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換価分割とは?相続した家を売って分ける手順・税金・協議書の注意点

換価分割とは、相続した家や土地を売って現金に換え、その代金を相続人で分ける方法です。誰も住まない実家を、きょうだいで分けることになったときによく使われます。

預金や現金と違って、家は人数分に分けようがありません。1人が家を引き継いで、ほかの相続人へ「代償金」を払う方法もありますが、まとまったお金がなければ選べません。売って現金にすれば、あとは決めた割合で分けるだけです。

どれも、その家がいくらで売れるかが分からないままでは決められません。話し合いを始める前に、まず価格の見当をつけておきましょう。

この記事でわかること
  • 換価分割をすると手元にいくら残るのか
  • 分割協議書に何を書けばいいいのか
  • 税金は誰がいくら払う必要があるのか
  • 代償分割と換価分割どちらを選ぶか

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目次

換価分割とは?相続した家を売って代金を相続人で分ける遺産分割の方法

換価分割(かんかぶんかつ)は、遺産の全部または一部を売って現金に換え、その現金を分ける方法です。裁判所も「遺産を売却して、その代金を分割する方法」と説明しています。

遺産の中心が実家1軒、相続人は子ども3人。この場合、家を3つに切り分けることはできません。そこで家を第三者に売り、売却にかかった費用を差し引いた残りを、話し合いで決めた割合に沿って3人へ渡します。

名前の印象から「不動産を相続せず、現金だけを受け取る方法」と思われがちですが、そうではありません。

相続人の確定と遺産分割の話し合いを終え、売れる名義に相続登記をして、はじめて売りに出せます。相続した人がそのまま不動産を手放さずに済む方法ではありません。

換価分割と現物分割・代償分割・共有名義の違い

遺産の分け方は4つあります。どれを選ぶかで、家が残るか現金になるか、そして誰が費用を負担するかが変わります。

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分け方仕組み向きやすい状況主な注意点
現物分割家は長男、預金は次男というように、遺産をそのまま分ける種類も価値も違う遺産が複数ある財産の価値が揃わず、不公平感が出やすい
代償分割1人が家を取得し、ほかの相続人へ代償金を払う住み続けたい人がいて、その人に支払う力がある評価額で揉めやすく、代償金を用意する必要がある
換価分割家を売り、費用を差し引いた代金を分ける誰も住まない、現金で分けたい家が残らず、売却費用や税金がかかる
共有のまま取得複数人の持分で家を所有する当面は売らず、共同で管理できる将来の売却・管理・次の相続が複雑になりやすい

現金で分けたいなら、換価分割が合います。ただし家に住み続けたい人がいるなら、その人が家を取得して代償金を払う代償分割も比べてください。

共有名義にすれば今回の遺産分割は終えられますが、将来売るにも貸すにも共有者全員の同意が要ります。次の相続で共有者が増えるほど、話はまとまりにくくなります。

換価分割が向く相続・向かない相続

向き不向きを決めるのは、家の値段よりも、相続人の事情と権利関係です。

住み続けたい人がいるか、その人が代償金を用意できるか、代金を預かる人を信頼できるか、そして家の権利に未解決の問題が残っていないか。査定額を見る前に、この4点を確かめます。

換価分割が向くケース|誰も住まず、代償金も用意できない

当てはまる項目が多いほど、換価分割が合います。

  • 相続人の誰も、家に住む予定がない
  • 家以外の遺産が少なく、そのままでは分けにくい
  • 家を取得したい人はいるが、代償金を用意できない
  • 空き家の管理費や固定資産税の負担を、早く終わらせたい
  • 評価額ではなく、実際に売れた金額を基準に分けたい
  • 相続人全員が、売却の方針と分け方に合意できる

換価分割の分配は、実際に売れた金額から出発します。「この家をいくらと見るか」で揉める余地が小さいのは、この方法の大きな利点です。

とはいえ、売る時期と価格しだいで、1人あたりの手取りは大きく動きます。値下げの決め方と費用の負担まで揃えて、はじめて納得できる分け方になります。

換価分割が向かないケース|住み続けたい人や、売却への反対がある

逆に、一つでも当てはまるなら、売却を決める前に立ち止まります。

  • 相続人の1人が、家に住み続けたい
  • 全員が納得できる価格で売れる見込みが低い
  • 急いで売ると、大幅な値下げが必要になる
  • 共有者、借地・底地、境界、入居者などの問題がある
  • 相続人同士の信頼関係がなく、代表者に代金管理を任せにくい
  • 税の特例を使えるか確認しないまま、売却を進めようとしている

