換価分割とは、相続した家や土地を売って現金に換え、その代金を相続人で分ける方法です。家は物理的に切り分けられません。かといって、家を引き継ぐ人がほかの相続人へ「代償金」を払う方法も、まとまったお金がなければ選べません。そんなときに使えるのが換価分割です。
家を売れば、あとは現金を分けるだけ。仕組みそのものは単純です。つまずくのは、その前と後です。売る前に「いくらまで値下げしていいか」、売った後に「何を差し引いた残りを、誰に、いつ渡すか」まで決めておかないと、買い手がついてから話が止まります。
査定を頼む前に決めておきたいのは4つです。誰の名義で登記して誰が売るか。いくらまで値下げしていいか。代金から何を差し引くか。残ったお金を誰に何割、いつまでに渡すか。ここが固まっていれば、売却後の精算はほとんど揉めません。
- 分けるのは売却代金そのものではなく、費用を差し引いた後の残りです。
- 話し合いで進めるなら、相続人全員の合意と協力が必要です。1人でも反対すれば、家全体は売れません。
- 登記の名義は、代表者1人にする方法と、相続人の共有にする方法があります。
- 誰が何割受け取るかは、遅くとも売買契約を結ぶ前に遺産分割協議書へ書きます。
- 税金は、相続税、売却益にかかる税金、贈与税の3つを分けて確認します。
- 相続人が誰か、遺言書があるかが確定していない
- 相続放棄を考えている人がいる
- 反対する相続人、連絡が取れない相続人、未成年者がいる
- 家に抵当権、境界問題、無断増築、共有持分などの問題がある
- 遺産分割協議書に、売って分ける目的と分配割合が書かれていない
- 相続した空き家の3,000万円控除など、契約前の確認が必要な特例を検討している
当てはまる場合は、先に弁護士・司法書士・税理士へ確認してください。
換価分割とは|相続した家を売り、代金を相続人で分ける方法
換価分割(かんかぶんかつ)は、遺産の全部または一部を売って現金に換え、その現金を分ける方法です。裁判所も「遺産を売却して、その代金を分割する方法」と説明しています。
遺産の中心が実家1軒、相続人は子ども3人。この場合、家を3つに切り分けることはできません。そこで家を第三者に売り、売却にかかった費用を差し引いた残りを、話し合いで決めた割合に沿って3人へ渡します。
現物分割・代償分割・共有との違い
| 分け方 | 仕組み | 向きやすい状況 | 主な注意点 |
|---|---|---|---|
| 現物分割 | 家は長男、預金は次男というように、遺産をそのまま分ける | 種類も価値も違う遺産が複数ある | 財産の価値が揃わず、不公平感が出やすい |
| 代償分割 | 1人が家を取得し、ほかの相続人へ代償金を払う | 住み続けたい人がいて、その人に支払う力がある | 評価額で揉めやすく、代償金を用意する必要がある |
| 換価分割 | 家を売り、費用を差し引いた代金を分ける | 誰も住まない、現金で分けたい | 家が残らず、売却費用や税金がかかる |
| 共有のまま取得 | 複数人の持分で家を所有する | 当面は売らず、共同で管理できる | 将来の売却・管理・次の相続が複雑になりやすい |
現金で分けたいなら、換価分割が有力です。ただし家に住み続けたい人がいるなら、その人が家を取得して代償金を払う代償分割も比べてください。共有名義にすれば今回の遺産分割は終えられますが、将来売るにも貸すにも共有者全員の同意が要ります。次の相続で共有者が増えるほど、話はまとまりにくくなります。
換価分割が向くケース・向かないケース
換価分割が向くケース
- 相続人の誰も、家に住む予定がない
- 家以外の遺産が少なく、そのままでは分けにくい
- 家を取得したい人はいるが、代償金を用意できない
- 空き家の管理費や固定資産税の負担を、早く終わらせたい
- 評価額ではなく、実際に売れた金額を基準に分けたい
- 相続人全員が、売却の方針と分け方に合意できる
