家を売りに出して3か月。問い合わせも内覧もほとんど入りません。不動産会社から出てくるのは「そろそろ価格を見直しませんか」という提案です。実質は値下げの打診。従うべきか、待つべきか。
3か月も動かないなら価格が高いのだろう、と考えるのが自然です。ただ、2025年の首都圏では、中古戸建住宅が売り出されてから売買契約まで平均100.9日でした。3か月なら、経過期間としてはまだ平均の範囲内です。
判断を分けるのは、日数よりも問い合わせと内覧の数。下げ幅も率ではなく、不動産情報サイトの検索価格帯の区切りで決まります。原因の潰し方から期限の逆算まで、判断の順番をまとめました。
- 契約成立までの平均日数
- 写真とレインズ登録の確認
- 3か月が節目になる理由
- 端数価格が効く本当の理由
- 事前審査の有無で変わる対応
※ 本記事の統計は2026年8月時点で公表されている最新のものです。金額はすべて首都圏(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)の数値で、地域や物件によって状況は異なります。
\6年連続不動産査定サイトNO.1/
※2025年9月19日-23日 「サイト評価に関する調査」より
家の売却で値下げを検討する3つの目安
値下げを考えるきっかけは、たいてい「そろそろ3か月だから」という時間の経過です。ただ、経過した日数だけでは、価格が高いのかどうかは判断できません。
同じ3か月でも、問い合わせが週に何件も入っている物件と、1件も入っていない物件では、打つべき手がまったく違うからです。見るべき数字は3つあります。
問い合わせが平均的な件数に届いているか
「問い合わせが何件あれば普通か」を示す統計は、公的機関からも業界団体からも公表されていません。
物件の価格帯、エリア、種別によって水準が大きく変わるためです。
ただ、そもそも「すぐ決まるのが普通」という前提が実態と合っていません。東日本不動産流通機構がまとめた2025年の首都圏のデータでは、中古マンションの新規登録が185,762件、成約が49,114件でした。中古戸建住宅は新規登録77,395件に対して成約21,632件です。新規登録件数に対する成約件数の割合を単純に計算すると、マンションで26.4%、戸建で28.0%になります。
分母は2025年に登録された物件、分子は同じ年に成約した物件なので、これは成約率そのものではありません。それでも、売りに出された件数のうちその年に買主が決まるのは4件に1件程度という水準感はつかめます。売り出してすぐ決まらないこと自体は珍しくありません。
自分の物件の反応が薄いかどうかを知るには、担当者に「同じエリアで同じ価格帯の物件と比べて、問い合わせの入り方はどうですか」と聞くのが確実です。何件あればよいかという絶対値ではなく、比較の中でしか答えは出ません。
内覧はあるのに申込に進んでいないか
内覧が入っているなら、価格そのものは検索に引っかかっています。写真と価格を見た人が「実物を見てみよう」と思っている状態です。
ここで決まらないなら、原因は価格の高さではありません。実物を見た後に判断が止まっているので、室内の状態や設備、周辺環境と価格の釣り合いのほうを疑うことになります。
購入申込があったかどうかは、必ず不動産会社から報告されます。根拠は宅地建物取引業法第34条の2第8項。売買の申込みがあったときは遅滞なく依頼者へ報告するよう義務づけています。この義務は媒介契約の種類を問わず適用され、同条第10項により、これに反する特約は無効です。
内覧の件数と申込の件数を並べると、価格の問題なのか現物の問題なのかが切り分けられます。
売り出しから何か月が経過しているか
東日本不動産流通機構は、物件が売り出されてから成約に至るまでの日数を毎年公表しています。レインズ(不動産会社が物件情報を共有する仕組み)に登録された日から、売買契約が成立した日までの日数です。
| 年 | 中古マンション | 中古戸建住宅 | 新築戸建住宅 | 土地 |
|---|---|---|---|---|
| 2020年 | 88.3日 | 111.3日 | 95.3日 | 111.0日 |
| 2022年 | 71.4日 | 81.2日 | 74.2日 | 83.6日 |
| 2024年 | 85.3日 | 97.3日 | 103.9日 | 89.4日 |
| 2025年 | 82.5日 | 100.9日 | 103.4日 | 89.8日 |