誰かが家を残したいなら、まずその人が代償金を払えるかを確かめます。売却への反対が解けない場合、1人の判断でも多数決でも、家全体を売ることはできません。

話し合いで折り合わなければ、家庭裁判所の遺産分割調停・審判に進みます。

4つの質問で、換価分割か代償分割かを絞り込む

上から順に答えていけば、換価分割と代償分割のどちらに進むかが決まります。

STEP
誰かが家に住み続けたいか

「はい」なら、現物分割か代償分割から検討します。

STEP
その人は代償金を用意できるか

「いいえ」なら、換価分割と比べます。

STEP
相続人全員が売却に合意できるか

「いいえ」なら、売却活動を始めず、調停などを検討します。

STEP
売る時期と価格で折り合えるか

「いいえ」なら、期限を延ばす、賃貸に出して持ち続けるといった案も比べます。

\ 代償分割と比べるにも、まず売却価格から /

換価分割で分配できるのは、売却代金から費用を引いた残り

3,000万円で売れたら、3,000万円を分ける。そう思っていると、精算の場で食い違います。実際に分けられるのは、そこから費用を引いた後の金額だからです。

相続人へ分配できる現金

分配できる現金 = 売却代金 −(全員で負担すると決めた費用)−(返済する住宅ローンの残債など)

差し引く費用として考えられるのは、仲介手数料、売買契約書に貼る印紙税、測量費、解体費、売却に必要な登記費用などです。

いちばん金額が大きいのは仲介手数料です。不動産会社が受け取れる上限は国の告示で決まっており、売買価格ごとに次のようになります。

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売買価格仲介手数料の上限(消費税込み)
400万円を超える価格×3%+6万円に消費税を加えた額
3,000万円なら105万6,000円
200万円超〜400万円以下価格×4%+2万円に消費税を加えた額
200万円以下価格×5%に消費税を加えた額
800万円以下の空き家上の計算にかかわらず、最大33万円

800万円以下の空き家の枠は、2024年7月に広がりました。安い物件でも不動産会社が手を挙げやすくするための特例です。上限が33万円になるだけで、必ず33万円かかるわけではありません。実際の金額は媒介契約で決まるため、契約を結ぶ前に見積もりを確かめます。

ただし、どこまでを全員の負担にするかは、自動では決まりません。遺品整理費、固定資産税、修繕費、弁護士費用を含めるかどうかは、お金を使う前に全員で決めておきます。支払った後では「そんな話は聞いていない」となりがちです。

換価分割の分配額と、譲渡所得の計算式は一致しない

手元に残る現金と、税金がかかる利益は、別々に計算します。税金側の式は次のとおりです。

譲渡所得の基本式

課税譲渡所得 = 譲渡収入 − 取得費 − 税法上の譲渡費用 − 使える特別控除

取得費とは、亡くなった人(被相続人)がその家を買ったときの代金などです。この式は、相続人へ分ける現金の計算とは一致しません。

たとえば住宅ローンの元金返済は、手元に残る現金を確実に減らしますが、税金の計算では譲渡費用になりません。逆に、相続人が払った相続登記の費用は、条件によって取得費に含められる場合があります。譲渡費用の範囲は、国税庁の案内で確認できます。

同じ家を売っても、税額は相続人ごとに変わります。納めた相続税額も、使える特例も人それぞれだからです。譲渡所得税を共通の費用として先に一律で差し引くのは避け、各自が納めるのか、概算額を代表者が預かるのかを税理士に確認したうえで協議書に書いてください。

相続人3人で換価分割した場合の分配額シミュレーション

A・B・Cの3人が、次の条件で家を売ったとします。

  • 売却代金:3,000万円
  • 全員で負担すると決めた売却関連費:150万円(仲介手数料105万6,000円と、印紙税や登記費用など)
  • 決済時に返済する住宅ローン残債:300万円
  • 分配割合:Aが2分の1、BとCが各4分の1