換価分割では、査定額ではなく実際に売れた金額が分配の出発点になります。「この家をいくらと見るか」という評価の争いが起きにくいのは、この方法の大きな利点です。
換価分割が向かないケース
- 相続人の1人が、家に住み続けたい
- 全員が納得できる価格で売れる見込みが低い
- 急いで売ると、大幅な値下げが必要になる
- 共有者、借地・底地、境界、入居者などの問題がある
- 相続人同士の信頼関係がなく、代表者に代金管理を任せにくい
- 税の特例を使えるか確認しないまま、売却を進めようとしている
誰かが家を残したいなら、まずその人が代償金を払えるかを確かめます。売却への反対が解けない場合、1人の判断でも多数決でも、家全体を売ることはできません。話し合いで折り合わなければ、家庭裁判所の遺産分割調停・審判に進みます。
4つの質問で分割方法を絞る
「はい」なら、現物分割か代償分割から検討します。
「いいえ」なら、換価分割と比べます。
「いいえ」なら、売却活動を始めず、調停などを検討します。
「いいえ」なら、期限を延ばす、賃貸に出して持ち続けるといった案も比べます。
換価分割で分けるのは、売却代金の全額ではない
3,000万円で売れたら、3,000万円を分ける。そう思っていると、精算の場で食い違います。実際に分けられるのは、そこから費用を引いた後の金額だからです。
分配できる現金 = 売却代金 −(全員で負担すると決めた費用)−(返済する住宅ローンの残債など)
差し引く費用として考えられるのは、仲介手数料、売買契約書に貼る印紙税、測量費、解体費、売却に必要な登記費用などです。ただし、どこまでを全員の負担にするかは、自動では決まりません。遺品整理費、固定資産税、修繕費、弁護士費用を含めるかどうかは、お金を使う前に全員で決めておきます。支払った後では「そんな話は聞いていない」となりがちです。
分けるお金と、税金がかかる利益は別物
課税譲渡所得 = 譲渡収入 − 取得費 − 税法上の譲渡費用 − 使える特別控除
取得費とは、亡くなった人(被相続人)がその家を買ったときの代金などです。この式は、相続人へ分ける現金の計算とは一致しません。たとえば住宅ローンの元金返済は、手元に残る現金を確実に減らしますが、税金の計算では譲渡費用になりません。逆に、相続人が払った相続登記の費用は、条件によって取得費に含められる場合があります。譲渡費用の範囲は、国税庁の案内で確認できます。
3人で分ける計算例
A・B・Cの3人が、次の条件で家を売ったとします。
- 売却代金:3,000万円
- 全員で負担すると決めた売却関連費:150万円
- 決済時に返済する住宅ローン残債:300万円
- 分配割合:Aが2分の1、BとCが各4分の1
分配できる現金は、3,000万円−150万円−300万円=2,550万円です。
| 相続人 | 分配割合 | 受け取る金額 |
|---|---|---|
| A | 2分の1 | 1,275万円 |
| B | 4分の1 | 637万5,000円 |
| C | 4分の1 | 637万5,000円 |
税金は、この受取額にそのままかかるわけではありません。被相続人の取得費、所有期間、使える特例をもとに、相続人ごとに計算します。ここでは次のように仮定して、税額を試算します。
- 売買契約前に決めた代金の取得割合と、分配割合は同じ
- 被相続人から引き継ぐ取得費は800万円
- 150万円の売却関連費は、すべて税法上の譲渡費用に当たる
- 長期譲渡所得の税率20.315%を使え、特別控除はない
この場合、課税譲渡所得は全体で2,050万円になります。
| 相続人 | 課税譲渡所得の例 | 税額の概算 | 税引き後に残る金額の概算 |
|---|---|---|---|
| A | 1,025万円 | 約208万円 | 約1,067万円 |
| B | 512万5,000円 | 約104万円 | 約534万円 |
| C | 512万5,000円 | 約104万円 | 約534万円 |
換価分割で家を売って分ける7つの手順