※ 東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向(2025年)」2026年1月20日公表
2025年は中古マンションが82.5日、中古戸建住宅が100.9日。戸建のほうが1か月近く長い傾向が続いています。
売り出しから60日ならまだ平均の範囲内。120日を超えているなら、平均を大きく上回っています。この比較だけで値下げを決める必要はありませんが、「まだ待てるのか、もう遅れているのか」の目安にはなります。
ただ、平均を超えていたとしても、それが価格のせいだとは限りません。
\ 反響が少ない原因は価格かどうか /
値下げの前に確認する家が売れない原因
売れた物件と売れ残っている物件を比べると、価格以外のところに差が出ています。
2025年の首都圏の中古マンションは、成約した物件の平均築年数が26.58年でした。新しく売りに出された物件は30.08年で、3.5年の開きがあります。中古戸建住宅も成約24.37年に対して新規登録25.86年と、1.5年の差がありました。売れ残る側には、築年数の古い物件が多く含まれています。
築年数は動かせません。ただ、価格以外に手を入れられる箇所は残っています。値下げは一度実行すると戻しにくいので、先に確認しておきたいところ。築年数が壁になっている場合は、築40年のマンションが売れないときの対処法も参考になります。
掲載写真と物件紹介文
写真は不動産会社が撮るものなので、売主が口を出す領域ではないと思われがちです。ただ、掲載枚数も撮影する時間帯も、依頼すれば変えられます。
不動産情報サイトで最初に判断されるのは、価格と写真です。物件そのものを見る前に、サムネイル1枚で候補から外れています。自分の物件のページを、買主のつもりで開いてみてください。写真は何枚あるか。日中の明るい時間に撮られているか。水回りと収納が写っているか。掲載が5枚程度で暗い写真だけなら、撮り直しを依頼する価値があります。
紹介文も同じです。駅からの距離や間取りは数字で出ていますが、周辺の施設やリフォームの履歴は、書かれていなければ伝わりません。
レインズの登録状況と広告の出し方
レインズに登録されて初めて、他社の営業担当者が自分の顧客に物件を紹介できます。登録が遅れれば、その分だけ買主の目に触れる機会が減ります。
登録の期限を決めているのは、宅地建物取引業法施行規則第15条の10です。
| 媒介契約の種類 | レインズへの登録期限 |
|---|---|
| 専属専任媒介契約 | 契約日から5日以内 |
| 専任媒介契約 | 契約日から7日以内 |
| 一般媒介契約 | 登録の義務なし |
この日数に、不動産会社の休業日は含まれません。
登録が済むと、売主には登録を証する書面が交付されます。手元にこの書面があるか確認してください。見当たらないなら、担当者に登録済みかどうかを尋ねます。
内覧時の室内の状態
住みながら売っていると、生活感がある分だけ不利だと考えがちです。ただ、買主が見ているのは片づき具合そのものではなく、住んだときの様子を思い描けるかどうかです。
玄関からリビングまでの動線に物が置かれていないか。水回りの汚れや臭いはどうか。生活感を完全に消すのは無理でも、荷物を一室にまとめるだけで見え方は変わります。当日どこを見られるかは、マンション売却の内覧で見られるポイントにまとめました。
媒介契約の種類と販売活動の報告
販売活動がどう進んでいるかは、報告を受ける権利があります。宅地建物取引業法第34条の2第9項が、業務の処理状況を依頼者へ報告する義務を定めているからです。
| 媒介契約の種類 | 販売活動の報告頻度 |
|---|---|
| 専属専任媒介契約 | 1週間に1回以上 |
| 専任媒介契約 | 2週間に1回以上 |
| 一般媒介契約 | 定めなし |
報告が来ていないなら、それ自体が確認すべき点です。届いている報告書に問い合わせ件数や内覧件数が書かれていないなら、次回から数字を入れてもらうよう頼んでみてください。一般媒介契約では定めがないため、自分から聞きに行くことになります。なお、契約の種類ごとの違いは一般媒介と専任媒介の違いにまとめています。
ここに挙げた項目は、どれも値下げより先に手をつけられるものばかり。順に確かめてみてください。
- レインズに登録されているか(登録を証する書面が手元にあるか)