分配できる現金は、3,000万円−150万円−300万円=2,550万円です。

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相続人分配割合受け取る金額
A2分の11,275万円
B4分の1637万5,000円
C4分の1637万5,000円

税額は、受け取った金額から機械的に決まりません。被相続人の取得費、所有期間、使える特例をもとに、相続人ごとに計算します。ここでは次のように仮定して、税額を試算します。

  • 売買契約前に決めた代金の取得割合と、分配割合は同じ
  • 被相続人から引き継ぐ取得費は800万円
  • 150万円の売却関連費は、すべて税法上の譲渡費用に当たる
  • 長期譲渡所得の税率20.315%を使え、特別控除はない

この場合、課税譲渡所得は全体で2,050万円になります。

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相続人課税譲渡所得の例税額の概算税引き後に残る金額の概算
A1,025万円約208万円約1,067万円
B512万5,000円約104万円約534万円
C512万5,000円約104万円約534万円

実際には、建物の減価償却、費用の税務上の扱い、端数処理、各自が使える特例で数字は動きます。それでも、この試算で大きいのは300万円のローン返済です。

ローン返済は手元の現金を確実に減らしますが、この例では課税される利益を1円も減らしません。

この計算の出発点は、実際に売れた金額です。1社の査定だけで売り出す価格を決めると、全員の取り分が同時に下がります。

\ 1社だけの査定だと、1人あたりの手取りが減るかも /

換価分割の手順|相続人の確定から相続登記・売却・分配まで7ステップ

7つのうち、5つは売却より前にあります。買い手が現れてから決められることは、ほとんど残っていません。

STEP
相続人・遺言書・相続放棄の意向を確認する

戸籍を集めて相続人を確定します。あわせて、公正証書遺言の検索、法務局に保管された自筆証書遺言の確認、自宅など保管場所の確認も行います。

自宅などで自筆の遺言書が見つかったときは、法務局の保管制度を使ったものなどを除き、原則として家庭裁判所の検認が必要です。封がしてある遺言書を、家庭裁判所以外で開けてはいけません。遺言に不動産の取得者や処分方法が書かれている場合は、遺言執行者の指定も含めて、先に内容を確認します。

相続放棄は、自分が相続人になったと知った時から原則3か月以内に家庭裁判所へ申し立てます。放棄を考えている人がいるなら、売買契約や財産の処分に進む前に弁護士へ相談してください。

STEP
家の権利・状態と、購入当時の資料を調べる

登記事項証明書、固定資産税の納税通知書、住宅ローンの残高、境界の資料、賃貸借契約、増改築の履歴を確認します。

同時に探したいのが、被相続人が家を買ったときの売買契約書、建築請負契約書、領収書です。これらは取得費、つまり購入代金などを証明する資料になります。

古い家でも、資料がないと決めつけるのは早すぎます。取得費が分からないと、売却額の5%を取得費として計算することになります。実際の購入額を証明できる場合より、課税される利益が大きくなりかねません。

STEP
査定を取り、ほかの分割方法と比べる

想定される売却価格、売却にかかる費用、ローン残債、売れるまでの期間を把握します。査定額は、その値段で売れる保証ではありません。1社の高い査定だけで決めず、価格の根拠と販売計画も見比べます。

そのうえで、換価分割が全員に合うかを確かめます。代償分割や現物分割のほうが収まりのよい場合もあります。

STEP
売却条件を決め、遺産分割協議書を作る

対象の不動産、相続登記の名義、売却の担当者、最低売却価格、値下げの権限、差し引く費用、分配の割合と期限、売れなかった場合の扱いまで決めます。

相続登記の実務では、相続人全員が実印を押し、印鑑証明書を添える形が使われます。内容は、不動産に詳しい弁護士か司法書士に確認してもらってください。

STEP
協議の内容どおりに相続登記をする

代表者1人の名義にする方法と、相続人の共有名義にする方法があります。相続人申告登記をしただけでは売れません。査定や売却の準備は並行して進められますが、通常は、買主から残りの代金を受け取って名義を移すまでに、遺産分割に沿った相続登記を終えます。

STEP
媒介契約を結び、売却・決済する

不動産会社に販売を任せる契約を、媒介契約といいます。協議書で決めた権限の範囲で媒介契約を結び、販売開始です。値下げや買主からの条件変更が出たら、協議書のルールに従います。