戸籍を集めて相続人を確定します。あわせて、公正証書遺言の検索、法務局に保管された自筆証書遺言の確認、自宅など保管場所の確認も行います。
自宅などで自筆の遺言書が見つかったときは、法務局の保管制度を使ったものなどを除き、原則として家庭裁判所の検認が必要です。封がしてある遺言書を、家庭裁判所以外で開けてはいけません。遺言に不動産の取得者や処分方法が書かれている場合は、遺言執行者の指定も含めて、先に内容を確認します。
相続放棄は、自分が相続人になったと知った時から原則3か月以内に家庭裁判所へ申し立てます。放棄を考えている人がいるなら、売買契約や財産の処分に進む前に弁護士へ相談してください。
登記事項証明書、固定資産税の納税通知書、住宅ローンの残高、境界の資料、賃貸借契約、増改築の履歴を確認します。同時に探したいのが、被相続人が家を買ったときの売買契約書、建築請負契約書、領収書です。これらは取得費、つまり購入代金などを証明する資料になります。
古い家でも「資料はないだろう」と決めつけないでください。取得費が分からないと、売却額の5%を取得費とみなして計算することがあります。実際の購入額を証明できる場合より、課税される利益が大きくなりかねません。
想定される売却価格、売却にかかる費用、ローン残債、売れるまでの期間を把握します。査定額は、その値段で売れる保証ではありません。1社の高い査定だけで決めず、価格の根拠と販売計画も見比べます。
そのうえで、代償分割や現物分割ではなく換価分割が全員に合うかを確かめます。
対象の不動産、相続登記の名義、売却の担当者、最低売却価格、値下げの権限、差し引く費用、分配の割合と期限、売れなかった場合の扱いまで決めます。
相続登記の実務では、相続人全員が実印を押し、印鑑証明書を添える形が使われます。内容は、不動産に詳しい弁護士か司法書士に確認してもらってください。
代表者1人の名義にする方法と、相続人の共有名義にする方法があります。相続人申告登記をしただけでは売れません。査定や売却の準備は並行して進められますが、通常は残代金の決済と買主への名義変更までに、遺産分割に沿った相続登記を終えます。
決めた権限の範囲で不動産会社と媒介契約を結び、販売を始めます。値下げや買主からの条件変更が出たら、協議書で決めたルールに従います。
決済では、代金の受け取りと家の引渡しに加えて、ローンの返済、担保である抵当権の抹消、買主への名義変更も行います。代表者の口座を使うなら、入出金の履歴と領収書を必ず残してください。
売買代金、差し引いた費用、残額、各自の受取額を一覧にし、領収書とあわせて全員へ渡します。分配は、協議書で決めた期限までに、記録が残る銀行振込で行います。
相続税の申告が必要なら、遺産が分けられていなくても期限は原則として延びません。譲渡所得の申告が必要な相続人と、特例を使う相続人は、原則として売った年の翌年2月16日から3月15日までに、それぞれ確定申告します。
売却とは別に進む期限も確認する
| 期限の目安 | 主な手続 | 換価分割での注意 |
|---|---|---|
| 相続開始を知った時から原則3か月以内 | 相続放棄 | 検討中は家の処分を進めず、弁護士へ確認する |
| 亡くなったことを知った日の翌日から通常10か月以内 | 相続税の申告・納付 | 家が売れていなくても、遺産が未分割でも、期限は原則変わらない |
| 不動産を相続したと知った日から3年以内 | 相続登記 | 遺産分割が成立したら、成立日から3年以内に内容どおりの登記も必要 |
| 売却した年の翌年2月16日〜3月15日 | 譲渡所得の確定申告 | 売買契約前に決まった代金の取得割合に応じて各相続人が申告。未分割なら原則として法定相続分で申告する |
遺産分割協議書には、売却の条件と分配まで書く
口約束のまま売り出すと、買い手がついた後で「その値段では売らない」「その費用は認めない」と言われかねません。だからこそ、話し合いの結果は遺産分割協議書に残します。