- 掲載写真の枚数と明るさ(自分の物件ページを開いて確かめる)
- 紹介文にリフォーム歴や周辺施設が書かれているか
- 問い合わせ件数と内覧件数(定期報告の書面を見る、または担当者に聞く)
- 購入申込があったかどうか(担当者に確認する)
- 内覧当日の室内の状態(玄関からの動線と水回りを自分で歩いて見る)
- 同価格帯の競合物件の数と内容(不動産情報サイトで条件を絞って検索する)
- 媒介契約の種類と満了日(媒介契約書を確認する)
すべて確認しても動かないなら、残るのは価格です。ただ、下げる時期は経過した日数だけで決まるわけではありません。
\ 価格以外を直しても動かないなら /
売り出しからの経過期間ごとに変わる値下げの判断
「3か月が目安」という言い方は、不動産会社の経験則のように聞こえます。実際には、媒介契約の期限がこの時期に重なっているだけ。売り出しからの日数ごとに、取れる手は変わってきます。
売り出しから1か月時点の判断
1か月時点で価格を動かすのは、多くの場合は早すぎる判断です。首都圏の平均は中古マンション82.5日、中古戸建住宅100.9日。30日はまだ平均の3分の1程度でしかありません。
この時期に見るのは、問い合わせが入っているかどうかの一点です。1件も入っていないなら、価格が検索条件から外れているか、掲載内容に問題があります。まずは写真の追加や紹介文の書き直しから手をつけます。売り出す時期そのものの選び方は、不動産売却のタイミングと売り時の考え方にまとめました。
問い合わせは来ているのに内覧に至らないなら、担当者に、問い合わせてきた人が何を気にしていたかを聞いてみてください。
売り出しから3か月時点の判断
3か月が節目になるのは、媒介契約の有効期間がここで切れるからです。
宅地建物取引業法第34条の2第3項は、専任媒介契約の有効期間を「三月を超えることができない」と定めています。標準媒介契約約款第7条も、3か月を超えない範囲で売主と会社が協議して決めるとしています。更新した場合も、更新の時から3か月が上限です。
見落としやすいのが、この契約は自動更新ではないという点です。標準媒介契約約款第15条は、有効期間の更新について、満了に際して売主から会社へ文書等で申し出るものとしています。何もしなければ契約は満了します。裏を返せば、満了のタイミングで会社を変える、契約の種類を変える、価格を見直すといった選択が、追加の手続きなしにできる時期です。
価格の見直しについては、会社側にも義務があります。標準媒介契約約款第5条第1項は、媒介価額が事情の変更によって不適当と認められるに至ったときに、会社が売主へ「根拠を示して助言します」と規定。宅地建物取引業法第34条の2第2項も、価額について意見を述べるときは根拠を明らかにしなければならないと定めています。
つまり「そろそろ下げましょう」とだけ言われた場合、その根拠を尋ねるのは正当な要求です。周辺の成約事例なのか、問い合わせ件数の推移なのか、競合物件との比較なのか。根拠が示されなければ、下げるかどうかを判断する材料がありません。
\ 媒介契約の満了前に確かめたい /
売り出しから半年以降の判断
半年を超えたら、市場全体の動きも見ることになります。ここで「不動産価格が上がっている」という一般的な話をそのまま当てはめると、判断を誤ります。マンションと戸建で、動きが逆を向いているからです。
2026年7月の首都圏の数字を並べると、動きの違いがはっきりします。
| 項目 | 中古マンション | 中古戸建住宅 |
|---|---|---|
| 在庫件数 | 47,151件(前年同月比5.5%増) | 23,197件(同1.2%減) |
| 在庫の増減 | 5か月連続で増加 | 6か月連続で減少 |
| 成約件数 | 3,638件(同8.6%減) | 1,738件(同1.9%減) |
| 成約価格 | 5,267万円(同0.7%下落) | 3,933万円(同0.6%上昇) |
※ 東日本不動産流通機構「Market Watch 月例速報 2026年7月度」2026年8月10日公表
マンションは売り出される物件が増える一方で、成約が減っています。戸建は在庫が減り、価格も上向きです。
国土交通省の不動産価格指数も同じ傾向です。2010年平均を100とした指数で、令和7年12月時点の全国のマンション(区分所有)は225.1。戸建住宅は121.9でした。「不動産価格が上がっている」という話は主にマンションの動きで、戸建の売主の実感とはずれます。