買主が決まったら、まず手付金を受け取って売買契約を結びます。後日、残りの代金を受け取って家を引き渡す日が決済です。

決済では、代金の受け取りと引渡しに加えて、住宅ローンの返済、担保として設定されている抵当権の抹消、買主への名義変更も行います。代表者の口座を使うなら、入出金の履歴と領収書を必ず残してください。

STEP
費用を精算し、代金を分けて申告する

売買代金、差し引いた費用、残額、各自の受取額を一覧にし、領収書とあわせて全員へ渡します。分配は、協議書で決めた期限までに、記録が残る銀行振込で行います。

相続税の申告が必要なら、遺産が分けられていなくても期限は原則として延びません。譲渡所得の申告が必要な相続人と、特例を使う相続人は、原則として売った年の翌年2月16日から3月15日までに、それぞれ確定申告します。

7つのうち、査定は3番目です。相続人の話し合いと並行して進められるため、価格の見当を先につけておくと、売却条件の話し合いが早くまとまります。

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換価分割と並行して動く4つの期限|相続放棄・相続税・相続登記・確定申告

売却の準備と並行して、期限のある手続きが4つ動きます。どれも売却の進み具合とは関係なく進むため、日程は先に押さえます。

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期限の目安主な手続換価分割での注意
相続開始を知った時から原則3か月以内相続放棄検討中は家の処分を進めず、弁護士へ確認する
亡くなったことを知った日の翌日から通常10か月以内相続税の申告・納付家が売れていなくても、遺産が未分割でも、期限は原則変わらない
不動産を相続したと知った日から3年以内相続登記遺産分割が成立したら、成立日から3年以内に内容どおりの登記も必要
売却した年の翌年2月16日〜3月15日譲渡所得の確定申告売買契約前に決まった代金の取得割合に応じて各相続人が申告。
未分割なら原則として法定相続分で申告する

相続税の取得費加算や相続空き家の特例には、それぞれ別の売却期限があります。期限に追われて売り急ぐと、使えたはずの特例を落とします。使える特例と必要書類の確認が先です。

もう一つ、日程を組むうえで見落としやすい点があります。売却には買主という相手が必要です。相続人の話し合いと相続登記が終わるまでは売りに出せず、買主が現れてからも、契約から引き渡しまでに日数がかかります。特例を使うなら、期限の当日を目標にせず、そこから逆算して動き出す時期を決めます。

換価分割の遺産分割協議書には、売却条件と分配割合まで書く

口約束のまま売り出すと、買い手がついた後で「その値段では売らない」「その費用は認めない」と言われかねません。だからこそ、話し合いの結果は遺産分割協議書に残します。

協議書は、登記に使って終わりの書類ではありません。誰に売却を任せ、いくら分けると決めたのか。後から税務署や他の相続人に説明を求められたとき、これが証拠になります。

換価分割の協議書で、売り出す前に決めたい9項目

協議書に書く内容は次の9項目です。1から3までは相続登記に必要で、4から9は売却と精算のために決めます。

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項目決める内容
1. 対象不動産登記事項証明書どおりの土地・建物の表示
2. 分割方法売却して代金を分ける換価分割であること
3. 登記名義代表者の単独名義か、相続人の共有名義か
4. 売却権限媒介契約・売買契約・決済を誰が行うか
5. 価格ルール売出価格、最低価格、値下げできる範囲、再協議する条件
6. 差し引く費用何を代金から差し引くか、誰が立て替えるか
7. 分配分配割合、振込先、分配期限
8. 報告・保管代表口座、精算書、領収書、進捗報告の方法
9. 売れない場合価格改定、媒介会社の変更、売却中止、別の分割方法への変更

換価分割の条項例|代表者名義で売る場合の文例

次は仕組みを示すための簡略な例です。実際の協議書は、相続関係、不動産の表示、税の特例、売却の権限に合わせて、専門家に作成・確認を依頼してください。

相続人全員は、別紙記載の不動産を換価分割するため、相続人Aが取得し、A名義への相続登記後に売却することに合意する。Aは、売却代金から仲介手数料、測量費、売買契約書の印紙税、売却に必要な登記費用その他相続人全員が書面で承認した費用を控除し、残額をAに2分の1、Bに4分の1、Cに4分の1の割合で、売買代金決済日から10営業日以内に振り込む。Aは、決済書類、精算書、領収書および振込記録の写しをBおよびCに交付する。各相続人に帰属する税金は、各相続人が負担する。