協議書は、登記のためだけの書類ではありません。誰に売却を任せたのか。なぜ代表者の名義にしたのか。いくら分けると決めたのか。これらを示す証拠にもなります。
売り出す前に決めたい9項目
| 項目 | 決める内容 |
|---|---|
| 1. 対象不動産 | 登記事項証明書どおりの土地・建物の表示 |
| 2. 分割方法 | 売却して代金を分ける換価分割であること |
| 3. 登記名義 | 代表者の単独名義か、相続人の共有名義か |
| 4. 売却権限 | 媒介契約・売買契約・決済を誰が行うか |
| 5. 価格ルール | 売出価格、最低価格、値下げできる範囲、再協議する条件 |
| 6. 差し引く費用 | 何を代金から差し引くか、誰が立て替えるか |
| 7. 分配 | 分配割合、振込先、分配期限 |
| 8. 報告・保管 | 代表口座、精算書、領収書、進捗報告の方法 |
| 9. 売れない場合 | 価格改定、媒介会社の変更、売却中止、別の分割方法への変更 |
換価分割の条項例
次は仕組みを示すための簡略な例です。実際の協議書は、相続関係、不動産の表示、税の特例、売却の権限に合わせて、専門家に作成・確認を依頼してください。
相続人全員は、別紙記載の不動産を換価分割するため、相続人Aが取得し、A名義への相続登記後に売却することに合意する。Aは、売却代金から仲介手数料、測量費、売買契約書の印紙税、売却に必要な登記費用その他相続人全員が書面で承認した費用を控除し、残額をAに2分の1、Bに4分の1、Cに4分の1の割合で、売買代金決済日から10営業日以内に振り込む。Aは、決済書類、精算書、領収書および振込記録の写しをBおよびCに交付する。各相続人に帰属する税金は、各相続人が負担する。
ただし、この例だけでは最低売却価格も値下げの権限も、売れなかった場合の扱いも決まりません。別の条項で補います。避けたいのは、「Aが不動産を取得する」とだけ書き、売って分ける目的も分配割合も書かない形です。
相続登記は「共有名義」と「代表者1人の名義」の2通り
共有名義で登記し、全員で売る
受け取る代金の割合に応じて共有名義で相続登記し、全員で売る方法です。誰がどれだけの権利を持つかが登記に表れます。その代わり、媒介契約、売買契約、決済のたびに全員の協力が必要です。遠方に住む相続人が多いと、書類のやり取りだけで日数がかかります。
代表者1人の名義で登記し、その人が売る
売却の窓口を一本化するため、代表者が不動産を取得して売り、代金を各相続人へ分ける方法です。手続きは進めやすくなりますが、負担と管理責任がその1人に集まります。
国税庁は、代表者名義への登記が売却のための便宜であり、調停の内容どおりに代金を分けた事例について、贈与税の問題は生じないとしています。どんな場合にも当てはまる回答ではありません。売って分けるための登記であることと分配割合を協議書に明記し、実際の送金も一致させてください。
| 比較点 | 共有名義 | 代表者の単独名義 |
|---|---|---|
| 売却手続 | 原則として全員が関与する | 代表者を窓口にしやすい |
| 権利の見え方 | 各人の持分が登記に表れる | 売却目的と分配内容は協議書で補う |
| 代金管理 | 各人への直接入金も検討しやすい | 代表口座の記録・精算が特に重要 |
| 向く状況 | 全員が手続に参加できる | 信頼できる代表者がいて、遠方の相続人が多い |
| 注意点 | 1人が動かないと手続が止まりやすい | 協議書と実際の分配がずれると、課税や紛争の問題になり得る |
| 税の特例 | 各人の要件を個別に確認する | 名義の決め方が特例に影響しないか、事前に確認する |
相続登記の期限
2024年4月1日から、相続登記が義務になりました。相続で不動産を取得したと知った日から3年以内に申請するのが原則です。遺産分割が成立した場合は、その成立日から3年以内に内容どおりの登記をする義務も加わります。正当な理由なく怠ると、10万円以下の過料の対象になり得ます。
