って、その相続分を取り戻す権利があります。民法905条は行使期間を1か月と定めています。ただし、1か月をいつから数えるかは条文に書かれておらず、譲渡時から数える見解が有力です。譲渡を知ったら、すぐに弁護士へ確認してください。

なお、遺産分割前に特定の不動産について自分の持分だけを処分することは、民法905条の相続分譲渡とは別問題です。後の遺産分割や登記、第三者に権利を主張できるかが絡むため、次に説明する通常の共有持分の売却と同じものとして扱わないでください。

遺産分割後の通常の共有持分を売る場合

遺産分割によって特定の不動産を複数人が共有取得した後なら、自分の共有持分だけであれば、原則としてほかの共有者の同意を得ずに譲渡できます。ただし、買主が手に入れるのは不動産全体ではなく共有持分です。法定相続分どおりに共同相続登記をしただけで遺産分割が終わっていない場合は、この説明をそのまま当てはめないでください。

共有持分の買取価格に、公的な一律の値引率はありません。「必ず相場の何割になる」とは言えない一方、不動産全体を売る場合より買い手が限られやすいのは確かです。第三者が共有関係へ入れば、残る親族との調整が厳しくなることもあります。

共有持分の単独売却は、早く手放せる可能性と引き換えに、価格、税金、家族関係へ影響する選択です。全体売却、相続人による買取り、調停・分割手続と比べたうえで判断しましょう。

数次相続の相続登記|期限と登録免許税

相続登記は、取得を知った日から3年以内が原則

相続登記は2024年4月1日から義務化されました。相続によって不動産を取得したと知った日から3年以内の申請が原則です。義務化より前の相続でも、2024年4月1日時点ですでに取得を知っていた場合は、古い相続に対する経過措置により、原則として2027年3月31日が期限になります。

正当な理由なく義務に違反すると、行政上の金銭的な制裁である「過料」が科される可能性があり、上限は10万円です。遺産分割が成立した後も、その成立日から3年以内に、内容に沿った登記を申請する義務があります(法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」)。

数次相続では「最初の相続が古いから自分には関係ない」と考えず、自分が取得を知った時期と、各遺産分割の成立日を整理してください。

登録免許税は原則0.4%、土地には期限付きの免税もある

相続による土地・建物の所有権移転登記では、登録免許税を計算するときの不動産価額に、原則0.4%を掛けます。固定資産課税台帳に価格がある場合は原則その価格を用い、持分だけを移すときは持分相当額が計算の基礎になります。

数次相続では、土地を相続した人が、登記をしないまま亡くなっていることがあります。この途中で相続した人を「中間相続人」といいます。中間相続人を名義人とする土地の相続登記は、2027年3月31日までに申請すれば登録免許税が免除されます。ただし、免除されるのはこの登記までで、中間相続人から最終相続人へ移す次の登記まで無料になるわけではありません。

同じ日までに個人が受ける一定の土地の所有権保存登記または相続による所有権移転登記で、税額計算の基礎となる不動産価額が100万円以下なら免税になります。いずれも土地の特例で、建物まで一律に免税される制度ではありません(国税庁「登録免許税の税額表」)。

「10年」は売却期限ではない

相続開始から10年を過ぎても、遺産分割そのものが一律にできなくなるわけではありません。変わるのは、分け方の基準です。

2023年4月施行のルールにより、特別受益や寄与分などの個別事情を反映した割合(具体的相続分)で分けるよう求められる期間には、原則10年の制約があります。10年を過ぎると、法定相続分または遺言で指定された相続分を基準に分けるのが原則です。

古い相続には2028年3月31日まで猶予される場合があるほか、期限内に家庭裁判所へ遺産分割を申し立てた場合などの例外もあります(民法904条の3、法務省「遺産分割に関する新ルール」)。

混同しやすい4つの期限
  • 相続登記:不動産の取得を知った日から原則3年
  • 相続税:相続開始を知った日の翌日から原則10か月
  • 特別受益・寄与分を反映した遺産分割:相続開始から原則10年
  • 所在等不明共有者の制度:未分割の相続財産に含まれる持分には、相続開始から原則10年の制限がある