この条項が決めているのは3点です。Aは家をもらう人ではなく売却の窓口であること。差し引ける費用は全員が承認したものに限ること。分配は10営業日以内で、証拠も共有します。

もっとも、この例だけでは最低売却価格も値下げの権限も、売れなかった場合の扱いも決まりません。別の条項で補います。避けたいのは、「Aが不動産を取得する」とだけ書き、売って分ける目的も分配割合も書かない形です。

その最低売却価格を決めるには、その家がいくらで売れそうかを先に知る必要があります。

\ 最低価格を決めるには、相場の把握から /

換価分割の相続登記は「共有名義」と「代表者の単独名義」の2通り

どちらの名義を選んでも、最終的に受け取る金額は協議書で決めた割合どおりです。変わるのは、売却手続の進めやすさと、代金を預かる人へ集まる責任の重さです。

共有名義で相続登記し、相続人全員で売る

受け取る代金の割合に応じて共有名義で相続登記し、全員で売る方法です。誰がどれだけの権利を持つかが登記に表れます。

その代わり、媒介契約、売買契約、決済のたびに全員の協力が必要です。遠方に住む相続人が多いと、書類のやり取りだけで日数がかかります。

代表者の単独名義で相続登記し、その人が売る

売却の窓口を一本化するため、代表者が不動産を取得して売り、代金を各相続人へ分ける方法です。手続きは進めやすくなりますが、負担と管理責任がその1人に集まります。

代表者になった人が担当するのは、次の作業です。

  • 不動産会社との窓口になり、媒介契約を結ぶ
  • 内覧の日程調整や書類のやり取りに対応する
  • 売買契約と決済に立ち会う
  • 売却代金を自分の口座で預かる
  • 費用を立て替え、精算書と領収書をまとめる
  • 期限までに各相続人へ振り込む
  • 自分の分の譲渡所得を申告する

どれも手間と時間がかかります。任せきりにせず、進み具合の報告を受ける形にしておくと、あとから不満が出にくくなります。

国税庁は、代表者名義への登記が売却のための便宜であり、調停の内容どおりに代金を分けた事例について、贈与税の問題は生じないとしています。

どんな場合にも当てはまる回答ではありません。売って分けるための登記であることと分配割合を協議書に明記し、実際の送金も一致させてください。

共有名義と代表者の単独名義を、項目ごとに比べると次のようになります。

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比較点共有名義代表者の単独名義
売却手続原則として全員が関与する代表者を窓口にしやすい
権利の見え方各人の持分が登記に表れる売却目的と分配内容は協議書で補う
代金管理各人への直接入金も検討しやすい代表口座の記録・精算が特に重要
向く状況全員が手続に参加できる信頼できる代表者がいて、遠方の相続人が多い
注意点1人が動かないと手続が止まりやすい協議書と実際の分配がずれると、課税や紛争の問題になり得る
税の特例各人の要件を個別に確認する名義の決め方が特例に影響しないか、事前に確認する

どちらが常に有利とは言えません。特に相続した空き家の特別控除を検討するなら、税務の要件は税理士や所轄の税務署へ、「被相続人居住用家屋等確認書」の申請書類は市区町村へ確認します。確認は、登記や売買契約を済ませる前に行ってください。

換価分割でも外せない相続登記の申請義務と期限

2024年4月1日から、相続登記が義務になりました。相続で不動産を取得したと知った日から3年以内に申請するのが原則です。

遺産分割が成立した場合は、その成立日から3年以内に内容どおりの登記をする義務も加わります。正当な理由なく怠ると、10万円以下の過料の対象になり得ます。

2024年4月1日より前に始まった相続も対象です。施行前から取得を知っていて登記していない不動産は、原則として2027年3月31日までが期限です。

遺産分割がまとまらない場合は、法定相続分による相続登記や相続人申告登記で、基本的な義務に対応できることがあります。ただし、相続人申告登記で義務を果たしたことになるのは、原則として申し出た本人だけです。所有権を公示する登記ではないため、これだけで家を売ることもできません。