半年以上動いていないマンションで周辺の在庫も増えているなら、競合が増えている状況です。価格を動かす判断が現実味を帯びます。
買い替えや相続で期限があるときの判断
期限がある売却では、逆算が必要です。たとえば、新居の引き渡しまで残り5か月というケースを考えてみましょう。
売買契約から決済・引き渡しまでには、買主の住宅ローン本審査や登記の準備で1か月から1か月半かかります。中古戸建住宅の成約までの平均が100.9日、およそ3か月半ですから、2つを足すと5か月近くです。残り5か月の時点で、余裕はほとんどありません。平均日数を待ってから見直すのでは間に合わない可能性があります。売却と購入をどの順で進めるかは、住み替えのタイミングと売却・購入の順番で扱っています。
| 経過期間 | 見る指標 | 取る行動 |
|---|---|---|
| 1か月 | 問い合わせの有無 | 掲載写真と紹介文の見直し |
| 2か月 | 内覧の件数、内覧後の反応 | レインズ登録状況と広告範囲の確認 |
| 3か月 | 申込の有無、媒介契約の満了日 | 契約更新の可否と価格の見直しを検討 |
| 4〜6か月 | 同価格帯の競合物件数 | 価格改定、または媒介契約の変更 |
| 6か月以降 | 在庫件数と市況 | 価格改定、買取や賃貸を含めた再検討 |
下げる時期が決まったら、次に決めるのは金額です。
家の売却における値下げ幅の決め方
値下げ幅の目安として「売り出し価格の5〜10%」という数字をよく見かけます。ただ、この数字の出どころを示している情報は見当たりません。同じ物件が売り出しから成約までにいくら価格を変えたかという統計は、国からも業界団体からも公表されていないためです。
率で決める代わりに、もっと確実な基準があります。買主が物件を探すときの検索条件です。
端数価格と掲載サイトの価格の区切り
3,980万円のような端数のある価格は「心理的に安く見せるため」と説明されることが多いのですが、それだけではありません。
不動産情報サイトの検索条件が、500万円刻みになっているからです。
2026年8月時点で、SUUMO・LIFULL HOME’S・at homeの3サイトはいずれも500万円刻みの絞り込みを用意しています。刻みが変わるのは7,000万円から上で、そこから先は8,000万円・9,000万円・1億円という区分です。
この仕組みが意味するのは、価格の区切りをまたぐかどうかで、検索結果に表示される回数が変わるということです。4,050万円の物件は「4,000万円以下」で絞り込んだ人には表示されません。70万円下げて3,980万円にするだけで、その検索結果に入ります。
| 現在の価格 | 改定後 | 下げ幅 | 下げ率 | 効果 |
|---|---|---|---|---|
| 4,050万円 | 3,980万円 | 70万円 | 1.7% | 4,000万円以下の検索に入る |
| 4,180万円 | 3,980万円 | 200万円 | 4.8% | 同上 |
| 3,980万円 | 3,780万円 | 200万円 | 5.0% | 区切りをまたがない |
| 3,980万円 | 3,480万円 | 500万円 | 12.6% | 3,500万円以下の検索に入る |
※ 表の金額は検索価格帯の区切りから算出した例示です。実際の相場を示すものではありません。
表の3行目に注目してください。200万円下げても、3,980万円から3,780万円では同じ区切りの中を動くだけです。損をした割に、新しく見つけてもらえる人は増えません。
築年数にも同じ区切りがあります。SUUMOの築年数の絞り込みは、3年・5年・7年・10年以内と刻み、そこから先は5年ごとに30年以内までの区分です。
築14年の物件が築15年になると、「15年以内」で探している人の検索結果から外れます。築年の節目が数か月先に迫っているなら、その前に判断する理由になるでしょう。なおこの区分はSUUMOで確認したもので、他のサイトでは異なる場合があります。
1回あたりの下げ幅と値下げの回数
区切りをまたぐという基準に立つと、値下げの回数についても答えが出ます。小刻みに何度も下げるより、1回で区切りを越える幅を動かすほうが効果的。