同じ「3年」「10年」「10か月」でも、数え始める日と対象は別です。数字だけを見て混同しないでください。

売却前に確認する税金と4つの資料

売却や遺産分割が終わっていなくても、税金の期限は進みます。数次相続では、相続ごと・納税者ごとに整理してください。

相続税は遺産分割前でも原則10か月

相続税の申告が必要な場合、申告書の提出と納付は、原則として相続開始を知った日の翌日から10か月以内です。遺産が未分割でも期限は延びません。民法上の相続分、または遺産の全部・一定割合を譲り受ける包括遺贈の割合に従って申告し、納税額があれば納付します(国税庁「相続税の申告と納税」)。

未分割の財産には、当初申告で配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を原則として使えません。後から適用する予定なら、まず当初申告に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付します。そのうえで、原則として申告期限から3年以内に分割し、分割を知った日の翌日から4か月以内に、税額の見直しを求める「更正の請求」をするなどの対応が必要です(国税庁「相続財産が分割されていないときの申告」)。

先の相続の申告義務者が、申告書を出さないまま期限前に亡くなることもあります。その場合、その人の相続人等は、後の相続開始を知った日の翌日から10か月以内に、先の相続の申告書を提出します。注意したいのは、この期限が適用されるのは、亡くなった申告義務者の立場を引き継いだ人だけという点です。先の相続における、ほかの相続人の期限まで延びるわけではありません(相続税法27条2項)。

被相続人が死亡前10年以内に別の相続で財産を取得し、相続税を課されていた場合、今回の相続人は相次相続控除を受けられる可能性があります。短期間に相続税が重なる負担を調整する制度で、数次相続なら自動的に使えるというものではありません。控除額は経過年数に応じて減り、相続放棄をした人などは対象外です。譲渡所得の控除でもありません(国税庁「相次相続控除」)。

売却益は、税務上「誰の所得か」を分けて計算する

土地・建物を売って得た利益を、税務では「譲渡所得」といいます。譲渡所得は、その利益が誰に帰属するかを分けて計算します。基本の式は次のとおりです。

課税対象となる譲渡所得金額 = 売却代金 −(取得費 + 譲渡費用)− 適用できる特別控除額

相続した不動産の取得時期と取得費は、原則として亡くなった人から引き継ぎます。数次相続だからといって、途中の相続日で保有期間や取得費がリセットされることはありません。建物の取得費は、購入代金等から所有期間中の減価償却費相当額を差し引いて計算します。

自宅など事業に使っていない土地・建物を相続した際に、相続人が支払った登録免許税などの登記費用は、実際の取得費を使う場合に取得費へ含められることがあります。最初の購入代金がわからない場合は、売却代金の5%を概算の取得費にできます。ただし、この方法を選ぶと、その登記費用を別に加算できません。5%は税率ではなく、取得費の概算です(国税庁「相続した土地・建物の取得費と取得の時期」、同「取得費が分からないとき」)。

売却前に探す4群の資料
  • 最初の購入契約書、建築請負契約書、領収書
  • 増改築・改良にかかった費用の資料
  • 各相続の相続税申告書、評価明細、納税資料
  • 仲介、測量、解体、登記などの契約書と領収書

仲介手数料、売主が負担した売買契約書の印紙税、売却のために直接必要となった一定の解体費などは、譲渡費用になり得ます。一方、通常の修繕費、固定資産税、日常の維持費は原則として譲渡費用になりません(国税庁「譲渡費用となるもの」)。

取得費加算と空き家の特例は、登記前に比較する

相続または遺贈で財産を取得し、その取得について相続税を課された人には、取得費加算という制度があります。相続開始日の翌日から、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までにその財産を売ると、売却財産に対応する相続税の一部を取得費へ加算できる場合があります。相続税の全額を加算できるわけではなく、適用には確定申告が必要です。

数次相続では、前の相続(第一次相続)の特例期間内に次の相続(第二次相続)が始まり、その期間内に第二次相続人が対象の財産を売ることがあります。この場合、一定額の範囲で、第一次相続人が取得費に加算できる上限額を引き継げる取扱いがあります。