換価分割の税金|相続税・譲渡所得税・贈与税を分けて考える

換価分割では、3つの税金がそれぞれ違う場面で出てきます。まとめて考えると混乱するため、1つずつ分けて確認します。

3つの税金が問題になる場面
  • 相続税:家を相続した時
  • 譲渡所得税・住民税:家を売って利益が出た時
  • 贈与税:協議書と違う分け方をするなど、換価分割と認められない財産の移転があった時

相続税|売れた金額ではなく、相続時の評価額で決まる

相続税は、原則として亡くなった時点の財産の価額をもとに計算します。3,000万円で売れても、相続税の計算に使うのは相続時の評価額です。

申告が必要な場合の期限は、通常、亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内です。換価分割が終わっていない、家がまだ売れていない。そうした事情だけで、期限が延びることはありません。

譲渡所得税・住民税|換価分割では相続人ごとに確定申告する

相続した不動産の取得費と取得時期は、原則として被相続人から引き継ぎます。取得費に使うのは、被相続人が買ったときの代金です。相続税評価額や、亡くなった時点の時価ではありません。

取得費が分からない場合は、売却額の5%を取得費として計算できます。「古い家だから資料はない」と決めつけず、購入時の契約書、領収書、通帳、住宅ローンの資料を探してください。1枚見つかるだけで、税額が変わることがあります。

税率は、売った年の1月1日の時点で所有期間が5年を超えるかどうかで、大きく変わります。

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所有期間の区分判定所得税・住民税等の一般的な合計税率
長期譲渡所得売却年の1月1日時点で所有期間が5年を超える20.315%
短期譲渡所得売却年の1月1日時点で所有期間が5年以下39.63%

所有期間は、被相続人が持っていた期間も引き継いで判定します。長期・短期の詳しい税率は、国税庁の案内で確認できます。

代表者1人の名義で売っても、その代表者が売却益の全額を申告するとは限りません。売却時までに代金の取得割合が決まっていれば、原則として各相続人が、その割合に応じて譲渡所得を申告します。

割合を決めないまま売り、申告期限まで分け方が決まらなければ、原則として法定相続分で申告します。その後に別の割合で分けても、それを理由に税額を直せないことがあります。分配割合は、遅くとも売買契約を結ぶ前に決めてください。

\ 税引き後の手取りを試算するなら、まず査定 /

換価分割で検討したい2つの特例|取得費加算と空き家3,000万円控除

相続した家の売却では、税金を軽くできる特例が2つあります。どちらも期限があり、両方を同時に使うことはできません。

1. 相続税の取得費加算

相続税を納めた人が期限内に相続財産を売るなど、要件を満たすと、納めた相続税の一部を取得費に加算できます。売却期限は、相続開始の翌日から、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までです。

通常は、相続開始からおよそ3年10か月以内に当たります。差し引けるのは納めた相続税の一部で、各人・各財産ごとに計算します。

2. 相続空き家の3,000万円控除

一定の相続空き家を2027年12月31日までに売る場合、譲渡所得から最高3,000万円を控除できることがあります。家屋と敷地の両方を取得した相続人が3人以上なら、1人あたりの上限は2,000万円です。

建築時期、被相続人の居住状況、売却期限、耐震改修や取壊しの有無、売却額など、細かな要件があります。

この2つは、同じ売却について両方を使うことはできません。どちらを使えるかで手取りが変わるため、登記の名義、解体の時期、売買契約を決める前に確認してください。特例で税額が0円になる場合でも、適用を受けるには確定申告と添付書類が必要です。

贈与税|代表者名義でも、協議書どおりに分ければ原則かからない

換価分割として代表者の名義にし、協議書のとおりに代金を分けるなら、その送金は通常、代表者からほかの相続人への贈与にはなりません。

問題になるのは、協議書では代表者が家を単独で取得したことになっているのに、売れてから初めて分け方を決めた場合や、協議書と違う割合で送金した場合です。贈与など、別の課税問題が生じる可能性があります。