3,980万円の物件を100万円ずつ5回下げて3,480万円にする場合と、1回で3,480万円にする場合では、最終的な価格は同じです。ただ前者は、途中の4段階がどれも同じ価格帯の中にとどまります。新しく検索に引っかかる人は増えないまま、値下げの回数だけが積み上がっていきます。
下げるなら、次の区切りまで届く幅を一度に動かす。区切りまでの距離が大きすぎて動かせないなら、今は下げずに掲載内容の見直しに戻る。この二択で考えると判断が単純になります。
手元に残る金額から下限を決める
下げ幅の上限を決めるのは、手元に残る金額です。売却価格から差し引かれるものを先に把握しておきます。
仲介手数料は、国土交通省の告示で上限が決まっています。売買代金を3つに区切り、それぞれに次の率を掛けて合計した金額が上限です。
- 200万円以下の部分
5.5% - 200万円を超え400万円以下の部分
4.4% - 400万円を超える部分
3.3%
この率には消費税等相当額が含まれます。
ほかに、住宅ローンが残っていれば残債の一括返済、抵当権抹消の登記費用、印紙税がかかります。これらを引いた後、次の資金計画に必要な額が残るかどうかが下限。査定額と売り出し価格の関係は、不動産売却の相場と査定価格の調べ方で確認できます。
ここまでは、売主が自分から価格を動かす話です。買主から下げるよう求められる場面は、判断の仕方が変わります。
\ 下げ幅の下限は相場から逆算 /
買主からの値下げ交渉に応じる基準
指値を断ると買主が離れてしまう。そう考えて、提示された金額をそのまま受け入れる場面があります。ただ、応じる前に確かめたいのは金額よりも、その買主が本当に買えるのかどうかです。
申込時に提示される指値の範囲
購入申込書には、買主が希望する購入金額が記載されます。売り出し価格から下げた金額を書いてくる、いわゆる指値です。この金額が何割程度になるかを示す統計は公表されておらず、「相場はこのくらい」とは言えません。
確かめたいのは、それが正式な申込かどうかです。宅地建物取引業法第34条の2第8項により、申込みがあったときは遅滞なく売主へ報告されます。口頭で「もう少し安くならないか」と言われた打診と、書面での購入申込は別物です。
応じてよい買主と待ったほうがよい買主
指値に応じるかどうかは、金額の大きさだけでは決まりません。値下げに応じた相手が契約後に離脱すれば、下げた価格だけが残るからです。
住宅ローンの事前審査を通っている買主なら、契約後に融資が下りずに白紙解除となるリスクは低くなります。事前審査を受けていない買主の指値に応じて他の検討者を断ると、後から融資が通らずに振り出しに戻ることがあります。
引き渡し時期の希望も確認しておきたい点。買い替えで期限がある売主にとって、価格は希望どおりでも引き渡しが3か月先という条件は、実質的な値下げと変わらない負担になります。
引き渡し時期や設備での調整
価格を動かさずに折り合いをつける方法もあります。
- エアコンや照明器具を残していく
- ハウスクリーニングを売主負担で入れる
- 引き渡し日を買主の希望に合わせる
こうした条件が数万円から数十万円に収まるなら、100万円単位の値下げより負担は軽く済むはずです。
買主が価格にこだわっているのか、入居後の出費を心配しているのか。担当者を通じて背景を聞いてから譲る場所を決めると、手元に残る金額は増えます。
ただ、自分から下げるにしても指値に応じるにしても、下げ方によっては後から効いてくる影響があります。
\ 指値が妥当か判断する材料に /
値下げをするときの注意点
価格を下げれば買主の候補は増えるはずです。ただ、下げ方によっては逆に働くことも。何度も下げた物件は、検討していた人からむしろ様子見されるからです。
小刻みな値下げが買主に与える印象
何度も価格が下がっている物件は、買主から「まだ下がるかもしれない」と見られます。検討していた人が様子見に回り、かえって決まりにくくなることも。
値下げの回数が増えるほど、売主が焦っているという情報を発信することにもなります。指値の交渉でも、売主側は不利な位置に立ちやすくなるでしょう。下げるなら区切りをまたぐ幅を一度に動かすほうが、この点でも合理的です。
掲載サイトに残る値下げの履歴
価格を変えても、買主には新しい価格しか見えないと思われがちです。実際には、価格が変わったことを示す表示を出しているサイトがあります。