第一次相続人が申告書を出さないまま期限前に亡くなり、相続税法27条2項によって、その相続人へ申告期限が引き継がれたケースもあります。この場合は、引き継いだ後の申告期限を基準に売却期限を判定します。売却日を決める前に税理士へ確認してください(国税庁「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」、同「第1次相続の申告期限前に第2次相続が開始した場合」)。

もう一つが空き家の特例です。被相続人が原則一人で住んでいた旧耐震の家屋と敷地を相続して売る場合、条件を満たせば譲渡所得から最高3,000万円を控除できます。主な条件は次のとおりです。

  • 1981年5月31日以前に建築され、マンションのような区分所有建物ではない
  • 相続後、事業・貸付け・居住に使っていない
  • 耐震基準を満たすか、家屋を取り壊す
  • 売却代金が1億円以下
  • 2027年12月31日まで、かつ相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る

1億円かどうかの判定では、同じ家屋・敷地を分けて売った分や、ほかの相続人が売った分も合算します。

この特例を使えるのは、対象の家屋と敷地の両方を、同じ被相続人から相続または遺贈で取得した人です。2024年以後の譲渡で、その相続時に両方を取得した相続人が3人以上いる場合、控除の上限は一人2,000万円になります。後の数次相続で所有者の数が変わっても、この人数判定は変わりません。

気をつけたいのは、後の相続で初めて家屋・敷地を取得した人が、この特例を引き継いで使えるわけではない点です。売主自身が、特例の対象となる被相続人から家屋と敷地の両方を取得している必要があります。適用には、確認書などを添えた確定申告も必要です。

そして、同じ資産について、空き家特例と相続税の取得費加算は併用できません。誰がどう取得するかで使えるかどうかが変わるため、遺産分割と登記を決める前に比較するのが要点です(国税庁「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」)。

換価分割では、売却前に代金配分を決める

換価分割の譲渡所得は、代金の分け方をいつ決めたかで扱いが変わります。

  • 売却時点で割合が決まっている:各相続人が、その割合に応じて申告する
  • 売却時点では未定でも、所得税の申告期限までに割合を決め、相続人全員がその割合で申告した:その申告が認められる
  • 法定相続分で申告した後に代金を分けた:原則として、その分割だけを理由に、申告済みの配分をさかのぼって変えることはできない

割合が未定のまま申告期限を迎える場合は、原則として、売却時の所有割合である法定相続分に基づいて申告します(国税庁「未分割遺産を換価した場合の譲渡所得」)。誰が売主になるか、代金と費用をどう分けるか、誰の売却益として申告するか。この3点を売却前に書面化し、各自の申告方法を税理士へ確認してください。

土地・建物の状態によって追加手続が必要になる

相続人全員の合意が整っても、物件側の問題で売却が止まることがあります。

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確認事項実務上のポイント
境界・面積すべての売却で確定測量が法律上必須というわけではない。買主や契約条件が求めるかを確認する
農地農地としての売買は原則として農業委員会の許可などが必要。転用目的なら別の許可・届出を確認する
未登記建物・増築現況、課税資料、建物の物理的な状況を登記する「表題登記」が必要かを土地家屋調査士へ確認する
抵当権・差押え決済時に抹消できるか、債権者と早めに調整する
借地・賃貸・占有契約関係、明渡しが必要か、敷金などを誰が引き継ぐかを確認する
接道(敷地と道路の接し方)・私道持分再建築や通行・掘削、私道持分の名義を調べる
住所・氏名の変更生存する登記名義人に変更がある場合、売却登記の前提として変更登記を確認する
物件の状態ごとに確認する追加手続

農地を農地のまま売買する場合、原則として農業委員会の許可が必要で、許可を受けない売買は無効です(農林水産省「農地をめぐる事情について」)。登記の地目だけで判断せず、現況と農業委員会の扱いを確認します。

境界確認や測量、土地を分けて登記する分筆、未登記建物の表題登記は土地家屋調査士の領域です。買主の募集を始めてから発覚すると、期限を組み直すことになります。査定の時点で、現況を不動産会社へ伝えておきましょう。