見られるのは「誰の口座に入ったか」だけではありません。売買契約の前にどんな合意があり、実際にどう分けたか。この2つが揃っているかどうかです。

換価分割に相続人が反対・所在不明・判断できないときの進め方

全員が話し合えるなら、協議で進められます。反対する人や、協議に参加できない人がいる場合、その人を外して売却へ進むことはできません。

売却に反対する相続人がいる|遺産分割調停・審判へ

話し合いで家全体を売るには、原則として全員の合意と協力が必要です。持分の多い人だけで決めることはできません。

まとまらなければ、家庭裁判所へ遺産分割調停を申し立てます。調停が不成立になると審判へ移り、分割方法を決めるのは裁判所です。競売や、一定の条件のもとで任意売却による換価が命じられることもあります。ただし、調停が不成立になれば必ず競売になる、というわけではありません。

連絡が取れない相続人がいる|不在者財産管理人の選任

所在の分からない相続人を外して協議することはできません。不在者財産管理人を選任し、売却や遺産分割について家庭裁判所の許可を得る必要が出てくることがあります。時間がかかるため、早めに弁護士か司法書士へ相談してください。

未成年者や判断能力が十分でない相続人がいる|特別代理人・成年後見

親と未成年の子がそろって相続人になるなど、利益が対立する場合は、家庭裁判所で特別代理人を選任することがあります。認知症などで意思表示が難しい人がいる場合も、成年後見制度などの検討が必要です。家族が代わりに署名して済ませることはできません。

換価分割で媒介契約を結ぶ前の最終チェック10項目

不動産会社と契約する前に、次の10項目がそろっているかを確かめます。

10項目を確認してから媒介契約へ進む
  • 相続人と、遺言書の有無を確認した
  • 相続放棄を検討している人がいない
  • 登記名義、売却担当者、分配割合を決めた
  • 最低価格と、値下げの権限を決めた
  • 差し引く費用と、立て替える方法を決めた
  • 代表口座、精算書、領収書の共有方法を決めた
  • 分配期限と、売れない場合の対応を決めた
  • 被相続人の購入資料を探した
  • 相続税の期限と、譲渡所得を申告する人を確認した
  • 税の特例を、登記・解体・売買契約の前に確認した

一つでも決まっていないなら、媒介契約も売買契約も急がず、先に合意を整えてください。売り出した後で決めようとすると、買い手を待たせることになります。

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換価分割のよくある質問

遺産分割が終わる前に家を売れますか?

相続人全員の合意と協力があれば、売却へ進める余地はあります。

ただし、権利関係、売却の権限、代金の取得割合を曖昧にしたまま売ると、分配でも税務でも問題が起きます。通常は換価分割の内容を協議書にまとめ、決済までに相続登記を終えます。

換価分割の代金は法定相続分で分けなければなりませんか?

法定相続分に限られません。相続人全員が合意すれば、別の割合を決められます。

決めるときは、ほかの遺産や債務との精算、特別受益・寄与分、相続税と譲渡所得への影響まで含めて判断してください。

代表者の口座に売却代金を入れると贈与税がかかりますか?

口座に入ったというだけで、ただちに贈与税がかかるわけではありません。

売却の便宜で代表者名義にし、事前の合意どおりに分けた事例について、国税庁は贈与税の問題は生じないとしています。売って分ける目的、分配割合、期限を協議書に残し、入出金の記録も保管してください。

家が予定価格で売れないときはどうしますか?

最低価格、値下げできる範囲、再協議する時期、媒介会社を変える条件、売却をやめる期限を、あらかじめ決めておきます。

代表者が独断で値下げすることも、毎回全員の返事を待って買い手を逃すことも防げます。

まとめ|換価分割は「売る前の合意」で決まる

換価分割は、相続した家を売って現金で分ける、仕組みの分かりやすい方法です。ただし、売れてから分け方を考えるのでは遅すぎます。買い手は待ってくれません。

まず手をつけるのは、相続人と遺言書の確定です。あわせて被相続人の購入資料、登記事項証明書、ローンや境界の資料を集めます。そのうえで、誰が売るか、いくらまで値下げできるか、何を差し引くか、残ったお金をどう分けるかを遺産分割協議書に残します。

相続人の反対、相続放棄の検討、未成年者や所在不明の相続人、使えそうな税の特例。一つでも当てはまるなら、そこは売却を止めて専門家に確認する場面です。

期限と合意を先に整えておけば、家は現金に変わり、共有と管理の負担も同時に終わります。

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出典・参考資料

公的資料の確認日:2026年7月24日。制度や税務の適用は個別事情で変わるため、実際の協議書・登記・申告は各専門家へ確認してください。

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