どの表示がどのサイトで出るかは、各社が仕様を公開していないため断定できません。自分の物件がどう見えるかは、掲載ページを開けば分かります。担当者に「価格を変更したら掲載画面はどう変わりますか」と聞いておけば、実行前に判断できるでしょう。
住宅ローンの残債が決める値下げの下限
住宅ローンが残っている家は、売却代金で残債を完済し、抵当権を抹消しなければ引き渡しができません。売却価格から諸費用を引いた金額が残債に届かないなら、不足分を自己資金で補わなければなりません。
自己資金でも足りないときは、金融機関の同意を得て売却する任意売却という方法があります。ただし手続きも条件も通常の売却とは別物で、信用情報にも影響が及びます。値下げを検討する段階で、残債の正確な金額を金融機関に確認しておきましょう。手順は住宅ローンが残っている家を売る方法にまとめています。
値下げ後に変わる仲介手数料
売却価格が下がれば、仲介手数料も下がります。ただ、期待するほどは減りません。400万円を超える部分に掛かる率は3.3%。500万円の値下げでも、手数料の減少は16万5,000円ほどです。
売買代金が800万円以下になると、下がり方はさらに鈍ります。国土交通省の告示は、こうした物件を「低廉な空家等」として、媒介で受け取る報酬の上限を30万円の1.1倍にあたる33万円としているためです。低い価格帯では、手数料が価格に比例して下がるとは限りません。
手数料の節約を目的に価格を下げる意味はありません。
\ 下げる前に一度確かめておく /
値下げをしても家が売れないときはどうする?
区切りをまたぐ幅まで下げても反応が変わらないなら、原因は価格ではないことになります。
売り方そのものを見直しましょう。
媒介契約を見直して販売方法を変える
媒介契約は満了で終わります。標準媒介契約約款第15条により、更新には売主からの文書等での申し出が必要です。放っておけば、契約はそのまま終了します。更新した場合も、宅地建物取引業法第34条の2第4項により、期間の上限は更新の時から3か月です。
満了のタイミングで、別の会社に依頼する、専任媒介から一般媒介に切り替えて複数社に任せる、といった変更ができます。契約期間中に会社を変えたい場合の進め方は、専任媒介契約を途中で解除して不動産会社を変える方法にまとめました。
同じ会社に継続を頼む場合でも、担当者の変更は求められます。販売活動の内容と報告の頻度を更新の条件として具体的に決めておくと、次の3か月の動き方が変わってきます。
買取や買取保証に切り替える
買主を探す仲介ではなく、不動産会社に直接買い取ってもらう方法。価格は仲介より下がるかわり、買主を待つ期間がなくなり、引き渡し日を先に決められる点が違いです。
期限のある売却で平均100.9日を待つ余裕がないなら、下がった価格と確実な時期を天秤にかける判断になるでしょう。一定期間内に売れなければ会社が買い取る買取保証という仕組みを用意している会社も。価格差と進め方は家の買取と仲介の違いで比較できます。
賃貸に出すことを検討する
売らずに貸すという選択肢もあります。住宅ローンが残っている場合、居住用のローンのまま賃貸に出せないことが多く、金融機関への相談が前提。
賃貸に回すと、空室のリスク、設備の修繕費、管理会社への手数料が発生します。売却で一度に受け取る金額と、賃料収入から経費を引いた手取り。この2つを何年で比べるかによって、答えは変わります。マンションの場合の判断材料はマンションは売るか貸すかで迷ったときの考え方にまとめました。土地だけが売れ残っている場合は建物があるときと事情が異なるので、売れない土地の対処法も参考になります。
3つの選択肢を並べると、判断の軸がはっきりします。
| 選択肢 | 受け取る金額 | 引き渡しの時期 | 向いている場面 |
|---|---|---|---|
| 媒介契約を見直す | 相場のまま | 読めない | 販売活動の内容に不満がある |
| 買取に切り替える | 仲介より下がる | 自分で決められる | 期限が迫っている |
| 賃貸に出す | 毎月の賃料 | 売らない | ローンの条件を満たせる |
期限が迫っているなら買取、時間に余裕があるなら媒介契約の見直しから。この2つで順番が決まります。
\ 仲介と買取をまとめて比較 /
まとめ
値下げの判断で最初に見るのは、問い合わせ件数・内覧から申込への進み方・経過期間の3つ。数字は不動産会社から報告を受けられるので、まずは手元の報告書を開いてみてください。