数次相続した不動産は、誰に相談すればよいか

相談先は、相続人の人数ではなく「いま何が止まっているか」で選びます。

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相談先主な役割相談する目安
司法書士相続人・登記関係の確認、遺産分割協議書を踏まえた相続登記、売買の所有権移転登記関係者は協力的だが、戸籍や数次相続の登記が複雑
弁護士反対者との交渉、遺産分割調停・審判、所在不明者や共有物分割、遺言・協議の争い一人でも反対、無回答、所在不明、判断能力の問題、紛争がある
税理士各相続の申告期限、相続税、譲渡所得、換価分割、取得費加算・空き家特例の比較分け方や名義を決める前。相続税申告や売却益が見込まれる
土地家屋調査士境界、測量、土地を分けて登記する分筆、建物の表題登記境界標がない、面積が合わない、未登記・増築建物がある
不動産会社査定、販売条件、買主探し、売買契約と決済の調整売主と登記の見通しが立った段階。初期の価格資料づくりも可
数次相続した不動産売却の相談先

対立がなければ、まず司法書士に相続関係と登記の道すじを確認し、不動産会社と税理士を並行して入れると進めやすくなります。すでに反対者や所在不明者がいるなら、登記だけを先に進めず、弁護士へ相談してください。

専門家へ最初に渡す資料は、登記事項証明書、固定資産税の課税明細、亡くなった順番の年表、集めた戸籍、遺言や過去の遺産分割協議書、関係者の連絡状況です。すべてそろうまで相談を待つ必要はありません。

数次相続した不動産売却のよくある質問

相続登記前でも、不動産会社へ査定を頼めますか?

査定や売却方針の相談はできます。買主の募集や売買契約を先に進められる場合もありますが、相続人の確定や相続登記にかかる時間を読み違えると、約束した決済日に間に合いません。売主が確定していないうちは、法的に拘束される販売条件を決めない方が安全です。

売却の話し合い中に、相続人が亡くなったらどうなりますか?

亡くなった人の立場を、その人の相続人が引き継ぐ可能性があります。遺産分割協議の成立前なら、参加者を組み直し、戸籍と意思確認を追加します。すでに有効な協議や売買契約が成立している場合は、その内容と相続が始まった時点によって必要な手続が変わります。契約を先へ進めず、司法書士または弁護士へ確認してください。

「私は相続しない」と書いた念書があれば、相続人から外せますか?

通常、その一文だけで法律上の相続放棄をしたことにはなりません。相続放棄は、原則として自分のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、家庭裁判所へ申述する手続です。期限後にできるかどうか、また遺産分割で財産を取得しない場合との違いは、個別に確認が必要です(裁判所「相続の放棄の申述」)。

数次相続の手続には、どれくらいかかりますか?

人数だけでは決まりません。相続が起きた回数、戸籍の本籍地、遺言や過去の協議、反対者、所在不明者、未成年者、判断能力、物件の境界や農地規制によって変わります。「相続人が多いから必ず1年以上」といった一律の目安はありません。

まず戸籍調査と、登記をどの順番で行うかの確認に着手し、査定や税務資料の収集を並行すると、待ち時間を減らせます。

まとめ|同意を集める前に、権利の流れを確定する

数次相続した不動産でも、いまの権利者を確定し、売り方に応じた合意と相続登記を整えれば売却できます。遺産分割で取得者を決めてから売る方法だけでなく、分割前に相続人全員で売る方法もあります。

相続人が多い土地を売るとき、最初にすることは親族への一斉連絡ではありません。最新の登記事項証明書を取り、登記名義人から現在までに誰がいつ亡くなり、相続がどう続いたかを1枚の図にします。そこから、遺産分割前、分割済み・未登記、分割後の通常共有、遺言ありのどれに当たるかを判定します。

全員の同意が取れないときは、反対、無回答、所在不明、判断能力に不安がある人、未成年者を分けて考えてください。制度で対応できる場合もありますが、代表者や多数決で必要な同意を飛ばすことはできません。

売却前に守る一線

売主になる人、代表者の権限、代金配分、費用、税負担が書面で固まるまでは、拘束力のある売却条件を約束しないこと。これが、数次相続の不動産売却で余計な紛争を増やさないための一線です。

※法令・制度・公表資料の参照日は2026年7月24日です。個別の権利関係、税額、使える特例、必要書類は事案によって異なります。実際の遺産分割、登記、売却契約、申告は、司法書士・弁護士・税理士などへ資料を示して確認してください。

出典

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