2024年4月1日より前に始まった相続も対象です。施行前から取得を知っていて登記していない不動産は、原則として2027年3月31日までが期限です。
遺産分割がまとまらない場合は、法定相続分による相続登記や相続人申告登記で、基本的な義務に対応できることがあります。ただし、相続人申告登記で義務を果たしたことになるのは、原則として申し出た本人だけです。所有権を公示する登記ではないため、これだけで家を売ることもできません。
換価分割の税金は相続税・譲渡所得・贈与税に分けて考える
- 相続税:家を相続した時
- 譲渡所得税・住民税:家を売って利益が出た時
- 贈与税:協議書と違う分け方をするなど、換価分割と認められない財産の移転があった時
相続税|家を相続したことにかかる税金
相続税は、原則として亡くなった時点の財産の価額をもとに計算します。後から家がいくらで売れたかを、そのまま相続税の価額にするわけではありません。
申告が必要な場合の期限は、通常、亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内です。換価分割が終わっていない、家がまだ売れていない。そうした事情だけで、期限が延びることはありません。
譲渡所得税・住民税|売って出た利益にかかる税金
相続した不動産の取得費と取得時期は、原則として被相続人から引き継ぎます。相続税評価額や、亡くなった時点の時価が取得費になるわけではありません。
取得費が分からない場合は、売却額の5%を取得費とみなして計算することがあります。「古い家だから資料はない」と決めつけず、購入時の契約書、領収書、通帳、住宅ローンの資料を探してください。1枚見つかるだけで、税額が変わることがあります。
| 所有期間の区分 | 判定 | 所得税・住民税等の一般的な合計税率 |
|---|---|---|
| 長期譲渡所得 | 売却年の1月1日時点で所有期間が5年を超える | 20.315% |
| 短期譲渡所得 | 売却年の1月1日時点で所有期間が5年以下 | 39.63% |
所有期間は、相続してから売るまでの期間だけで判定するわけではありません。長期・短期の詳しい税率は、国税庁の案内で確認できます。
代表者1人の名義で売っても、その代表者が売却益の全額を申告するとは限りません。売却時までに代金の取得割合が決まっていれば、原則として各相続人が、その割合に応じて譲渡所得を申告します。
検討したい2つの特例
相続税を納めた人が期限内に相続財産を売るなど、要件を満たすと、納めた相続税の一部を取得費に加算できます。売却期限は、相続開始の翌日から、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までです。通常は、相続開始からおよそ3年10か月以内に当たります。相続税の全額を差し引ける制度ではなく、各人・各財産ごとに計算します。
一定の相続空き家を2027年12月31日までに売る場合、譲渡所得から最高3,000万円を控除できることがあります。家屋と敷地の両方を取得した相続人が3人以上なら、1人あたりの上限は2,000万円です。
建築時期、被相続人の居住状況、売却期限、耐震改修や取壊しの有無、売却額など、細かな要件があります。
贈与税|協議書と違う分け方をしない
換価分割として代表者の名義にし、協議書のとおりに代金を分けるなら、その送金は通常、代表者からほかの相続人への贈与にはなりません。
問題になるのは、協議書では代表者が家を単独で取得したことになっているのに、売れてから初めて分け方を決めた場合や、協議書と違う割合で送金した場合です。贈与など、別の課税問題が生じる可能性があります。
相続人の1人が反対・所在不明・判断できないとき
全員が話し合えるなら、協議で進められます。反対する人や、協議に参加できない人がいる場合、その人を外して売却へ進むことはできません。
反対する相続人がいる
話し合いで家全体を売るには、原則として全員の合意と協力が必要です。持分の多い人だけで決めることはできません。