経過期間の目安になるのは、2025年の首都圏で中古マンション82.5日、中古戸建住宅100.9日という実績です。専任媒介契約の有効期間の上限も3か月ですから、この時期が最初の見直し点になります。
下げ幅は率ではなく、不動産情報サイトの500万円刻みの区切りをまたぐかどうかで設計します。同じ200万円でも、区切りをまたぐかどうかで見つけてもらえる人の数は変わるからです。価格を動かす前に、今の売り出し価格が相場と合っているかを複数の会社に確かめておくと、下げ幅の判断がしやすくなるはずです。
\6年連続不動産査定サイトNO.1/
※2025年9月19日-23日 「サイト評価に関する調査」より
よくある質問
値下げの手続きや影響について、寄せられることの多い質問をまとめました。
値下げをしてから元の価格に戻すことはできますか
戻すこと自体はできますが、手続きが変わります。標準媒介契約約款第5条第2項は、売主が価額を変更するときに会社へ通知すると定めており、引き下げならこの通知だけで足ります。一方、引き上げには会社の承諾が必要です。同条第3項により、承諾を拒む場合は会社が根拠を示さなければなりません。
値下げをするかどうかは売主と不動産会社のどちらが決めますか
決めるのは売主です。標準媒介契約約款第5条第2項は、価額を変更するときに売主が会社へ通知する形をとっており、引き下げに会社の承諾は求めていません。会社の役割は同条第1項の助言で、価格が不適当と認められるに至ったときは「根拠を示して助言します」と定めています。
値下げ幅は5〜10%が目安と聞きましたが本当ですか
同じ物件が売り出しから成約までに価格をいくら変えたかという統計は、公的機関からも業界団体からも公表されていません。5〜10%にあたる公表データは見当たらないため、そのまま基準にするのは避けたほうが安全です。率で決めるより、検索価格帯の区切りをまたぐかどうかで判断するほうが、効果を確かめやすくなります。
売り出し価格は査定額よりどのくらい高く設定できますか
上限を定めた決まりはありません。ただし査定額から離れるほど検索されにくくなり、売却期間が延びます。宅地建物取引業法第34条の2第2項により、会社は価額に意見を述べるときに根拠を明らかにする義務を負っています。査定額の根拠と、上乗せした場合の想定期間を聞いてから決めてください。提示された査定額が相場より高いと感じたときの見方は、不動産査定が高すぎるときの確認点で解説しています。
値下げをしたのに問い合わせが増えないときは何を確認すればよいですか
下げた金額が検索価格帯の区切りをまたいでいるかを確認してください。3,980万円から3,780万円のように同じ区切りの中で動いた場合、新しく検索結果に入る人はほとんど増えません。掲載写真の枚数や紹介文、レインズへの登録状況もあわせて見直します。
値下げをすると譲渡所得の税金も変わりますか
売却価格が下がれば譲渡所得も減るため、課税される金額は変わります。売却価格から取得費と譲渡費用を引いた額が譲渡所得で、これがマイナスなら譲渡所得税はかかりません。計算結果は取得時の資料や所有期間で変わるため、税理士や税務署に確認することをおすすめします。
値下げの前に別の不動産会社に査定し直してもよいですか
問題ありません。媒介契約の有効期間中でも査定は依頼できます。標準媒介契約約款第15条は、更新に売主からの申し出を求めており、更新後の期間も3か月が上限です。満了が近いなら、複数社の査定で今の価格の妥当性を確かめてから、更新するかどうかを決められます。
出典
- 宅地建物取引業法(e-Gov法令検索)
- 宅地建物取引業法施行規則(e-Gov法令検索)(参照日:2026年8月28日)
- 国土交通省・標準媒介契約約款(最終改正:2024年4月1日)
- 国土交通省・宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額(最終改正:2024年6月21日)
- 東日本不動産流通機構・首都圏不動産流通市場の動向(2025年)(公表日:2026年1月20日)
- 東日本不動産流通機構・Market Watch 月例速報 2026年7月度(公表日:2026年8月10日)
- 国土交通省・不動産価格指数(令和7年12月・第4四半期分)(公表日:2026年3月31日)
- SUUMO・中古一戸建て検索
- LIFULL HOME’S・中古一戸建て検索
- at home・中古一戸建て検索