まとまらなければ、家庭裁判所へ遺産分割調停を申し立てます。調停が不成立になると審判へ移り、裁判所が事情に応じて分割方法を判断します。競売や、一定の条件のもとで任意売却による換価が命じられることもあります。ただし、調停が不成立になれば必ず競売になる、というわけではありません。
連絡が取れない相続人がいる
所在の分からない相続人を外して協議することはできません。不在者財産管理人を選任し、売却や遺産分割について家庭裁判所の許可を得る必要が出てくることがあります。時間がかかるため、早めに弁護士か司法書士へ相談してください。
未成年者や、判断能力が十分でない人がいる
親と未成年の子がそろって相続人になるなど、利益が対立する場合は、家庭裁判所で特別代理人を選任することがあります。認知症などで意思表示が難しい人がいる場合も、成年後見制度などの検討が必要です。家族が代わりに署名して済ませることはできません。
換価分割で売り出す前の最終チェック
- 相続人と、遺言書の有無を確認した
- 相続放棄を検討している人がいない
- 登記名義、売却担当者、分配割合を決めた
- 最低価格と、値下げの権限を決めた
- 差し引く費用と、立て替える方法を決めた
- 代表口座、精算書、領収書の共有方法を決めた
- 分配期限と、売れない場合の対応を決めた
- 被相続人の購入資料を探した
- 相続税の期限と、譲渡所得を申告する人を確認した
- 税の特例を、登記・解体・売買契約の前に確認した
一つでも決まっていないなら、媒介契約も売買契約も急がず、先に合意を整えてください。売り出した後で決めようとすると、買い手を待たせることになります。
換価分割のよくある質問
困りごとの相談先
| 困っていること | 主な相談先 |
|---|---|
| 対立、協議、調停、協議書の法的な内容 | 弁護士 |
| 相続登記、登記書類、名義の手続 | 司法書士 |
| 相続税、譲渡所得、特例、申告 | 税理士・所轄税務署 |
| 査定、販売計画、買主探し、売買の実務 | 不動産会社 |
まとめ|換価分割は「売る前の合意」で決まる
換価分割は、相続した家を売って現金で分ける、仕組みの分かりやすい方法です。ただし、売れてから分け方を考えるのでは遅すぎます。買い手は待ってくれません。
最初にすることは、査定の依頼だけではありません。相続人と遺言書を確定し、被相続人の購入資料、登記事項証明書、ローンや境界の資料を集めます。そのうえで、誰が売るか、いくらまで値下げできるか、何を差し引くか、残ったお金をどう分けるかを遺産分割協議書に残します。
出典・参考資料
- 裁判所「遺産分割手続Q&A」
- 国税庁「譲渡費用となるもの」
- 裁判所「遺言書の検認」
- 裁判所「相続の放棄の申述」
- 国税庁「取得費が分からないとき」
- 国税庁「遺産の換価分割のための相続登記と贈与税」
- 法務省「相続登記の申請義務化について」
- 法務省「相続人申告登記について」
- 国税庁「遺産が未分割である場合の申告」
- 国税庁「相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期」
- 国税庁「長期譲渡所得の税額の計算」
- 国税庁「短期譲渡所得の税額の計算」
- 国税庁「未分割遺産を換価したことによる譲渡所得」
- 国税庁「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」
- 国税庁「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」
- 裁判所「遺産分割調停」
- 裁判所「不在者財産管理人選任」
- 裁判所「特別代理人選任」
- e-Gov法令検索「民法」
- e-Gov法令検索「家事事件手続法」
- 国税庁「土地や建物を売ったとき」
公的資料の確認日:2026年7月24日。制度や税務の適用は個別事情で変わるため、実際の協議書・登記・申告は各専門家へ確認してください。
